「小林事変」の発生から紅麹への風評被害が生じ、食品業界全体に問い合わせや不買の嵐が吹き荒れ、さすがにこれらの問題はマスコミでも報じられ始めた。一方で逆にマスコミがつくりだしているのが「機能性表示食品制度」の冤罪だ。
届出制である機能性表示食品制度は「安全性」へのグリップが弱く、それが小林事変の主因というのがベースの論調である。平時であればこうした論理性のない主張は笑いものになるのだが、事変の最中の火事場では広く拡散されて、受け入れられてしまうことさえある。そこには機能性表示食品制度を潰す意図が感じられる。
全容がいまだ明らかではない「小林事変」
消費者の不安続く要因は?
小林事変から約3週間。原因は、さまざまに報じられているが可能性に留まり、断定する報道はない。各社及び腰であり、これが消費者不安を長引かせている。しかし、厚生労働省による調査や、報道機関による取材で、この事変の原因は2つに絞られつつある。
1つ目は小林製薬が製造していた紅麹原料の汚染。端的に言えば「原料がカビていました」ということだ。カビに由来する「プベルル酸」が製品から検出されていることがその証左である。カビたものをつくり、それを売る。論外であろう。
2つ目は健康被害報告の遅れだ。小林製薬は1月に医療機関から報告を受け、2月の時点では大学病院からの複数報告にエスカレーションしているにも関わらず、原因究明を理由に行政報告を遅滞させた。原因究明の難しさを指摘する向きもあるがそれは甘い。
消費者から腎疾患がサプリメントの健康被害で報告されるケースは「腎疾患の既往症がない限り、あり得ない。もしあったら一件でも大警報だ。」(大手メーカー)。
小林製薬の健康被害報告の体制がお粗末であったということだ。
警察の捜査の可能性も
もうひとつのポイントを指摘する向きもある。死亡者が出るような大事件であり、このケースは業務上過失致死罪容疑で警察が捜査する可能性がある。そうなれば、小林章浩社長らが、報告を躊躇した責任も問われる。これを避けるため、画策したのではとの指摘だ。これらは厚労省や消費者庁の調査だけでなく、警察の捜査でいずれ白日の下に曝されよう。
機能性表示食品に飛び火、問われる安全性
新聞各社が機能性食品制度について言及記事
一方で事変の影響は、思わぬ形で広がっている。機能性表示食品制度への集中砲火だ。
「朝日、毎日、東京という左翼メディアだけでなく、読売、産経、日経という中道、右翼紙も機能性表示食品制度の問題点と見直しに言及した。火事場とはいえ驚いた」(先の関係者)。今回の小林事変報道で特徴的なのは、小林製薬の問題や原因究明が、なぜか機能性表示食品の問題へと燃え広がっていることだ。
①機能性表示食品が企業の届出制だから、安全性問題が発生②アベノミクスの規制緩和の弊害である③制度を見直し規制を強化せよ――がその論調だ。特に朝日新聞と毎日新聞が発信源である。
これと歩調をあわせるように立憲民主党もこうした主張を発信して、国会質問を行っている。
機能性表示食品だったことの利点
事実をねじ曲げた主張である。機能性表示食品制度は、今回の非常時に、安全弁として十分に役割を果たしているのだ。
そもそも、問題となった「紅麹コレステヘルプ」が機能性表示食品でなければどうであったか。
機能性表示食品だからこそ、会社、連絡先、製造工場などの基本情報が届けられており、これを改めて、行政側が入手する手間が省けた。基本情報を素早く関係機関で共有も可能だった。そもそも、遅れたとはいえ健康被害報告もガイドラインにそったものだ。
消費者庁の機能性表示食品一斉点検も制度がワークしている証左だ。3月26日に方針を示し、28日には1700の全事業者に報告を求めている。
これがいわゆる健康食品であれば、消費者庁は完全に「打つ手なし」だったであろう。安全情報に関しては、機能性表示食品制度は「規制緩和」ではなく「規制強化」だったのだ。
原料汚染は、機能性表示食品だから起こるものではなく、許可の医薬品やトクホ、一般の食品でも起こりうる。問題は、未然に防ぐ仕組みと問題発生時の素早い体制だ。機能性表示食品への批判は「冤罪」であり、まったく当たらない。
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オリジナル記事:【小林製薬の「紅麹」問題】機能性表示食品でなければどうった? 一般メディアの悪意ある制度批判は「冤罪」のワケ | 通販新聞ダイジェスト
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