ネットショップ担当者フォーラム

ベルメゾンの利用客にDM送付で新規ユーザー獲得を支援、千趣会とFIDが連携

7 years 7ヶ月 ago

千趣会とECシステムの開発を手がけるFIDは5月8日、千趣会の法人向けのダイレクトメール(DM)発送サービス「ベルメゾンダイレクトメールプロモーション」を活用し、DMの効果測定や追加発送を自動で行える新サービスを開始した。

DMを使ってカゴ落ちユーザーにリマインドするなど、売上拡大につながるマーケティング施策を実現。活用するEC企業の新規顧客獲得を支援する。

FIDのマーケティングオートメーションツール「MOTENASU(モテナス)」と「ベルメゾンダイレクトメールプロモーション」を提携してサービスを構築した。

FIDと千趣会が連携、法人向けのダイレクトメール(DM)発送サービス「ベルメゾンダイレクトメールプロモーション」を活用し、DMの効果測定や追加発送を自動で行える新サービスをスタート

新サービスのフロー

「ベルメゾンダイレクトメールプロモーション」は、千趣会の通販「ベルメゾン」を利用する約1500万人の顧客基盤を活用したDM送付サービス。クライアントの希望に合わせて、年齢や性別などの条件で送付先をセグメントできる。

「MOTENASU」と連携した新サービスでは、DMに顧客専用のQRコードを印刷する。QRコードにアクセスしたユーザーのウェブサイトの滞在時間、ページ遷移、ECサイトのカゴ落ちといった行動を追跡。マーケティングシナリオを組むことで、DMの追加発送などを自動化する。

千趣会の法人事業部広告チームは、新サービスについて次のようにコメントしている。

DM送付の媒体を提供するだけではなく、DMの効果測定から追加配送まで全自動で行えるようになった

FIDはリピート通販専用カート「侍カート」を提供している。近年はマーケティングオートメーションツールの開発にも力を入れており、オンラインとオフラインを活用した「オンオフ融合マーケティング」を提唱している。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

Amazonにない自社ECの強みとは?/2017年版・ネット通販市場 調査データ【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

7 years 7ヶ月 ago

2018年4月20日~2018年5月10日にアクセス数の多かった記事のランキングを発表! 見逃している人気記事はありませんか?

  1. アマゾン化が進むネット通販が抱えるリスク、Amazonにはない自社ECの強みとは?

    ネット通販で生き残って行くには、主導権を持つことが大切です

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  2. 【2017年】ネット通販市場は16.5兆円、EC化率は5.79%、スマホEC市場は3兆円

    国内のEC市場について、「物販系BtoC-EC事業者が二極化(売上を伸ばしている事業者と停滞している事業者)」していると指摘している

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  3. 「ZOZOTOWN」での広告事業スタートなど、スタートトゥデイの中期経営計画まとめ

    2021年3月期を最終年度とする中期経営計画では、3年後にBtoB事業で300億円、広告事業は100億円の売り上げをめざす

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  4. ゴールデンウィークは「洗車」「車中泊」「バーベキュー」に商機あり! Yahoo!の検索キーワードに見る商品需要

    ヤフーの検索データから見るGWの消費トレンド(連載第11回)

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    「ブランド・ジャパン2018」における「EC・通信販売」の上位20ブランドは?

    2018/4/20
  6. 『えんとつ町のプペル』はなぜ売れたのか? キングコング西野亮廣が語る“お金”と“広告”

    日本eコマース学会の第1回シンポジウム基調講演で、お笑い芸人キングコング西野氏が絵本ヒットの戦略を語った

    2018/5/7
  7. 注目株のファッションEC「fifth」(フィフス)が急成長、5年で80万人の会員突破

    Instagramでインフルエンサーマーケティングを行い会員増につなげた

    2018/4/23
  8. フォントに興味がない人にも知ってほしい、世にも奥深い「フォントの世界」

    サイトや広告のクリエイティブに欠かせないフォントについてもっと知ろう! Adobe「フォントの日」記念イベントレポート

    2018/4/24
  9. 楽天と西友のタッグが始動、「楽天ダイレクト」で西友のPBを販売

    「爽快ドラッグ本店」「ケンコーコム楽天市場店」などで、西友のPB商品約380品目を販売

    2018/4/24
  10. 大塚家具がAmazonでの販売をスタート、EC事業強化の一環

    シーツやピローケース、ソファ、マットレスなど約130品目をAmazonで販売

    2018/5/9

※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

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EC荷物を料金一律&全国のファミマ店舗で受け取れる「コンビニ受取サービス(コトリ)」をスクロール360が開始

7 years 7ヶ月 ago

スクロール360は5月9日、通販・EC事業向けの物流代行サービスとして、消費者がECサイトで購入した商品を全国のファミリーマートで受け取ることができる「コンビニ受取サービス(コトリ)」を開始した。

EC事業者は「コトリ」を利用することで、コンビニ店頭での受け取りサービスを顧客に提供できる。

配送費用は全国一律450円。荷物の大きさは100サイズまで。コンビニ店頭で商品代金を支払うことも可能で、代引き手数料は一律200円。

ファミリーマートの店舗数は3月末時点で1万5875店舗。

「コトリ」の商品配送フローは以下の通り。

  1. 消費者が商品を注文、通販事業者からスクロール360の物流センターへ商品を出荷 (スクロール360の物流センターへの配送料金は別途必要)
  2. スクロール360の物流センターからファミリーマート各店舗へ商品を配送
  3. 店舗に商品が到着したことを消費者にメールで通知
  4. 消費者が店頭で商品を受け取る

スクロール360が提供する全国のファミリーマートで受け取ることができる「コンビニ受取サービス(コトリ)」「コンビニ受取サービス(コトリ)」のサービスフロー

コンビニでの商品保管期間は、商品が店舗に到着してから1週間。 保管期間を過ぎた商品はスクロール360の物流センターを経由して通販事業者へ返送する。

スクロール360は「コトリ」の提供を通じ、宅配業界における人材不足や再配達問題の解決をめざすとともに、今後も消費者や通販事業者にとって便利なサービスを提供するとしている。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

[越境ECまとめ]最も購入されるサイトはAmazon。日本から米中向け市場は約2兆円

7 years 7ヶ月 ago

世界の越境ECで最も多く利用されているECサイトは「Amazon」、主要10か国の越境EC利用者数は約1億8200万人――。

経済産業省が2018年4月にまとめた「電子商取引に関する市場調査」から、最新の越境EC市場の動向を読み解く。

越境ECにおける購入先事業者の1位はAmazon

世界31市場で越境ECを行ったネットユーザー(2万8892人)が、購入先として利用したEC事業者の1位は「Amazon」(25%)だった。

2位以下は「eBay」(18%)、「Alibaba/AliExpress」(14%)、「Wish.com」(8%)、「Zalado」(2%)、「Apple」(1%)、「Asos」(1%)。「Other(その他)」は31%。

越境ECを行う場合の購入先事業者(世界31市場対象)経済産業省の調査

越境ECを行う場合の購入先事業者(世界31市場対象)

中国の越境EC利用者は7000万人

2015年における国別の越境EC利用者数は、中国が7000 万人でトップ。2位は米国(3400万人)、3位は英国(1400万人)、4位はドイツとフランス(1200万人)。

5位以下はカナダ(1100万人)、韓国(1000万人)、日本(900万人)、イタリア(600万人)、オランダ(400万人)となっている。上位10か国の合計は1億8200万人。

主要国の越境EC利用者数(2015年)経済産業省の調査

主要国の越境EC利用者数(2015年)(単位:万人)

世界の越境EC市場規模は2020年に109兆円

2017年の世界の越境EC市場規模は、前年比32.5%増の5300億米ドルだった。1ドル=110円換算で約58兆円。

2020年まで20%以上の成長率が見込まれており、2020年の市場規模は9940億米ドル(約109兆円)になる見通し。

世界の越境EC市場規模(単位:億米ドル)経済産業省の調査

世界の越境EC市場規模(単位:億米ドル)

国別市場規模は米国と中国が圧倒的

国別の消費国としての越境EC市場規模(BtoC、2015年時点)は、米国が400億米ドル、中国は390億米ドルで他国を大きく引き離している。3位以下は英国(120億米ドル)、ドイツ(90億米ドル)、カナダ(70億米ドル)、フランス(40億米ドル)と続いた。

主要国のBtoC越境EC市場規模(2015年)(単位:億米ドル)経済産業省調査

主要国のBtoC越境EC市場規模(2015年)(単位:億米ドル)

日本から米国と中国向けに販売する越境ECの市場規模は、2017年時点で合計2兆106億円。米国が7128億円、中国は1兆2978億円。

日本・中国・米国の越境EC市場規模(2017年)

越境EC市場規模(2017年)

2021年には日本からの購入額が2か国合計で4兆412億円に達すると推計されている。

越境ECポテンシャル推計値(2017年時算出)経済産業省の調査

越境ECポテンシャル推計値(2017年時算出)

「電子商取引に関する市場調査」は各種調査機関が公表した調査データや文献、事業者へのヒヤリング結果などを経済産業省がまとめたもの。国内EC市場規模やEC化率などの数値を毎年公表している。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

ユナイテッドアローズのEC売上は235億円で16.4%増(18/3期)、EC化率は3割めざす方針

7 years 7ヶ月 ago

アパレルブランドを展開するユナイテッドアローズの2018年3月期におけるEC売上高(単体)は、前期比16.4%増の235億2500万円だった。

2017年4月に各ブランドサイトと「ユナイテッドアローズ オンラインストア」を統合。オンライン裾上げサービスなどEC関連のサービスを拡充したほか、ECの在庫を増やして販売機会損失を減らしたことなどで売り上げを伸ばした。

単体売上高は1283億5600万円。EC比率は18.3%で、2017年3月期と比べて1.6ポイント上昇している。

自社ECサイトと「ZOZOTOWN」でEC売上高の約8割を占めた。自社ECサイトの売上高は前期比34.9%増。自社ECサイトと「ZOZOTOWN」における客単価は同4.9%増、客数は13.5%増だった。

2019年3月期のEC売上高計画は、前期比1.1%増の237億7900万円に設定している。

長期目標は連結EC化率25~30%

ユナイテッドアローズは2017年4月に公表した「UAグループ中期VISION」(2020年3月期を最終年度とする中期計画)において、「実店舗の強みを活かしたEC拡大」を打ち出した。

2017年4月にブランドサイトとECサイトを統合。EC在庫の積み増しやSNSを活用した新規顧客の獲得、ECも踏まえた販売員の評価制度の見直しなどに取り組んでいる。

長期的な目標として、連結売上高に占めるEC売上高の比率を25~30%に引き上げる方針。2017年3月期時点のEC化率は16.0%だった。

実店舗に「RFID(電子タグ)」の導入も進めている。「グリーンレーベル リラクシング」や「コーエン」では棚卸し業務の時間が平均80時間から13時間に短縮できるなど生産性が向上したという。

また、「RFID」を活用し、顧客が試着したものの購入に至らなかった商品を特定。購入しなかった理由を洗い出し、商品政策に反映させるとしている。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

森永乳業のECサイトでカード情報2.3万件が漏えいか。セキュリティコードも流出の恐れ

7 years 7ヶ月 ago

森永乳業は5月9日、健康食品のECサイト「健康食品通販サイト」から顧客のクレジットカード情報約2万3000件が流出した可能性があると発表した。セキュリティコードも漏えいした懸念も明らかにしている。

5月9日現在、2017年1月10日~2018年4月24日の間にクレジットカードを使って商品を注文した約2万3000人分のカード情報が漏えいした可能性がある。

流出の懸念があるのはカード番号、名義、有効期限、セキュリティコード。

カード情報の漏えいの可能性がある「健康食品通販サイト」(画像は編集部がキャプチャ)

2018年4月24日、カード会社からカード情報が不正に使用されるといった被害が生じているとの報告を受け、同日にクレジットカード決済を停止。

第三者調査機関「Payment Card Forensics 株式会社」(PCF社)へ調査を依頼、4月25日から調査を始めた。5月末日までにPCF社から最終調査報告書を受領する予定。

EC業界におけるセキュリティ対策について

経済産業省主導の「クレジット取引セキュリティ対策協議会」(事務局は日本クレジット協会)は、2017年3月8日に公表した「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画-2017-」において、EC事業者に対して2018年3月までにカード情報の非保持化、もしくは「PCI DSS準拠」を求めていく方針を掲げた。

カード情報の漏えいの頻度が高い非対面(EC)加盟店については原則として非保持化(保持する場合はPCI DSS準拠)を推進。EC加盟店におけるカード情報の非保持化を推進するため、PCI DSS準拠済みのPSP(決済代行会社)が提供するカード情報の非通過型(「リダイレクト(リンク)型」または「JavaScriptを使用した非通過型」)の決済システムの導入を促進するとしている。

2018年6月1日に施行される「割賦販売法の一部を改正する法律(改正割賦販売法)」では、クレジットカードを取り扱うEC事業者などに対して、「クレジットカード情報の適切な管理」と「不正使用防止対策の実施」が義務付けられた。

また、独立行政法人情報処理推進機構では不正アクセス対策についての資料をまとめており、「安全なウェブサイトの作り方」などを閲覧することができる。

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

瀧川 正実

「Amazon Pay」は導入して当たり前の時代?「侍カート」が実現した標準実装のスゴさとオプション提供との違いとは

7 years 7ヶ月 ago

Amazon(アマゾン)が提供するオンライン決済サービス「Amazon Pay」の導入店舗の多くで、コンバージョンレート(CVR)やLTV(顧客生涯価値)が向上している。つまり、消費者にとって使いやすく、求められている決済方法だということ――。

こうした状況や考えの下、FIDは定期購入ができるASPカート「侍カート」に「Amazon Pay」を標準実装した。カートなどのECプラットフォーム側では「Amazon Pay」は決済手段の1つとして、オプション提供するのが一般的。「侍カート」は標準化によって、ECサイトの開設と同時に「Amazon Pay」が利用できるようになる(Amazon側での審査は必要)。

ECプラットフォーム側で「Amazon Pay」が標準実装されるのは日本初のケース。FIDは、Amazonのアカウント情報を使って他の自社ECサイトでネットショッピングができるようになる「Amazon Pay」の標準実装を通じて、「多くのECサイトの収益アップに役立てたい」と意気込む。「Amazon Pay」を導入する自社ECサイトの急拡大を予感させる今回の取り組みが実現した背景などについて取材した。 写真◎吉田 浩章

「Amazon Pay」の標準実装とは何なのか?

