マッチングサイトに学ぶ
マッチングサイトに学ぶ
世界で10億人と言われるインターネット利用者は全員が、依頼を出す立場にも、依頼に応える立場になることも出来る。そのため、思いもよらぬベストマッチングが実現する。
AmazonのMechanical Turkというサイト(図5)では、人間しかこなせない単純作業の作業者を募ることが出来る。例えば、自分の作ったプラモデルが最も良く撮れている写真はどれか選んでほしい、といった類だ。1人に支払う価格の相場はたったの3~5円だが、世界中に呼び掛けると、息抜き・暇つぶしに手掛けてくれる人が何十人も集まる。
BtoBでも同様の試みが為されている。カナダの金鉱山会社ゴールドコープ社は、自社の担当者が掘り尽くしたと考えていた鉱山の地質データを自社サイトで公開したところ、地質学者だけでなく、大学院生や数学者、コンサルタントといった異分野の専門家などから、自身では気づいていなかった50以上の鉱脈の示唆を受けた。そしてその80%で大量の金が発見された。ウェブサイトは情報発信のみならず、外部の貴重な知恵を得るための窓口でもあるのだ。社内の知恵のみに依存し続けるのか、世界中の知恵を活用するのか。どれだけウェブを使い倒せるかということが、後に取り返しのつかない差を生むこともあるのではないだろうか。
商品の見せ方に学ぶ
Amazonに代表される勝ち組ECサイトは、その地位を盤石とするため、ウェブサイトの改善や機能追加には努力を惜しまない。ネットの特性を知り尽くしている彼らの商品ラインアップ施策やその見せ方には、BtoBが参考とすべきものも多い。
例えば、Amazonでは、新品と中古の書籍を同列に扱うことで、顧客の選択肢を増やしている。スペースの制約もあって、リアルの世界では新品と中古の書店が別々に存在するが、ネットではそれを気にすることもない。また自社で中古を手掛けていなければ、顧客はワンクリックで他社の中古サイトに行ってしまうだけだ。であれば、自社サイトで両方を扱うことが自然な流れとなる。中古品が流通するBtoBメーカーは多いし、その販売をグループの別会社が手掛けていることも珍しくはない。BtoBでは、販売手法の違いやカニバリゼーション(需要の食い合い)という問題もあるかもしれないが、もしユーザーニーズがありそうならば、検討してみると良いだろう。
靴とバッグのECサイトであるjavariも面白い。質感や細部に関心が集まる商品なので、極めて簡単な操作で、どの角度からもクローズアップ出来るようになっている(図6)。手に取らなければ分からないと思われていた質感や細部を、何とかウェブで伝えてみようという試みだ。優れた機能もさることながら、固定観念にとらわれることなく、ウェブが担う領域を広げるチャレンジ精神は是非見習いたいところだ。人にしか出来ないと考えられながら、工夫次第でウェブでも出来たということが、実はBtoBの世界にも多々あるのではないだろうか。
第1回 ウェブ活用の現状と可能性
第2回 企業購買プロセスのウェブ化(1)
第3回 企業購買プロセスのウェブ化(2)
第4回 BtoCウェブサイトに学ぶ
第5回 連結視点とグローバリゼーション
※この記事は、社団法人日本産業広告協会(IAAJ)の発行する月刊誌『産業広告』に掲載の連載を、著作権者の許諾を得て転載しているものです。
ソーシャルもやってます!