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Web業界未経験のママが8か月でプロのグロースハッカーとして活躍するママグロースハッカーズとは?

在宅でできて、やりがいもあって、収入も得られる、そんな仕組みがママグロースハッカーズ(MGH)。MGHプロデューサーの高橋さんに話を聞いた。

グロースハックという言葉をご存知だろうか?

グロースハックとは、企業や製品、サービスなどの改善施策を短期間で行い、成長を促すこと。主にWebサイト関連でそうしたグロースハックをママたちが行っている「ママグロースハッカーズ(以下、MGH)」という集団がある。

Web業界未経験のママを8か月でプロのグロースハッカーに育てる講座が「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」。その講座を卒業後に所属できるのがMGHだ。

MGHの拠点は福岡。デジタルハリウッドSTUDIO福岡(以下、デジハリ福岡)、リクルートジョブズ、Kaizen Platformの3社と福岡市からの応援を受け成り立っている。

MGHのプロデューサーで、未経験のママたちをサポートするデジハリ福岡校長の高橋さんに、なぜママ限定にしたのか、講座内容などさまざまな話を聞いた。

デジタルハリウッドSTUDIO福岡の校長、MGHプロデューサーの高橋政俊さん
Web広告研究会が主催するWebグランプリで「Web人賞」を受賞したときのメダル。今から説明するママグロースハッカーズの取り組みが評価された。

未経験のママをグロースハッカーに育てる

――MGH(ママグロースハッカーズ)とはどんな集団ですか。

ママ目線でWebサイトのデザイン改善を通じて、企業の成長を企てる、ママだけのグロースハッカー集団です。Web業界未経験のママが8か月間「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」で、Webサイト作成に関する知識やグロースハックの知識を学び、講座を卒業後、そのメンバーが仕事を続けていくチームがMGHです。

MGHでは、主にKaizen Platformさんからの企業サイトのデザイン改善案件をはじめ、企業や団体からの依頼によるサイトのデザイン改善を行っています。

――ママをグロースハッカーに育てるというのはおもしろい取り組みですね。

ママたちは日々の消費活動において、Webサイトの使いづらさや不満などを感じています。そういったママたちがグロースハックすることは、企業にとってもメリットがあると考えました。

一方、ママにとっても、地方で且つ在宅にいながら、東京の有名なクライアントさんの仕事ができることは魅力的です。付加価値が高く、収益の高い仕事ができることがママに向いていると感じ、「ママをグロースハックに育てる」講座がスタートし、MGHができました。

――講座を「ママ」に絞った理由はなんですか。

2006年~2011年にかけて、デジタルハリウッド本社に勤務していたとき、Web制作をeラーニングで学ぶ講座のプランニングをしていました。eラーニングの受講生には、学ぶ意欲の高いママが多く、受講後も仕事で成功しているママが多くみられました。

また、2006年~2010年にかけて、mixiを中心としたコミュニティ「ママさんカメラ部」という活動をしていました。参加者はママ。最初は、「子供の写真をきれいに撮りたい」という目的から始まりましたが、「もっと上手に撮りたい、子供以外も上手に撮りたい」といった、前のめりに、貪欲に学ぶ姿勢を目の当たりにしていました。

そういった経験から、ママへ学びと仕事の場を提供したいと考えていました。

また、女性は結婚や出産、ご主人の転勤といったライフイベントで仕事をやめてしまうことが多いのが現状です。仕事をしたくても、9時~4時などの仕事が見つからなかったり、仕事はあるがやりがいや収入が伴わなかったりします。

そういうママたちに、在宅でできて、やりがいもあって、収入も得られる、そんな仕組みを提供したいと思いました。

高橋政俊さん

ママ向けWebグロースハッカー養成講座とは?

――未経験のママをプロに育てる「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」の内容を教えてください。

子育てママをグロースハッカーへ育成する事を目的にデジハリ福岡、株式会社リクルートジョブズ、Kaizen Platform, Inc.の3社が福岡市応援のもとおこなう「Growth Hack for Women プロジェクト」の一環として開講した講座です。

講座自体は8か月間。リクルートジョブズとデジハリからの奨学制度を受けられるので受講料は20万円ほどです。最初の6か月間はWeb制作全般を学び、残りの2か月間はグロースハックを実践してもらいます。講座は9月にスタートし、4月にカリキュラムを終え、5月に卒業です。

卒業後は、プロとしてグロースハックの仕事ができる」ことを目的とした講座なので、楽に学べるものではないです。

講座では学ぶだけでなく、課題を与えて企画や制作を行います。求人情報誌のタウンワークに掲載される企業広告を制作したりで実際に使われる広告を制作したり、制作物の発表をするためにプレゼンスキルを学んでもらったりします。

ママたちにはWeb制作全般を6か月で学んでもらいますが、デジハリ福岡の通常の講座では8か月で学ぶ内容です。それだけでもハードですよね。講義時間は全体で265時間です。そのうちeラーニングを併用した学習は165時間。少なくとも100時間は福岡校に通ってもらいます。