EC事業者が「Amazon Pay」を利用するには、「Amazon Pay」に対応したASPカートなどのECプラットフォーム、ECサイト構築パッケージなどを使う必要がある。かつ、ECプラットフォーム側ではオプションとしての提供が一般的であり、月額利用料などを徴収しているケースが多い。

また、ECサイト構築パッケージを使うEC事業者であれば、「Amazon Pay」を導入するための開発が必要となり、追加コストや新たな手間などが発生する。

今回、「侍カート」ではECサイト開設ステップの中に「Amazon Pay」を標準機能として組み込んだ。「Amazon Pay」の審査に申し込み、審査が通ればすぐに利用できる環境を整備している(既存顧客も同様)。

実際には、「Amazon Pay」の審査を、「侍カート」のシステムアカウントを発行した段階で申し込むように開設ステップの流れの中に組み込んだ。審査を通過すれば、EC事業者は手間とコストをかけることなく「Amazon Pay」を利用できるようになる。日本では初めてのケースであり、グローバルで見ても初の標準実装で、「画期的な取り組み」との声があがっている。

定期通販ECのすべてがここに 定期購入ができるEC構築ならショッピングカートASPの「侍カート」
日本で初めて「Amazon Pay」を標準実装した「侍カート」は、「Amazon Pay」のCertified(認定) Partner。スモールスタート企業から、年商10億円を突破している企業まで対応する幅広いラインナップを用意している

「侍カート」ではこれまで、「Amazon Pay」の利用には月額利用料金として5000円を導入企業から徴収していた。それを今回、標準機能として組み込むことで、「Amazon Pay」の利用料金を無料にし、決済手数料はAmazon側が定めている決済金額の4%(デジタル商材は4.5%、クレジットカード決済手数料込み)で提供する

ECプラットフォーム側で発生する「Amazon Pay」に関する開発コスト、運用コストを月額料金で回収および補塡(ほてん)していくモデルを捨て、まずは「侍カート」導入店舗の収益アップの達成につなげるという方針に転換したことを意味する。FIDはこう説明する。

FIDは「侍カート」に「Amazon Pay」を標準実装することによって、「侍カート」を利用している販売事業者のビジネスの成長を加速させることをめざしている。消費者の満足度アップがEC事業者(クライアント)の満足につながっている。消費者が求めるサービスを導入するのは必然であり、消費者の満足度を向上させる方法を考えると「Amazon Pay」の導入は必須だと考えた。自社の収益も必要なのだが、それ以上にエンドユーザーのことを考えると、「Amazon Pay」を標準実装しない理由はなかった。(FIDの和田聖翔社長)

株式会社FIDの和田聖翔社長
株式会社FIDの和田聖翔社長。FIDは定期購入に特化したASPカート「侍カート」、MAツール「MOTENASU」の開発・提供会社で、ECサイト構築から集客支援、運営のアウトソーシングまでを手がける

「侍カート」が惚れ込んだ「Amazon Pay」とは

「Amazon Pay」は、Amazonアカウントに登録した情報を使い、Amazon以外の自社ECサイトなどでログインや決済を行えるようになるオンライン決済サービス。2015年のサービス開始から約3年で、利用ECサイト数は数千社に達している。アメリカ、イギリスやドイツなどでも展開しているが、日本の伸び率は他の国と比べて高く、自社ECサイトからの利用ニーズが急増しているという。

「Amazon Pay」の利用イメージ

「Amazon Pay」を導入したECサイトでは、その自社ECサイトを使う消費者に対して次のようなメリットを提供できる。

  • 「Amazon.co.jp」のID/パスワードひとつで買い物できる
  • 住所やクレジットカード情報の入力が不要
  • Amazonアカウントへのログインと注文確定の最短2クリックで決済が完了する

そのため、「Amazon Pay」を導入したECサイトでは、①新規会員が獲得しやすくなる②CVRが向上しやすくなる③不正注文が防げるようになる④LTVが向上しやすくなる――といった効果を期待することができるという。

新規会員獲得&CVR向上に役立つ

Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長によると、あるクライアント企業では導入後に「購買率・新規顧客数がともに1.5倍になったと事例がある」と言う。初めて利用するECサイトでは、顧客情報の入力が必須。だが、「Amazon Pay」を導入しているECサイトであれば、その手間や時間を省くことができる

入力作業が面倒で買い物していなかった消費者が「Amazon Pay」の利用をきっかけに購入するようになったのではないか。情報入力が手間で買うことをやめてしまった消費者に対して、便利な買い物環境を与えることができていると思う。(井野川本部長)

また、自社ECサイトへのAmazonのロゴ掲載、「Amazon Pay」が利用できる、といった表示の部分が安心感の提供となり、商品購入につながるケースが多いというEC事業者の声もあると井野川本部長は語る。

「Amazon Pay」で商品を購入いただくと、マーケットプレイス保証の対象にもなる。それが購買の後押しになっている可能性がある。初めてのECサイトで購入するというのは、少なからず消費者の心理的ハードルが上がる。「Amazon Pay」がそこを少しでも払しょくできるといいと思う。(井野川本部長)

井野川本部長が指摘したAmazonマーケットプレイス保証とは、Amazonマーケットプレイスでの購入時に、販売事業者と購入者の間でのトラブル時において、配送料を含めた購入総額のうち、最高30万円までAmazonが保証する制度のことで、「Amazon Pay」を利用した場合には、同等の保証対象となるというもの(一部対象外となる商品・サービスも有り)。

Amazonの堅牢なセキュリティー環境

「Amazon Pay」はAmazonがアカウントやカードの不正利用を24時間365日監視しているため、不正注文を防ぐ効果もある。「Amazon Pay」を導入したことでリスク管理のコストを削減し、不正注文の被害も減ったという事例もあるという。

「Amazon Pay」はAmazonがグローバルで展開している不正検知システムを利用している。「Amazon Pay」は消費者とEC事業者の双方に安心感を提供できると考えている。(井野川本部長)

LTVの向上が期待できる

Amazonは日本で最も利用されているECサイトの1つ。そのため、Amazonアカウントに登録されているクレジットカード情報は、常にリフレッシュされ最新の状況になっているケースが多いと考えられる。

そのため、「カードの期限切れといったリスクが少ない最新情報にアップデートされた状態になっているため、『Amazon Pay』がLTV向上を期待していただける1つのメリットになっていると思う」と井野川本部長は分析する。

Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長
Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長。「Amazon Pay」は2015年5月にリリースされ、3年間で数千社が導入する規模にまで広がっている

「侍カート」利用店舗、「Amazon Pay」経由の受注件数&決済金額は大幅増加

「侍カート」は定期購入に特化したECサイト構築のショッピングカートで、サンプル提供やお試し商品の購入から本購入へつなげていくツーステップマーケティングなど、定期購入に必要案作業を自動化することに集中した開発を行っているのが特徴。

「Amazon Pay」は、定期購入などに活用できる「Auto Pay機能」(購入者が注文時に選択したクレジットカードを利用し、今後も支払いすることに同意すると、「自由に金額やタイミングを設定し、請求することが可能」「顧客へのサービス提供内容に応じて、頻度や金額などのカスタマイズが可能」というもの)を実装している。定期購入+追加購入にも対応できるため、「侍カート」との相性も良い。

「侍カート」を利用しているある事業者では、「Amazon Pay」の導入月と直近月を比較したところ、受注件数、決済金額ともに増加。そして、「Amazon Pay」の利用率、決済金額もともに増えている。

Amazon Pay導入月の受注件数&決済金額→2018年4月の受注件数&決済金額
ある「侍カート」利用サイトにおける「Amazon Pay」導入月と2018年4月度の比較

FIDの和田社長はこう言う。

「Amazon Pay」の導入によってスムーズな買い物が可能となり、従来はカゴ落ちして購入に至っていなかった消費者が商品を購入している可能性がある。

また、コンバージョンだけでなく、LTVの向上にも寄与している数値も出ている。LTVの向上は、クライアント企業が長く商売を続けていくためには必要不可欠な指標であり、「Amazon Pay」はそれに大きく貢献していると思う。

自分自身、クレジットカード情報をいろんなサイトで入力するのは手間がかかると感じるし、不安を感じて入力したくないケースもある。「Amazon Pay」の便利さ、安心感がLTVの向上に一役買っているのだと感じている。(和田社長)

ちなみに、FIDが参加したあるコンペで案件を獲得した際、発注企業から「当社はエンドユーザーの利便性などを考えると、Amazon Payを使わなければならない。だからFIDを選んだ」といった意見を言われたことがあるという。そのことを踏まえ、和田社長はこう語る。

新規顧客を獲得できなければ、リピート購入にもつながらない。まずは消費者に商品を買ってもらう必要がある。それを達成するには決済手段のバリエーションを増やすことが1つの重要な要素。それは、顧客満足度の向上、そしてゆくゆくはLTVの向上にもつながる。(和田社長)

株式会社FIDの和田聖翔社長 アマゾンジャパン合同会社 Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長
5月9日、通販ソリューション展内のFID出展ブースで行われた「Amazon Pay」とFIDのスペシャル対談で、「侍カート」による「Amazon Pay」標準実装が公表された。ネットショップ担当者フォーラム編集長の瀧川もモデレータとして参加

今後の展望

「Amazon Pay」を標準実装するECプラットフォームが増えれば、自然と「Amazon Pay」を導入するECサイトが増える。こうした流れが生まれてくると、「自社ECサイトでAmazon Payで決済するのが当たり前の時代になるかもしれない。

FIDが踏み切った標準実装は、こうした可能性を秘めているという声が出ている。事実、和田社長は今回の標準実装を機に、「侍カート」のさらなる飛躍を見据える。

開発者目線でのサービスの開発ではなく、消費者の声を聞いた上でこれからも開発を進めていきたい。たとえば、デジタルコンテンツや役務の分野。家賃の支払いなど定期的に支払いが発生するサービスに対して、今回のような仕組みが生かせる時代がやってくるはず。消費者が買い物・支払いがしやすい、よりよい社会作りを担っていきたい。(和田社長)

井野川本部長も、Amazonの進化に応じて、「Amazon Pay」も変化対応していくと話す。たとえば、クラウドベースの音声認識サービス「Amazon Alexa」に日本語対応した「Amazon Echo」などのボイスコマース分野。

現在、音声を通じて「Amazon プライム」対応商品を購入できる機能が搭載されている。それが、将来的にはさまざまな自社ECサイトの商品を、声を通じて探し、購入できるようになるかもしれない。井野川本部長はこう説明する。

今後、ボイスコマースの分野を含めて、「Amazon Pay」はいろんな使い方が出てくるだろう。実際に欧米では「Alexa」で「Amazon Pay」を使った決済サービスがスタートしている。新しい分野にも積極的に取り組んで、お客さまの利便性向上に取り組んでいく。(井野川本部長)

株式会社FIDの和田聖翔社長 アマゾンジャパン合同会社 Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長
「Amazon Pay」リリースから3年後の2018年5月。「Amazon Pay」は標準化という新たなステージに入った

【関連リンク】

瀧川 正実

アマゾン化が進むネット通販が抱えるリスク、Amazonにはない自社ECの強みとは? | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

7 years 7ヶ月 ago

オンラインで商品を販売する際、ネット上の巨大勢力Amazon(アマゾン)とパートナーシップを結ぶことはもはや避けられないでしょう。しかし、小売事業者は自社にしかない強みを保っておくことが必要です。

年に1度の小売事業者の大規模カンファレンス「Shoptalk」がラスベガス開催された際、いつも通りMacy's(メイシーズ)やWalmart Inc.(ウォルマート)、Nordstrom(ノードストローム)といった巨大企業の話が出ました。しかし、今回みんなが話したがったのは、(驚くべきことに)アマゾンについてでした。

小規模オンライン通販事業者から、伝統的な実店舗ブランドまで、みんなが同じ質問をしたのです。

アマゾンがマーケットシェアを独占するなか、自社ECサイトでの販売に意味があるのか?

