世界最大のコーヒーチェーン「スターバックス」。その日本法人でマーケティング戦略の陣頭指揮を執るのがCMOを務める森井久恵さんです。スターバックスといえば、強力なブランドの力を背景に、一般消費者が顧客でありながらテレビCMをはじめとするマス広告をほとんど打たないなど、独特のマーケティング戦略で知られています。
FMCG(Fast Moving Consumer Goods、日用消費財)のマーケター経験が長い森井さんは、そうした「スターバックスらしさ」を活かしつつも、ライフスタイルの変化に合わせてブランドの在り方を進化させようと試みています。
それはどのような進化でしょうか。従来のスターバックスファンはその進化をどのように受け止めているのでしょうか。
今回は、スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社CMOの森井久恵さんに、マーケティング戦略の取り組みに加えて、マーケターとして働く女性へのメッセージについても伺いました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:花井 智子)
スターバックスで感じた強みと課題
――「スターバックス」という世界的な人気企業の日本法人でCMOを務められているということで、「どんな人なんだろう?」と興味を持っている読者は多いと思います。これまでのキャリアを教えてください。
スタートはNTT東日本で、法人営業などを担当しました。その後、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BAT)に転職して営業とマーケティングを3年ほど経験し、ユニリーバ・ジャパンへ移りました。ユニリーバは自分ととても相性が良く、日本で12年、中国とタイで3年と計15年間在職し、それぞれの国でマーケティングのヘッドを務めました。
――ユニリーバでご活躍だったのに、なぜスターバックスに移られたのですか。
ユニリーバのブランドに対する考え方やカンパニーカルチャーが大好きでした。私を育ててくれましたし、しばらくは海外で頑張ろうと思っていたのですが、家族の事情でユニリーバを辞めて帰国するかどうかの判断を迫られる状況になり、悩んでいたタイミングで、スターバックスから声をかけていただいたため、運命を感じました。
――いつのお話ですか。
2017年の終わり頃です。大好きなスターバックスだったから、帰国して転職するという大きな決断ができたのだと思います。
――前職・前々職ともに世界的な有名企業ですが、比較した場合に、スターバックスの強みや魅力、課題はどこにあるとお考えですか。
私自身にとっての強みは、お客さまに「感動」を直接お渡しできることです。これまでFMCGでは、お客さまに購入していただけるのは主に小売りやネットを通してであり、自分が商品を直接お渡しできるわけではありません。一方、スターバックスはお客さまの反応を目の前で感じられますから、あらゆることを詳細な消費者調査にかけなくても、お客さまや、スターバックス体験を届けてくれているパートナー(従業員)の声に耳を傾ければ、お客さまが求めていることは何か、我々は何をすべきかが見えてきたりします。その点はマーケターとして魅力を感じますね。
機会点があるとすれば、ブランドマネジメントのような体系立ったロジカルなフレームワークがそこまで確立されていないことです。スターバックスのパートナーはブランド愛が強く、パッションあふれる方が多いので、その点が最大の強みだと思います。そこに加えて、ブランドマネジメントに基づいた経営視点によるプロジェクトマネジメントを少しずつ取り入れていければ、スターバックスのブランドがさらに強固なものになるのではないかと考えています。
もちろんジャンルが違いますから、単純に当てはめれば良いわけではなく、まずは効果的と思われるところから取り組んでいきます。「マジック」と「ロジック」と呼んでいて、スターバックスはマジックは強いので、そこを最大に活かしながらロジックを少し強化していきたいと意識している状態です。
――逆に言うと、ロジックが弱めなのに、ここまで成長しているのがすごいです。
それがブランドの強さです。どういうお店を作っていくのか、お客さまにどのような価値を提供するのかというブランドとしてのこだわり、信念がとても強くて、圧倒的です。創業者の想いが受け継がれていますし、お客さまの顔が直接見えていることも大きいと思います。
「スターバックスはマーケティング調査をしない」と言われる背景
――そんなスターバックスのCMOとは、どんなお仕事でしょうか。
