企業ホームページ運営の心得

営業とは確率。成功確率を高める微力の積算と無料相談コンテンツ

Webの営業コンテンツの1つ、無料相談の申し込みを増やす微力を紹介
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の306

営業成功の方程式

営業は確率です。単純化すれば、ダイレクトメールを1,000通発送して、どれだけのリアクションを得ることができるのかに尽きます。ダイレクトメールでいえば、

  • リアクションさせるためのオファーが十分だったか
  • 客の琴線に触れる内容になっていたのか
  • 開封されるような封筒を用意していたのか
  • そもそも発送先としてピックアップしたリスト(発送名簿)は正しかったのか

といった、1つひとつのプロセスの検証と対策の繰り返しです。

超アナログの飛び込み営業も、デジタル処理のWebも同じです。そこに「裏技」はありません。つまり、成功確率を高めるには、努力の積み重ねしかなく、その1つひとつは「微力」です。しかし、積み重ねた微力が結果を裏切ることはありません

今回は「無料相談」の微力を2つ紹介します。

商品を絞り込むという方法

ネット上での説明が難しい商品やサービスがあります。客の置かれた状況で、提供すべき商品やサービスが変わるもので、具体的には肌質や体質でプランが変わるエステ、資産状況で異なる不動産、リスク理解度の差がトラブルを生む金融商品などがあります。

説明が困難とはいえ、Webは重要な営業窓口です。そこで、たとえばエステ業界では「脱毛」といった、個人差に左右されにくいサービスを前面に出し来店を促します。確率を高めるための有力な方法で、できればこの方法をチョイスすべきだと私は考えます。しかし、すべての企業で通じるかは微妙です。すべての業界とせず、企業としたのは主因が社内にあることが多いからです。代表的なものは、

我が社の商品(サービス)はこれだけではない

という社内からの抵抗です。あくまで「客寄せパンダ」だと説明しても、理解しない経営幹部を何人も知っています。そんなときの妥協案としてあがってくるのが「無料相談」です。

時間の限定という提案

無料相談なら、会社からの持ち出しはなく、従来の社のイメージの枠内のまま来社させることができれば、ビジネスチャンスが広がる……と夢を見ます。しかし、すでに無料相談に取り組んでいる企業からはこんな声が聞こえてきます。

こねーよ(来ないよ)

その通り、無料相談を開始したと告知するだけで相談者が列をなすことはありません。この方法は微力です。無力ではありませんが微力です。そこで微力を重ねます

無料相談の曜日と時間は限定します。「毎週水曜日。午前10時と午後2時からの2回」といったように日時を限定するのです。企業の側に立てば無料相談とは、お客がわざわざ来店してくれて生まれるビジネスチャンスですから、24時間365日受け付けたいところです。それをあえて限定することが、成功確率を高める微力なのです。

お客はフリーを嫌う

いつでもご来社ください

こう呼びかけられたとき、お客には「いつ」を選べば損をしないかという、強い負荷がかかります。週明けの月曜日はバタバタして忙しいのではないか、月末はノルマ達成のために売り込まれるのではないか、夕方なら残業を嫌っておざなりにされるのではないか、などなど。お客は自分自身にとってのベストチョイスを求める脳内労働を余儀なくされます。その結果、一定割合が、思考にくたびれ「また今度」と先送りします。

曜日や時間を限定してあげると「行けるか、行けないか」の二者択一です。自分のスケジュールを考えるだけで、頭を使わなくて済みます。実は「タイムセール」や「期間限定」も同じ心理メカニズムです。購入決定プロセスのなかから、「時間(タイミング)」という選択肢を奪ってしまう(限定する)ことで、買うか買わないかという二者択一に追い込んでいます。

お客というのは企業が思うほど自由な選択肢を好まないのです。

エゴモードの客対応

指定日時の訪問が困難なというお客のために、別枠を用意するのもよいでしょう。ただし、曜日と時間の限定は、「良い客」と出会える確率を上げる微力でもあります。

象徴的なエピソードを紹介します。クライアントに求められ、ある職人を紹介しました。しばらくすると紹介した職人が泣きついてきます。とにかくすぐに作業にかかってくれというリクエストが多く、他の仕事に支障をきたすというのです。

悪気のないせっかち

クライアントをひと言で形容するとこうです。思い立った瞬間に解決したがるタイプで、すぐに応えてくれと呼びつけるのです。そこで私は職人にこうアドバイスします。

無理ですと断りなさい。そして対応(作業)が可能な時間を提示しなさい

職人はそのクライアントの仕事だけをしているわけではありません。まずは列に並びなさいということです。常識に属することですが、ビジネスシーンでは、「横はいり」を希望する人を見るのは珍しくありません。そこで、こちらから条件を提示することで、相手の常識を測るのです。その後は、相談をもらった職人の案件はすぐに状況が改善し、円滑に取引を継続しています。

喧噪の演出もお忘れなく

「いつでも」で集めた客は自分の都合を押しつけ、「条件を提示」したうえで応募してくれたお客様は、互いの利益に理解を示す傾向があります。これは新規でも継続取引でも同じです。もちろん、「水漏れ」など「いつでも」のサービスを期待した業種についてはこの限りではありません。

最後に、さらなる微力で締めくくります。電話受付でもフォームからの申し込みでも、必ずこの一文を入れます。

ご希望の日時が満席の場合、お断りする場合がございます。あらかじめご了承ください

申し込みフォームがある場合は「お申し込みのタイミングにより」と付け加えてもOKです。要するにこうです。

早く申し込まないと相談できなくなるかもよ

仮にガラガラで1人の相談者がいなくても。なぜなら、客は繁盛店に集まるからです。ガラガラの店に相談する客は居ません。「客は客を呼ぶ」というビジネス格言もあり、さらに踏み込み「希少性」を煽る方法もありますが、ひとまずはここまで。

すべては微力に過ぎませんが、営業の成果は積み重ねに支えられます。そしてこの積み重ねが裏切ることはありません

今回のポイント

曜日時間の制限が微力ながら基本

忙しさの演出は微力ながらもっと基本

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