他に類を見ないアマゾンの顧客数を利用して、アマゾンだけで販売した方が得策なのか?

その答えは「両方とも正解」です。

アマゾンに関しては、アマゾンを打ち負かすとか、アマゾンとパートナー組む、という単純な話ではすでになくなっています。最も確実なことは、ネット上で急速に成長しているアマゾン号に乗り込むと同時に、オンライン上での自社のアイデンティティを確立していくことです。なぜその中庸なやり方が最も確実な方法なのか、理由を解説します。

アマゾンは諸刃の剣

オンライン上の売り上げの43%を占めるアマゾンの影響を無視することは、実際は不可能です※1。今のアマゾンは15年前のウォルマートのようです。

どこからでもアクセスでき、インターネットで商品を探すときに消費者が最初に訪れる場所となっています。規模の小さな小売事業者のみならず、卸売販売業者もアマゾンに参加したいと思うはずです。

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※1 米国ネット通販市場におけるアマゾンの売上比率(編注:編集部が過去記事をもとに追記)
出典:インターネットリテイラー、ChannelAdvisor、Slice Intelligence、米国商務省
※市場シェアにはアマゾンが自社で販売した製品および、同社のマーケットプレイスで販売された製品が含まれる

しかしながら、アマゾンと組むことで払わなければいけない代償があります。多くのアマゾン顧客はアマゾンへのロイヤルティが高く、アマゾンでしか買い物をしません。そのため、自社のブランディングをアマゾン内で行っても、ロイヤルティを高めることは難しいのです。また、アマゾンは小売事業者や商品に対して忠誠心などまったく持っていません

ウォルマートと同様に、アマゾンは中間事業者です。パートナーシップを組めば、アマゾンのサイト内で販売できますが、販促用のプレミアムを得たり、バーチャルな陳列棚で良い場所が確保できたりする保証はありません。検索結果で4ページ目に表示されるような事態になったら、真剣に商品を探している消費者の目にしか止まらないでしょう。

つまり、アマゾンにすべてを委ねると、小売事業者は多くのメリットを失います。ブランディングを行い、ストーリーを伝え、消費者と関係性を築いていくといった機会を失うのです。

トイザらスが最も良い事例でしょう。2000年にトイザらスはアマゾンと10年間の独占契約をしました(編注:トイザらスの公式サイトをアマゾン内に開設し、玩具ジャンルで唯一販売業者となる契約内容だったという)。

しかし、2004年には他のおもちゃ販売業者がアマゾンに大量参入してきました。トイザらスはアマゾンでの競争力を失っただけではなく、ECのオペレーションをアマゾンに頼っていたたため、オンライン上で自社のアイデンティティを築くことができませんでした。アマゾンで売り上げが落ち込んだとき、消費者がブランドとつながる別の場所がまったくなかったのです。

このことが、トイザらスを襲った経営難の理由の1つになったとも言えるでしょう。トイザらスはかつて、大変尊敬されていたブランドでしたが、2018年には、古いやり方で失敗した犠牲者の1つになりました。

自社サイトで販売するメリット

アマゾンで販売すれば、露出も増え、ブランドを見つけてもらえる可能性が高くなりますが、思い出に残るカスタマーエクスペリエンスを提供することはできません。記憶に残るカスタマーエクスペリエンスこそが、顧客との長期にわたる関係を築いていくのです。

消費者は、興味のある商品について多くの情報を求め、気に入ったブランドとのユニークなカスタマーエクスペリエンスを期待しています。実店舗であってもオンライン上であっても同様です。ですから、自社ECサイトを持つことが極めて重要なのです。

アマゾンがブランドを最初に試してもらうための前菜だとしたら、自社サイトは5つの料理が用意されたフルコースのようなものです。ここで重要なのは、自社サイトを最大限に生かすためには、アマゾンで提供しているような面白みのない在庫表示やチェックアウト方法を提供するだけではいけない、ということです。

消費者にとって、真の目的地となる必要があります。成功している小売事業者のサイトは、多くのことを同時にうまくこなしています。ブランドのアイデンティティを示し、より多くの在庫を表示し、消費者との直接的な会話を可能にし、消費者の購買行動を表す貴重なデータを収集してます。最も大切なことは、サイトへの流入を促すだけではなく、実店舗への訪問も促進していることです。

この点において成功しているのがAldo社です。モールへ出店しているブランドが苦戦しているなか、カナダの靴メーカーであるAldoはオンライン戦略に成功し、数年前に立ち上げたサイトで売り上げが倍増しました。

2,000以上ある実店舗でもコンバージョン率が増加しています。最も成功した施策は、消費者がお店の前を通り過ぎる時、オンラインでチェックしていた商品をモバイルのアプリを通じて知らせることだったそうです。

全米中のモールに出店していないとしても、ブランドに親しみを持ってもらうためには、自社サイトを立ち上げることは不可欠です。規模の小さい小売事業者には特にメリットが大きいでしょう。

何年にもわたって、アマゾンでひっそりと販売しているカナダ・ケベック州の企業Shore Furniture(編注:家具の製造販売業者)のような卸売販売者業者にとってもメリットがあります。

オンラインで成功しようと模索していた時、Shore Furniture社の最大の特徴はカスタマーサービスだということがわかりました。第三者のベンダーでは超えることができないサービスを持っていたのです。

オンラインでお店を持つことによって、より人間味溢れる企業になり、2週間早く出産した女性のために、ゆりかごが間に合うように送付するなど、顧客のために労を厭わない企業の姿勢が強調されるようになりました。以前は大きな百貨店でしか商品を見つけられなかった消費者と、自社サイト通して直接コミュケーションできるようになったのです。

小売パートナーにもまだ販売していますが、自社サイトだけで売り上げを伸ばすことができるのは、常に変化している小売業界では非常に重要なことです。

◇◇◇

アマゾンに大きな注目が集まるなか、アマゾンだけが唯一の方法だと考えるのは簡単なことです。しかしながら、自社のECサイトを持つことでアイデンティティを確立し、消費者との関わりを持ち、強固でロイヤルティの高いファン層を作ることが不可欠です。

この先何年もアマゾンはオンラインのマーケットプレイスを独占していくかもしれませんが、アマゾンを打ち負かす努力をするにしても、アマゾンとパートナーを組むにしても、この先、小売事業者が生き残るには主導権を持つことが大切なのです。

Internet RETAILER

世界最大級のネット通販業界の専門誌「Internet Retailer」は、雑誌のほか、Web媒体、メールマガジンなどを運営。Vertical Web Media社が運営を手がけている。

Eコマースの戦略に関し、デイリーニュース、解説記事、研究記事、電子商取引におけるグローバルリーダーをランク付けする分析レポートなどを発行している。

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モール店から自社ECサイトへ強化軸を移すベガコーポレーションの戦略

7 years 7ヶ月 ago

家具ECを展開するベガコーポレーションは2019年3月期、旗艦店(自社ECサイト)の強化に取り組む。

配送費の高騰などで利益が圧迫される中、販売チャネルの軸を価格競争が起こりやすいショッピングモールから、利益率が高い自社ECサイトへシフトすることで収益改善を図る。

自社ECサイトの平均購入単価は2万1000円で、モール店舗と比べて8000円高い。また、売上高に占める販売管理費の割合は、自社ECサイトの方がモール店舗より約8%低いという。

ベガコーポレーションは今後、自社ECサイトの強化を進める

ベガコーポの今後の戦略(画像は編集部がIR資料をキャプチャ)

2018年3月期の単体売上高は前期比18.4%増の129億7700万円だったものの、営業利益は同32.2%減の5億6100万円で増収減益。大手ショッピングモール内の価格競争が激化し、コモディティ商品の値下げを行ったほか、配送会社の値上げで配送コストが上昇したことが営業減益の要因となった。

今後は自社ECサイトへの積極的な広告投資や、検索エンジン最適化などに注力する。

ベガコーポレーションの業績

17/3期と18/3期の業績(画像は編集部がIR資料をキャプチャ)

2018年3月期における自社ECサイトの売上高は約16億6100万円。EC売上高に占める自社ECサイトの比率は急速に拡大しており、2018年1~3月期(第4四半期)は前年同期比約2.5倍の19.2%となった。

自社ECサイトの年間アクセス数は前期比329%増で、2018年3月度は前年同月比約4.3倍の151万ユニークユーザー。

ベガコーポレーションの自社ECサイト「LOWYA」はアクセス数が急増している

自社ECサイトはアクセス数が急増している(画像は編集部がIR資料をキャプチャ)

なお、ベガコーポレーションは家具・インテリア市場の「トレンド LOWプライス」において、ファストインテリアのジャンルを確立するとしている。

自社ECサイト「LOWYA」のポジショニング

自社ECサイト「LOWYA」のポジショニング(画像は編集部がIR資料をキャプチャ)

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

着物の楽しさをネットで世界中に届けたい。伝統を守り革新を続ける「きもの京小町」の挑戦 | STORY of BACKYARD ─ECサイトの裏方たち─

7 years 7ヶ月 ago

「着物に興味があるけど買い方がわからない。ネットで気軽に購入できたら……」。そんな願いに応えるのが京都発祥のECサイト「きもの京小町」だ。「Enjoy!! KIMONO」をスローガンに2012年にオープンしたこのサイトは、看板商品の「着物デビューセット」をはじめ、初心者にわかりやすい独自の商品が支持されている。サイトを支える“着物愛”に迫る。

国内・海外のファンに着物を楽しんでもらうために

きもの京小町がオフィスを構えるのは、京都でも呉服業者が多く集まる室町エリア。古くからこの地で呉服卸業を営んいた同社は、京都呉服界の中でいち早くネット通販に参入した。ネットショップの運営は社内のインターネット事業部が行っている。メンバーは社員4人にパート6人。みな“着物愛”にあふれたメンバーだ。事業部をまとめる齋藤亜耶さんに話を聞いた。

きもの京小町 インターネット事業部 マネージャー 齋藤亜耶さん

齋藤さんが入社したのは11年前。最初は商品の撮影や出品や受注処理などを担当していたが、前任のWeb担当が辞めることになり、知識も経験もないのにインターネット事業部に配属、Web担当になった。業務に必要なスキルは独学で身に付けてきた。

齋藤さんの一日
9:00 出社。お問い合わせメール見る
お問い合わせに返信
10:00 サイト上でセールなどイベントを更新する
バナーやページデザインをFireworksとDreamweaverで行う
商品ページを作り込む
12:30 昼食
午後〜 セールの売上をチェック
売上の施策を立てる
発送メール処理
梱包作業
きもの京小町の看板

着物って、難しそうなイメージがあって、一歩入ってもらうのが大変なんです。そこで“お洋服と何ら変わらないものですよ”というイメージを持ってもらうために、社長が考案したのが「Enjoy!! KIMONO」というスローガンでした。(齋藤さん)

きもの京小町の帯

課題は伝統を守りつつ敷居を下げること。国内の顧客は東京、九州が多く、地元京都は5位くらい。年代は30代が多い。3月の卒業式、4月のお花見など、着物が必要になるイベントではキャンペーンを行うようにしている。一番の繁忙期は浴衣が必要とされる夏のちょっと前の6月と7月。

海外の顧客も多い。海外のモールへの出店も、世界中の人に着物を楽しんでもらいたいという思いから。

現在は海外Amazon、eBay、PriceMinisterに出店しています。以前は楽天インドネシア、楽天アメリカにも出店していました。海外出店では多言語の問い合わせへの返信や、配送事情の違いが問題になります。24時間以内に問い合わせに返答しないとお店の評価が落ちてしまうし、ちょっとした住所の不備で届かなかったり、常識のくい違いがあったり、思ってもみないトラブルがあるんですよね。(齋藤さん)

きもの京小町では、インターネット事業部でフランス語対応スタッフを雇用し、不測の事態にも対応できるよう体制を築いている。嬉しいのは海外の人に着物文化が受け入れられること。

ヒジャブを巻いたインドネシアの方が、着物を着ている写真を送ってくれたりするんです。フランスの方はファッションに敏感なので、価格が高いものも買ってくれたり……。海外の見本市に出店する時にも、現地にいるファンの方が手伝ってくださるのが嬉しいです。(齋藤さん)

高額商品が多いだけに、気を使うのは「梱包」 だ。

きもの京小町 梱包
きもの京小町 梱包
正絹のお着物は大変滑りやすくなっております。必ず水平のまま運んでいただけますよう、お願いします。

海外向けだと梱包資材で送料が高くなってしまうので、梱包には工夫を凝らしています。箱はつぶれてしまうのでビニールの方が良い。板を入れたり軽いものでクッションをかませたり……ノウハウもたまってきました。(齋藤さん)

