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ヤフーと経営統合で“AIテックカンパニー”を目指すLINE、その取り組みを一挙紹介【顔認識入場、電話予約対応、不審ユーザ認知など】

開発者イベント「LINE DEVELOPER DAY 2019」で紹介されたAI活用事例を振り返る。

先日のヤフーとの経営統合での記者会見で「AIカンパニーを目指す」と高らかに宣言したLINE。そのほとぼりが冷めぬ中、11月20日に技術者向けカンファレンスLINE DEVELOPER DAY 2019が開催された。

本稿ではKeynoteスピーチ(オープニング・セッション)で発表された、同社のAI・機械学習関連のトピックを中心にお届けする。

事前登録された写真から、タブレットで顔認識と入場登録可能

会場に到着後、まず目を引いたのが入場登録の顔認証システムだ。事前にLINE経由で写真を登録したうえで、受付にあるiPadを覗き込むと、写真データをもとに顔を認識し15秒程度で入場登録を完了できる。

「AIカンパニー」としての位置づけを強調

今回のKeynoteスピーチで特徴的だったのは、2018年に引き続きAI技術そのものにフォーカスした発表がトップを飾ったことだ。スピーチ冒頭でもパク・イビンCTOは、同社のビジョン「LIFE with LINE」に触れ

1. LINEプラットフォームへのさまざまな機能の接続
2. AIを通じた良質な体験を自然な形で提供する

という、同社がよりAI技術へ注力していく方針を示した。

LINE DevDay 2019 Keynote p.5より

LINEのAI技術とノウハウが詰まった 「LINE BRAIN」

スピーチではパクCTOのほか、AI、データ、セキュリティのパートごとに3名が登壇した。「Natural Experience with AI」と題し、同社のAI技術への取り組みを語ったのは砂金(いさご)信一郎さん(同社LINE BRAIN室 室長)。

本パートは今年6月から提供している「LINE BRAIN」の説明から始まった。

LINE BRAINは、同社がさまざまなサービスを提供するうえで培ったAI技術を、他の企業も簡単に利用できる、各種サービスの総称だ。日本語を含むアジア系言語に対応し、各国の文化に合わせた行動データ分析やカスタマイズが可能なことが強み。米国や中国との競合との差別化を図るという。

自ら学習データを作り認識精度を高める「AI OCR」

続いて、LINE BRAINが提供するAI OCR、自然言語処理と動画解析の事例に触れた。

OCRでの文字認識で、LINEは機械学習で自動的に学習データを生成する手法を用いることで、ICDR(認識技術を競う国際的な大会)で他の参加チームを大きく上回る成績を残した。

自動生成の利用例として、データ自動生成機能を使ったフォント作成への挑戦事例を紹介。

日本語はかな・カタカナ・漢字が混在するため、フォント作成に通常数千字もの手書き文字が必要だ(実際に、過去にインターネットで話題になった「手書き風レポートマシンプロジェクト」の作者はフォント作成のために7000字以上の文字データを入力した)が、同社の自動データ生成機能を使うことで、500字程度でフォントが作成できたという。

――砂金氏
「OCRに限らず、さまざまなAIに応用できるよう、データ生成技術やテスト技術に力を入れ、より高度なAIを実現したいと考えています」

レストラン予約に特化したAI「LINE AiCall」

自然言語処理技術を使った事例として紹介されたのは、レストランへの予約電話対応に特化したAI「LINE AiCall」だ。電話での予約受付と簡単な問い合わせ対応を、すべてAIが対応する。

電話回線の音声を認識する技術と、自然な会話を実現するための音声合成技術に加え、予約のために必要な情報を引き出す会話生成技術を組み合わせているという。

LINE AiCallの実証実験として、11月20日から「俺のGrill&Bakery 大手町」で自動予約受け付けを開始。固定電話からの予約にAIが対応する。

(ネット予約サービスが充実している昨今、「電話予約のニーズは多くないのでは?」という疑問が湧くかも知れないが、別のセッションで「予約の6割以上が、店舗の固定電話で確約する」と発表されている)

――砂金氏
「シンプルな機能であっても、ユーザの役に立つものを作ることが大切だと考えています。研究のための研究ではなく、自然なユーザー体験を実現するAIを目指したい」

具体的な用途は述べられなかったが、スマートスピーカー、AIトーク以外にも応用可能な技術ということだ。

カンファレンスのリアルタイム字幕が実現?自然言語処理を利用した動画解析

自然言語処理を利用した技術として、動画解析技術の進捗も紹介された。

LINE DevDay 2019 Keynote p.32より

動画解析では複数の話者を区別し、いつ誰がどういうテーマを話していたのかを解析することが可能。あわせて音声認識によりキャプションを生成し、その精度は「たまに間違える程度」(砂金氏)だという。

怪しい動きをするユーザーを機械学習で認知

セキュリティのパートでも、機械学習の活用事例としてLINEペイ、LINEコインの還元サービスなどを利用した不正行為を防ぐ取り組みが発表された。

利用者の残高やポイントの利用状況など、さまざまなデータを組み合わせて機械学習することで、全体の取引のデータから、「特徴的な怪しい行動パターン」を見つけだせるという。

LINE DevDay 2019 Keynote p.59より

大量にポイントを入手し、ポイントを一箇所に集めて現金化するという動きや、組織犯罪やマネーロンダリングの疑いがあるアカウントを知ることができる。

機械学習でフェイクニュースを見抜く

同じくセキュリティのパートで、機械学習でフェイクニュースを見抜くサービスも紹介された。

LINE DevDay 2019 Keynote p.62より

台湾のLINEユーザ向けに、ネット上のフェイクニュースを見抜く「ライン訊息査証」を展開。過去のニュースや情報を教師データとして分析し、情報のリンクをLINEアカウントに送るだけで真偽を判定するという。

――市原尚久氏(サイバーセキュリティ室 室長)
「機械学習を積極的に活用していき、セキュリティや社会の課題に挑んでいきます」
菊田 千春
雑誌記者、IT企業のオウンドメディア運営・記事制作を経てレッジに参画。新しいものに目がなく、テクノロジーの進化による人々の行動様式・価値観の変化を探っていくのが好き。

「AI:人工知能特化型メディア「Ledge.ai」」掲載のオリジナル版はこちらLINEのAI・機械学習の取り組みを一挙紹介〜顔認識入場や電話予約対応AI、不審ユーザ認知など実現

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