落とし穴だらけ!CMS都市伝説

CMSならワークフローやバージョン管理は当たり前! と考えると痛い目を見る

[Sponsored]

落とし穴だらけ!CMS都市伝説

第五回
CMSならワークフローやバージョン管理は当たり前!
と考えると痛い目を見る。
キモは自社に合致した製品選びに

いまやウェブサイトの運営にCMS(コンテンツ管理システム)は欠かせない。サイトのコンテンツ更新コストの削減、トラブルのないワークフローの確立、サイト全体にわたるデザイン変更、他のシステムとの連携によるコンテンツ表示など、CMSで実現できることは多く、ウェブサイト運営の要ともなり得る。

しかし、CMSは単に導入すればいいものではない。サイトの性質や組織によってどのCMSを選べばいいのか、注意すべき点などは異なる。間違ったCMS導入をしてしまうと、コストばかりかかって効果を得られない結果を生んでしまう。成功と失敗を分ける要因は何か。世にはびこるCMSに関する「勘違い」「理解不足」による都市伝説をあげながら、正しいCMS導入を解説しよう。

石村雅賜(株式会社ビジネス・アーキテクツ)

今回の都市伝説

CMS使えばワークフローやバージョン管理が簡単にできるようになる

地味でサイトの表には現れない
コンテンツ管理の基本機能

企業のウェブサイトが社会的責任を担うようになった今では、自治体や官公庁はもとより、一般企業の活動においてもコンプライアンス対応が問われている。こうした背景を考えると、企業で導入するCMSに「ワークフロー管理」や「バージョン管理」といった機能は必須だともいえる。とはいえ、CMSにおけるこれらの機能がどういったことをするものなのか、具体的に想像できなかったり、逆に過度な期待を抱いていたりする担当者がまだまだ多いのも現実だ。

今回は、「ワークフロー」「バージョン管理」「検証環境」「配信機能」といった、CMSにおける基本機能について解説する。基本だからこそ重要でもある、これらの機能について正しい知識をもってCMSに取り組んでもらいたい。

ワークフローやバージョン管理といった機能は、地味な割に扱いが面倒な機能だととらえられがちだ。しかし、意外に思われるかもしれないが、これらの機能はコンテンツ管理の屋台骨を支えている機能であることに注意してほしい。CMSを導入してコンテンツの大量生成などの派手な機能を実現したとしても、これから解説するような基本機能をうまく利用できなければ、一部の人にしか役に立たないCMSになってしまう可能性が高い。

サイトの表側には現れない地味な基本機能こそが、コンテンツ管理に組織的に取り組むには欠かすことができない重要な機能なのだと理解してほしい。

コンテンツ管理を支える基本機能
4つに絞って理解するべし

CMSの基本機能といっても、業界に共通の概念があるわけない。そこで、市場のニーズや筆者の経験上から、CMSの本質である「コンテンツ管理」を支える基本機能だといっていいだろう機能を4つあげた。これらの機能は、ほとんどのCMSに搭載されている、まさに基本となる機能だ。

  1. ワークフロー機能
  2. リポジトリ
  3. 検証環境
  4. コンテンツ配信機能

この4つ以外にも、「ユーザー管理機能」「CMS内検索」「リンクチェック機能」のような機能もCMSの基本機能として考えられるが、今回は、その重要度から、前述した4つの基本機能に絞って解説する。

さて、これら基本的機能の価値を考えてみても「あったほうがいいと思うけど負担がねぇ」と思う人も多いだろう。これには筆者もある程度納得するところだ。というのは、これらの機能がコンテンツ管理業務を劇的に改善することはないし、間違ってもコンテンツの価値を大幅に向上させることはないからである。目に見える成果として現れ難いために、そのメリットも感じにくいのだ。CMSの基本機能の効果が現れるのは、次のような場面である。

  • コンプライアンスの向上
  • コンテンツ管理担当者の役割分担の明確化
  • コンテンツ事故(更新や公開の間違い)の原因が追跡しやすくなる

これらは、コンテンツ管理業務の水準の向上といった領域であり、費用対効果が計り難い分野だ。しかし、こういった機能を整備していかないと、コンテンツ管理にかかわる人数や扱うコンテンツ量が増えたときに、コンテンツ管理業務全体が崩壊したり、人数やコンテンツ量の壁を乗り越えられなかったりしてそこから先に進めなくなってしまう。つまり、忙しいばかりで新たなニーズに応えられないという不幸な状況に陥ってしまうのである。