初心者に寄り添う丁寧なコンテンツ作り

きもの京小町が他店と一線を画しているのは企画力。「最初に何を買えばいいのかわからない」という初心者のための「着物デビュー20点セット」や、メンズのためのセットなども人気だ。着用イメージをふんだんに掲載した特集ページや、動画での着こなし解説など、自社で精力的にオリジナルコンテンツを制作している。

実際に着ているところを見ていただかないと着物の良さがわからないので、正統派のモデルさんに着ていただいたイメージを中心にコンテンツを作成しています。コンテンツで心がけているのが“敷居は下げても品は下げない”ということ。最近は肩を出して着る浴衣やミニスカタイプの浴衣などもありますが、スタンダードな魅力を伝えることに注力しています。(齋藤さん)

解説動画においても、初心者は手順が1つでも違うと戸惑ってしまう。そこで、着付け小物セットがリニューアルされるごとに、新しい動画を作成している。初心者に寄り添ったコンテンツ作りが求められているのだ。

お問い合わせでも、「1人で着られますか?」と心配されている方が多いんです。動画だけではわかりにくい場合は、写真を入りのマニュアルも作ります。(齋藤さん)

きもの京小町の企画力は、オンライン上だけではなく、リアルでのイベントにも発揮されている。

「着物でどこに出かければいいのかわからない」というお声をいただくことが多いので、店舗でお茶会をしたり、着物で祗園祭や時代祭を見に行ったりといった体験的なイベントを企画しています。イベントによって、着物や浴衣を着る場を提供していきたい。物を売るだけがきもの京小町の仕事ではないんです。

そうしたイベントの際に、ネットのお客様とお店で顔を合わせるのも嬉しいこと。イベントだけでなく、きもの京小町の着物を通して、ユーザー同士の交流も生まれているそうだ。

東京で展示会をすると、お客様がお菓子持参で来てくださって、お客様同士で5時間ぐらいおしゃべりされているんです。みなさんうちで買った着物で来て下さるんですが、お客様同士で「それ可愛いですね」みたいに褒め合っていている姿を見るのはすごく嬉しいです。(齋藤さん)

いま企画しているのは、「着物で食べ放題のバイキングに行く」というイベント。きもの京小町の創意あふれるイベントによって、着物の道に一歩踏み出す人が増えてほしい。

お買い物の時にはお客様にウキウキしてもらいたい

もう1人お話を聞いたのは亀山雅代さん。亀山さんは元プログラマー。Uターンで京都に戻り、「着物に関わる仕事がしたい」という思いできもの京小町に入社した。着物が好きになったきっかけは、家族が時代劇好きだったこと。時代劇に出て来る女性の着物の色合いが綺麗だなと思っていた。

きもの京小町のインターネット事業部 お問い合わせ担当 亀山雅代さん
きもの京小町 インターネット事業部 お問い合わせ担当 亀山雅代さん

亀山さんはAmazon店を担当している。Amazonの特徴は売れるものが決まっていないこと。高価な反物も売れるし、小物などすぐに欲しい消耗品なども需要が高い。着物をネット上で販売する上で気を使うのは「色」。

着物で重要なのは何と言っても色です。商品画像は補正して、本物となるべく色が近くなるように気を付けています。誰もがわかるような色の名前を書くことも重要です。反物で高価なものは、事前に送ってお客様に見てもらうこともあります。人によっては顔が暗く見えるような色もあるので、後悔なく買い物をしていただきたいんです。(亀山さん)

着物京小町社内風景
着物京小町社内風景

また、文化の違いによっても受け取られ方も変わってくる。

着物セットは便利なんですが、こちらが在庫の中でいろいろと考えてコーディネートして送っているので、お客様から「違うものが良かった」と言われることも当然あります。嫌いな色は避けて、クールにするのか可愛くするのか、お客様の好みに合わせてお送りしても、どうしても「イメージと違う」ということはあります。関東・関西でも感覚が違います。(亀山さん)

お客様の感性と合わなかった場合は、対応できる範囲でコーディネートをし直して交換を行っている。実際に商品を見てもらうことができないネットショップで着物を売るには、事前・事後のきめ細やかな対応が重要だ。そのほかに、亀山さんがいつも心がけているのは、「お買い物の時にはお客様にウキウキしてもらいたい」ということ。

お買い物ってすごく楽しいことですよね。その気持ちをネット上でもお客様に味わっていただきたいと思っているんです。私は着物が好きという気持ちで転職したのですが、知識はまだまだ。初心者の方の気持ちがわかるというか、同じ気持ちで着物に向かっています。(亀山さん)

着物京小町社内風景

お問合わせの中で着物のTPOに関する質問は特に多い。

お客様からは、「お茶の席や、入学式などにこの着物はふさわしいものですか?」というような具体的な質問をよくいただきます。季節や格式によってもふさわしい着物は違ってくるので、自分で判断できないケースは、会長や業者さんなど、呉服のプロの知識をお借りします。

オフィスのある室町通りは呉服関係の業者が集まっているので、着物のベテランの方々に教えていただきやすい環境にあるのが幸いです。仕入れに行くのも歩きか自転車だし、メーカーによって着付けが得意なところもあれば、着物が得意なところもあって、それぞれのプロの意見を拝聴しています。(亀山さん)

通常なら店舗でサイズを図るオーダーの着物も、きもの京小町ではネットで受け付けて仕立てている。その場合にはよりシビアなサイズ確認をお客様にお願いしなければならない。

着物は実はサイズがシビアなものなんです。サイズが合っていないと格好良く見えないんですね。サイズを5種類から選べるセミオーダーからフルオーダーまで対応していますが、オーダーの際にお客様がお困りになるのは「サイズをどうやって測ればいいのか」ということ。

ご自分の着物を送っていただいて同じサイズで作ることもできますが、それがない場合は「裄(ゆき)丈」の測り方を細かくお伝えします。一人ひとりサイズは全然違うものだし、洋服とも違うサイズ感なので、丁寧に説明するようにしています。

着物京小町社内風景

最後に、亀山さんが初心者におすすめすの着物について教えてもらった。

最初はやっぱり入りやすい浴衣から始めるのがおすすめですが、浴衣を入り口としてお客様には着物にステップアップしてほしいと思っているんです。初心者なら綿の着物が良いですよ。綿だと生地が滑らずツルツルしていないので、慣れていない人でも着付けが楽です。浴衣だと夏しか着られませんが、着物ならお花見も紅葉狩りにも行けますよね。(亀山さん)

眼を輝かせて話す亀山さんを見ていると、着物文化に踏み出してみたい気持ちになってくる。こうした担当者の情熱が、京都の歴史ある着物文化を支えていくのだろう。

B.Y

B.Yは、普段表に出ないEコマースのバックヤード(受注、出荷、顧客対応)担当者を取材した“日本初”バックヤードに特化したWEBメディア。 バックヤードの人々が実践する「運用業務の創意工夫」「仕事への向き合い方」をSTORY、「バックヤード運用ノウハウ」をTOPIC、として発信している。本来Eコマースがもつ可能性を拡げ、バックヤードの人がいきいきと働けるキッカケを提供することでEC業界全体を支援している。

B.Y

大塚家具がAmazonでの販売をスタート、EC事業強化の一環

7 years 7ヶ月 ago

大塚家具は5月1日、Amazonで寝具や家具などの販売を開始した。経営計画に掲げたEC事業強化の一環。シーツやピローケース、ソファ、マットレスなど約130品目を販売している。

Amazonでの販売を通じて、既存の顧客とは異なる客層へアプローチする。

大塚家具がAmazonでの商品販売をスタート

大塚家具はAmazon内での販売をスタート(画像は編集部が該当ページをキャプチャ)

大塚家具は2017年3月に発表した「経営ビジョン」の中で、インターネットと店頭、外商が連動した「商品とサービスのオムニチャネル化」の推進を掲げている。

インターネット上での存在感を高め、OtoO施策を強化することで店舗への集客を強化するとともに、品ぞろえと価格競争力を武器にECを店舗と並ぶ第二の柱にするとしている。

2017年以降、商品紹介サイトとECサイトの統合や、EC商品の拡充を推進。9月には靴やファッションのECを展開するロコンドと提携し、家具のECサイト「LOCONDO HOME(ロコンドホーム)」を開設した。

2017年10月には会員向けのポイント制度を変更し、リアル店舗で実施してきたポイントプログラムをECサイトにも拡大。会員制度「IDCパートナーズ」のポイントを、オンラインショップ「IDC OTSUKA オンライン」で利用できるようにした。また、「IDC OTSUKA オンライン」で購入した顧客にもポイントを付与している。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

スタートトゥデイグループのテクノロジー戦略は? 新会社の久保田社長と金山CIOに聞く | 通販新聞ダイジェスト

7 years 7ヶ月 ago

スタートトゥデイ子会社の旧スタートトゥデイ工務店とVASILY(ヴァシリー)、カラクルが4月1日に合併し、スタートトゥデイテクノロジーズが発足した。グループの技術力を集結した新会社には2人の代表取締役が就任し、専門性の高い分野でも迅速な意思決定とスピード感のある経営を行うという。同社の久保田竜弥社長と金山裕樹CIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)に新会社での役割分担や経営ビジョンなどを聞いた。

スタートトゥデイテクノロジーズの久保田竜弥社長(写真左)と金山裕樹CIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)
久保田竜弥社長(写真左)と金山裕樹CIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)

――テクノロジー系3社が合併した。

金山「3社が合併した理由は攻めと守りの両面がある。攻めの部分は機能的に似ている3社がノウハウの共有や人材交流を含め、テクノロジーと生み出すモノの価値をより高めていくためには、各社で技術開発を行うよりも、一丸となった方が良いと考えた。まずは、主にソフトウエア開発の技術力向上とお客様価値の増大に取り組む」

――守りの部分は。

金山「テック企業の情報の取り扱いは非常にセンシティブな問題だ。3社で統一された情報セキュリティーレベルを設定するなど、コンプライアンス意識をさらに高める必要があった。それには、1社の方が効率的で、かつリスク管理がしやすいと判断した」

――新会社でのふたりの役割分担は。

久保田「スタートトゥデイ工務店のときから人工知能や機械学習というワードは出ていたし、現場からもリクエストがきていたが、既存事業の開発に時間をとられ、なかなか手を付けられない状況だった。今回の合併で足りない部分を補えるため、新しい技術の開発などは金山に任せる。自分自身はこれまで通り、既存事業を大きくしていくことに全力をつくす。昨年はPBや『おまかせ定期便』とひとつのサービスで会社が作れるくらいの規模のローンチが相次いだ。PBも始まったばかりで、ゾゾスーツの供給体制やPBの国内外での販売など、取り組むことは多い。ただ、ECチャネルでの販売手法がこの先ずっと続く保障はない。次のトレンドの発掘などは金山に依頼して準備を進めてもらう

――業務範囲が増えるのか。

金山「ヴァシリーでも新規事業創出や研究開発を行っていた。人員と予算をもらってスケールアップして取り組めるようになり、研究結果を披露する場ももらえる。業務範囲というよりは大きな舞台に立てるチャンスが広がった。『ウェア』は1000万人の利用者がいるが、『アイコン』は200万人とまだまだ規模が小さく、“地産地消”という感じだった。『ゾゾタウン』と連携すれば決済や物流、ゾゾスーツにPB販売もあり、可能性が広がる」

――スタートトゥデイ研究所のプロジェクトリーダーも務める。

金山「プロジェクトリーダーは研究員が気持ちよく研究できる環境を整え、研究されたものが実用化できるように導いていくのが役目だ。予算も含めて健全に運営できるようにマネジメントしていく」

――新会社の人員は。

久保田「213人でスタートした。3社の人員を合わせただけでなく、3~4月に採用を積極化し、新卒者も採用した。職種はエンジニアとデザイナーが大半を占めている。拠点は青山と幕張、福岡の3カ所に分かれており、例えば、『ゾゾタウン』の開発はカスタマーサポートや物流拠点、ブランドEC支援の部隊がいる幕張に置き、コミュニケーションをとりやすくしている」

――研究所の体制は。

金山「15人程度でスタートしている。旧カラクルの10人は福岡に、ヴァシリー出身の5人は青山を拠点にしている」

――研究所を運営する上でのKPIは。

金山「最終的にはどのくらい事業にインパクトを与える発明ができるかが重要で、そのためには特許の申請数や基となる論文の数も大事にしたい。機械学習や画像認識などコンピューターサイエンス分野の学会に論文を通し、その内容を特許としてパッケージ化し、現実のビジネスに実装して価値を生むことが大切だ。1~2年で結果が出るとは思っておらず、腰を据えて取り組める体制を作っていきたい」

