BtoBメーカーのウェブ活用

競合の多い商品分野に学ぶ

競合の多い商品分野に学ぶ

自社製品に関する情報は他社運営のサイトでも扱われる。ウェブ活用を考える際には、こうしたサイトと自社サイトの役割分担から考えねばならない。図1図2は、ウェブサイトの形態と役割を、競合の多少と商品の特徴(汎用品か要カスタマイズなのか)で分類したもので、それぞれBtoCとBtoBの状況を表現している。まずはの象限、競合の多い商品分野を見てみる。この領域では、第三者が運営するポータルサイトが重要な役割を果たす。競合が多い製品の場合、潜在顧客は各社製品の情報や評判を比較・評価したいと考えるからである。

商品特性によるWebサイトの携帯と役割:BtoC
図1 商品特性によるWebサイトの形態と役割:BtoC(出所:イントリックス作成)
商品特性によるWebサイトの携帯と役割:BtoB
図2 商品特性によるWebサイトの形態と役割:BtoB(出所:イントリックス作成)

図1-①には、価格.comに代表される、PCや家電の比較サイトや保険、引越しの見積サイトが該当する。ブランド力のある汎用品であれば品質を心配する必要がないので、比較・評価後はECで購入することも多く、ネット上で完結する利用形態と言えよう。BtoBではオフィス用品販売のアスクルや、電子部品通販のチップワンストップが挙げられる(図2-①)。人手を全く介さなくて済む商材は多くはないので、そう拡大することもないだろうが、この領域のメーカーはどう対応すれば良いだろうか?

汎用品の宿命として価格が重要視されることは間違いない。しかし、ブランド力やリードタイムも同様に重要な要素となる。価格.comでも常に最安値を提示しているショップに注文が集る訳ではなく、店舗の評判や出荷時期を踏まえて総合的に判断される。BtoBでは尚更であり、恒常的なブランド向上施策やリードタイムの短縮努力が、顧客の選択に結びつくはずだ。

次に、競合が多くカスタマイズが要求されるの象限を考えてみよう。ポータルで一次情報を提供した後は営業担当につなぐので、人的営業を補完することがウェブサイトの役割となる。BtoCでは場所や価格等の比較可能な条件で絞り込んだ後に、現物チェックや細かい要望など、営業担当とのコミュニケーションが必要となる不動産、中古車サイトが代表例だ(図1-②)。BtoBにおいては、ITの製品選択を支援するキーマンズネット、製薬メーカーと顧客である医者を結ぶ医療情報サイトm3.comなどが成功例だが、ウェブと営業担当を上手く融合させている点で、まだ拡大する可能性のある領域と考えられる(図2-②)。

多様な医療情報をワンストップで提供しているm3.comは、日本最大の医療従事者専用の医療専門サイトとして、圧倒的な支持を得ている。医療ニュースや医薬品情報、文献DBと言った基本コンテンツを利用出来る上に、各製薬会社の営業担当(MR:Medical Representative)とのやり取りも、本サイトで一元的に行うことが出来る(図3)。製薬会社は、メッセージ1本につき100円を支払わねばならないが、通常のメールよりも購読率が高いので受け入れられている。

m3.com
図3 営業担当コミュニケーション機能:m3.com

こうしたポータルは、メーカーとユーザーの双方にメリットを与えるものだが、広範・細密な比較・検討がより簡単に出来るようになった点に着目すれば、どちらかと言うとユーザーサイドのツールであり、メーカーは使わざるを得ない状況に追い込まれている。ネットは、製品選択の主権をメーカーからユーザーへと移行させるのである。一般消費者向けの価格.com、システム設計者向けのキーマンズネット、医療従事者向けのm3.comは、それぞれ市場が大きい故に早期に成功したが、計測・分析機器ポータル、制御機器ポータル、素材ポータルといったものが一定の存在感を確立するのも、時間の問題だろう。

では、BtoBメーカーにとって、顧客に働きかけることは難しくなる一方なのだろうか。答えは否だ。図2-②(例:IT製品)では、図2-①(例:オフィス用品)と異なり、ポータル上で購買の最終判断がされる訳ではない。ユーザーはポータルで検討に値する製品を絞り込んだ後、各社とコミュニケーションすることを望んでいる。より詳細の情報をメーカー自身から得ない限り、購買を判断出来ないからだ。だから、メーカーが自社の土俵で勝負することも、十分に可能なのだ。最終的には営業担当が関わることになるが、ポータルと営業担当の間のプロセスでは、検討製品の深い情報(過去製品比較等)やカスタマイズされた情報(オプション・見積機能、シミュレーター等)を提供出来る自社サイトの役割も大きい。その役割を果たすためには、ポータルが提供できない、自社サイトならではの機能・コンテンツを徹底的に吟味することが必要だ。

第1回 ウェブ活用の現状と可能性
第2回 企業購買プロセスのウェブ化(1)
第3回 企業購買プロセスのウェブ化(2)
第4回 BtoCウェブサイトに学ぶ
第5回 連結視点とグローバリゼーション

記事のPDF版はイントリックス株式会社で提供しています

※この記事は、社団法人日本産業広告協会(IAAJ)の発行する月刊誌『産業広告』に掲載の連載を、著作権者の許諾を得て転載しているものです。

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