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成功体験づくりには3つフェーズが必要だった!? OisixがMA×LINEで成果を出すまでにぶつかった壁

オムニチャネルの先駆者とされるオイシックスも、MA施策の導入時にはいくつもの壁があったんだとか。実際に陣頭指揮を執られたマーケターの方にお話を伺ってきました。

はじめまして。野原です。

MAの成功の話はよく聞くんですが、導入したもののうまく動いていない……なんて企業もよく聞きますよね。

ただ、そういった話はなかなか表に出てこないのも正直なところ。

今回はLINEを活用したオムニチャネルの先駆者、と呼び声高い新鮮な有機野菜の宅配サービスを運営するオイシックスで、実際にMAやLINEビジネスコネクトの導入の陣頭指揮を取られたマーケターの方にお話を伺ってきました。

今は成功しているように見えるOisixのMA施策も、導入時にはいくつもの壁があったんだとか。つつみ隠さず話していただきました。

“しくじり体験”が生んだOisixのLINE導入秘話

―OisixはLINEを活用したOne to Oneマーケティングを成功している企業と聞いていますが、実際のところどうなんですか?

―米島
今だからこそ成功していると言えますが、実際にLINEを活用するMAの運用体制が整うまでには、時間を要しました。

私は、それを3つのフェーズとして振り返りをしています。その話をさせていただきますね。

柔らかな物腰で語り始めて下さった方こそ、オイシックスでLINE導入の全面指揮に当たられたEC事業本部 戦略推進室 米島さん。

その3つのフェーズとはこんな感じです。

  • 失敗期
  • リカバリー期
  • LINE導入期

ひとつずつでも気になりますが……、それぞれ順を追って話していただけますか?

―米島
3つのフェーズをお話する前に、「何故、弊社がMAツールを導入するに至ったのか?」について簡単に触れておきます。

最も大きな理由として、ターゲットユーザーの明確なインサイトの変化にもっとスピードを上げて対応をしたかったためです。

元来、Oisixのユーザーの特徴として「安心・安全」をキーワードにした食品・食材を購入したいという明確なインサイトがあったのだとか。

ただ昨今、サービスの拡大と共に徐々に「珍しい食材を食べたい」「忙しいライフスタイルに即した時短料理を食べたい」という現代の生活者らしい新しいニーズを抱えたユーザーも顧客層に現れるように。

そこで、手動でお客様に合わせたメールを配信していたそうなのですが、その数も膨大になり、工数が増大。じゃあ自動化しよう!ということでいろいろ試してみようにもセグメントを細かく切っていたので、開発コストもバカにならない……。

という状況になってしまったんだとか。

ということで、そこを自動化する仕組みとしてエクスペリアンのMAツール、CCMPの導入を決意。

今までオイシックスが行ってきた、One to Oneマーケティングをより体現するためのMAってことですね。なるほどです。

現場へのMA展開、失敗の落とし穴は「現場の納得度」だった

―ちなみに導入のときに、うまく上長承認がとれない……なんて話もよく聞くんですが、オイシックスの場合どうだったんですか?

―米島
比較的導入はスムーズに決まりました。

いまの状況が打開できることはみんなに伝わっていたためと思います。あとは会社としてそういうツールに投資して問題を解決してきた文化もありますね。

そ、そうですか……。

常にユーザーファーストで、スピーディーにサービスを改善されるオイシックスさんらしい競争力の源泉が伺えるエピソードに水を差すようで恐縮ですが、なんか、とんとん拍子に導入が進んでいて、問題が起きているようにあまり見えないと言いますか・・・本当に「失敗期」があったのかなぁなんて思ったり。