――研究範囲は。

久保田「スタートトゥデイグループは現状、ECやメディア事業にとどまっているが、もっとファッションの範囲を大きく見ており、例えば、服を作る工場のラインや原料になる綿の栽培をいかに効率化するかとか、素材の研究やデザインプロセス、もっと言えば、物流倉庫のロボット化、自動運転なども事業対象の範囲に入ってくるかもしれない。ファッションという大きな軸で見たときに、事業の対象になりそうな部分で必要な研究開発には取り組みたい。領域が広くなって研究員がいなければ、求める知見のある人を採用したり、外部の有識者と共同研究していけばいい。何を優先的に取り組むとか、研究テーマにするかどうかは、基本的には当社経営陣と前澤で判断するが、その根底にはファッション産業を盛り上げたいという気持ちがある」

――今期、新会社として優先することは。

金山「まずは組織だ。200人以上のメンバーが集まっており、各自が自分の能力を十分に発揮できる組織、環境作りを急ぎたい」

久保田「当社はテクノロジーの会社ではあるが、根底にファッションがあるからこそユニークだと思う。技術の力でファッションの課題を解決する企業文化やミッションを発信し、共感する人が集まって、より強い組織が作れるようにしたい」

――海外拠点も増えていきそうだ。

金山スタートトゥデイグループはPB販売を通じてグローバルカンパニーへと成長し、10年後の取扱高は国内よりも海外の方が大きいくらいでないといけない。そういう意味でも、世界中どこにいても同じ水準でストレスなく仕事ができる環境は大事。外国籍の社員が増えてくる中で、いま働いている人の意識改革も必要になる」

通販新聞

売上20倍を実現したメルマガ事例!? 「セグメント」と「A/Bテスト」がCVアップに欠かせない理由 | “本気の”CVRアップ実践講座

7 years 7ヶ月 ago

“本気”のCVR実践講座・第5弾のテーマは「メールマガジン」です。初回購入者に、2回目も購入してもらうために活用したいのが「メルマガ」。メルマガの効果を最大化させる方法を“本気”で考えます。 
キャラクターデザイン◎材井千鶴 イラスト◎宮川綾子

ただなんとなく送っているメルマガに効果なし

ほとんどのECサイトが会員にメルマガを配信しているでしょう。 しかし、その多くはユーザー全員に同じ情報を配信し、結果の検証をする時間もなくメルマガを送信し続けています。ユーザーにとっては、自分自身に関係のない情報を何度も受け取ることになるため、次第に興味がなくなり、やがて開封すらしなくなります。そうして、メルマガの効果は薄れていくのです。

一方、メルマガをうまく売上UPにつなげているECサイトは、PDCAサイクルを効率的に回しています。どのユーザーに対して、どういう目的で、どういう情報を提供するのかを決めた上で、細かなテストを行い、結果を分析して次の配信に活かしています。 つまり、メルマガをユーザーのCVアップにつなげているECサイトは、「セグメント」と「A/Bテスト」を活用しているのです。

セグメントとは、ユーザーを年齢や性別、地域、購入商品などの属性によって配信対象を分けることを意味します。 またA/Bテストとは、クリエイティブをAパターン、Bパターンの2種類用意し、配信対象のユーザーを半分ずつに振り分けて、どちらのパターンの方がより高いクリック、CVが得られるかを検証する方法です。 このセグメントおよびA/Bテストを行うことで、メルマガをCVアップにつなげることができます。

HTML形式のメルマガで、購入意欲の高いユーザーにセグメントした上で、コンテンツの掲載順序を変更したA/Bテストを行い、売上が20倍になった事例をご紹介します。

メールマガジン
メルマガは、もう売上への
効果がないのでは・・・?
そんなことはありません!「試して」から判断しましょう!

事例その①
コーヒー豆とコーヒーメーカーを販売しているショップの場合

このECサイトが取り扱うのは、コーヒー豆と専用メーカーです。コーヒーメーカーは1万円以上の高額商品です。 まずはセグメントを行います。

  1. このコーヒーメーカーが活躍するのはコーヒー豆があってこそ。 なので、まずは「コーヒー豆を購入したことがある人」にセグメントします。
  2. さらに、コーヒー豆とコーヒーメーカーも購入しているユーザーの購入実績を分析すると、「約7割のユーザーがコーヒー豆を購入してから1か月以内にコーヒーメーカーを購入している」という傾向がわかりました。 そこで「コーヒー豆を購入してから1か月以内の人」にさらにセグメントします。
  3. そして最後に、コーヒーメーカーは特別価格での販売となるため、すでにコーヒーメーカーを購入している人は除外します。

このセグメントしたユーザーをランダムに半分ずつに振り分け、メルマガに掲載するコンテンツを下記のAとBで出し分けるテストを行いました。

「メルマガ」ABテスト
Q.どちらの結果が良かったでしょうか?
A
コーヒー豆と専用のコーヒーメーカーを
販売しているショップの場合・・・
セグメント…コーヒー豆を購入したユーザー
「コーヒー豆」がより美味しく
引き立つ「コーヒーメーカー」が今なら特別割引
「コーヒー豆」はいかがですか?なくなっていたら買ってくださいね。
カート
カート
1
2
3
4
5
B
「コーヒー豆」がより美味しく
引き立つ「コーヒーメーカー」が今なら特別割引
1
「コーヒー豆」はいかがですか?なくなっていたら買ってくださいね。
2
当店のコーヒー豆を美味しく淹れられるコーヒーメーカーは
こんな商品
当店のコーヒー豆を美味しく淹れられるコーヒーメーカーは
こんな商品
カート
3
4

A案は、

  1. コーヒー豆がより美味しく引き立つコーヒーメーカーが今なら特別割引
  2. 「カート」
  3. コーヒーメーカーはこんな商品
  4. 「カート」
  5. コーヒー豆はいかがですか?なくなったら買ってくださいね。

という、コーヒーメーカーがすぐ購入できる「セール押しのシナリオ」です。

B案は、

  1. コーヒー豆がより美味しく引き立つコーヒーメーカーが今なら特別割引
  2. コーヒー豆はいかがですか? なくなったら買ってくださいね。
  3. コーヒーメーカーはこんな商品
  4. 「カート」

という、コーヒーメーカーの必要性を順序立てて紹介した「ストーリー重視のシナリオ」としました。

A案とB案はコンテンツの掲載順序を変更しただけです。 では、どちらの結果が良かったと思いますか? 結果は……

  • A案の経由売上:2万円
  • B案の経由売上:40万円

なんと約20倍もの違いがありました。商品が欲しければすぐにカートに入れることができるA案よりも、最後までメールを読まなければカートに入れられないB案の方が良い結果となったわけです。

この結果からわかるのは、「この店のユーザーは高額商品を購入する際、しっかり内容を読んで吟味し、そして価格に納得して購入する」ということです。 このA/Bテストから、他の高額商品を提案する際も、ストーリー立てて紹介し、カートを下部に設定するようになりました。

Bはユーザーがコーヒーメーカーの良さをストーリーによって理解できた
ユーザー

事例その②
美容系サプリメントを販売するショップの場合

A/Bテストの事例をもう1つご紹介します。 美容系健康食品を販売する会社のメルマガ(HTML形式)で、500円モニターキャンペーンのファーストビューのイメージを変更するA/Bテストを実施しました。

このECサイトでは、メインユーザーとして50代女性のペルソナを作っていました。 ただ、この美容系商品に関しては「年代別にお悩みが異なるのでは?」という仮説のもと年代別のセグメントを行い、メルマガを検証することにしました。

  • A案……その美容系健康食品を活用した未来像をイメージさせるキレイな40代女性のビジュアルをファーストビューにしました。
  • B案……モニターキャンペーンの「500円」押しで、女性ビジュアルは入れずに価格と商品画像のみのファーストビューにしました。

そして、この商品のターゲットとなり得る40代女性、50代女性、60代以上女性をセグメントし、3回に分けてA/Bテストを実施しました。

「メルマガ」ABテスト
Q.年代別に違いはあるでしょうか?
A
健康食品を販売しているショップの場合・・・
セグメント…「40代女性」「50代女性」「60代女性」
「40代女性」
ユーザー
カート
B
カート
サプリ
サプリ
キレイな40代女性の
ビジュアル
モニターキャンペーンの
500円押し
¥500

では、どちらがCVにつながったと思いますか? 実は、このケースでは年代別に異なる結果が出ました。CVが多かったのは、

  • 40代女性はA案
  • 50代女性、60代以上女性はB案

という結果だったのです。

一般的に健康食品や化粧品のランディングページでは、ファーストビューに未来像をイメージさせる女性のビジュアルを入れます。 そうすることで、商品を使うことへの期待値を高め、ページを読了してもらい、CVへとつなげていきます。

今回、40代女性に関してはそのシナリオ通り、A案の方が良い結果となりました。しかし、50代女性と60代以上女性では価格をアピールしたお得感押しのB案が良い結果となりました。

考察①:女性モデルの年代

この結果に至った理由として考えられるのは、まずは女性モデルの年代です。40代女性の写真を使用したことで、まさに同年代にあたる40代女性は自分ごと化され、50代以上の女性にとっては、イメージしづらかったのではと考えました。

考察②:件名とファーストビューの関係

そしてビジュアル以外に考えられる要因が、件名とファーストビューとの関連性です。今回のメルマガは開封率アップをねらい、下記のようなお得感を訴求する件名にしました。

<<○○様への特別なご案内>>500円モニターキャンペーン

その件名の答えとしてB案の方がわかりやすく、50代、60代以上の女性の購入につながったのではと分析しました。 一方で40代女性は「お得であっても不要なものは購入したくない。説得材料や納得感があってこそ購入する」というところからもA案が良かったのではないかと考えました。

ファーストビューで
自分の未来を想像した。
A
「50代女性」
ファーストビューにより
すぐにお得さが理解できた。
B
「60代女性」
B
ファーストビューにより
すぐにお得さが理解できた。

この結果を受けて、商品によっては年代別にアプローチを変えること、自分ごと化してもらえるような写真の選択、また件名とファーストビューとの関連性を重視してクリエイティブを作るようになりました。

A/Bテストを成功させるコツとは?

最近はメルマガ配信システムも高機能になり、セグメントやA/Bテストも簡単に実施できるようになっています。セグメントをした上で細かなA/Bテストを行うことは、ユーザーの傾向を知ることができ、CVアップへとつなげることができます。「メルマガでは、効果が見込めなくなってきている」。あなたがもしそう思っているなら、セグメントやA/Bテストを行い、PDCAを効率的に回してください。

ただ1点、A/Bテストを実施する際の注意点があります。それは、今回の事例のようにA/Bテストにおいて変更する箇所は1つだけにすることです。複数箇所を変更すると、どの部分が結果に影響したのかが判断しづらくなります。1箇所だけの変更を繰り返しながら、よりCVにつながるクリエイティブを見つけて下さい。

一生懸命時間をかけて作ったメルマガでも、結果を検証せず全配信を繰り返していると、次第にユーザーが離れてしまいます。日々のメルマガ作業を価値ある時間にするためにも、ぜひテスト検証をお試しください。

◇◇◇

次回の本気シリーズは「エントリーフォームの最適化」。 ECサイトにおいて、CVアップのためにはランディングページや商品ページのクリエイティブ改善に注目しがちですが、それと同じくらい大切なのが、買い物かごに入れてから購入完了するまでの流れです。

実店舗とは異なり、ECサイトでは、買い物かごに入れてからも多くのユーザーが離脱してしまっています。次回の本気シリーズは「ユーザーの情報を入力し、購入完了までスムーズに促すテクニックとは?」。お楽しみに。

fcafe eCommerce Navigator

株式会社エフカフェ

EC運用支援サービスのパイオニアとして、日本および中国でeコマースサイトの運営代行、コンサルティングサービスを13年以上展開。
メーカーや大手小売りを中心に、サイト運用に必要なサービス、売上向上に向けたトータルな施策提案をワンストップで提供しています。

現在はペルソナ設計、ユーザーテスト、売上/アクセス分析など定量・定性データ分析部門を強化。そこから導き出される、サイトの課題とターゲットの明確化により、中長期にわたる顧客育成と売上向上を目指すサービスを提供。

「お買い物」を「科学」することで、再現性を持った「売る」技術を蓄積しており、現在日本、中国においてパートナー様にサービスを提供しています。
この「売る」という力、ノウハウは今後ASEANを始め、世界中にサービス提供していきたいと考えています。

株式会社エフカフェ

「厳密なABテストをやろうとしても無理」2代目ジャパネット流・仮説検証の極意とは?【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

7 years 7ヶ月 ago

いわゆるWebマーケティングをやっていると、精度にこだわってしまいますよね。しかし、ジャパネットたかたの高田旭人社長が意識していることは「即実行」。「80点を100点にするのに労力をかけるより、80点を3回やって2勝1敗の方がいい」と語ります。自社の強みと風土を考えた動きを。

「少品種多量販売」という戦略

ジャパネットが93%の商品をやめたワケ | プレジデントオンライン
http://president.jp/articles/-/25023

まとめると、

  • 現実の販売では、異なるポイントはいくつもあり、どのポイントが効いたかがわからない。厳密なABテストをやろうとしても無理
  • 80点を100点にすることに労力をかけるより、80点を3回やって2勝1敗の方が良い
  • 反省と修正はすぐに一緒に行うべき。時間をかけすぎるのはもったいない