日本ではCMOの定義自体、明確に定まっていないという認識があります。私はスターバックスのCMOとして、マーケティングやコミュニケーションなどプロモーションのプランニングを行う「マーケティング本部」と、商品開発を担当する「商品本部」、CRMやモバイルオーダーなどデジタルにおけるお客さまとの関係構築を図る「デジタル戦略本部」の3つの本部を統括しています。したがって、前職のようにFMCGのブランドがあり、そのブランドマネジメントのトップとして指揮を執るのではなく、3本部の価値を最大化して成果を上げるのが私の役割です。
――「スターバックスはマーケティング調査をあまりしない」とか、「SNSをマーケティングに活用している」と言われます。その点は実際どうでしょうか。
――そこはよく聞かれるところです(笑)。結論から言うと、必要な範囲においてマーケティングの調査はやっています。ただ、全ての面で詳細な調査が必要だとは考えていません。理由は、お客さまに直接対応しているパートナーが約3万6000人いますので、パートナーに聞けばある程度はわかりますし、実際に自分がお店に行けば、見えてくることがたくさんあるからです。ですから、客観性を担保しつつ、エモーショナルな部分、つまりお店を通してお客さまに感動をお渡しするという部分をさらに追求していくことが重要だと考えています。
――エモーショナルといっても個人差がありますし、定性的ですよね。その辺はパートナーやお客さまへのインタビューなどを行っているのでしょうか。
大きなインパクトが予測されるものに関しては定量的にも見ます。ただ、スターバックスの財産のひとつとして、社歴の長いパートナーが多数在籍していることが挙げられます。皆さん、スタバ愛が強いんですね。結果として、ブランド、お客さま、お店への理解という点で蓄積されてきたものがたくさんありますから、そこを活用できるのは大きな強みです。
――確かにそうですね。では、SNSの活用についてはいかがですか。
広報担当者:
例えば、昨年(2018年)のハロウィンでは、ハロウィンに関連した2つのフラペチーノを発売するにあたり、「あなたはどっち?」とSNSで問い掛けてお客さまのワクワク感を高め、さらにお店でまたどちらかの商品を選んでいただくという参加型のキャンペーンを実施しました。そのようにお店で商品を販売する前にお客さまの期待度を高めるような仕掛けをSNSではよく行います。
――森井さんはスターバックスのSNSについてはどのような認識をお持ちですか。
TwitterやInstagramは、マスのコミュニケーション手段として、新しいサービス商品の告知には最適ですし、大きな強みになっています。
コミュニケーションチャネルを考えた場合、スターバックスにとってはお店が一番です。店舗数は1500近くに上り、毎日80万人のお客さまがいらっしゃるわけですから、お店が一番のコミュニケーションの場であり、そこに大部分のエネルギーと投資を集中しています。SNSはその次です。お客さまが選んでフォローをするという好意を示してくれているわけですから、テレビCM等とは違って、お客さまとの信頼関係をベースに情報をお伝えできます。重複している方も含めると、SNS全てを合わせて、おそらく800万から900万人くらいのフォロワーがいると思います。マスのリーチという点では、大きな責任を感じるくらいにフォローしていただいていますので、それ以上に広告効果や効率を求める世界にはスターバックスはいないと捉えています。逆にフォロワーとの関係性を、いかにより良いものに高めていくかを重視しています。
座席予約システムを導入した「スターバックス リザーブ® ストア 銀座マロニエ通り」(画像提供:スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社)
CMOとしての意思決定の基準となる3つの軸
――CMOに就任されてから、すでにさまざまな施策を打ち出していますよね。「モバイルオーダー&ペイ」や「座席予約システム」などはメディアでも大きく取り上げられました。この辺はどのような背景から立案されたのでしょうか。
モバイルオーダー&ペイに関しては、先に韓国やアメリカで実績がありました。日本に関しては、すぐに必要かどうかという議論は以前からあったのですが、スターバックスに対するお客さまの一番の要望が「席がない」「並んでいるから入るのを諦めた」ということだったんです。まずそこを改善したいという狙いがありました。