詳しい講座内容は次の通り。

[Web制作全般(学習期間6か月)]週に1、2回デジハリ福岡に通学し学習
  • デザインの基礎を学ぶ
    デザインやカラーのルール、レイアウトのセオリーなど細かく勉強し、PhotoshopやIllustratorを使いグラフィック制作をします。学ぶ過程で、ロゴ制作や印刷物のデザインなどを課題として制作してもらいます。課題の制作物は、企業が提供するサービスの広告で、コンペ方式で採用されるとタウンワークに広告として掲載されます。

  • Web制作に関わる言語を学ぶ
    HTML、CSS、JavaScript、jQueryなどの言語を勉強し、課題としてWebサイトを5つ作ります。実践に近い形で学んでもらうため、オリエンシート(クライアントの要望シート)を基にWebサイトの制作するものもあります。制作物の評価に加えて、プレゼンの評価もして、ママたちにフィードバックをします。

[グロースハックの実践(学習期間2か月)]

グロースハックの勉強と実践を2か月かけて行います。Kaizen Platformさんの提供するツール上で改善するので、通常の処理とは違う操作が必要です。ですから、そういったツールの使い方などを学んでもらいます。

また、マーケティングの学習やデータ分析やKPI、KGI、施策の立て方、UI、UXなどを学びます。このフェーズでKaizen Platformさんのオープン案件(コンペ案件)に参加します。採用されれば、在学中でも報酬が得られます

――誰でも参加できるんですか。

この講座に関しては定員を設けているので、事前に筆記試験や適正試験、面談を受けてもらいます。それに合格したママたちが講座を受講できます。1期生は12名、2期生は16名受講しました。3期生募集については、検討している最中です。

――卒業後は、皆さんMGHに所属するのでしょうか。

MGHに所属するかどうかは任意です。所属せず個人で活動する方もいれば、就職する方もいます。就職先を探している場合は、デジハリ福岡の就職支援が受けられます。

MGHに所属している方には、MGHへ寄せられる企業からの案件をお願いしていきます。所属しているメンバーには、ブイキューブやフレクションコンサルティングといった企業から協力を受けて、コミュニケーションツールを無償で提供しています。グループウェア「Teamon」でスケジュールやタスク管理、チャットを行ってますし、テレビ会議システム「ブイキューブ」で大人数でのミーティングもできます。

週1回は案件の有無にかかわらず、テレビ会議でチームの近状報告しています。テレビ会議は、メンバーであれば誰とでも使えるので、悩みや相談事があるときにメンバー間でも活用されています。テレビ会議をしながら、みんなでお酒片手に打ち上げをしているときもあります(笑)。

高橋政俊さん

Webのプランニングから制作までママがやることは企業にとって魅力的

――2期目を終えて、手応えはどうでしょう。

未経験から学び、卒業後すぐにプロとして仕事を受注することは、本当に大変です。しかし関係者やご家族の支えにより、全てのママたちが諦めることなく最後まで学びぬいてくれました。

そして在学中から企業のサイトでのグロースハック実績を作り、実際に収入を得るまでに成長したママも6割を超えました。これは私や講師陣の期待を大きく超える成果でした。ひとえにママたちが、寝るまも惜しんで勉強をしてきた努力の賜物です。

また、企画がスタートして2年立ちましたが、「ママがグロースハックする」ことへの期待値の高さに驚かされます。

――と言いますと?

Webのプランニングから制作まで、ターゲットユーザーでもあるママが一環して携わる」というところに魅力を感じている企業さんが多いです。特に、Webの専門部署を持たず、消費行動の決定権がママにあるような商材を扱っている企業さんからの期待は高く、福岡に限らず全国から相談がきます。

しかし、ママの学ぶ意欲が高いといえど、まだ1年ちょっとの経験しかありません。すべての案件を受けられる体力がまだないのが残念なことです。

あと、さまざまなメディアで取り上げていただいたおかげで、全国のママたちから「MGHに入りたい」や「自分が住んでいる地域で講座を受講できないか」という声が直接届くようになりました。

ほかの地域への展開は今後の課題

――では、ほかの地域への展開を考えているのですか。

はい、考えています。ですが、優先事項は、1期生や2期生が実績を作ることです。実績を積みMGHの体力をつけた後、彼女たちが今度は指導者になってくれれば、ほかの地域への展開ができると思います。

実際に岩手県沿岸部で津波被害をうけられたママに対して協力したいという想いから、岩手県大槌町の一般社団法人KAI OTSUCHIとの情報交換もおこなっていますが、全国展開までは道のりが長いです。やはり、人ばかり増えても仕事の質が伴わなければなりませんので。

ママグロースハッカーズのママたちによる、ママたちのためのグロースハッカー養成講座。「ママグロースハッカーズ・アカデミー」の構想だけはあります(笑)。ぜひ実現したいですね。

高橋政俊さん

――それ、実現できるといいですね! ありがとうございました。

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