ユーザーインタビュー相手の抽出方法は? アンケートで絞り込む「質問テンプレート」大公開
はじめに
前回は「ユーザーインタビューで、誰に話しを聞くか、絞り込む条件を考える」というお話しでした。ユーザーインタビューの対象者を募集したり、連絡をしてインタビューの約束を取り付けたりすることを「リクルーティング」、また、多くの候補者の中から条件に合った人に絞り込むことを「スクリーニング」と呼びます。
今回は、具体的にリクルーティングする手順を、リクルーティングのアンケートやメールの文面を見ながら説明していきます。
どうやってインタビュー対象者を
リクルーティングするか
やりやすいのは、すでにいるユーザーに連絡してリクルーティングするパターンです。自社のサービスと関わりのある人に話しを聞くことができます。
例えば、あなたのプロダクトに会員登録しているユーザーが何千人、何万人もいるのであれば、ユーザーにメールマガジンで次のようなアンケートをしてみてはいかがでしょうか。
ポイントは、いきなりインタビューを申し込むのではなく、アンケートを通じて、先に挙げた条件に合うユーザーを絞り込んでアポイントをとることです。
プロダクトは「TOEICの学習アプリ」と仮定します。
リクルーティングのためのアンケートメールの例
[表題]
【TOEIC 学習アプリ ●●●】アンケートにご協力ください(「資格をとるきっかけ」について)
[本文]
いつも【TOEIC 学習アプリ ●●●】をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
このたび、弊社では「資格をとるきっかけ」についてのアンケートをいたします。
本アンケートは、弊社の【TOEIC 学習アプリ ●●●】の改善の参考とさせていただきます。
つきましては、mm月dd日 (wday)までに、以下のURLよりアンケートにご回答いただけますと幸いです。
アンケート回答URL:
●●●●● (Googleフォームなどでつくったアンケートフォーム)
アンケート対象者:
【TOEIC 学習アプリ ●●●】のユーザーの方。
特に「資格をとるきっかけ」についてお聞かせください。
期限内にアンケートにご回答いただいた方の中から、抽選でプレゼントいたします。
当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
抽選プレゼント:
・Amazonギフト券 1,000円分 3名様
アンケート期限:
・mm月dd日 (wday) 23:59
お忙しいところ、たいへん恐縮ですが、アンケートにご協力のほど、よろしくお願い申いたします。
抽選プレゼントはなくてもかまいませんが、あればアンケート回答の軽い動機づけになるので、著者はこのパターンをよく使っています。
リクルーティングのためのアンケートの例
アンケートには、先に洗い出した条件で、うまくスクリーニングするように設問をつくります。例えば、次のような質問が考えられます。
なお、アンケート作成では、つい期待する回答に意識を引っ張られますが、「質問に該当しない人」向けの逃げ道を忘れないようにします。
[アンケート]
Q1. あなたは資格を2年以内に受験したことがありますか。
- 3ヶ月以内に受験した
- 6ヶ月以内に受験した
- 1年以内に受験した
- 2年以内に受験した
- 2年以内には受験していない
スクリーニング条件では「2年以内」としていましたが、近ければ近いほど記憶が鮮明であると期待できるので、3ヶ月から期間を切って質問しています。
[アンケート]
Q2. あなたは語学の資格をお持ちですか。お持ちの語学の資格をすべて教えてください。
- TOEIC
- 英検
- それ以外の語学資格「(自由記述)」
- 語学の資格はもっていない
Q2-2. TOEICの点数を教えてください。
(TOEICと回答した人にのみ表示)
- 860点以上
- 730点以上
- 470点以上
- 470点未満
Q2-3. 英検の級を教えてください。
(英検と回答した人にのみ表示)
- 1級
- 凖1級
- 2級
- 凖2級
- 3級
- 4級
- 5級
Q3. あなたは語学「以外」の資格をお持ちですか。お持ちの語学「以外」の資格をすべて教えてください。
- 「(自由記述)」
- 語学「以外」の資格はもっていない
ここでは、重要なスクリーニング条件である、資格の保有状況を確認しています。上記のサンプルではTOEICと英検だけを挙げていますが、英語の資格には様々あるので、それらを選択肢に挙げても良いでしょう。
TOEICと英検については、高得点者であるかを併せて訊きます。
また、語学「以外」の資格の保有状況も訊いています。自由記述としていますが、もし代表的な資格の目星がついていれば、選択肢として挙げておいても良いでしょう。
[アンケート]
Q4. あなた自身の「資格をとるきっかけ」は、どのようなものがありましたか。教えてください。
- 「(自由記述)」
- 資格はもっていない、わからない
Q5. 2年以内に受験した資格で、合格できなかったり、望む得点がとれなかった資格があれば、教えてください。
- 「(自由記述)」
- 2年以内に受験した資格で、該当するものはない
Q4では「資格をとるきっかけ」について簡単な自由記述を設けています。このような質問をしておくことで、あとで候補者を絞り込むとき、インタビューに入る前の感触をつかむことができます。
Q5では、うまくいかなかった体験について確認しています。
[アンケート]
Q6. このアンケートの内容について、より詳しいお話をお伺いするため、1時間ほどのヒアリング調査にご協力をいただくことはできますでしょうか。(謝礼 6,000円、弊社東京オフィスまたはオンラインにて実施)
※ 応募者多数の場合は、条件に合う方を優先
- はい (東京オフィスへ訪問、オンラインいずれもOK)
- はい (東京オフィスへ訪問ならOK)
- はい (オンラインならOK)
- いいえ
Q7. ヒアリング調査にご協力をいただける方は、メールアドレスを教えてください。(任意)
- 「(自由記述)」
何よりも重要なのはこの質問です。「連絡をとることのオプトイン(許可)」と「連絡先メールアドレス」を訊くことを忘れないようにしましょう。
「連絡先メールアドレス」は、そもそもアンケートメールを送っているので、改めて訊かなくても良いのですが、わざわざ設問を設けることで「連絡が来るかもしれない」ということを意識してもらい、あとでインタビューのアポの連絡をしたときに驚かれないようにするためです。
なお、著者の経験として、アンケート回答が100件あったとして、オプトインがとれスクリーニング条件にも合致してインタビューに至るユーザーは数人であることが多いです。
細かいところですが、メール文中での表記は「インタビュー調査」ではなく「ヒアリング調査」としています。著者の経験で「インタビュー」という単語から「メディアの取材」だと勘違いされてしまったことがあり、それ以来は誤解のないように「ヒアリング」という言葉にしています。
ユーザーインタビューの謝礼は
いくらにすべき?
