新しい働き方を探る

ママは在宅グロースハッカー。家事の片手間でできるほど甘くないけど「やりがい」がある/MGHの牧本玲子さんに聞いた

元プログラマですが、Webデザインは素人です。家事の片手間でできるほど勉強もグロースハックも甘くないけどやりがいがある。

「在宅でグロースハッカーとして働く」このスタイルが、今までの働き方の中で一番満足。結果が数値に表れること、熊本にいながら東京価格の収入を得られることも魅力的です。でも、家事の片手間でできるほど、甘くありません!

そう語るのは、企業のWebサイトの改善を行うグロースハッカー集団、ママグロースハッカーズ(MGH)に所属し、熊本で在宅ワーカーとして働く牧本玲子さん。

プログラマとして働いていたが、育児との両立ができず退職。育児に余裕がでた頃、ブログサイトを運営する会社に就職するも、しばらくして契約満了に。やりがいもあって、長く働けるスキルを身に付けたいと思い、デジタルハリウッドSTUDIO福岡(以下、デジハリ福岡)の「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」で8か月間学んだ。現在はMGHに所属し、グロースハッカーとして活躍している。グロースハッカーとして働く魅力ややりがい、子育てとの両立などを牧本玲子さんに伺いました。

中学生のお子さんを持ち熊本で在宅で働く牧本玲子さん

グロースハックとは、企業や製品、サービスなどの改善施策を短期間で行い、成長を促すこと。

ママグロースハッカーズ(MGH)とは、Web業界未経験のママをグロースハッカーに育てる講座「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」を卒業したメンバーを中心に発足したグロースハッカー集団。MGHでは、Kaizen Platformからの企業サイトのデザイン改善案件をはじめ、企業や団体からの依頼によるサイトのデザイン改善を行う。

ママ向けWebグロースハッカー養成講座とは、デジハリ福岡、リクルートジョブズ、Kaizen Platformの3社が福岡市応援のもと行う「Growth Hack for Women プロジェクト」の一環として開講した講座。学習期間は8か月。Web制作全般とグロースハックに必要な知識を学ぶ。

※養成講座やMGHに関しては、MGHプロデューサーでデジハリ福岡の高橋校長のインタビューをご覧ください。

家事の片手間でできるほど甘くないけど、やりがいがある働き方

――なぜ、グロースハッカーとして働こうと思ったのですか。

以前はプログラマをしていました。しかし、機密情報を社外に持ち出すことが難しいため在宅で仕事はできず、育児との両立に行き詰まり、家族はもちろん会社や保育園にも迷惑をかけてしまい、やむなく退職しました。

その後熊本に移り住み、子供が小学3年生になったときに少し余裕ができたのでブログサイトを運営する会社に契約社員として働き始めましたが、しばらくして契約満了となりました。次の仕事を探しているときに、「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」をたまたま見つけて、講座に通うことにしました。

――収益を得る選択肢として他にもありますが、なぜグロースハッカーの仕事を選んだのですか。

契約社員として働いているときは、AdSense(アドセンス)などのインターネット広告の運用やアクセス解析などをしていました。もともとプログラマということもあり、できればIT系の仕事に就きたいと思っていました。しかし、熊本で9時~4時といった勤務形態で働ける企業がなかなか見つかりませんでした。

クラウドソーシングなどで仕事を見つけていく方法もありましたが、多くの場合、労働に見合った対価が得られないものでした。そのため、「Web制作ができた方が仕事につながるのかな」と思い、参加型のオンライン動画学習サービスのSchoo(スクー)で勉強をしていました。Schooの授業内で、「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」を見つけて、通ってみようと思いました。

――ママ向けWebグロースハッカー養成講座では、勉強はどんな風に、どれぐらいしましたか。

講座自体は8か月間で、講義時間は265時間です。そのうち自宅でも勉強できるeラーニングでの学習時間は165時間です。残りの時間は、デジハリ福岡に通う必要があります。

私の場合、熊本に住んでいるので、高速バスで片道1時間40分ほどかけて週に1、2回通いました。講義時間の他に、課題作成の時間や勉強の時間が加わりますので、とてもハードですよね。講座費用は20万円ほどです。

子供が中学生ということもあり、育児にはそこまで手間がかかりません。ですから、子供が学校に行っている間や塾に行っている間、寝ている時間などの時間を使って勉強しましたが、かなり大変でした。家事の片手間にできるような楽なものではなかったです。

講座ではWeb制作全般を学びます。もともとプログラマだったので、Web制作のサーバーサイドはさほど苦労はしませんでしたが、PhotoshopやIllustratorを使う制作サイドは今も勉強中です。

※ママ向けWebグロースハッカー養成講座に関して知りたい場合は、MGHプロデューサーでデジハリ福岡の高橋校長のインタビューをご覧ください。

牧本玲子さん

会社に縛られない働き方、収入も満足

――今の収入や働き方に満足していますか。

今までの働き方の中で一番満足しています。もともと熊本は首都圏に比べると賃金水準が低いんです。そういった意味でもMGHの仕事は「東京価格!」です。労働に見合った収入が得られることはとても魅力的です。