―米島
初期リリース後、なかなか拡大が進まなかったことが生まれました。

失敗期のフェーズでは、ツールを増やしての混乱と、業務の統一ができませんでした。

開発現場では学習コストを掛けてまで新しいツールを導入するメリットを感じてもらえなかったんですね。

オイシックスがMAを導入したときには、それまで社内で内製化していた業務と並行して新しく開発チームをアサインしたそうです。

結果、社内に全く同じ機能を担当する2つの開発チームが存在することになってしまい、業務の改善が図られるどころか、かえって二重の無駄を生んでしまうことになってしまったんだそう。

やっぱり現場に納得感が生まれないと、新しい変化が起こりにくいのはまさにイノベーションのジレンマですよねぇ……。

MAツール利用が前提であるLINE活用プロジェクト

―そういった状況から、どうやって「リカバリー期」に進まれたんでしょう?

―米島
2016年に全社的にLINE活用を推進する意思決定をしたんです。ユーザーの生活に一番密着しているツールですからね。
LINEを利用してコミュニケーションを、もっとも簡単にできる実現できるのはMAとし、開発をスタートできました。開発現場でも、新しいツールを使う代わりに、外部の知識とサポートを受けられるメリットを強調しました。

MA以外にスムーズなスタートの代替手段はないぞ、という意思表示ですね。

そこでうまくいき、MAの存在価値が見なおされ、本来したかった案件などに拡張利用されてきています。

新規に外部チャネルを導入するという敷居の低いプロジェクトに自分のやりたいことを潜り込ませるという“大人な方法”でツール導入を推進するのは、他社のマーケターが自分のやりたいことを実現する手段として、教科書には載っていない仕事力。

さてさて、気になるのはLINEとMAとの接続による成果のところ。

―米島
数値の部分は言えないのですが、かなり大きな効果がありますね。

LINEを活用するメリットは、開封率の高さリアルタイム性の2点です。

消費者と企業の関係性は、企業からの一方的なコミュニケーションスタイルから、消費者を起点にしたコミュニケーションスタイルへと変化しています。
MAを活用することで、よりお客様目線に立ったコミュニケーションを図ることができます。なのでMAとの相性はいいですよね。

One to Oneマーケティングのときに考えるべきは、

  • 誰にどういった情報を届けるか
  • どうやって(どのチャネルで)届けるか

という部分なのかもしれないですよね。前者はMA、後者がLINEで、ということでこの連携は鬼に金棒状態とも言えます。

うーん、LINEでパーソナライズされたコンテンツが届いたら開いちゃうもんなあ・・・。

MAは働き方も変えるツール

いかがでしたでしょうか?

今回の取材を通して僕は

1)「先行者としてのリスクとリターン」 – 常にユーザーの課題を解決するためには先行者でなければならないし、実際に成功すればその先行者利益も享受できる。しかしその反面、前例が無いため予見できない課題が噴出すること

2) 「組織力学」 – 今回のLINE導入プロジェクトのような成功体験の無い新規プロジェクトの場合、新しいものに対する現場の抵抗感の緩和や、周囲を説得し味方につけることには時間が掛かり、スピード感が落ちてしまう「イノベーションのジレンマ」に陥ったこと

3) 「裁量権が当事者意識を生み、主体性を発揮させる」 – 人の行動科学

を学びました。

MAツールはデータだけでなく、人や組織も変えていく、というのはMAツール活用メリットの新しい発見だったのではないでしょうか?

一人でも多くの方に読んで頂ければそれに勝る喜びはありません。

では、また、近いうちに!

野原 千聡 by 野原 千聡
アパレルECのプレス職からIT業界へキャリアチェンジした経歴を持つ異色のライター。スマートフォンアプリのディレクションやマーケティングを担当する傍ら、2017年よりBITA デジマラボへライターとして参画。MAをはじめとするマーケティング関連の自動化技術と現場ノウハウをメインで扱う。 現在本業では株式会社アカツキのマーケティングチームに所属。

「BITA デジマラボ」掲載のオリジナル版はこちら成功体験づくりには3つフェーズが必要だった!? OisixがMA×LINEで成果を出すまでにぶつかった壁

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