もう1つはモバイルオーダー&ペイを利用するために必要な「Starbucks Rewards™会員」への会員登録者が470万人くらいの規模に達したことが挙げられます。そうしたお客さまの基盤ができたことから、サービスをローンチしたということです。
――座席予約システムはいかがですか。
新業態は専任の統括担当が別におりますが、いろいろなお客さまのニーズに応えて、新たに取り組んだ試みです。1人でご利用されるときはスターバックスを選んでも、何人かで行く場合は、席が空いていないからスターバックスがオプションに入らないというお客さまの声が多数ありました。そうした意見を踏まえてテスト的に導入したのが「スターバックス リザーブ® ストア 銀座マロニエ通り」の座席予約システムです。複数でゆっくりとくつろいでいただけるように、食べ物もコーヒーの「あて」ではなく、食事として楽しめるようにしています。
「銀座マロニエ通り」ではランチプレートも提供されている(画像提供:スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社)
――モバイルオーダー&ペイを発表したときに、「これまでスターバックスはお店でのエモーショナルな体験を提供するのが売りだったのに、持ち帰りの『TO GO強化戦略』は、それに相反するのではないか?」という質問がメディアから出たと思います。その辺の整合性についてはいかがでしょうか。
メディアからの質問どころか、社内でもいろいろありましたよ(笑)。皆さんスターバックスを愛しているパートナーばかりですから、疑問を呈する声はありましたし、私自身も「どうなのかな」と思う部分は正直、最初はありました。お客さまとのエモーショナルなつながりにブランドの価値があることもよく認識しています。
ただ、お客さま全員がいつも同じ意見ではありません。エモーショナルなつながりを求めるときもあれば、とにかく早くスターバックスのコーヒーが飲みたいときもあります。スピーディさをメインに求められるお客さまもたくさんいらっしゃるんです。ですから、「0対100」の発想ではなく、ゆっくりされたいお客さまにはゆっくりしていただき、とにかく並ばずに早く欲しいというお客さまの声にもきちんと応えようというのが実施に至ったポイントです。
事前に注文決済ができ、商品を受け取ることができるサービス「モバイルオーダー&ペイ」(画像提供:スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社)
――まさにそこがCMOの大きな仕事のひとつだと思うのですが、社内で意見が分かれ、自分の中でも葛藤がある状況で、意思決定する際の判断基準はどこにありますか。
スターバックスの場合は、3つの軸で考えるようにしています。
・お客さまのためになるのか。
・パートナーがお客さま視点で考えたときにしっくりくるか。
・ビジネス的に費用対効果としてリーズナブルか。
そういう点でモバイルオーダー&ペイを考えると、お客さまのライフスタイルはどんどん変化していて、早く商品を渡してほしいという人も増えていましたし、そのことをお客さまに何年も前から言われていたという現実がありました。ですから、パートナー視点と費用対効果が合うのであれば、応えるべきだと判断したわけです。ただし、その場合もただ便利さを追求するのではなく、スターバックスらしさを大事にすることを意識しました。例えば、注文した商品のカスタマイズは意外とモバイルオーダー&ペイのほうがお客さまは安心してできるようです。
――後ろに並んでいる人を気にしなくて良いですからね。
そうなんです。そこを気に入っていただけているお客さまも増えています。あとは、お客さまの目を見ながら「ありがとうございます」と言うとか、商品を丁寧に渡すとか、メッセージを少し書いておくとか、そんなちょっとしたところにスターバックスの良さを感じてくださるお客さまも多いですから、急いでいる方には配慮しつつも、パートナーそれぞれができる範囲でエモーショナルなつながりを作っていくことを重視しています。
――コミュニケーションという点で、社内で意見が分かれたときに、CMOとしてどのようなことを意識していますか。
普段からチームの話をよく聞くようにしています。スターバックスはパートナーを通してお客さまに価値を提供していますので、人が財産であり、パートナーの思いや経験はとても貴重です。
その上で、最終的な判断を下すときは、先ほど挙げた3つの軸から考えます。「スターバックスはこうあるべきだ」という強いパッションは確かに感じますが、それはお客さまから見たときに本当に必要なのか、と一旦、俯瞰して考えることが大切です。それに加えて、ビジネスとしての価値です。みんなで一生懸命頑張ったのに一部の店舗でしか実現できませんでした、ということがたまに起きるのですが、そこはもう少し費用対効果を考えましょうということです。