僕は「同じ意見でも、Aさんにはイエス、Bさんにはノーって言うことはあるよ」と言っています。仮説を考え検証して結果も出すAさんなら、その意見は根拠があると思って任せます。でも思いつきで実績もないBさんだと、その意見には突っ込みますね。

─ジャパネットたかた 高田旭人社長

「自分の意見が通らない」と思っている人は、Bさんのパターンが多いのでは? 考えたつもりでもその内容が甘ければ通りません。いい失敗をするためにも仮説を考えて検証するサイクルを素早く回しましょう。

物販系よりもサービス系が伸びています

電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました~国内BtoC-EC市場規模が16.5兆円に成長。国内CtoC-EC市場も拡大~ | METI/経済産業省
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180425001/20180425001.html

まとめると、

  • 平成29年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、16.5兆円(前年15.1兆円、前年比9.1%増)
  • BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は317.2兆円(前年291.0兆円、前年比9.0%増)
  • フリマアプリ市場規模は4,835億円(前年3,052億円、前年比58.4%増)に急増。わずか5年で5,000億円弱の巨大市場に成長

依然として国内のEC市場も伸びており、越境ECも伸びています。図にあるように物販系と比較して、サービス系分野(旅行、飲食、理美容など)は伸び率が高く、配送を伴わないこれらの分野はまだまだ伸びしろがありそうですね。

サイズに悩まなくなる未来に期待

なぜゾゾスーツは変更になったのか?スタートトゥデイ前澤代表が説明 | Fashionsnap.com
https://www.fashionsnap.com/article/2018-04-27/zozosuit-new/

ゾゾ前澤社長が「採寸スーツ」刷新に込めた夢 | 東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/218829

ZOZOSUITが普及した後の店頭の役割 -- サイズの悩みが解決された世界で私たちは何を思う? | 商業界オンライン
http://shogyokai.jp/articles/-/669

ZOZOSUITに思うこと | COMEMO
https://comemo.io/entries/7255

まとめると、

  • 旧ゾゾスーツ(真っ黒)はセンサー方式で大量生産に向いておらず、白いドットマーカーを撮影する方式に変更した。新スーツ(水玉)は製作費が1着あたり1,000円と量産向き。この変更により、2018年3月期決算で14億円の減損損失と2億6300万円のたな卸資産評価損を計上した
  • 「サイズが合う」ことと「気に入る」「似合う」ことは別なので、サイズが合えば買うとはかぎらない
  • ファッション業界はアナログな業界だが、新しいテクノロジーを恐れてはいけない

国によって異なっていた洋服の単位が統一され、たくさんの人がサイズの悩みから解消されることは、消費者個人だけでなく販売員や企業にとっても喜ばしいことのはずです。不満が一つ解消される可能性が生まれたのですから。「よく分からないけど何か怖い」と恐れて最新状況に蓋をするのではなく、知識を仕入れてワクワクする側にぜひ立ってほしいと思います。

商業界オンライン

新スーツと旧スーツの違いに驚いた人も多いですよね。未来的なものからレモンスカッシュに変わってしまったんですから(笑)。しかし、引用文中に書かれている通り、全世界共通のサイズ問題が解消されるとなれば、そのあたりには目をつぶって新しい技術に期待したほうが良さそうです。普及した時にどのような未来が訪れるのか? 今のうちから考えておきましょう。

EC全般

ネットショップの価格競争対策!「値下げせずに売る」ために「絶対必要」な考え方とは ? | ECコンサル坂本のブログ「ECバカ一代」
https://www.commerce-design.net/blog/archives/3188

ネットスーパーで収益を上げる秘訣 -- 単に「タッチポイントを増やす」で始めると大変なことに | 商業界オンライン
http://shogyokai.jp/articles/-/660

値下げをすれば売れそうな気もしますが、実はそんなこともなく、自分たちの首を絞めるだけのことですよね。

ポイント付与で「物流コスト減」「遅延防止」を実現したLOHACOの新たな試みとは | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/5357

アマゾン「当日配達ドライバー」の過酷な実態 | 東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/217681

宅配大手のバイパスへ、運送業者が「ラストワンマイル組合」設立 | 通販通信
https://www.tsuhannews.jp/51215

「ロボネコヤマト」第2フェーズへ、"ドライバーがいない"宅急便の実証実験 | IoTニュース
https://iotnews.jp/archives/92745

配送関連をまとめて。負担だった配送でポイントが付くのは嬉しいですし、ロボットもどんどん進化しています。

【超初心者向け】Web集客の基礎から応用までガッツリまとめました。 | manablog
https://manablog.org/web-marketing-knowledge/

まとまっているのはとってもありがたいですが、こんなにあるのかとウンザリする人もいるのでは。

注目ではなく「対話」の時代へ。 マーケター必見、主要SNSのアルゴリズムまとめ | Social Media Lab
https://gaiax-socialmedialab.jp/post-57288/

気の利いた面白いことを言わなくても、このあたりを知っていれば効果が出るかも。

今週の名言

「山田工業所の鍋をトラックいっぱい使ってるんだ」という会社がこの間来て「悪いけど安くしてくれ」と言うから、じゃあヨソの鍋使ってくださいと。ウチは値段をまけることはできない。一生懸命作って1日にできる枚数は同じ。オートメーションでどんどんできるのと違って、残業やらせて多く作ると1枚のコストが高くなっちゃう。そういうものを、まけてくれということ自体が、私はもうダメなんですね。

横浜中華街のプロに選ばれる中華鍋の専門メーカー「山田工業所」さんから教わったこと | メシ通
https://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/noriki-washiya/18-00040

たくさん買ってくれるからといって値下げをしないといけない理由なんてないですよね。自分たちの価値と信念を曲げなければ信頼が生まれるはず。

森野 誠之

運営堂

運営堂代表。Web制作の営業など数社を経て2006年に独立後、名古屋を中心に地方のWeb運用を支援する業務に取り組む。現在はGoogleアナリティクスなどのアクセス解析を活用したサイト・広告改善支援を中心にWeb制作会社と提携し、分析から制作まで一貫してのサービスも開始。豊富な社会・業務経験と、独立系コンサルタントのポジションを活かしてWeb制作や広告にこだわらず、柔軟で客観的な改善提案を行っている。理系思考&辛口の姿勢とは裏腹に皿洗いを趣味にする二児のパパ。

森野 誠之

通販・EC専用商品で再配達削減の啓蒙&ラベルレスで廃棄物削減[アサヒ飲料の取組]

7 years 7ヶ月 ago

アサヒ飲料は5月22日、通販の再配達削減を呼びかけるメッセージを外装ダンボールに印字した、通販専用のミネラルウォーター「アサヒ おいしい水 天然水 ラベルレスボトル」を発売する。

環境省が推進する地球温暖化対策プロジェクト「COOL CHOICE」に賛同。ダンボールに「COOL CHOICEできるだけ1回で受け取りませんかキャンペーン」のロゴを記載する。

アサヒ飲料は通販の再配達削減を呼びかけるメッセージを外装ダンボールに印字した、通販専用のミネラルウォー「アサヒ おいしい水 天然水 ラベルレスボトル」を発売

ナチュラルミネラルウォーターの外装箱

PETボトルのロールラベルも削減する。原材料名などは外装ダンボールに印刷し、商品ごとに記載が必要なリサイクルマークなどはタックシールでPETボトルに貼付した。

ロールラベルの削減により、ラベルに使用する樹脂量を約90%削減できるという。

「アサヒ おいしい水 天然水 ラベルレスボトル」の内容量は600mlと1.9Lの2種類。希望小売価格は600mlボトルは24本入りは2786円、1.9Lボトルは6本入りで1380円。

販売チャネルは「Amazon.co.jp」に限定し、試験的に販売する。

アサヒ飲料が通販専用商材で販売するラベルレスのナチュラルミネラルウォーター

ラベルレスのPETボトル

アサヒ飲料はこれまで、環境負荷低減の取り組みとして、植物由来原料のオールバイオ資材を使用した「三ツ矢サイダー」を2016年に発売。2018年1月には、物流の効率化や環境負荷の軽減を目的に「アサヒ飲料群馬配送センター」を竣工させている。

政府は宅配便の再配達率13%めざす

宅配便の再配達削減をめぐっては、政府が取りまとめた「総合物流施策推進プログラム」において、再配達率を現在の約16%から2020年までに13%程度へ引き下げる目標を掲げている。

国土交通省や環境省は、宅配ボックスの設置を促進しているほか、「COOL CHOICE」などを通じて企業や消費者に再配達削減を啓発している。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

通販・ECの返金をセブン-イレブンや銀行ATMで受け取れる口座不要の「現金受取サービス」

7 years 7ヶ月 ago

セブン&アイホールディングスグループは5月7日、企業から個人に送金する現金を、銀行口座を介さずセブン銀行ATMやセブン-イレブンのレジで受け取ることができる「現金受取サービス」を開始した。

グループを横断した総合通販サイト「オムニ7」では赤ちゃん本舗、イトーヨーカ堂、そごう・西武、ロフト、セブンネットショッピングでの返金対応のほか、千趣会やニッセン、エアークローゼットなどがサービスを導入する。

セブン&アイホールディングスグループが始めた、銀行口座を介さずセブン銀行ATMやセブン-イレブンのレジで受け取ることができる「現金受取サービス」
銀行口座を介さずセブン銀行ATMやセブン-イレブンのレジで受け取ることができる「現金受取サービス」(画像は編集部がセブン・ペイメントサービスのHPからキャプチャ)

全国2万4000台以上のセブン銀行ATMと、2万店を超えるセブン-イレブンのレジで24時間365日サービスを提供。ネット通販の返品に伴う返金など、企業から個人への送金機会が増える中、より簡単に現金を受け取りたいという消費者のニーズに対応する。

消費者が「現金受取サービス」を利用するには、電子メールなどで企業から送付された番号をセブン銀行ATM に入力。紙幣はATMで受け取り、硬貨はレジで受け取る。

硬貨は電子マネー「nanaco」へのチャージや、「セブン-イレブン記念財団」に募金することも可能。送金時に銀行口座を介さないため、企業は顧客情報の収集や管理の手間が不要になる。

サービスの導入については、セブン・ペイメントサービスのホームページで問い合わせを受け付けている(HPはこちらをクリック

セブン&アイホールディングス傘下のセブン銀行、セブン-イレブン・ジャパン、セブン・ペイメントサービスが連携して取り組む。セブン&アイホールディングスグループによると、こうしたサービスは日本初。

セブン&アイホールディングスグループが始めた、銀行口座を介さずセブン銀行ATMやセブン-イレブンのレジで受け取ることができる「現金受取サービス」
ATM画面の遷移イメージ

「現金受取サービス」を5~6月にサービス開始予定の企業は以下の通り。

赤ちゃん本舗、イトーヨーカ堂、エアークローゼット、JM、助太刀、セブンネットショッピング、千趣会、そごう・西武、ラクサス・テクノロジーズ、リアルワールド、ロフト、京浜急行バス、ジェイアールバス関東、北海道中央バス、名鉄バス、IoTスクエア、アクセスプログレス、アフラック生命保険、SMBCコンシューマーファイナンス、ニッセン、三井住友海上火災保険、リブセンス。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

URLから決済できるペイパルの新サービス「PayPal.me」、中小企業などに向け提供

7 years 7ヶ月 ago

PayPal Pte. Ltd.(ペイパル)は4月27日、URLを通じて決済・請求を行う中小企業・個人事業主向けサービス「PayPal.me」の提供を始めた。

「PayPal.me」は、ソーシャルメディア上での決済・請求を簡単にするサービス。リンクを作成し、Eメール、SMS、インスタグラム、FacebookなどのSNSでシェアすることで、受取った相手は、モバイルに最適化された画面から簡単に支払うことができるというもの。

EC事業者は、店舗名、ブランド名、商品名などオリジナルの専用URLを作成することができる。

ペイパルが始めたURLで決済ができる新サービス「PayPal.me」

「PayPal.me」の利用イメージ

URLをクリックした消費者は、ペイパルにログインして支払いを行う仕組み。ペイパルアプリ内からも支払いが可能。

ソーシャルメディアを活用したネット通販などの活用を見込む。「PayPal.me」のリンク作成にはビジネスアカウント、プレミアアカウントが必要となる。

初期費用・月額手数料・新規登録は無料。

ペイパルが始めたURLから決済できるペイパルの新サービス「PayPal.me」の仕組み

「PayPal.me」の利用方法

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

瀧川 正実

スタートトゥデイの商品取扱高は2700億円を突破、2018年度は3600億円を計画

7 years 7ヶ月 ago

スタートトゥデイの2018年3月期における商品取扱高は、前期比27.6%増の2705億4300万円だった。期初計画に対する達成率は100.2%。出店ショップ数と購入者数は2桁成長が続いている。