ユーザーインタビューの謝礼は、サンプルでは6,000円としています。謝礼金額はアタマを悩ます話題ですが、リクルートをする段階で決めておかなければならない項目です。費用を確保できているときもあれば、あまりかけられないこともあるでしょう。
謝礼を出すのは、もちろんご協力いただいた方への感謝を示すためでもあるのですが、併せて、謝礼金額を提示することで応募を増やしたい、という意図があります。著者の経験では、1人あたり5,000~10,000円(交通費込み)が多いです。
他方で、スタートアップ企業でカジュアルにするときは、ランチやコーヒーをごちそうするなど、軽い謝礼をすることもあります。
また、リクルーティングしたい対象者が、希少な属性であったり、高給な職業であったりすると、謝礼金額を上げて、応募してもらう確率を高める、ということをします。
例えば、著者は医師にインタビューをしたことがありますが、そのときは1人あたり50,000円の謝礼にすることで協力者を集めました。弁護士や税理士なども、同じような傾向があると聞いています。
前述したように、謝礼を出す大きな目的は募集のときにそれを示すことで、応募率を高めるためです。アンケートの「連絡をとることのオプトイン」の質問のところに、謝礼の有無や金額を記載します。
アンケートの「抽選プレゼント」を
送り忘れないように
アンケートが集まってきたら、さっそくインタビューを先に進めたいところですが、今回は「抽選プレゼント」を記載していました。抽選し当選の連絡を忘れないようにしましょう。意識がインタビューを進めるところにあると、うっかり忘れてしまうことがあります。
人脈を通じてリクルーティングする
他にリクルーティングのパターンとしてよくあるのは、人脈を通じてリクルーティングすることです。具体的には、次のような方法があります。
- あなたの会社の営業担当者にスクリーニング条件に合う顧客を紹介してもらえないか相談する。もしあなたが受託の立場であれば、クライアントにエンドユーザーを紹介してもらえないか相談する。
- ソーシャルメディアを通じて友人や知人から募集する。
- 社内の人脈を通じて、社員やその家族や友人で該当する人を紹介してもらう。
- あなたの家族や友人にインタビューする。
人脈を通じたリクルーティングのメリットは、リクルーティングしやすいだけでなく、相手がどういう人かわかってインタビューに入りやすい、というところです。また、社内から「顔がわかっている」顧客のインタビュー結果は、それだけで社内に受け入れられやすい、という点もあります。
他方で、アンケートでリクルーティングすることに比べて、スクリーニング条件の絞り込みがややゆるくなる傾向があります。人を介してお願いすると、どうしても「少し条件とズレるけどまあいいか」ということが起こるためです。
とは言え、実際にインタビューしてみると、多少のズレであれば意味のある情報を聞くことができることも多いので、心配するよりやってみると良いでしょう。
社員からインタビュー候補者を募る方法は、予算や時間がないときによく使われますが、ポイントとしてインタビュー対象者との関係性に注意してください。対象者がプロジェクトチームの誰かに気をつかうあまり「こんな意見を言ったら悪いかな」と本音を話してくれなかったら、インタビューの価値は激減します。率直な意見を言ってもらえる関係の社員にお願いしましょう。
なお、ソーシャルメディアを使う方法の1つとして、最近ではbosyuのようなサービスを使って対象者を探すケースもあります。
市場調査会社のリサーチパネルで
リクルーティングする
予算がある程度確保できているのであれば、市場調査会社の「リサーチパネル」を使う方法もあります。
リサーチパネルとは、調査会社に「アンケートなどに協力しても良いですよ」と登録している人たちのことです。アンケートに回答するとポイントなどがもらえます。そのような登録者を調査会社は何万人と抱えています。
調査会社には、そのリサーチパネルの中からユーザーインタビューの対象者をリクルーティングしてくれるサービスをしていることがあります。
おわりに
今回は、様々なリクルーティング方法を紹介しました。プロジェクトの状況に応じて、やりやすいリクルーティング方法を選びましょう。
次回は、絞り込んだ対象者にアポをとるためのメールのやりとりを、具体的なサンプルを見ながら解説していきます。
オリジナル記事はこちら:ユーザーインタビューの対象者をアンケートで絞り込もう(2020/10/27)
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