成功するCMS導入の必須ノウハウ

Part 1 失敗しないCMS導入準備

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コンテンツ管理システム(以下「CMS」)は、ここ数年間で日本でも徐々に普及し始めており、多くの企業が導入している。現在、ウェブサイト自体を自社のビジネスにとって有力なメディアだととらえる企業が増加し、サイトのボリュームや情報量も加速度的に増加する傾向にある。このため、コンテンツ管理がその必要性も含めて、注目されるようになってきたのだ。

しかし、ほとんどの企業が重要視しているのは更新や運用の問題である。一般的にはスムーズでミスのない更新を可能にするという観点と、これを楽に行いたいという問題解決ツールとしての観点でCMSを導入している場合がほとんどだ。ここでのポイントは、コンテンツ管理がいつの間にか更新運用にすり変わっていることだ。もちろん、更新運用もコンテンツ管理の中の重要な要素であることは疑う余地がないが、それがすべてではない。その結果として、単に運用管理の利便性を求めてCMSを導入した企業では、CMSが機能していない、もしくは使いこなせていない場合がほとんどだ。

この記事では、CMSを「コンテンツ管理」のツールとしてとらえて、その構築手法を紹介する。単なる更新ツールが必要な場合は、その部分だけ専用のツールを導入するほうがコストパフォーマンスが高いと考えられるからだ。

失敗しないCMS導入準備
単なるウェブ更新運用ツールではないCMS

コンテンツ管理とは

そもそもCMSは米国で注目され、日本に導入されたコンテンツ管理手法だ。日本でもポピュラーな製品に米国製の製品が多いのはこのためだ。米国製の製品のメリットは、過去に実際に使ったユーザーのフィードバックに基づいて完成度を高めている点にある。米国では多くの企業が、CMSでコンテンツを管理し、エンドユーザーに最適な情報を提供している。さらに最近では、静的配信ではなく、一歩進んで動的配信が行われるケースも増えてきている。

では、米国と日本の違いはどこにあるのだろうか? もちろん米国で動的配信が多いのは、環境的な理由もあるのだが、一番大きな違いは“CMSを何のために利用するのか”という点にある。日本では、ウェブサイトの運用・管理に利用するというのが一般的だが、米国ではコンテンツ管理がCMS利用の中心的な目的であり、ウェブサイト管理運用の効率化は、副次的に得られるメリットに過ぎないのだ。

日本の利用法も一見間違ってはいないように思えるが、現実的には大きな問題がある。コンテンツ管理ができていないのに、ウェブサイトの管理ができるはずがないという問題だ。日本では、CMSを利用したウェブサイトの構築は非常に難易度が高いと考えられている。なぜならば“コンテンツ管理”という概念がなく、ウェブサイトの運用・管理だけを考えるという非常に現実的ではない作業を成し得ようとするからで、その難易度が高くなるのは当然だ。

ウェブサイトをメインとしたコンテンツ管理は一般的にWeb Contents Management(WCM)と呼ばれている。コンテンツ管理の定義をしたうえで(データ管理)、ユーザーにどのように見せていくか(テンプレート管理)を作成していく。この順番があって初めて、ウェブコンテンツを管理できるCMSの構築ができるわけだ。

米国では、コンテンツを管理するということを主題におき、その中でどう見せればユーザーに対して有益な情報をスムーズに配信できるのかを考えているわけだ。ウェブサイトの運用・管理がCMSであるという認識が当たり前になっている日本とは、CMS導入のスタートが違うことがわかる。

「どのようにCMSを導入していけば、“機能するCMS”を構築できるのか」をこの記事の主とした背景には、こういった米国での動きなどがあるのだ。

CMS導入はじめの一歩

CMSを導入するためにまず必要なのは、現状のコンテンツ管理のどこに問題があるのかを洗い出すことだ。単なる「ウェブマスターや担当者が現状の業務が大変なので何とかしたい」的な発想では、何をやってもすぐに問題が再発するか、別の問題が持ち上がるかが関の山だ。CMSは一時しのぎのために導入するものではないということを肝に銘じるべきだ。さもなくば、CMSを導入したことで業務が余計に大変になるかもしれない。

問題となっているものを、まずは漠然とでもいいのでできるだけたくさん挙げてみてほしい。

  • ウェブサイトの更新に時間がかかってしまう。
  • ウェブサイトの更新でミスが頻発してしまう。
  • 管理するウェブページが多すぎて全体を把握できない。
  • 更新の作業手順が明確でない。

自分だけではなく、ウェブサイトにかかわるすべての人に挙げてもらうのも大切だ。これをまとめれば、現状起こっていることが明確になる。

ただ、勘違いしてほしくないのは、ここで問題として挙げられてくるもののほとんどは問題ではなく事象だということだ。今起こっている事象が洗い出されたに過ぎない。事象を類似項目でまとめていくと、より問題に近づいていく。これを3~4回繰り返すと、根本的な問題が見えてくるだろう。