スタートトゥデイの事業は主に、ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営する「ZOZOTOWN事業」と、他社の自社ECサイトの構築・運用を受託する「BtoB事業」がある。

それぞれの商品取扱高は、「ZOZOTOWN事業」が同28.3%増の2629億2000万円、「BtoB事業」は同21.2%増の75億3600万円だった。

スタートトゥデイの2018年3月期における商品取扱高は、「ZOZOTOWN事業」が前期比28.3%増の2629億2000万円、「BtoB事業」は同21.2%増の75億3600万円
商品取扱高の推移(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

「ZOZOTOWN」の出店ショップ数は、期末時点で同16.5%増の1111店舗。過去1年以内に1回以上購入したアクティブ会員とゲスト購入者の合計人数は、第4四半期(2018年1-3月)時点で前年同期比14.2%増の722万3227人だった。

アクティブ会員の68%が女性。平均年齢は男性が31.5歳、女性は33.2歳だった。デバイス別の出荷比率はスマートフォンが83.3%(第4四半期実績)。

スタートトゥデイのアクティブ会員属性
アクティブ会員属性(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

「ZOZOTOWN事業」は「受託ショップ」「買取ショップ」「ZOZOUSED」の3つの事業で構成されている。ブランドから商品の在庫を預かり、受託販売を行う「受託ショップ」の商品取扱高が全体の91.2%を占めている。

2021年3月期に商品取扱高7000億円へ

スタートトゥデイは、2019年3月期における商品取扱高の計画を前期比33.1% 増の3600億円に設定した。BtoB事業の取扱高を100億円に引き上げるほか、プライベートブランド「ZOZO」で200億円の売り上げをめざす。

プライベートブランドの商品取扱高の計画は、2020年3月期が800億円、2021年3月期は2000億円。

中期計画では、2020年3月期に商品取扱高5080億円、2021年3月期は7150億円をめざすとしている。

スタートトゥデイの2019年3月期の事業別目標値
2019年3月期の事業別目標値(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

「手間なく」「低コスト」でSNSユーザー300万人をECサイトの誘導&認知アップに活用できる「RoomClip」とは

7 years 7ヶ月 ago

月間約300万人が利用するインテリア・住まいのSNS「RoomClip(ルームクリップ)」が、「楽天市場」店舗にSNSユーザーを誘導し、ECサイトの認知度・集客力の向上を支援するEC向け支援サービスを始めた。。「業務の手間を増やしたくない」「低コストで新しいことをやりたい」「価格競争を回避したい」――こうしたEC事業者の要望に応えるSNSを活用した集客支援サービスで、ECサイトの集客や売上増加に成果を上げる企業が増えているという。

インテリア・住まい業界の“クックパッド”と呼ばれる「RoomClip」が始めたEC企業向けの支援策とは? SNS広告やインフルエンサーマーケティングとは一味違う、ユーザー同士の“共感”を軸にした送客サービス「RoomClip おすすめショップ」(開発・提供はルームクリップ株式会社)を取材した。

「RoomClip おすすめショップ」がEC事業者に提供する価値とは?

「RoomClip」はインテリアや家具、家電、雑貨、ペット用品など、住まいや暮らしに関わる写真を投稿したり、「いいね!」やコメントで交流したりするSNS。2012年5月にサービスを開始した。

ユーザーが投稿したコンテンツ(UGC/User Generated Contents)を活用し、住まいに関するアイテムへ興味を抱くユーザーが集まる一大コミュニティーとなった「RoomClip」。こうしたUGCを活用したコミュニティーは、他ジャンルでも広がっている(下表参照)。

表 主なジャンル特化型のUGC活用サービス
インテリア・住まい関連 RoomClip
グルメ 食べログ
レシピ クックパッド
コスメ・美容 @cosme
ファッションコーディネート WEAR
観葉植物・ガーデニング GreenSnap

「RoomClip」は現在2018年2月時点で、月間利用者数は約300万人ユーザーの82%は女性投稿写真は累計約300万枚月間の閲覧写真数は5.4億枚を超える。

インテリア関連のトレンドを発信する存在となっており、2014年以降、出版社に協力する形で「RoomClip」に投稿された写真を使ったインテリア雑誌を合計15冊出版している。ダークブラウン系や無骨なイメージの家具などを配置した「男前インテリア」のブームを創出したこともある。

出版社と共同で出版した雑誌は計15冊
出版社と共同で出版した雑誌は計15冊

こんな「RoomClip」の主なユーザー層のペルソナについてルームクリップの川本太郎取締役は次のように説明する。

「RoomClip」の主なユーザー層は、自分の欲しいものに対してこだわりが強く、美意識が高いのが特徴。DIYに抵抗が少なく、理想の住まいを自分で作ろうという意欲も持っています。そして、地方や郊外に一戸建てを持ち、インテリアへの関心が高い30~40代の女性が多いです。(川本取締役)

実例写真数300万枚
家での工夫、キッチン、趣味用品、家具、家電などの実例写真が、エンドユーザーから投稿される
80%以上が女性ユーザー、30歳以上が70%弱、60%が子持ち層
暮らしや住まいにこだわりが強く、可処分所得の多い30~40代女性を中心に幅広い支持を得ているという。家事や仕事のスキマ時間、移動時間、子どもが寝た後の時間など、自分だけの大切な時間に使われている

家具、ソファ、家電、住宅設備(リフォームなど)、DIY、日用品、雑貨、文具、調理器具(キッチン回り)、冷蔵庫の保存容器、ベランダガーデン、ガーデニング、表札、ポスト、宅配ボックス、子ども部屋、子ども玩具、自転車、服の収納、カーテン、ペット、時計、カレンダーなど、住まいに関わるアイテムを扱うEC事業者に向けてリリースしたのが「RoomClip おすすめショップ」

「RoomClip」内で企業が公式アカウントを運用できるサービスで、公式アカウントの運用、情報発信などさまざまな機能を月額3万円という低コストで利用できるようにした。

「おすすめショップ」アカウントページおtおすすめショップ一覧ページ
写真左が「おすすめショップ」アカウントページ、写真右がおすすめショップ一覧ページ

最大の特徴は、ユーザーが投稿したインテリアコーディネートなどの写真と、その商品を扱っている「楽天市場」のECサイトを紐づける機能だ。ユーザーが写真を投稿した際に任意で、購入商品と「おすすめショップ」のECサイト(楽天市場店)をタグ付けする仕組みを採り入れ、他のユーザーが気に入った画像を見た際、すぐに購入できる導線を構築している

既存の貴社のお客さまが商品の利用実例を投稿する→企業アカウントで利用実例をコンテンツとして活用する→ユーザーガーファン(フォロワー)としてたまる ユーザーガー商品を購入する
基本的な仕組み。ユーザーが写真投稿時に商品の購入先を登録すると、ひも付けが完了。企業アカウントで利用実例をコンテンツとして活用、集まったユーザーが興味を持った写真をクリックするなどすると、購入先となる「楽天市場」店舗に移動できる仕組みとなっている

ユーザーが投稿したUGCコンテンツとECサイトの商品データを紐づけて、ECサイトへ誘導する仕組みは、スタートトゥデイが運営しているファッションコーディネートアプリ「WEAR」に近い。

ただ、UGCと商品をひも付け、コミュニティーからECサイトへ誘導するSNSサイトはめずらしい。川本取締役は「購入できるという体験を重視している。『RoomClip』ユーザーにとって、写真を見て商品が購入できるのは最高の体験。買い物の楽しさをより加速する存在になる」と話す。

「おすすめショップ」に期待できる3つの活用メリット

「RoomClip おすすめショップ」の活用メリットは3つある。

活用メリット① 運用の手間をかけず、自動的に送客する

継続的なアクセス獲得
投稿された写真にアイテムタグが付与されることで、ECサイトへの送客が可能になる

1つ目は、効率的にユーザーをネットショップに送客できることだ。

ユーザーが投稿した写真は、住生活のリアルな雰囲気が伝わりやすく、閲覧者の共感を得やすい。写真を軸に交流が生まれ、商品が口コミで広がっていく

そして、拡散された写真はECサイトへの入り口になる。2017年8月に約30サイトが試験的に導入し、送客と売り上げを伸ばした実績があるという。

試験的に導入したEC事業者の中には、1枚の写真から1か月間で250人をECサイトに送客した事例があります。「おすすめショップ」を契約した後に「RoomClip」経由の売上が4倍に増えた事業者も出てきました。(川本取締役)

ルームクリップ株式会社の川本太郎取締役
ルームクリップの川本太郎取締役

活用メリット② ショップや企業名の認知度が向上

「RoomClip おすすめショップ」のメリットの2つ目は、ショップや企業、アイテム自体のブランディングに役立つこと。

ブランディング コミュニティの自動創出
ユーザー同士や、ユーザーと企業も簡単につながることが可能。コミュニティー創出で、ショップブランディングや認知度アップに貢献できる

「RoomClip」のユーザーはインテリアや雑貨、家具などに関心が高い。インテリア系のEC事業者にとって、「RoomClip」は多くの有望な見込み客に商品を知ってもらえるコミュニティーとなっているのだ。

そして、「RoomClip おすすめショップ」の機能を使って商品写真からショップへとユーザーを誘導すれば、ショップ名も認識され、ショップや企業のブランディング・認知度向上につながる。

「RoomClip おすすめショップ」によって認知度向上に成功した、インテリアなどを販売する「くらしのeショップ」を運営する山善の事例を紹介したい。

山善の「RoomClip おすすめショップ」アカウントページ
山善の「RoomClip おすすめショップ」アカウントページ

山善は「RoomClip おすすめショップ」を導入後、フォロワー数が急増した。さらに「山善」というブランド自体の認知度がより高まったという。

「楽天市場」の利用者は一般的に「楽天市場で買い物をしている」という認識が強いと言われている。そのため、企業名やショップ名のブランディングに多くの労力と時間がかかる。

「RoomClip おすすめショップ」機能によって投稿がショップに紐づくことで、製品とショップやブランドとのつながりをユーザーが意識できるチャンスになり得る。

山善の事例は、ECモール内でブランディングに苦労するEC事業者の課題を「RoomClip おすすめショップ」が解決する可能性を示唆している。

「RoomClip おすすめショップ」店で掲載されている山善で買った商品の実用写真
「RoomClip おすすめショップ」店で掲載されている山善で買った商品の実用写真

活用メリット③ 脱・価格競争

「RoomClip」で人気の写真は、いわゆる「インスタ映え」の価値観とは少し異なる。おしゃれで綺麗な “奇跡の一枚”ではなく、毎日の暮らしや日常の風景に溶け込んだ、少し生活感が漂う写真が支持されやすいという。

住まいや暮らしにこだわりがあるユーザーが集まっているコミュニティーなので、利用シーンをイメージしやすい写真に人気がある。(川本取締役)

閲覧・フォロワーユーザーへアプローチ
生活感が漂う写真を通じてユーザーにアプローチ。「価格訴求」ではないアプローチができるようになる

ECモール内で価格競争に疲弊するネットショップは少なくない。こうした現状に対して川本氏は、「RoomClip」を活用することでEC事業者が価格競争から脱却できる可能性があると強調する。

ルームクリップによると、RoomClipユーザーの多くは本当に気に入った商品を買いたいという欲求が強い傾向があるという。

「RoomClip」のユーザーは、他のユーザーが使っているインテリアや雑貨を見て、その商品に興味を持ち、ネットショップを訪問する。そして、その商品を気に入れば口コミで拡散する。「RoomClip」は商品に対する“共感”を軸にコミュニティーができ上がっているので、EC事業者は価格競争とは一線を画したビジネスが展開できる。(川本取締役)

潜在顧客 認知 検討 検索 Webサイト訪問 店舗。SR閲覧 ファンの実例の閲覧 購入 RoomClip 閲覧 質問 情報発信 既存顧客 アイテム入手・入居 ブランドロイヤリティ向上 メルマガ・会報誌購読 メディア接触 RoomClipへの投稿 再顧客化 再来店・再購入 中古販売など
「RoomClip」がめざす世界観

「RoomClip おすすめショップ」の運用ポイントは「まずは放っておく」

「RoomClip おすすめショップ」はユーザー自身が写真にECサイトをタグ付けするため、EC事業者は運用の手間がかからない

ファンユーザーの投稿写真とアイテムへのリンクページ
写真左がファンユーザーの投稿写真、写真右がアイテムページとショップへのリンク

「RoomClip おすすめショップ」のアカウントを開設したら、ある程度の写真の枚数が集まるまで、「まずは、放っておいて良い」(川本取締役)と言う。だが、一定程度写真が集まったら、コミュニティーを刺激することも重要だ。

ユーザーに写真を投稿してもらうために、実際にアイテムをユーザーに使ってもらって写真とコメントを投稿してもらう「モニターキャンペーン」を定期的に実施することも可能。新商品の発売時や注力商品のプロモーション時にモニターキャンペーンを活用することを川本取締役は推奨する。