――仕事はどう取っていますか。また、具体的にどんな内容ですか。

Kaizen Platformさんの案件をメインで仕事をしています。企業ホームページの申し込みページなどの1ページだけを改善する案件が大半です。申し込みボタンの位置を変更するような案件から、1ページ全体のレイアウトを全改修するものまであります。案件には、「オープン案件」と「MGHチームへのオファー」という2つ形態があります。

  • オープン案件とは、コンペ方式で参加した人がそれぞれ改善案を提出し、その中からクライアントさまが実際に使ってみたいと感じた改善案が選ばれます。
  • MGHチームへのオファーは、MGHチーム内で指名をうけて改善案を提出し、提出すれば必ず採用されます。

Kaizen Platformさんの担当者さんから改善したいページの課題や成果指標が提示され、それに対して「どうしたら改善でき、成果をあげられるか」といった観点で改善案を制作して納品します

仕事を受ける、受けないは自己申告なので、自分で調整可能です。納期も5~7日ほどあるので、切羽詰まることはありませんが、トップランクのグロースハッカーの方々が改善をやり尽くし「一体どこを改善したら数値が改善するのか……」という難題な案件もくることがあるので、そういうときは悩みますし時間がかかりますね。

牧本玲子さん

――自宅で仕事って実は大変じゃありませんか。

会社に勤めていると、仕事以外で時間が取られることもありますし、ちょっと眠いときでも頑張って机に向かっていないといけませんよね。でも自宅では、仕事以外の時間はありませんし、効率が悪いと思えば、少し仮眠や休憩を取ってからやれるので、とても効率的だと思います。

効率的という反面、追い詰められないとなかなかやる気に火が付きにくいという面もありますが(笑)。

子供が家にいない時間で仕事をしているので、だいたい午前中は10時~13時頃まで仕事をします。その後は、午後は家事や夕食の支度などをし、子供が塾へ行く時間の20時~22時頃までやっています。忙しいときは、仕事が終わらず24時を回ることもあります。

――細切れで仕事を進めるのは、大変ではありませんか。

仕事を始めてすぐの頃は、子供が帰ってきてもパソコンに向かって仕事をしていて、話かけられても「ふん、ふん」といった生返事しかしていなかったことがあったんです。そうしていると、子供が少し拗ねるというか、ちょっと親子関係がスムーズでないと感じたことがありました。

そのため、今は子供が家にいるときは、仕事はせず一緒にテレビを見たり、同じ時間を共有したりするように心がけています。子供は「手をかけるというよりも目をかける」と言いますが、本当にそうだと思います。

――ご主人やお子さんの反応はどうですか。

主人は私が「働きたいタイプ」ということを理解しているので協力的です。子供がどう思っているかは、ちょっとわからないです。もしかすると、パソコンを占有してずるいとか、ずっと家にいるのでうっとうしいと思われているかもしれません(笑)。

牧本玲子さん

消費者に近い視点を持つママだからこそできる提案をしたい

――やりがいはありますか。

家族が病気をしたり、熊本で震災があったりして、「家族のことを考えると仕事をするのは無理だ。やめよう」と思い、一度グロースハックの仕事を辞めました。でも、震災があってから半年後に熊本までMGHの仲間がお見舞いに来てくれました。

そのとき、「やっぱり仕事がしたい、この人たちと仕事がしたい」という気持ちがふつふつと湧いてきて、再開できました。これが会社に勤めていて、仕事を辞めてしまったら簡単には戻れないですよね。でも、この仕事ならば自分のライフステージに合わせて働けます

そして、難しい案件を改善し、改善後の数値が良いときは達成感を得られます。結果が数字にはっきり出るという点にも、とてもやりがいを感じます

休んでいた半年のブランクは、大きかったです。PhotoshopやIllustratorの使い方が思い出せず苦労しましたが、一緒に働く仲間たちも頑張っていると思うと、頑張れました。

同じことを目指している仲間がいることは心強いです。

――最後に、ママ向けWebグロースハッカー養成講座に応募しようとしているママたちへエールをお願いします。

Webの改善は、実際に買い物をしたときの経験や体験、Webとは全然関係ない実生活での経験が実は役立ちます

実際にHPを使うのは、Webに全然詳しくない人ばかりです。そういったユーザーの気持ちは、私たちのようなママの方が理解できるし、ユーザーに寄り添った改善案は、Webの専門家よりも私たちの方が出せるのではないかと思っています。

「すっごい経験やスキルを持っている人が専業主婦なのもったいない!」と思ったことが多々あったので、ぜひそういった方は講座に応募してもらって、MGHで一緒に働きましょう。

牧本玲子さん

――ありがとうございました。

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