Web担当者ってやること多過ぎない? サイト運営をスムーズに進める6つのポイント
- Webサイト運営の役割って明確に決まっている?
- Webサイトの目的と目標は何?
- Webサイトの現状把握できている?
- 目標が達成できる指標をデータ化している?
- 施策のリストアップと優先順位付けできている?
- 施策の設計図とメッセージはドキュメント化されている?
※チェックリストの項目をクリックすると、その解説に飛びます。
やることがたくさんあると何から手をつけていいかわからなくなりますよね。まずは、上記のリストアップした6つのチェックポイントで、自分ができていること、できていないことをチェックしてみよう。また、記事末には、チェックリストをまとめた「Web担当者の心得」を掲載していますので、困ったとき、行き詰まったときのガイドブックとして使ってください。
6つのチェックポイントで「ヒト・モノ・カネ」の投資を獲得できるWeb担当者になろう
本連載では、運営しているWebサイトの現状を理解して、戦略と推進する組織を組み立てる「戦略編」と、さまざまなオンライン集客の手法と特性を理解して戦術を考え、具体的な目標と結果の検証をもって実践に挑む「プランニング編」の2回に分け、Web担当者として飛躍するための思考について紹介します。
Check Point 1
Webサイト運営の役割って明確に決まっている?
Webサイトの運営には、「ビジネス上の役割・目的・目標」がつきものです。インターネット上であなたが出会う通販サイト、見込み顧客を獲得するためのサイト、顧客をフォローするためのサイトなど、どんなビジネスであっても、Webサイトには役割に応じた目的があるはずです。
その目的に沿って運営組織内で事業方針が示され、その方針にしたがって次のようなことが決まっているのが理想的といえるでしょう。
- Webサイト運営のシステムやしくみ
- 組織の人員構成や運営方針の設計
- 予算と収益の計画
- マーケティング施策(テレビCMや紙面広告、オンライン広告など)
言い方をかえれば、Webサイトを運営する目的や目標は、事業方針として必然的に「組織の上から落ちてくるもの」です(そうでない場合もありますが)。
通販サイトなどのWebサイト単体で「収益の確保」ができる場合であれば、上記のようなしくみがしっかりと決まっているかもしれません。しかし、投資効果や人件費、サイトブランドの浸透までの期間と広告コストを考えると、サービス開始初年度や短期間で収益の確保を、Webサイトだけで簡単に実現するのは難しいでしょう。
長期的に収益性をねらえるだけの組織体制つくりと、その予算の確保、戦略を打ち出せるような事業部は限られてきます。むしろ、次のような事業における商流の1チャネル、もしくはサポートツールとして運営されているWebサイトが大半でしょう。自分たちが運営しているWebサイトがビジネスにおいてどんな役割を果たすべきなのかを明確にしておくべきです。
- 自社紹介とお問い合わせ用のホームページ
- 自社リアル店舗の販売促進や販売代替手段
- 製造業の直販窓口
- サービス事例紹介の営業支援ツールなど
Check Point 2
Webサイトの目的と目標は何?
では、Webサイトが自社商流のネット部門、事業サポートという役割の場合、Web担当者はどのような目的を持って運営しているのでしょうか?
自分から名乗りをあげてWeb担当者になった人、あるいは抜てきされた人、言い方は悪いけれど、本意であれ不本意であれ企業のWeb担当者になったからには、Webサイトを運営していく何かしら目的があるはずです。
- ネット部門だけで担保する利益が目的?
- 資料請求などのお問い合わせ件数を獲得することが目的?
- コーポレートサイトのブランド認知を推進することが目的?
- メールアドレスなどの顧客情報を獲得することが目的?
- 採用することが目的?
- 今ある目的はそもそも正しい設計?
- それら目的を達成できる目標ってある?