したがって、CMSを導入する際には前述のようなコンテンツ管理のための基本的な機能を後回しにするのではなく、現実的なところで少しずつ取り組んでいくことが重要となるのだ。

では、それぞれの機能について現実的な利用方法を解説していこう。

(1)ワークフロー機能

ワークフロー機能とは、図1のようなコンテンツ管理の作業フローをサポートする機能である。

図1 ワークフロー機能
図1 ワークフロー機能(図はクリックで拡大)

時折、ワークフロー機能を利用すると業務が効率化できると思っている担当者を見かけるが、それは誤解である。少なくとも、筆者が見てきた範囲で大幅な効率化が達成された例は存在しない。

効率化できると考えている担当者は、さまざまな機能を盛り込んだワークフローを用意して、メールや電話での煩雑なやりとりを削減しようと考えるのだが、それではかえってワークフローの管理が複雑になって効率化どころか負担増になったり、ワークフローが複雑すぎて使われないという状況に陥ったりもする。では何のためにワークフロー機能を導入するかというと、次のことを実現するためだ。

  • コンテンツ管理フローの明確化
  • コンテンツ管理履歴の記録
  • 事故の防止

また、あまり前工程(コンテンツ作成の初期)からワークフローを強制しないのが、コンテンツ管理でのワークフロー導入のコツだ。

コンテンツ管理から離れて、社内での稟議作業を考えてみてほしい。稟議のための資料を作成する前工程は思考錯誤が多く、ある程度試行錯誤が重要だったりする。コンテンツ管理においてもこれは同様で、「制作→確認出し→コメント出し」といった流れを何度か繰り返していくことになるはずだ。このような前工程では、皆で意見を共有したり、皆で意見を調整したり、頭が固い人の意識を変えるために交渉することなどが大事なのである。したがって、状況に応じて柔軟な作業手順にしておくことが重要なのである。

コンテンツ管理における「ワークフロー」は、ほぼ内容が固まった最終段階での制作、確認、承認のために用いることが現実的なのである。

(2)リポジトリ

「リポジトリ」とは、コンテンツ管理の世界では、「コンテンツの入れ物」を意味する。コンテンツを格納して、各コンテンツのバージョン(世代)を管理し、だれがどのバージョンのコンテンツを作業中なのかを管理する(「チェックイン」「チェックアウト」という)ための場だ。

サイト内で管理するコンテンツの量が増えれば増えるほど、そして、コンテンツの管理に携わるメンバーが増えれば増えるほど、バージョン管理やチェックイン/アウトの重要性は増してくる。たとえば、誤ったバージョンのコンテンツを元に更新作業を行うと、その更新にかかった時間や労力はまったくの無駄となるし、複数のメンバーが気づかずに同じファイルを修正するとどちらかのメンバーが泣くことにもなる。チェックイン/チェックアウト機能はそういった事故を防いでくれる。

バージョン管理機能に関しても、過大な期待を抱いている方を見かけることがある。ページ単位とは別にサイト単位でバージョン管理ができて、将来や過去のある時点のサイトの状態を自由に再現できるCMSは多数存在する。しかし、実際には、サイトに何万という規模のコンテンツがある場合、コンテンツ数×各バージョンの状態を保存しておく必要が生じてしまう。CMSのバージョン管理は、ファイルのバージョン管理程度だと考えておくほうが今のところ現実的なのかもしれない。

話は変わるが、CMS製品のリポジトリには保存の形態によって大きく2つの種類に分かれる。

  • データベースタイプ
  • ファイルシステムタイプ

実のところこのタイプ選びはとても重要であり、コンテンツ管理の運命を左右することになる場合がある。

静的なファイルを主体としてコンテンツ管理を行いたいのであればファイルシステムタイプのCMSを選ぶべきであるし、この連載の第4回で説明したCPDB(データベースを使ったコンテンツ発行)を志向する場合はデータベースタイプのCMSを選択すべきである。

双方の特徴をサポートしていると主張するCMSベンダーもあるが、筆者の知る限り、実用レベルで実現しているCMSは現時点では存在しない。早い時期に、双方の機能を利用したいという自然なニーズを満たしてもらいたいものである。

(3)検証環境

コンテンツ管理における「検証環境」とは、制作したコンテンツを公開前に確認するための環境である(図2)。何を検証するかというと、デザインの確認、内容の正確性の確認、リンク切れのチェックなどだが、いくつか注意すべきことがある。

