WordCamp Tokyo 2012開催、のべ1100人が来場 数年でWeb全体の2割がWordPressに?
オープンソースのCMSツール「WordPress」に関するカンファレンスイベント「WordCamp Tokyo 2012」が東京・蒲田の大田区産業プラザPiOで9月15日に開催された。東京では4度目の開催となる今回はコンセプトを一新、「文化祭」をテーマにしたイベントとなり、当日はのべ1,100人が来場した。
WordCampは、WordPressをテーマとして世界中で開催されるカンファレンスイベント。WordPress創始者の1人であるマット・マレンウェッグ氏が2006年に開催したのが第1回で、これまで100回以上のWordCampが世界各地で開催されてきた。
WordCampの特徴は、それぞれの地域で主催者が自由に開催できること。「WordCamp」の名称を使うにあたっての申請や運営に際しての諸条件などはあるものの、開催するための資格は必要なく、世界各地のWordPressコミュニティを形成する人々がそれぞれのWordCampを主催できるという、非常に開かれたイベントとなっている。
日本では2008年に国内初めてのWordCampが開催され、その後も地域を変えてこれまでに9回のWordCampが開催されてきた。東京での開催はもっとも多く、国内第1回の「WordCamp Tokyo 2008」と第2回の「WordCamp Tokyo 2009」、そして2年ぶりの開催となった「WordCamp Tokyo 2011」に続き、今回が4回目の開催となる。
参加者の交流を中心とした構成で、PHPカンファレンスと共催
今回のWordCamp Tokyo 2012は、これまで国内で行われてきたWordCampと比べて2つの大きな特色があった。その1つが、日本最大級のPHP関連イベント「PHPカンファレンス2012」との共催だ。当日は大田区産業プラザPiOの大展示ホールがWordCampとPHPカンファレンスで共有され、それぞれの会場を自由に行き来する構成となっており、来場者は2つのイベントを自由に体験できた。
WordPressがPHPベースということもあって相性はよい2つのイベントだが、開発者中心のPHPカンファレンスに対し、WebデザイナーやWebディレクター、ユーザーなどの参加層も多いWordCampとの共催は、互いに新しい利用層や価値を見いだすイベントとなっていたようだ。
もう1つの特徴が、これまでスピーカーによる講演が中心だったWordCamp Tokyoのコンセプトを一新、参加者の交流を中心とした構成としたこと。会場の中心エリアはWordPressに関するテーマやプラグイン作者によるブースや、WordPressフォーラムの常連回答者がその場で質問に答えるリアルフォーラム、WordPress関連企業によるブースなど、開発者と企業、参加者が自由にコミュニケーションできる場を用意していた。
さらに参加者がその場でテーマを決めて自由に議論できるアンカンファレンスの会場は畳の上で輪になって話ができるようになっていた。
WordPressのいま:世界トップ100万サイトの54%が利用
スピーカーセッションも320人収容のトラックを2つ用意。WordPressのプラグイン制作者やWebデザイナー、プログラマー、サイト運営者などさまざまな立場や視点から24の講演が行われた。
本レポートでは、そのなかから基調講演の内容を紹介する。
基調講演は、WordPress創始者の1人であるマット・マレンウェッグ氏が立ち上げた会社「Automattic(オートマチック)社」に所属し、日本地域を担当するマクラケン直子氏が「WordPressのいま」と題した講演を行った。
マクラケン氏は講演の冒頭で、マレンウェッグ氏が2003年に投稿したブログの一部を引用し、WordPressを次のように紹介した。
使いやすいブログを作ろうとして立ち上がったWordPressは、最初のうちは数千人程度が利用する小さなオープンソースだったが、9年間で月間PVが34億、WordPressを利用したサイトは5600万を超え、70以上の言語に翻訳されて使われている。
現在も世界のトップ100万サイトのうち、CMSマーケットシェアとしては54%と過半数を占めているとしたマクラケン氏は、次のように補足した。
WordPressは小さいサイトやブログばかりで使われているというイメージがあるが、実際にはトラフィックでトップ100万サイトの過半数を占めており、大規模なサイトでも活用されている
WordPressの成長は現在も続いており、2011年から2012年へ掛けてWebサイト全体におけるWordPressのシェアは15.5%から16.8%に成長していることから、次のように語った。
2~3年以内にはWebサイト全体の2割がWordPressになるという日も来るかもしれない
次世代のユーザーエクスペリエンス「NUX」インターフェイスへ
最近の取り組みとしては、「NUX(New User Experience)」と命名されたインターフェイスを紹介。WordPress のバージョン3.4.2からは、WordPressシステムにログインした管理画面のダッシュボードでアップグレードの内容や新機能などを紹介するようになったほか、WordPressのテーマをダッシュボードからカスタマイズできる機能も搭載された。
WordPressはカスタマイズが簡単といわれるが、それは開発者やデザイナーにとっての話。一般の人にとっては、HTMLやCSSをカスタマイズするのはハードルが高い。誰でも簡単にWordPressをカスタマイズできる機能が重要
とカスタマイズ機能のコンセプトを語ったマクラケン氏は、カスタマイズ機能について次のように語った。
開発者にとっても、顧客が自由にカスタマイズできる機能は役に立つだろう
ホームページ・ビルダーなどの対応ツールや書籍も
日本においてもWordPressは急速に普及しており、最近ではさまざまなホスティングサービスがWordPress対対応を謳うようになっているという。また、クライアントソフトでも、HP作成ツール「ホームページ・ビルダー」が最新バージョンでWordPressに対応するなど対応ツールも増えているほか、WordPressに関する書籍も増えているとした。
ブログツールよりもCMSとしての利用が増加
WordPressの利用動向としては
元々ブログのイメージが強かったWordPressだが、最近では9割くらいがCMSとして利用されている
最近はCMSを内包するアプリケーションとしても使われ始めている
と、「happytables.com」の事例を紹介した。サイト自体がWordPressで構築されているだけでなく、WordPressを利用して簡単にレストランサイトができるサービスとして、サービスのエンジン部分にWordPressが使われているという事例だ。
今やCMSツールの代表的な存在となったWordPressだが、マクラケン氏は、
元々こんなに大きくなるとは思ってもいなかったし、「今後もWordPressをこうしたい」という気持ちがそれほどあるわけではない
とコメント。とはいうものの、未来のビジョンがないわけではなく、今後の進め方について、次のように語った。
WordPressのコアとなる開発者がすべてを決めるよりも、ユーザーの要望を踏まえながらWordPressの未来を形成していくという手法を取っている
次バージョンは12月リリース、よりCMSの方向に
セッションでは、12月にリリースを予定している最新バージョン「WordPress 3.5」の概要も紹介された。よりCMS的なデザインとなったデフォルトテーマ「Twenty Twelve」、アップロードした画像の編集を管理画面から行えるメディアアップローダーの改善が図られたほか、NUXについても機能拡張を予定している。
マクラケン氏は、
ダウンロードからインストールするまでは簡単だが、その後ダッシュボードがわかりにくいという声がある
としたうえで、次のように語った。
新規ユーザーだけに使い方をビジュアル的に見せる機能を予定している
バージョン3.5のリリースは12月5日を予定している。「これまではいつもリリース日を発表してもどんどん遅れてばかりいた
」と苦笑しつつも、マクラケン氏は次のように語った。
リリース日を守るということは、WordPressのセキュリティと安定性を重要視すること、WordPressを柔軟に拡張できるようにすることに並ぶ、守るべき3つの柱として位置付けている。
今回は大きな問題が起きない限り、予定通り12月5日にリリースできるだろう
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