電子メールは消える。新人Web担の“連絡”心得
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の450
文字通り「消える」
新年度を迎え、この4月から「Web担当者」になったばかりの読者もいることでしょう。小欄はWeb担当者に「活」をいれる高尚なコラムではなく、現場で見つけ、身につけた心得を紹介しております。数あるWeb系のノウハウのなかで、もっとも現場で役立つ心得と自負しております。当社比ですが。
新年度の一発目の心得は「電子メールは時々消える」こと。
電子メールは、電気信号に変換された情報がネットワーク経由で相手のメールボックスに届くものです。ネットワーク間には、宅配便における「受領証」のような仕組みがあり、何らかの事情でメールが届かない場合は、不着を知らせるメッセージが送り主に返ってきます。
だから、「不着メールが届かなければ、メールは届いたはずだ」と考えるところですが、それでも届かないことは、ビジネスの現場ではよくあること。文字通りメールが「消える」のです。
謎である理由
消えたメールの行方はどこでしょうか。サーバーやセキュリティソフトの「迷惑メールフィルタ」ではじかれているケースや、メーラー(メールの送受信ソフト)の振り分け設定で、普段は使用しないフォルダに移されて見落とした事例は「消えて」いません。捜索すれば発掘できます。しかし、完全にメールが消えてしまうことがあるのです。
私のところでも毎年、数件は発生していますが、結論を述べれば、消える理由は謎です。なぜなら、消える理由が特定されていれば、セキュリティソフトなりメーラーなりが「対策」をとっているからです。
もっとも肝心な心得
「消えたメール」は「うっかり」と「勘違い」でしか説明できません。人間の「うっかり」の前には、どんなセキュリティソフトも役立たず。なお、これはWeb担当者なら、肝に銘じておかなければならない心得です。
会社の規模に限らず、ビジネス用のメールアカウントを持っていれば、スパムやセールスのメールが、毎日山のように届きます。その整理作業で、必要なメールを消してしまうことはよくあることです。メールを削除したと同時に、サーバー側のデータを削除し、すぐにゴミ箱も空にする設定にしていると、その後に検索をかけても探し出すことは不可能です。
存在していないメール
メールを削除した方が悪いとは、ビジネスシーンでは通用しません。相手に要件が伝わって、はじめて連絡(伝達)の意味を成すからです。そしてメールの「着信確認」の責任は、発信者側にあります。なぜならメールを受け取った自覚のない受信者にとって、そもそもメールは存在しておらず、存在を確認する理由がないからです。
連絡頻度と情報の重要性、両者の関係性などで異なりますが、返信が無ければ翌日以降に再びメールし、それも音信不通なら、迷わず「電話」をチョイスし、着信を確認します。
電話は良くも悪くも相手を「捕まえる」ことができる情報通信ツールです。確認のメールを翌日以降としたのは、当日中に回答が欲しいときの連絡手段として電子メールは不向きだからです。
電子メールはそれぞれの都合良い時間に対応できる連絡手段であり、その都合の良い時間は必ずしもこちらの都合に合致するとは限りません。緊急連絡でメールを使う場合、件名に「至急」や「要確認」などと記す方法もありますが、特有のタイムラグは埋めがたく推奨はできません。
続、LINEの可否
だったらLINEでよくない?
いまどきの新卒Web担当者なら「LINEを使え」と思うでしょうか。読まれたかどうかは既読機能で確認できますし、いまどきの若者にとってLINEはライフラインです。しかし、社会における若者比率は、いつも少数派です。これから超高齢化社会を迎える日本では、現役ビジネスマンの多くは30代以上で、20代は少数派のマイノリティ。ルールは多数派を基準に整備されます。だから「LINE推し」は時期尚早です。
もちろん前々回、指摘したように、社内のルールとして定め、取引先と日常的に利用しているなど、LINE使用の合意形成ができているならこの限りではありません。しかし、ビジネスシーンではいまだにメールが主流です。
もう1つのメールが消える理由の「勘違い」とは、「送ったつもり」「返信したつもり」です。こちらは「うっかり」よりも注意すべきこと。なぜなら、相手は自分に非がないと思い込んでいるからです。明らかに勘違いであっても犯人捜しは厳禁、どんな結末でも感情的な「しこり」が残るため、適宜の「着信確認」でフォローします。
なお、ビジネスシーンで、想像以上に活躍する連絡ツールは「FAX」です。
もどかしい思い
文章で伝えきれない細かなニュアンスを「手描き(手書き)」で伝えることができますし、なによりFAXは「紙」という現物が残るので、何度もメールを消してしまうイリュージョニスト(手品師)相手には特に有効です。私の取引先にはイリュージョニストが多く、彼らにはメールの内容をそのままFAXしています。
さらに情報伝達という視点では「宅配便」を忘れてはなりません。パンフレットやカタログ、冊子などの伝達にメールは不向きで、十数ページを越えるFAXは「いやがらせ」に近づき、LINEは論外です。そこで活躍するのが「宅配便」です。日本全国どこでも、概ね翌日には相手先に届きます。薄手の資料なら「郵送(定形郵便)」のほうが安上がりですが、残念ながらこれもときどき「消える」ことがあります。
メール便も注意が必要です。実際、自動車で30分の距離にある取引先に参考資料をメール便で送付したところ、4日目になってまったく知らない配送センターで発見されたことがあります。必ず「荷物番号(追跡番号)」のある宅配サービスを利用し、配達状況を確認してください。緊急ならバイク便を使うのもいいでしょう。
Webはツールに過ぎず、メールもまたしかりです。これも「Web担当者」が忘れてはならない心得です。
今回のポイント
着信確認は発信者の責任
Webは結果のための手段に過ぎない
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