仕事と家庭の両立に悩む女性マーケターへのアドバイス
――次に、女性のキャリアという点から質問させてください。森井さんはスターバックスという有名企業のCMOとして活躍されていますが、女性でCMOに就いている方は少ないと思います。
日本では、ですね。
――他国のことは存じ上げないのですが、日本ではまだ少ないようです。そこで、森井さんのようになりたいと考えている女性マーケターにアドバイスをいただけないでしょうか。
アドバイス…。私は基本的に女性という性別をあまり意識して働いてきていませんので、答えが適切かどうかはわかりませんが、例えば、出産を選んだ場合は、現実問題として産休、育休を取得する必要があります。そういうときは、素直に助けを求めることが大事だと思います。
――助けを求める対象は夫ですか。
それは夫でも、自分の親でもいい。仕事と家事を両方同じように頑張ることは難しいので、アウトソースしてもいいから、とにかく一人で抱え込まないで助けを求めるのが良いと思います。海外経験がそれなりにあるからそう思うのかもしれませんが、日本の女性はなぜそんなに一人で抱え込んでしまうのか、助けを求めるときになぜ「ごめんなさい」と謝る必要があるのかと、疑問を感じています。謝る必要なんかありません。子供を生んで、夫と妻が対等なレベルで働いていれば、家事や子育てについてはできるほうがやるべきです。「私も働いているんだから、あなたもやって当然でしょ」という言い方さえしないように注意すれば、夫に助けを求めて良いと思います。
私の場合、子供が小さくて保育園の送り迎えなどがあったときは、「何時以降の会議は受けられません」「その代わり、その時間までにできることはきちんとやります」と周囲に対して明確に言うようにしていました。
――では、こんなときはどうしますか?今日絶対に出なければならない大事な会議がある。そんなときに限って、子供が熱を出したから引き取りに来てくれと保育園から電話がかかってきた…よくあるパターンだと思います。
マーケター的な言い方をすると、そういうケースが起こり得ることを想定して、複数のオプションを用意しておくことが大切です。例えば、私は緊急対応をお願いできる病児保育のシッターサービスと契約して会員になっていました。費用は多少かかりますが、お金には代えられません。それでもダメなときは、もちろん子供を取りました。
――おお…。
熱を出している子供を放っておいて働けなんて、そんな仕事は自分がハッピーにならないので、しないと決めていました。仕事のために生きているのではなく、自分や家族の存在があって、初めて仕事があります。そのバランスは崩さないようにしていました。
マーケターとして絶対に譲れなかったポイント
――では、森井さん自身がマーケターとして成長するために磨いてきたことや意識してきたことを教えてください。
顧客視点を忘れないことと、ブランドの存在意義を常に考えてきました。なぜそのブランドが人々の生活になければならないのかを常に考え、真摯に向き合ってきたという自負があります。たとえ誰かに何かを言われても、正しいと思ったこと、担当している国のマーケットに対してこうあるべきだと考えたことは譲りませんでした。お客さまとブランドのために正しいことをするのがマーケターの仕事ですから、それが一番大事だと思います。
もう1つは、チームメンバー全員に力を発揮させることです。マーケターの仕事は個人プレーではなく、ジェネラリストのチームプレーヤー、チームリーダーだと考えています。私は若い頃ダンスをやっていましたが、ダンサーも裏方も、才能を持ったメンバー全員が力を発揮するだけでなく、バッチリと息を合わせないと感動できるショーには仕上がらないんです。マーケティングも同じで、それぞれのメンバーの強みを引き出し、結集させることで全体のアウトプットを最大化できるような仕組み作りを意識してきました。
――「私は顧客視点を守ってきた」とおっしゃる方は多いのですが、そんなに気持ちが揺らぐようなことがあるんですか。
ビジネスですから、現実的な問題として、「どうやって売り上げを作るか」など乗り越えなければならない課題がいろいろ出てきます。そんなときは、どうしても目先のことに手が伸びがちなのですが、「いや、ここはやはり、この目標を目指すことからブレてはいけないと思います」と勇気を持って宣言し、そこに邁進できるかどうかが問われます。そういう判断を迫られたことは、結構ありました。
