BIツールを活用したインハウス広告運用の効率化と見るべき視点(ダッシュボードサンプル付き)
本連載は、運用型広告のインハウス化に興味がある、または検討している事業主の方向けに、インハウス化を成功させるために押さえておくべきポイントを紹介しています。
前回は、多忙なインハウス運用担当者が効率的に業務を遂行するために、BIツールを使ってダッシュボードを構築しました。さらに、レポーティングを自動化する際に押さえておきたいポイントと、用意しておくと便利な広告ダッシュボードサンプル(進捗管理ダッシュボード)について、Google データポータル(旧:Google データスタジオ/以下、データポータル)を例に挙げて解説しました。
今回も引き続き、用意しておくと便利な広告ダッシュボードサンプルとして、以下の2つを紹介します。
- 広告クリエイティブ分析用のダッシュボード
- 検索語句データ分析用のダッシュボード
広告クリエイティブ分析用のダッシュボード
通常、クリエイティブ分析用のレポートはExcelなどを使うことが多いですが、ダッシュボード化することで最新のデータが視覚的にわかりやすく表示されます。そのため、訴求ごと・サイズごとにクリエイティブを分析したり改善したりする際に活用できます。
検索語句データ分析用のダッシュボード
大量にある検索語句を管理画面やExcelレポートで確認しながら分析するのではなく、ダッシュボード化することで、検索語句を分類しやすくなり、分類ごとの月別推移や、全体に占めるコストやコンバージョン数の割合などが確認できます。そのため、改善施策の立案や優先順位を決める際に活用できます。
広告クリエイティブ分析ダッシュボードのサンプルと活用イメージ
広告クリエイティブ分析ダッシュボードは、広告運用者がクリエイティブ分析を効率的に行うために使用することを想定しています。Excelでもクリエイティブ分析は可能ですが、データポータルの※グラフインタラクション フィルタという機能を利用することで、より効率的で多角的な分析が可能になります。
あるグラフの項目を選択すると他のグラフのデータに関しても選択した項目のみにフィルタリングされる機能。
下図は、ディスプレイ広告で利用するクリエイティブを分析するための、データポータルのサンプルダッシュボードです。
以下は、活用イメージです。
- レポート内の各表を確認し、どういった訴求やクリエイティブが成果に繋がっているのか、全体的な傾向を把握する
- 「キャンペーン別」「広告形式&サイズ別」などの表を選択し、他の表にもフィルタを反映した上で、成果の出ているクリエイティブの傾向を確認する
具体的には、リマーケティングと非リマーケティングで成果が出ているクリエイティブの傾向を分析したり、レスポンシブ広告の中でもサイズが1200×628と300×300の場合にそれぞれの成果と傾向がどのように異なるのかを分析したりすることができます。
それらの分析結果から、成果に繋がりやすい要因、繋がりにくい要因を抽出することで、次のクリエイティブ案を考える際の参考になります。
検索語句分類ダッシュボードのサンプルと活用イメージ
このダッシュボードは、広告運用者が大量の検索語句データを分析し、どのような検索語句郡に、どのような改善施策を、どのような優先順位で実施するかを検討するために使用することを想定しています。
ここでは、例として「アタラ旅行」という架空の旅行代理店での運用を想定した検索語句分析用のデータポータルのサンプルダッシュボードを紹介します。
以下は、活用イメージです。
- 検索語句を任意で大分類・中分類・小分類に分け、分類ごとの数値を確認。たとえば「コンバージョン獲得割合の大きい分類から優先して施策を実施する」など、改善施策を実施する優先順位を決定する
- 月別グラフを確認して、コンバージョンに繋がりやすい時期を把握し、次の繁忙期にさらに多くのコンバージョンに繋げられるように計画を立てるために活用する
- 散布図を利用して、優先的に改善が必要な分類を決める
- 未分類の検索語句は、言い換えれば新しい検索ニーズとも捉えられるので、内容を確認しつつ、分類作業を実施する
たとえば、サンプルダッシュボードの小分類の「大阪」を選択した上で、月別グラフを見ると、6~8月にかけて費用とコンバージョン数が増加しています。
このグラフのように、毎年決まった時期にコンバージョン数が増加する傾向がある場合、その時期のコンバージョン数を最大化できるように計画を立てることができます。
また散布図は、縦軸がコスト、横軸がコンバージョン単価、バブルの大きさがコンバージョン数を表しています。図内右側にある分類は費用対効果が芳しくないため、除外キーワードとして登録をしたり、広告グループを切り分けて最適化をかけたりすることができます。
左下にある分類は、コンバージョン単価が低く、コストをあまり使用していない分類のため、入札強化やクリエイティブ改善を行うことで効率的にコンバージョンを増加できる可能性があります。
おわりに
今回紹介したのはあくまで一例ですが、このようなダッシュボードを利用することで、日々の分析を迅速かつ容易に実施できるため、現状の課題や次の打ち手を立てやすくなります。
特にインハウス組織の場合、人的リソースが限られてしまい、業務過多になることで本来注力したい改善活動に時間が割けなくなる場合があります。業務効率化のためにも、ダッシュボードのように自動化できる部分は積極的に自動化を行うことが重要です。
また、チームでダッシュボードを編集しあうケースもあると思います。そのような場合は、ダッシュボードがどのような流れで作成されているのか、フロー図を作成すると共通認識を持ちやすくなるため、管理しやすくなります。
以下の記事でデータポータルの編集者が複数人いる場合のおすすめフロー図を紹介しているので、参考にしてみてください。
業界、業種、企業によって分析するべき視点は変わります。一度完成したダッシュボードでも使っているうちに、新たに分析したい視点や項目が増えることもあります。インハウス化することで、達成したい目的にたどり着くまでに必要な情報が即座に判断できるダッシュボードになるように、定期的に見直しを図りブラッシュアップし続けることが大切です。
4回にわたって運用型広告のインハウス化をテーマに、インハウス化するべきか否かの判断基準から、業務効率化のためのダッシュボードサンプルまでを紹介しました。
インハウス化といっても、広告運用やクリエイティブ作成などすべての業務を内製化するケースもあれば、一部の広告媒体や一部の作業のみを内製化するケースもあります。
企業の事業フェーズなどによっても内製化するべきか、支援会社に委託するべきかが変わります。運用型広告のインハウス化に興味のある企業は、自社がインハウス化するべきか否か、最良の判断を下すためにも、まずはインハウス化を支援する支援会社などに相談してみることをおすすめします。
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