図2 検証環境
図2 検証環境

1つ目は、確認する範囲をどのように明確にするかである。ファイル単位でコンテンツを管理している場合は、更新したファイルの一覧を作成することが現実的なやり方である。データベースを用いて大量のコンテンツを自動生成する場合は、生成内容に合った専用の確認方法を準備しておく必要がある。

2つ目は、SSI(エスエスアイ)を利用する場合である。SSIとは、ページが表示されるたびに、ページの一部分に他のコンテンツを自動的に流し込む仕組みで、CMSとは別に(またはCMSと組み合わせて)ウェブサーバーで実現する場合の手法を指す。お知らせエリアなどページの一部にSSIを用いることがあるが、CMSの検証環境がSSIをサポートしていないと、ウェブサーバー上に公開してからでないと確認できないという事態に陥ってしまう。

3つ目は、いくつかのサイトを連携して同時に更新する場合である。それぞれの更新を別々の検証環境で確認する場合は、それぞれの検証環境間でリンクがうまく機能するようにしておく必要がある。

このように、サイトの規模や利用する技術が高度になるにしたがって、コンテンツ管理における検証環境は複雑化してきている。特に大規模なサイトでは、CMSの検証環境がどれぐらいしっかりしているかをチェックしておくべきだろう。

(4)コンテンツ配信機能

コンテンツ配信機能(公開開始機能)は、検証済みのコンテンツをウェブサーバー上の公開可能な領域にアップロードする機能である(図3)。配信機能はシンプルな機能であるというイメージが強いと思うが、落とし穴がないわけでもないので、主な注意点をあげておく。

図3 コンテンツ配信機能
図3 コンテンツ配信機能
  • 公開日、公開終了日が指定できるか
  • 複数の公開サーバーに同時に配信して同時に公開できるか
  • 配信中(公開作業中)に問題が発生した場合、公開サーバーを配信前の状態に戻すことができるか

この注意点のうちで、ときおり勘違いが見られるのは、公開終了機能の使い方である。不要なコンテンツを公開サーバー上に残さないようにするために、すべてのコンテンツに公開終了日を設定して自動的に公開終了することを夢見る担当者がいる。実際に、自分がすべてのコンテンツに公開終了日を設定する場面を想像するとわかることだが、公開終了日を厳密に定められるコンテンツは意外なほど少ない。したがって、CMSに公開終了日の指定機能があったとしても、適用できるコンテンツは限定的である。さらにいうと、公開終了するコンテンツに対してリンクを張っているページも同時に修正する必要がある。

現実的な運用としては、公開終了日は公開を終了するのではなく公開終了予定日として利用し、公開終了予定日が近づいたら担当者にアラートのメールを送信するくらいに利用することが現実的であり、それはそれで便利な機能だといえる。

CMSを使いこなすには組織的な運用が必須

ここで説明してきた基本機能は、前述のように、CMSを導入したあとにサイトの裏側で実行される「コンテンツ管理業務」に関するものであり、組織的にコンテンツ管理業務を行うにあたって避けては通れない機能である(図4)。

図4 CMSの機能におけるコンテンツ管理に関する機能の位置づけ
図4 CMSの機能におけるコンテンツ管理に関する機能の位置づけ(画像をクリックで拡大)

逆にいえば、組織的にコンテンツ管理に取り組む体制ができていないのであれば、CMSを導入したとしても十分な効果を得られないといえる。どんなにすばらしいワークフロー管理機能があったとしても、企業内のワークフローが確立されていなければ使われないし、そもそも承認する上司がCMSを使う環境にいなければ意味がない。基本機能だから対応しているだろうと、社内の要望を集約しなかったがために、いざ導入してみたら想定していた公開環境でテストができないといったことにもなりかねない。

ウェブサイトは公開後に更新を重ねて運用してこそ価値が出る。そのためにも、CMSも導入後の運用体制が重要だ。CMS導入に際しても、ここで述べた基本機能を軽視せず、適切な時期に適切な機能を導入できるように取り組むことが肝要なのである。

CMS導入のポイント!
  • 「ワークフロー機能」「リポジトリ」「検証環境」「コンテンツ配信機能」などのCMS基本機能は、表に見えない地味なものだが、非常に重要である。
  • CMSがコンテンツ管理の基本機能をしっかりと備えていたとしても、「コンテンツ管理業務」を組織的に進める体制を作っていなければ豚に真珠となる。
用語集
CMS / SSI / アップロード / コンテンツ管理 / リポジトリ / リンク / リンク切れ / ワークフロー
[Sponsored]
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

B2C
Business to Consumerの略。B to Cとも。 企業から ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]