ここで現れた根本的な問題がCMSで解決できる問題であれば、あなたの会社にCMSを導入する意味がある。逆に、ここで出てきた根本的な問題がCMSで解決できないものならば、CMSの導入効果はほとんどないと考えていいだろう。しかし、CMS導入に当たっては、前章で述べたようにウェブサイトの運用・管理の改善が目的になっており、コンテンツ管理における問題を検討していない場合がほとんどだ。これでは、導入しても機能しないのは当たり前である。

CMS導入の第一歩は、導入して意味があるかどうかの検討なのだ。もしウェブサイトの運用・管理のみが目的であったとしても、コンテンツ管理の効率化が実現できて初めてその目的が成し得られるのだ。

ソフトウェアの選定

CMS導入のメリットがあるとの判断ができたら、次はどのレベルのCMSアプリケーションを導入するかの検討だ。CMSアプリケーションは数万円から数億円までと金額や性能の差は大きい。できることや処理能力の差なので、金額自体は妥当かもしれないが、自社に最適なCMSアプリケーションを選択するのは難しい仕事になる。

そこで、自社で解決しなければならない問題が解決されたら、それはどのくらいのコスト相当になるのかを算出してみてほしい。また、CMSアプリケーションの導入による利益も考えられるのであれば、それも同時に算出してみてほしい。さらに、CMSアプリケーションの導入コストを3年間で償却するとして(運用コスト含む)算出したコストから導入上限コストを算出したい。もちろんあくまでも現段階での想定なので、上限コストの半分くらいを導入コストと考えておけば間違いないだろう。そのコストの範囲で、自社の問題を解決できる最適なCMSアプリケーションを選択することになる。

第1章で述べたようなコンテンツ管理における根本的な問題を把握しておかなければ、ソフトウェアの選択はもちろん予算の算定すらできないことは明白だ。参考までに、イニシャルとランニングコストで考えなければならない項目を示してく。

検討すべきコスト項目

  • イニシャルコスト
    • CMSソフトウェア
    • サーバー
    • データベース
    • ウェブアプリケーション
  • ランニングコスト
    • CMSソフトウェア保守費用
    • サーバー運用費
    • その他ウェブアプリケーションコスト

もちろんこれがすべて必要になるとは限らない。データベースを利用しないCMSも存在するし、オープンソースのデータベースやアプリケーションで構築できるCMSソフトウェアも存在する。

また、どういった構成であればどの程度のパフォーマンスが出るのかという部分もCMSベンダーに問い合わせる必要がある。構築はできるが、企業の求めているレベルで構築すると非常に重く、実質的には機能しないシステムになることもあり得る。

コスト面のほかにはもちろん機能面のチェックも必要だが、CMSのソフトウェアはベースの部分ではほとんど似たような機能を持っている。たとえば、表示形式が動的であるのか、それとも静的であるのかという配信形式の違いや、管理できるデータ形式(HTMLやXMLやPDFなど)、権限の割り当て方式、ワークフローの構築しやすさなどさまざまな評価点がある。また、長所は逆に言えば欠点であったりもする。ソフトウェアベンダーの説明はほとんど同じに聞こえるだろう。だから、その内容で評価するのは難しいかもしれない。

機能面のチェックは、あくまでも導入して使用してみないと判断がつきにくいものだ。できれば経験豊富なSIベンダーにアドバイスを受けることをおすすめする。ただし、何を実現したいのか、どんな問題を解決したいのかなどをできるだけ具体的な内容にしてから相談しなければ、正確なアドバイスを受けることは期待できない。

失敗しないCMS導入の手順

社内体制から始まるCMS導入

問題点を洗い出して、CMSアプリケーションを選定し、開発ベンダーを探す。ここまでは、もしかしたら担当者1人でもできるかもしれない。しかしこれ以降は、担当者1人ではどうにもならない。

繰り返すが、CMS導入とは、コンテンツ管理そのものだ。それぞれのコンテンツを管理している責任者や担当者とのアライアンスなくして、成功するCMS導入はあり得ないのだ。さらにコンテンツ管理担当者によって、それぞれ問題の認識も意識も違うはずだ。再度、問題の洗い出しと確認を行う必要があるかもしれない。CMS導入の本格的なスタートは、横断的な社内プロジェクトとしての体制確立にある。これなくしては、CMS導入は絵に描いた餅でしかないのだ。

もちろんそういった体制を作ることが難しいことは理解できる。最低限必要になる人員は、今までウェブサイトに掲載するコンテンツを提供していた担当者だ。最低限このメンバーとは、明確な体制を組む必要がある。

体制を明確にしたら、必ず体制図を作ろう。そうすることで、スムーズな情報収集やプロジェクト進行が可能になる。

社内体制の構築はCMS導入を成功させるには必須のステップだ

※この記事は、『Web Master 完全ガイド Vol.2』掲載の記事を元に、未公開の原稿を加えて再構成したものですです。

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