目的が単に「運営すること」という作業をこなすことになっているようであれば、大問題です。あなたが行ったことが事業やユーザー、誰も恵まれず、そしてあなた自身も報われない意味のない作業になってしまいます。Webサイトはオンライン上での「企業ブランディング」という重責も担っています。Webサイトのブランドに命を吹き込むのは、自社Webサイトの目的と目標をもったWeb担当者自身なのです。
Check Point 3
Webサイトの現状把握できている?
そもそも、Web担当者が「目的・目標・達成の証明」をもって、Webサイトの運営をしていかなければ、あなたが要望する運営に必要な投資、「ヒト・モノ・カネ」を獲得することができません。
お金がないからWeb集客ができない! ではないです。たとえ競合に大きく引き離されていたとしても、自社のWebサイトにユーザーが訪問し、サービスを利用するからには、ユーザーにとって何かしらの便利だと感じてもらえた点があるはずです。その便利だと感じてもらえた点は、どんなところなのかを考えてみましょう。
- 自社の競合に対して差別化を打ち出せた点はどこか?
- リアル店舗にはないユーザー層を獲得した点はどこか?
- どこの、誰に、何が、どうなって、どういう結果(または成果)に至ったのか?
オンライン集客で、獲得できている事業への貢献と獲得できていない要素を大小問わず、それらを自社サイトの現状がわかる数値として可視化し、決裁者に理解してもらいましょう。そして、行うべき投資の可能性と、そのトライアル施策に対する企業側の理解を勝ち取るのが、あなたの望む「こうやりたい」Webサイト運営に近づく方法です。
すると、市場における自社Webサイトの役割設定は、Web担当者のあなた自身で創ることができますし、運営方針をきちんと設計して周囲の動機づけを行えば、人も動くし組織も動くのです。
とはいえ、自社の事業やWebサイトが「市場のなかで自社サイトは上位です」といえるWeb担当者は、業界全体から見ればほんの一握りのはずです。
通販サイトであれば、誰もが想像する巨人が頂点に君臨していますし、転職情報や不動産情報、グルメ店舗情報サイトといった出店・出品型の情報メディアでもトップブランドが君臨しています。
それら市場のなかで、自社サービスの窓口としてWebサイトを運営する場合、ニーズを持つユーザーとの接点を確保するのは非常に難しいのが現状です。自社サービスに関連したキーワード検索結果の表示順位をみても、SEO施策の歴史を重ねた業界のトップブランドが支配し、新規参入の場合はオンライン広告での戦いが主な集客施策になります。
その広告運用も、トップブランドの予算や運用設計に後発が追い付くには時間がかかります。検索市場においても広告運用においても、トップブランドには、トップたる理由があるのです。
こんな状況のなかで、決済者や経営層からは、
サイトに人はどれ位来ているのか、人を集めろ!
どれだけの工数と予算を使っているのか、もっと売り上げを上げろ!
と言われてしまうと、
じゃ、何をやればいいんだ!
となり、Web担当者自身のモチベーション維持にも関わってきます。そうならないように、まずは上記図のように自社サイトや事業の位置付けを把握して、自分なりに伝えやすい報告書にまとめておくことです。
場合によっては多少の利用コストは発生しますが、キーワードアドバイスツールや市場調査会社のデータを参考に、Web解析による自社アクセス数値を掛け合わせると、ある程度自社サイトの位置付けを把握できます。たとえば、次のようなことを調べて、比較してみるといいでしょう。
- 自社サービスに関連するキーワードの検索規模
- 競合ブランドを指名して検索する規模
- 自社ブランドを指名して検索する規模
こういった比較を行うと、競合に負けている部分や差分ばかりを注目してしまいがちですが、どんなキーワードで自社のサイトは集客ができているのか、できていないのかといった強みと弱みを把握できるメリットがあります。
獲得できている集客の良いポイントを直感的に理解できるドキュメントは、担当者自身が自社サイト戦略を把握しやすくなるのと同時に、課題に対する組織や決済者の理解を促進させ、市場における自社サイトの位置付けに対して、共通認識を持ってもらうためにも大切なことです。
このような位置づけを、理解できる調査ドキュメントを毎月定期的に更新し、組織内で発信を繰り返すことがとても重要な作業となります。自社サイトの客観的な市場における状況の変化を根気よくマメに報告・共有して、集客の課題や可能性に対する組織の共通認識をなんとしてでもつくりましょう。
共通認識さえ持つことができれば、個々の勝手な主張ではなく、共通目的をもった施策やアクションプランが、組織から勝手に溢れ出てくるようになるはずです。
Check Point 4
目標が達成できる指標をデータ化している?
