広報活動から見た企業Webサイトに有効なコンテンツ
広報活動から見た企業Webサイトに有効なコンテンツ
それでは、広報サイトにおけるコンテンツについて、具体例をあげていきましょう。
ネガティブな事態が生じた場合、広報活動として機能するコンテンツとそのポイントについてまとめました。
- 緊急告知
先にお話ししたようにトップページや主要な入り口となるカテゴリページのコーナートップなどに緊急告知のエリアを設けておきます。平常時は何も表示されず、緊急時のみ赤枠などで目立つように表示することでユーザーの注意を促します。配置場所としては、ブラウザーのファーストビュー※に入れることが必須です。表示する内容は状況によって異なりますが、最低でも200文字程度の文章と詳細ページへのリンクが掲載できる面積を確保するといいでしょう。サイト設計時に、あらかじめ領域表示を想定したデザインやコーディングを行っておくと手間なくスピーディに掲載できます。
もしCMSを導入しているのであれば、緊急告知コーナーをCMSで一元管理するとよりすばやい対応が可能です。CMSがない時代には、SSI※を使って緊急告知エリアを外部ファイルで管理したこともありました。CMSを導入していなくても技術的にクリアする方法はあるので、検討してみるといいでしょう。
- 商品の写真情報
リコールや回収になった商品が具体的にどれかを画像を用いてわかりやすく伝えます。多くの企業が、商品名称や型番の羅列になっていますが、それでは本当に困っているユーザーに間違いなく情報が伝わるか不安が残ります。電化製品の場合は、型番がどこに掲載されているかを伝える必要もあるでしょう。メーカーのWebサイトを構築する際に「全商品の写真画像はない」「載せる必要があるのか?」という質問をいただくことがあります。確かに、平常時には必ずしもすべての画像を掲載する必要はないかもしれませんが、このようなネガティブな事態では画像による伝達はとても効果的だといえます。少し前に起きた中国野菜の農薬汚染問題では、冷凍食品メーカーのいくつかは対象商品のパッケージ写真をWebサイト上で公開していました。商品名称や型番だけの掲載だった企業に比べてはるかにわかりやすく、安心できるWebサイトだといえます。
- 問い合わせ窓口
ネガティブな事態は問い合わせ数を激増させます。また、担当でない窓口で不適切な対応をすると二次被害を招いてしまいます。そのため、事態にあわせて最適な対応ができる窓口をユーザーに一刻も早く伝える必要があります。対応する窓口の名称や電話番号、メールアドレス、FAX番号などいくつかの情報をお知らせします。また、保険などで契約内容の照会が必要な場合は、何を用意して問い合わせすればいいのかを明確にしておきます。
今一度業務フローの見直しを
上記にあげたような有効なコンテンツを用意すればすべてうまくいくかというと、そんなに簡単ではありません。必ずどこかに落とし穴が潜んでいるものです。Web担当者が陥りやすい問題点を挙げてみました。個別に詳しくみていきましょう。
緊急対応マニュアルにWebサイトの対策は入っていますか?
企業がディスクロージャーやコンプライアンスを謳うようになって、それらの対応に関するマニュアルや業務フロー整備を行っている企業が増えています。多くの企業では立派なマニュアルがあり、会議体や緊急時の連絡業務フローもしっかり用意されていますが、Webサイトがおざなりにされているケースをたまに見かけます。また、企業サイトのWebマスターが、それらマニュアルの存在を知らないというケースもありました。これではせっかくの対策も不十分です。Webサイトを自社内で管理・運営している場合も、外部制作会社に運営委託している場合も、緊急事態に対応する業務フローや連絡業務フローを整備するとともに、会社全体の体制やマニュアルがどのように整備されているかを確認しWebサイトの業務フローについても連携が取れるようにしましょう。
企業の「自社メディア」として必要不可欠なもの
これまでの内容を踏まえて必要な要素を洗い出してみました。自社のサイトと見比べて漏れがないか確認してみてください。
- 緊急告知:緊急時にすばやく更新でき情報表示できるエリアを確保。トップページや主要なカテゴリーのトップに設置する。
- 商品の写真情報:普段すべてを掲載しなくても、万が一に備え対象商品を正しく伝えるための素材として整備しておく。
- 問い合わせ窓口:事態にあわせた最適な窓口をお知らせする。
利用者が欲しい情報を探しやすくするために
緊急告知エリアの表示サンプル
緊急告知エリアを掲載すべきページ
広報サイトのKPI
ネガティブな事態が生じた場合、広報サイトとしての成果指標は以下のとおりです。
情報開示までのスピード
これは防災訓練と同じです。実際の防災訓練では避難までに要した時間などを成果指標として訓練を繰り返しますが、Webサイトの場合も同じように、Webサイトに情報掲載するまでの所要時間がどれぐらい短縮できるか、混乱なくスムーズに情報を公開できるかが成果指標となります。訓練をする必要はないかもしれませんが、大小さまざまな事態が起きるたびに業務フローや情報連携フローを見直し精査していきましょう。問い合わせ内容の質
ネガティブな事態が生じた場合にはユーザーも手段を選びません。そのため、Webサイトで情報開示をしたからといって問い合わせ電話のコール数が激減するということはそれほどないでしょう。むしろWebサイトで掲載した情報がしっかり世の中に伝わっているかにフォーカスし、電話やWebサイトに寄せられる問い合わせ内容に注目すべきです。Webサイトでしっかりと掲載しているにもかかわらず多くの問い合わせが寄せられているのであれば、直ちに掲載している情報を見直しましょう。また、事態が収束した後にはそれらの履歴を精査し、次に同様のケースが発生した場合にどのような情報を開示すべきかの目安とするといいでしょう。
広報サイトのためのチートシート
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そんな時にはこのPDFを印刷して活用してください。記事の内容を凝縮してA4 1枚のチートシートにまとめて、さらに自社用にも書き込めるようにしています。
これまで採用サイトやIRサイト、消費者向け、顧客企業向けなどさまざまなステークホルダーに対するWebサイトを紹介してきました。次回から3回にかけて、今後は社内に目を向け、自社の社員に対する企業サイトの在り方を考えていきましょう。
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