写真を増やすにはキャンペーンが有効だが、キャンペーンを実施しなくても、ユーザーは自発的に写真を投稿するのが「RoomClip」ユーザーの特徴。ユーザーが自発的に写真を投稿する理由について、川本氏は次のように説明する。

「自分がコーディネートした住まいを見てもらいたい」「いいね!が欲しい」といった承認欲求のほか、他者とつながりたい、感動を共有したいという“共感”への欲求や、他のユーザーの買い物の役に立ちたいという“貢献欲求”もあるでしょう。(川本取締役)

ユーザーが投稿した写真を経由してECサイトで商品が売れたとしても、ユーザーに報酬は発生しない。多くのユーザーは報酬目的ではなく、共有目的で「おすすめショップ」の機能を使って写真とECサイトをタグ付けしているのだという。

インセンティブがなくても写真を投稿し、ECサイトを紹介してくださるユーザーがたくさんいることが、「RoomClip」のコミュニティーの特徴であり、強み。(川本取締役)

「おすすめショップ」の公式アカウントは、トップ画面に写真を9枚設定できる。トップ画像に設定した写真の投稿者には、写真が設定された通知が届く。ショップのフロントページに写真が選ばれたユーザーは、そのショップへのエンゲージメントが高まり、積極的に投稿するようになるという。

「RoomClip」ユーザーは「インセンティブがなくても、ECサイトを紹介するための写真を投稿するユーザーが多い」と川本取締役

「RoomClip」が提供する広告とUGC収集サービス

「RoomClip」は企業向けに広告の配信サービスも提供。商品の広告やブランディング広告、記事広告、タイアップキャンペーンなども実施しているという。

また、ユーザーが投稿した写真を有償で企業に提供するサービスも展開している。たとえば、メーカーやEC事業者が「RoomClip」で新商品のモニターキャンペーンを実施し、集まった投稿写真をカタログやECサイトの商品ページ用に使うことができる。写真の利用許諾などはルームクリップが行う。

UGCは、商品の利用シーンをイメージしやすい写真が多いため、「カタログやECサイトの商品ページに使うことで、通常の写真よりもコンバージョン率が高まることも多い」(川本取締役)。

また、たくさんの写真を短期間に比較的安く集めることができるほか、EC事業者が気づかなかった商品の魅力をユーザーが見つけてくれたり、プロカメラマンでは思いつかないような斬新な構図の写真が集まったりするメリットもある。

2017年7月にはベンチャーキャピタルなどから総額8億円を調達、人材採用や機能開発を加速させている現在、「RoomClip」が目指す方向性は、

私たちは、商品が一番魅力的に見えるのは、実際に消費者の暮らしのなかで使われているときだと考えている。商品が使われている様子を見ながら買い物ができると、やっぱりワクワクする。そして、買った商品をコーディネートして、その写真を「RoomClip」に投稿し、ユーザー同士で交流する。そういう循環が生まれるコミュニティーを育てていきたい。(川本取締役)

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渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

『えんとつ町のプペル』はなぜ売れたのか? キングコング西野亮廣が語る“お金”と“広告”

7 years 7ヶ月 ago

挑戦を阻む「お金」と「広告」の話

一般社団法人日本eコマース学会(JASEC:Japan Academic Society for E-Commerce)の第1回シンポジウムが4月14日に都内で開催された。テーマは「そのうちamazonに駆逐されて終わってしまう」と刺激的だ。

Amazonという巨人と戦うためのヒントとして、第1部の基調講演には、既存ビジネスの常識にとらわれない挑戦的な試みをする、絵本『えんとつ町のプペル』の作家、お笑い芸人キングコングの西野氏が登壇した。

西野亮廣 氏
西野氏4作目の絵本『えんとつ町のプペル』は現在、絵本としては異例の35万部を突破し、2019年の映画化が決定している。ディズニーを倒すことが目標だと語る。

打倒ディズニーを掲げる西野氏が、挑戦を阻む2つの要素、「お金」と「広告(集客)」を軸に、『えんとつ町のプペル』をどうやって売ってきたのか、常識にとらわれない作品作りの裏側を語った。

挑戦を阻むものの1つはお金。資金繰りができなくなった瞬間にあきらめなくてはいけない。もう1つは広告、どう宣伝して集客するのか、ブランディングしていくのかでつまずく。我々はお金と広告について教わらないまま、何の武器も持たないまま戦場に出ている状況(西野氏)

世界一の絵本作家と同じレールでは競争しない

西野氏が絵本作家としてスタートしたのは25歳。芸能界のトップスターが敷いたレールを後ろから追いかけるのではなく、まったく違うレールを敷いて一気に追い抜こうとしたのがきっかけだった。同じ状況で競争をしないことが西野氏の戦い方だという。

絵本作家としてのデビューとしては遅く、他の作家より画力や出版ネットワークで勝っているわけでなかった。世界一の絵本作家と画力で競争しても追い抜くのは難しい、そこで西野氏は「一作品にかけられる時間なら勝てる」と考え、ボールペン1本で描く、4~5年かける作り方を選んだ。

「副業がなかったら作れなかった」と言うように、これは西野氏が絵本作家専業ではないために取れた手法だった。絵本作家が専業で食べて行くには、コストが見合わないためマネできない。同じ絵本であっても、違うレールで勝負をしかけた。

届かない作品は存在しない、物づくりを再デザイン

日本のクラウドファンディング史上、最大の支援者数を記録して制作された『えんとつ町のプペル』だが、成功の背景には過去の失敗経験をもとにした綿密な戦略があった。

西野氏のデビュー作『Dr.インクの星空キネマ』は4年かけて制作し、2作品目の『ジップ&キャンディ』の制作期間は3年ほど、どちらも3万部ほどを売り上げた。絵本業界ではヒットと言えるが、ディズニーには届かない。

Amazonの評価は高く、買った人は満足していたようだが、なぜか10万部には届かない。その後も作品作りを続け、絵本作家として7年が経過したころ、西野氏は「キンコンの西野ってどこいったの? オワコンだよね」と、世間でほとんど認知されていないことに気づいたという。

25歳でテレビを離れると決め、作家として作品を作ってきたが届いていなかった。お客に作品が届かなければ、世間からすれば何もしていない人だった(西野氏)

それまで、絵本の宣伝販売は事務所と出版社に任せきりだった。そのため西野氏は、「モノを作って売る」ことをデザインしようと考えた。『えんとつ町のプペル』で実践したポイントは2つある。1つ目は「絵本をお土産にする」こと、2つ目は「世界中に作り手を増やして巻き込む」ことだ。

絵本がお土産になる体験をつくりだす

まず消費者の視点に立ち、どういうモノなら買うのか分析した。売れるモノの代表は生活必需品だ。たとえば、水道水があっても、コンビニではミネラルウォーターが売れている。

一方、絵本のような作品は生活必需品ではないため、普段の生活のなかでは売れない。ただし、生活必需品でなくても、演劇のパンフレットや旅先で買ったペナントなど、売れているモノがあった。これらに共通するのは思い出だ。

お土産は、思い出すための装置として、生きるために必要な生活必需品だとわかった。だからこそ、お土産屋は駆逐されずに生き残っている。つまり、絵本もお土産にできれば売れる。そのための体験をデザインすればいい(西野氏)

そこで考えたのが、絵本の原画を無料で貸し出し、全国で原画展を開いてもらうことだった。そして、会場の出口で絵本を売らせてもらった。

お土産として何万部も、会場の出口で売れることがわかった。僕がやることは、原画展の回転を止めないこと。Amazonでは売れたらラッキーで、売り場の本丸は個展会場にある(西野氏)

分業制とクラウドファンディングで作り手を増やす

デビューから4作目の『えんとつ町のプペル』では、これまでの絵本とは作り方を大きく変え、分業制を取っている。もともと、1人の制作が当たり前の絵本の世界に疑問を持っていたという西野氏は、世界でだれも見たことがない絵本を作るために、イラスト、着色、デザイン、製本など、約40人の分業体制とした。

ただし、絵本は市場が小さいため、映画のような分業制ではコスト的に成り立たなかった。これは、西野氏の場合も同様で、絵本作りでまず取り組んだのが、クラウドファンディングによる資金調達だった。

結果として、『えんとつ町のプペル』は約1,000万円の制作資金の調達と、発売前の無料個展の開催、2つのクラウドファンディングを成立させている。

この成功理由について、お金とは「信用」であり、クラウドファンディングは信用の「両替機」であって集金装置ではないことを知るべきだと西野氏は話す。

テレビタレントでもクラウドファンディングで失敗している例はあるが、彼らは集金装置と勘違いしている。ウソをつくと信用が削られていくが、テレビに出続けるということは、ウソをつき続ける環境にいるということ。グルメ番組では、料理がマズくてもおいしいと言わないといけないが、今はSNSでウソがすぐばれる。世間の人気タレントのほとんどは認知タレントであって、信用がともなっていない(西野氏)

「マズイ料理を美味しいという」「使ったことがない商品を絶賛する」……。テレビタレントは、スポンサーや番組の意向からウソをつかざるを得ない環境にいるため、クラウドファンディングとは相性が悪いという。

目的は世界中の人をクリエイターにすること

クラウドファンディングを採用したのにはもう1つ、作り手を増やすという目的もあった。作り手を増やすことで広告効果が上がるからだ。発売前に支援した1万人が、「自分が作った(支援した)作品だ」と宣伝してくれる。

5年前にスタッフを集めたとき、最初に言ったのがお客さんに売るのをやめて、世界中の人を作り手にしようということ。どうしたら作り手を増やせるのか考えた方法の1つがクラウドファンディングだった(西野氏)

『えんとつ町のプペル』は現在、全ページを無料公開している。しかも、著作権フリーとして公開しているため、Tシャツ、マグカップ、ラッピング電車、演劇ほか、さまざまなグッズやイベントが独自に生まれている。これも、「作り手さえ増やすことができれば、お客さんが増える」という考えにもとづいている。料理でいえば、レストランではなく、みんなで作って食べるバーベキューの作り方だと西野氏はいう。

今の時代はお客さんが情報を発信できる。情報解禁といった考えは、作り手とお客を完全にわけてしまっているが、今はプレイヤー側にしてあげたほうが喜んでくれるし、みんなドヤ顔をして、いいねされたい。ディズニーは見事な無敵艦隊だが、『えんとつ町のプペル』をフリー素材にして、多くの人を作り手にできれば広告力で勝てると思った(西野氏)

本業で勝負しないから、マネされない仕事が作れる

ここまでの内容は、西野氏の著書『革命のファンファーレ』でも触れられていることが中心だ。講演の最後では、西野氏がロボットや他人がマネできない、これからの仕事の作り方について語った。

仕事は“差”によって生まれる。差を作るには圧倒的な天才になればいいが、他人と同じ環境にいては、天才にはなりにくい。たとえば、ケーキを売って、その売り上げで翌日の商品を作り、利益で新作を出すことはみんながやっている。多少の差はあっても、本業でマネタイズしている限り、極端にとがることはできない(西野氏)

西野氏自身の活動でいうと、現在の本業は有料の会員制オンラインサロンにあるという。今もテレビ出演は続けているが、テレビタレントが本業ではないため、出演オファーがきたときに出演を断ったり、内容を交渉したりできるという。

書籍の執筆も本業ではない。2017年10月、文藝春秋の社長が全国図書館大会で「文庫本の貸出をやめてほしい」という主旨の発言をして話題になった(参考記事:文藝春秋 松井清人社長インタビュー前編(ダ・ヴィンチニュース))。このとき、西野氏は同時期に出版していた『革命のファンファーレ』を全国の図書館に無料で配っている。

革命のファンファーレの初版印税を使って本を買取り、全国の図書館に贈った。その方が売り上げがあがりますからと言ったが、売れなくてもよかった(配布後の売り上げは伸びた)。なぜなら、そういったアクションを起こせばオンラインサロンの会員が増えるから。事実、会員は増えた。印税で生きていないからできたこと(西野氏)

本業からマネタイズの軸をずらすことが、結果として本業をより鋭くさせるという西野氏の考えが、『えんとつ町のプペル』や『革命のファンファーレ』の常識にとらわれない作り方・売り方につながっている。

また、西野氏は新たに飲食無料のスナック経営にも挑戦しているという。ここでも「飲食店が飲食で儲けない」という、極端な環境作りからスタートした。今はファンクラブ制にするなど、飲食以外の経営方法を模索しているようだ。

これから先、Amazonのような巨大企業に駆逐されずに生き延びようとするなら天才になるしかない。そのためにやるべきことは、「考えることよりも、自分自身に極端な環境を与えて天才になること」だと西野氏は最後に語った。

池田真也

ネットショップ担当者フォーラム編集部

家電量販店の法人通販から、Web担当者Forumの前身である『インターネットマガジン』(2006年5月号で休刊)の編集部へ。休刊までの半年ほど雑誌編集を経験し、Web坦の立ち上げを機にネットマーケティングにかかわりはじめ現在へ。編集兼Web担当者。2017年末からネットショップ担当者フォーラムと兼任。

池田真也
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