現状把握のための可視化と共通認識の浸透に、Web解析によるアクセス数値の検証は欠かせません。
しかし、訪問回数やユニークユーザー数(訪問者数)、そして成果件数の絶対的な数値の大きさばかりに気を取られてはいけません。
もちろん、訪問者数と成果件数を増やすために集客戦略の設計を行いますが、繰り返し述べているように、市場における競合との戦いは厳しいです。単純にトラフィック量や成果件数だけを追い求めると、投資に対して思ったほど成長せず、予算に対する決済者の判断も厳しくなってくるでしょう。
そこで次のような指標を数値化すると良いでしょう(上図も参照)。
- 訪問しているユーザーの行動と心理を読み解くことができる指標
- 流入している検索キーワード
- その入口となっているページ
- 単純な平均ページビュー数の変化や滞在時間の変化
- 成果獲得件数とそれら指標の相関関係
こういった指標があると改善を図る仮説を見出すことができます。たとえば、次のようなことです。
ある広告からの流入経路は平均ページビュー数が高く滞在時間も長めだが、成果効率(CVR)が他の経路に比べ良くない場合
→ 決済を阻害する回遊動線上のコンテンツやユーザービリティの改善で効率が良くなる可能性が高い。再訪問の回数とサービスの利用に至るまでの期間の相関関係がある場合
→ 市場における自社サイトの成長戦略と深い関わりがある。このあたりは後編の「戦術編」で詳しく述べる予定。
Web解析で重要なことは、検索キーワード、広告、入口ページ回遊、対策すべきユーザー像をグルーピングし、その各ユーザーグループがどのように再訪問してどのように回遊するのかを把握し、施策の明確化と戦略対象の優先順位付けを行うことです。
特に、コンテンツ制作やサイト内部施策の予算は、決済者から大抵厳しい目で見られるものです。
論拠をもって挑まないと、施策の目的や意味が散漫になって、投資対効果の分析と証明に手間を取られることがあります。また運営組織内の「あれやりたい、これやりたい」の整理整頓においても、優先順位付けに不平不満が噴出するでしょう。
先程述べた課題の共通認識とともに、Web解析データでユーザーの行動を明確に数値化して議論すれば、組織内の納得も得やすく、施策の実装もスムーズに運びます。
決済者、組織内メンバー、各方面の思想と目的に合わせて、Web解析の数値データを用いたある種「演出」に近い数値報告体系をつくることは、Web担当者にとって大切なことだと筆者は考えています。
Check Point 5
施策のリストアップと優先順位付けできている?
自社サイトの現状の可視化と、共通認識の確認ができれば次に施策の棚卸しです。
普段から運営メンバーがやりたいと思っている施策を、集客課題と照らしあわせて優先順位を付けてみるとよいでしょう。自分たちの考えていることを俯瞰してみると、次のような偏った内容になっていることも多いことに気付くかもしれません。
- 限られたユーザー像のみを対象としている
- 認知を得る部分ばかりを対象としている
戦略と施策を俯瞰して眺める組織的なブレスト会議を開催すれば、これまで偏っていたメンバーの施策思考がより広く考えられるように進化し、自分がやるべきこと、取り組むべき目標を自発的に発信するようになります。
その発信を良いアイデアと受け止め、皆で吟味し、自身のアイデアが取り上げられる名誉もまた、メンバーのモチベーションを高める材料となります。このあたりも、後編で詳しく述べる予定です。
Check Point 6
施策の設計図とメッセージはドキュメント化されている?
