CMSに特化したメディアの存在
CMSに特化したメディアの存在
最後に、CMSの発展を後押しするさまざまなメディアの活動がある。ここでは、ウェブサイトからの情報提供を柱とするタイプ、ウェブサイトと連動しながらリアルなイベントの場を提供するタイプとに分けることができる。
まず、ウェブサイトからの情報提供としては、Tony Byrne氏が主催する「CMS Watch」(図4)が代表的なメディアとしての機能を果たしている。CMS Watchは、2001年にスタートした技術レポートと技術コラムによって構成されるコンテンツマネジメントに関する総合情報サービスである。技術レポートは、CMS Watchの核となっている「The CMS Report」を始め、「Enterprise Portals Report」「Enterprise Search Report」「Records Management Report」の4種類によって構成されている。特に、年に2回発行される「The CMS Report」は、中堅以上の企業の担当者とCMS導入を担当するシステムインテグレータやコンサルタントを対象にした調査レポートとして高い評価を得ている。企業の担当者にとっては、選定候補となる詳細な製品リストが得られることや、成功例や各種事例を通して、共通の失敗やコスト上の失敗を防ぐことに役立てることができる。また、システムインテグレータやコンサルタントにとっては、顧客の要求定義書をまとめることに活用したり、コンサルタントの重要性を強調したりするためにも使うことができる。その他にも、CMS Wire、CMS Reviewといったウェブサイトによる情報サービスもCMSに特化したメディアとして支持を得ている。
次に、リアルなイベントの代表としては、1993年にFrank Gilbane氏が設立したThe Gilbane Groupによって2004年より毎年3回(サンフランシスコ、ワシントンDC、ボストン)にわたって開催されているイベント「The Gilbane Conference」がある。このイベントで、ベンダー、アナリスト、コンサルタント、企業ユーザーのいずれからも中立的な立場を貫き、その企画の姿勢と内容には定評がある。また、先にあげたコンテンツマネジメントの非営利団体であるCM Prosとも連携を図るなど、専門家コミュニティからも高い支持を得ている。その他にも、今年から始まったInfoToday社による「Content management 2006」や、The Center for Information-Development Managementによる「Contents Management Strategies」なども注目したい。
Content management 2006
Content Management Strategies
これらのCMSに特化したメディアの存在は、CMS製品の単なる紹介の域を超え、製品の評価情報や比較情報、さまざまな事例やベストプラクティスなど、先のコミュニティ活動と同様に、市場のより一層の活性化を促していると言えるであろう。同時に、本来、さまざまな領域を横断した専門スキルが求められるCMSの関連領域について、方法論や職制を明らかにしていく上でも、テーマに特化したメディアは欠かすことのできないものとなっている。
このようにCMSを牽引する米国では、企業内外における情報を管理する人材の背景による違いに加え、その人材が自ら学んで成長していくための機会と場所が数多く存在しているがわかる。これらの存在が、専門家の育成や専門情報を蓄積していくためのプラットフォームとして機能していることは明らかである。
ウェブ管理からコンテンツマネジメントへ
今後、日本においても、ベンダー企業がユーザーに情報交流の機会を提供するのに加え、ベンダーを横断したユーザー企業担当者やシステムインテグレータ、コンサルタントによる積極的な情報交流の場を作っていくことが求められるようになるであろう。そして、CMSに特化した情報の流通や専門メディアが生まれてくれば、各種領域を横断したCMSに関わるスキルや技術がより明確になっていくに違いない。これらの活動を通して、日本でも、広範なコンテンツを扱う人材の育成が進み、ウェブサイトのコンテンツだけではなく、企業の基幹業務や日常業務などとも連携できる、まさに「ビジネスに直結したエンタープライズレベルのCMS」へと発展するための下地作りが進むことを期待したい。
もしあなたが、CMSを単なる「ウェブサイト更新ツール」だと捉えていたならば、少し視野を拡げてみてほしい。「コンテンツマネジメント」という切り口でCMSを捉えれば、もう一段階ビジネスの発展が考えられるはずだ。米国でも起きた流れは、すでに少しずつ日本にも起きつつあるのだから。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウVol.3』 掲載の記事です。
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