今年5月に期間限定で展開した、ちょっとレトロな今だけのスターバックス、“スタアバックス珈琲“プロモーションも森井さんが手掛けた施策のひとつ。懐かしさと新鮮味のある商品や看板が登場し、話題を呼んだ(画像提供:スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社)
「変化」ではなく、さらなる「進化」を
――CMOとして「私はスターバックスをこう成長させる」「こう変える」という意気込みをお願いします。
まず、変えることが前提ではありません。ずっと成長していますから「V字回復」させる必要もないので、意識しているのは「変化」ではなく「進化」です。いかにブランドの資産、強み、魅力を守りながら、時代に合わせて進化させていくか。子育てに少し通じるところがあるのですが、子供の長所を伸ばして、強く生きていけるように成長をサポートすることと似た感覚をブランドに対して持っています。特にスターバックスは、人材面やコーヒーの品質・味はもちろん、サステナビリティやダイバーシティなどさまざまな強みが原石の形であちこちに散らばっています。そうしたところに磨きをかけ、お客さまにきちんと伝えていくことで、よりブランドを好きになってもらう、よりファンを増やすという点に注力していきたいと考えています。
――進化という点でいうと、スターバックスは「サードプレイス」という概念を大切にしてきたと思います。それがコンビニで買えるようになったり、ドライブスルーが出てきたり、あるいは座席を予約してゆったり食事ができるお店が出てきたりして、少しずつ変性しているように感じます。そうした中で今、スターバックスのブランドとして重視している価値は何でしょうか。
スターバックス体験(感動体験)の提供という考え方に変わりはありません。ただしこれまでは、自宅とオフィスや学校との間にある物理的な場所としてサードプレイスを定義していましたが、これからはブランドも根底にある価値観を維持しながら、時代の変化に合わせて進化していく必要があると考えています。スマートフォンが浸透し、ライフスタイルが多様化する中では、デリバリーでお届けしたり、お持ち帰りしていただいたお客さまがいらっしゃる場所がサードプレイスであり、スターバックスを飲んでブランドを感じていただける場所があれば、まさにそこがサードプレイスであるというふうに、お客さまのニーズに合わせて定義を進化させているところです。
今年2月に東京・中目黒にオープンした「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」。圧倒的な感動体験を届けている(画像提供:スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社)
――最後に、CMOを目指すマーケターへのアドバイスをお願いします。
顧客視点と経営視点の両方を磨き、経験を積むことでしょうか。CMOは専門職ではありませんから、物事を常に広い視点で捉えることが大切です。あとはマジックとロジックの使い分け。ブランドマーケティングはマジックとロジックの両方がないと成立しません。どちらかに偏ることなく、状況に応じて2つのバランスをうまく取っていくことがCMOには求められます。これは経験の部分が大きいので、日常業務からマジックとロジックの2つを磨きつつ成果を上げ続け、マーケティングの責任者になれるチャンスが来たら積極的に挑戦して、経験を積み重ねることかと思います。
――本日はありがとうございました。
Profile
森井 久恵(もりい・ひさえ)
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社CMO。
国際基督教大学(ICU)卒業後、NTT東日本入社。2000年に「ラッキーストライク」などで知られるブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BAT)に移り、マーケティングと営業を経験。2003年ユニリーバ・ジャパンに転職。パーソナル・ケア製品の「Dove」のブランドマネジャーやアジア担当ディレクター、中国・タイでのマーケティングヴァイスプレジデントなどを歴任。2018年スターバックスに転職しCMOに就任、現在に至る。
[記事執筆者] 早川巧
株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writerとして四半世紀以上のキャリアあり。Twitter:@hayakawaMN
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