施策が出そろえばあとはプランの実行ですが、その際は施策の意味付けと目的を明確に宣言して、それをドキュメント化します。
これは決済者に施策の意味や目的をはっきりと理解してもらうことで、予算承認をスムーズにさせるためです。
それと同時に社内メンバーに指針を示して、ブレさせないためでもありますし、また、外注に判断する基準を明確に示すためでもあります。こうすることで、お互いに信頼しながら作業をすすめられ、施策に関わる関係者のモチベーションとスピードアップにもつながるからです。
判断の軸が定まらない施策の場合、判断がブレが原因で工数が増えたり、「やってもうまくいかない」というネガティブな取り組み姿勢を作ってしまう恐れがあります。
自分たちが行う施策に明確なメッセージを持たせ、基準と目的が明確になれば、決済者も実行メンバーも決断の重責が分散され、施策がスムーズに進行します。Web担当者は現状を分析した論拠を元に、説得力をもって関係者を動かす場作りをする必要もあります。
Web担当者が行うべき成長を遂げるための動き
ここまで「戦略編」の6つのチェックポイントを見てきました。集客施策の設計図もアクションプランもWeb担当者一人でできることではありません。いくら自分が良いと思うプランニングができても、決済者や施策実行を支援してくれる社内外の関係者に「動いて」もらわないといけません。
そのためにはWeb担当者自身がプロデューサーとしての意識を持って「運営現場を演出」していく必要があります。
面倒、と思われるかもしれません。しかしさまざまな人たちとの関わる以上、自社サイトの役割や、競合、市場との位置関係を把握し、共通の課題認識と明確な意思を持たないと、施策が空中分解してしまいます。
人は明確な指針を出してくれる存在によりどころを求めるものです。Webサイトの施策も設計図を描ける人に判断を依存し、思い通りに動いてくれるときもあります。
失敗したときのリスクを考えるかもしれませんが、そのときは徹底的にWeb解析を行って、施策から知見を見出し内容を共有することです。その上で何をもって失敗で、どんな良いところがあったのかをしっかりと組織に浸透させましょう。
もちろん、施策が成功して組織全体で成功体験をわかち合い、自分たちで改善を積極的に行う土壌が生まれていくよう、個々のメンバーにWeb解析や効果検証の楽しさと知見を体感してもらうことが最良です。
さらに、成果獲得件数や絶対数の増減だけではない結果、たとえば、トラフィック増と成果の獲得にはつながらなかったとしても、次のようなメンバーが手がけた施策で得られた新しい知見のフィードバックを運用ルール化し、改善に寄与したメンバーを公に賞賛して名誉を感じてもらえる場をつくっておこう。
- 自社ブランド指名検索の増加
- 成果獲得に至る再訪問ユーザーの増加
- 新規ユーザーのCVR向上など
最終的に「どうなりたいか?」Webサイト運営の意思統一をつくるために
このように、Web担当者が取り組むべき内容を述べましたが、まとめると
Webサイトは何のためになぜある? 達成したい目的と目標を自らつくる
Web解析やデータの論拠を持って自社サイトの課題と良いところを可視化する
サイトの運営目的と課題を共通の理解として組織に浸透させる
共通概念を元に、組織を巻き込んで施策のアイデア出しの場をつくる
組織と決済者が納得する形で、施策のあるべき軸を定める
運営関係者が知見を得る成長と、成功体験を実感できるような場をつくる
これらを仕組みとして明文化すれば、競合サイトとの戦いだけではなく、市場における自社サイトのあり方を思考する習慣がつき、改善すべき施策が順調に積み上がって、ユーザー数が拡大成長を始めます。
競合との絶対的な差ではなくても、何をもって差別化できているのかが明確化できます。改善が進めば、自社サイトの集客はどんどん成長します。次の施策につながる示唆と、Web担当者の明確な意思と動きで組織の信頼を高めれば、次期予算と体制の厚みを増す決済ができるはずです。
次回の後編では、より具体的な集客の戦術について考える「プランニング編」をお届けします。後編は11月上旬公開予定。
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