競合の少ない商品分野に学ぶ
競合の少ない商品分野に学ぶ
次に③④の競合が少ない分野を見てみよう。競合が少なく汎用性が高い図1-③は、比較の必要性が少ないため、顧客は自社サイトに直接やってくる。JAL/ANAの2社が寡占している航空業界はECも自社で手掛けているので、全てが自社サイト内で完結する。
BtoBでは、オムロンやミスミが自社運営する電子・機械部品のECサイトがこれに当たる(図2-③)。アフターパーツ類も競合比較が発生しないので、自社ECサイトが担いやすい分野だろう。なお、電子部品は図2-①にも見られるが、リピート顧客が③を、新規顧客が①を利用することになる。ちなみにオムロンは、先述した図2-①のチップワンストップにも出資・出品しており、ネット時代の製品流通を見据えて、網羅的に布石を打っていることがうかがえる。
また図2-③では、代理店の役割が大きく変化する可能性を指摘しておきたい。BtoCで③に属するANAは2010年4月、旅行代理店に支払う国内航空券の発券手数料を5%から2.5%に引き下げる。国際線では、2009年4月に廃止済だ。その背景には、8割の顧客がANAのサイトで航空券を購入する現実がある。図4に示すように、メーカーは、ウェブのない時代は情報の提供を代理店に委ねていた。だが、ウェブを通じてエンドユーザーとコミュニケーション出来るようになったこれからは、カタログや事例などの基本情報や最新の情報はメーカーサイトが主たる発信源となるだろうし、アフターパーツはメーカーのECサイトから発注されることが多くなるだろう。
もちろん、情報提供もアフターパーツ販売も代理店が担い続けるべき、というスタンスもあり得る。その場合でも、メーカーサイトを訪れるエンドユーザーを代理店に誘導したり、ガイドラインやウェブプラットフォーム、製品DBの提供によって、代理店自身のウェブサイトを充実化させたりする施策が必要となる。どちらのスタンスを取るにせよ、ネットの登場でメーカー、代理店、エンドユーザーの関係が大きく変わることは間違いない。多くのBtoBメーカーで、代理店との役割分担が見直しを迫られることになるだろう。
最後に④の象限を見てみる。カスタマイズが必要で、競合の少ない図1-④の領域は、ぴったり合致するケースがBtoCには見当たらないが、BtoBでは、発電システムやプラント建設などの巨大インフラ・装置や、材料・素材分野が対象となる(図2-④)。フルカスマイズが必要となるこの領域の購買プロセスでは営業担当が圧倒的な主役であり、ウェブサイトの役割は、製品の基本情報や事例提供などに限定されるだろう。
第1回 ウェブ活用の現状と可能性
第2回 企業購買プロセスのウェブ化(1)
第3回 企業購買プロセスのウェブ化(2)
第4回 BtoCウェブサイトに学ぶ
第5回 連結視点とグローバリゼーション
※この記事は、社団法人日本産業広告協会(IAAJ)の発行する月刊誌『産業広告』に掲載の連載を、著作権者の許諾を得て転載しているものです。
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