SEOの話題を取り上げるなかで避けられないのではないかというニュースから。日本時間2024年5月28日頃、「Google検索のアルゴリズムに関する文書が流出した」とSNSで話題になり、瞬く間に複数のWeb系メディアが報じる事態となりました。5月30日にGoogleが「漏洩した文書は本物だ」と認めたため、SEO界隈でも議論が白熱しています。それでもWeb運営者やEC事業者がやるべきことは変わらないのではないでしょうか。
文書が本物でも「現在も有効なシグナルか不明」な点に注意
流出した「Google検索」の社内文書、グーグルが本物と認める | ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2405/31/news133.html
資料は、クリック数やChromeのユーザーデータなど、Google検索でのWebページランキングには影響しないと同社関係者が述べているデータをGoogleが収集し、利用している可能性があることを示唆しているという。
検索に関する内部文書の流出自体が衝撃的でしたが、流出したドキュメントには、これまでGoogle関係者がランキング利用について否定してきた内容が含まれていたことで話題となりました。
資料には検索結果のクリック(CTR)、「Chrome」でのユーザー行動に基づいたランキングシグナルなどがありましたが、多くのSEO担当者からすれば「そうでしょうね」という感想を抱いた人が多かったように思います。ヘルプフルコンテンツ、ユーザーに役立つ情報を評価するのであれば、検索結果のクリックやブラウザ上の行動はランク付けに入っていても不思議ではないでしょう。
しかしGoogleがこうした要素を「シグナルに入っている」と公言すれば、人為的あるいはプログラムを用いて「ユーザーに評価されているような動きを作る」人たちが出てくるかもしれません。立場上、否定しておいた方が健やかな検索につながる「優しいウソ」だったのではないかと思っています。
膨大な資料のどの部分が検索結果のランク付けに使用されているのかは不明で、情報が古かったりトレーニングにのみ使われていたり、収集はされたが検索には使われていない可能性もある
Googleの広報が本物と認めても、「そのシグナルが現在も有効なのか」「過去に実装されていたか」という点は定かではありません。今回の文書を見ても、それでSEOの謎解きができたことにはなりませんので、今回の件を意識してSEOに従事する必要はないと思います。
むしろ、こうしたことを口実に「Googleの内部文書を元にアルゴリズムをハックしたSEO」を掲げて営業してくるSEO業者が出てこないとも限りませんから、そちらに注意が必要かもしれません。だからこそEC事業者がやることは変わらず"顧客のために最適化すること"だと再認識しました。
「Write for your users, not Search.」=検索のためでなく、ユーザーのためにコンテンツを作成します。
これは2023年に行われた「Search Central Live Tokyo 2023」における、GoogleのGary Illyes(ゲイリー・イリース)氏の発言です。私はこの言葉が好きですし、SEO(検索エンジン最適化)そのものを表す言葉ではないでしょうか。
公開されている評価指標や流出した文書も、結論はユーザーにとって役立つことではないかと思います。人が売って人が買うECである以上、こうした情報に惑わされて検索エンジンの方を見て"検索対策"をするのではなく、「ユーザーのためにサイトを最適にする」ことは変わらないと考えています。
ただ、この数日後にはGoogle社員が任天堂のYouTubeアカウントの非公開動画にアクセスし、発表予定の情報を流出させたことも報じられましたので、Google社内の管理体制の見直しなども望まれるところです。
今週の要チェック記事
YouTubeアルゴリズムを理解する:今すぐできる11の対策 | Shopify
https://www.shopify.com/jp/blog/youtube-algorithm
私のクライアントのECサイトでも、動画に注力するところが出てきました。「生成AIによる記事や画像作成どころか動画まで!?」という時代だからこそ、人がやってみた・作ってみた・着てみた・食べてみた系の動画は顧客への強力なメッセージになるのではないでしょうか。Shopifyの公式ブログですが、すべてのEC事業者の参考になる記事です。
事業者の83%が自社サイトのFAQに満足していたが、一方で利用者の半数はECサイトで疑問を解消できていないと回答 | eコマースコンバージョンラボ
https://ecclab.empowershop.co.jp/archives/95130
ヘルプフルコンテンツアップデート(役立つ情報の評価)から誇大解釈されたのか、「FAQを設置するだけで検索順位が上がる」という話を聞くことがあります。SEO目的で設置したような、ユーザーが求めていないFAQはページを冗長的にするだけで、使いやすさを阻害してしまいますよね。
とはいえ、「ECサイトにおいて疑問や不安を感じた際に解決できない場合、72%の利用者がサイトの利用に『影響がある』」という回答結果もあり、サイト上でユーザーの不安をどう解消するかはCVR向上にもつながりそうですね。
ChatGPT vs. Wikipedia──生成AIの登場でウィキペディアはどう変わったか? 英国の研究者らが調査 | ITmedia AI+
https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2406/05/news044.html
「ChatGPT」登場後も、多くの言語で「Wikipedia」ユーザーは減るどころか増えているという興味深いデータです。AIの普及により、かえって人同士のコミュニティが見直されたり、より付加価値を感じたりするようになっているのかもしれません。
「令和」生まれ企業 5年間で68万社 多い商号は「アシスト」と「LINK」 | 東京商工リサーチ
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198521_1527.html
当社ユウキノインも令和生まれの企業です。社名のユウキノインは造語ですが、登記時に検索した際ヒットは0件でした。企業名、店舗名、オリジナルの商品名などは育てれば強力な指名検索になりますから、登記前や命名前に検討中の名前が既に存在するのかを検索してみると良いですね。
【2024年最新SEO事例】 創造と生成。AIに負けない、これからの愛されるECサイトづくり登壇後インタビュー | 一般社団法人イーコマース事業協会
https://www.ebs-net.or.jp/interview/in179/
古いコンテンツは消すべき? 陳腐化の対策は? 生成AI利用時の注意点は? プレスリリースの活用、インバウンド需要の取り込みを狙うローカルSEOについてのインタビューです。
今週、みなさんにお伝えしたいこと
【標語】気をつけよう「win-win」「シナジー」「キックオフ」 | note | 酒匂雄二 / さこっち(Yuh.Sakoh)
https://note.com/sakocchi/n/n7c18e984f695
「win-win」は自分の勝ちしか考えてない。
「貴社と当社がwin-winの関係になるよう」→ならない。
「当社の持つ◯◯が貴社の◯◯とシナジーを」→生み出さない。
仕事柄、いろいろな方に人を紹介していただいたり、交流会で出会ったりします。その際、不安になる人に「多い」と感じた口癖の個人的なメモで、その言葉自体をなんら否定するものではありません。あくまで個人の感想です。
これらの言葉を多用する人に遭遇した時は眉に唾を塗って臨みたいと思います。ということで皆さん、当社と貴社のwin-winな関係を築くシナジーを生み出すキックオフミーティングでイノベーションを起こしませんか?(しません)
それではまた次回! 酒匂(さこっち)の「ネッ担ニュースまとめ」をよろしくお願いします。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:Googleが検索の社内文書流出を認めても、EC事業者がやることは「顧客のために最適化」【ネッ担まとめ】 | 新・ネットショップ担当者が知っておくべきニュースのまとめ
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