EC事業者が販売する商品のレビューの有無は、消費者のコンバージョン率に大きな影響を及ぼすようになっています。米国のオンライン家電量販店Newegg Commerce(ニューエッグ コマース)はこのほど、ECサイト上の商品レビューを要約する生成AIツールを導入、売上アップに寄与しているそうです。Newegg Commerceが始めたAIによるレビューの要約は、EC市場最大手であるAmazonのAI生成レビュー機能導入にも影響を与えているようです。
記事のポイント- Amazonは従来の「Buy with Prime」の機能にカートとカスタマーサービスを追加
- 「Buy with Prime」を利用している販売事業者は、平均してコンバージョン率が高い
- Amazonは売り上げをの大半をサードパーティの販売事業者に依存しているため、「Buy with Prime」の利便性向上によって販売事業者の満足度を高めたい
「Buy with Prime」に追加した2つの機能とは
Amazonは毎年実施している販売事業者向けのイベントで、「Amazonプライム」の配送特典を自社ECサイトでも提供できる「Buy with Prime」の新機能を発表しました。新機能は「Buy with Prime Assist」と「Buy with Prime Cart」の2つです。
「Buy with Prime Assist」は、販売事業者が追加料金なしでAmazonのカスタマーサポートを顧客に提供できるものです。顧客は、Amazonのカスタマーサービス担当者とチャット機能の利用が可能になり、配送や注文、返品に関する情報を質問することができます。
「Buy with Prime Cart」は、Amazonでの購入体験に近づけるために設計した機能だといいます。「Buy with Prime Cart」について、AmazonのBuy with Primeおよびマルチチャネル・フルフィルメント担当副社長のピーター・ラーセン氏はこう話します。
今までの「Buy with Prime」は、「Buy Now」(住所と支払い方法をあらかじめ指定しておき、買い物時に「Buy Now」をクリックすることで、すぐに購入を確定できる機能)と同じような機能でしたが、現在は、従来のオンラインカートのように、一度に複数の商品を購入することができるようになりました。(ラーセン氏)
「Buy with Prime Cart」で複数の商品を一度に購入するイメージ(画像はAmazonのニュースページから編集部がキャプチャ)
全米で1.6億人が利用する「Buy with Prime」の利便性
Amazonが「Buy with Prime」を発表したのは2022年4月。これによって、小売事業者はAmazonに出品している商品を自社のECサイトで販売できるようになりました。顧客はAmazonのID決済サービス「Amazon Pay」を使って決済し、Amazonのフルフィルメント・ネットワークを使って注文商品を受け取ることができます。
「Buy with Prime」のイメージ動画(AmazonのYouTubeアカウントから)
小売事業者はAmazonにサービス利用料を支払う必要がありますが、料金の詳細は明らかにしていません。
プライム会員の消費行動をリサーチしている米国の調査会社Consumer Intelligence Research Partnersによると、2023年3月時点で「Buy with Prime」を使って決済できるプライム会員の数は、米国内で約1億6700万人となっているそうです。
「Buy with Prime」の表示イメージ(画像はAmazonのニュースページから編集部がキャプチャ)
Amazonはなぜプライム会員による購入を拡大させたいのか?
Amazonのマーケットプレイスは、サードパーティー(第三者)の販売事業者の流通総額が大きく、2022年の流通総額の63.7%を占めると推測され、この数字は年々増加しています。
米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』が発行するオンラインマーケットプレイス上位100社の売上高ランキング「グローバル オンライン マーケットプレイス データベース」では第3位となっています。
競合、Shopifyに対抗する
『Digital Commerce 360』のシニアアナリストであるジェームス・リスリー氏は「Amazonは、消費者がオンラインショッピングするときの最も有力な検索エンジンとしての地位を失うにつれ、他の施策を駆使して顧客情報を集め、市場シェアを維持しようとしています」と話しています。
ShopifyはAmazonの代替手段になり得るという点で間違いなく脅威です。Amazonの売り上げの半分以上はサードパーティの販売事業者によるもので、彼らがAmazonではなくShopifyを利用したり、自社サイトにShopifyを組み込めば、Amazonは損をすることになります。(リスリー氏)
Amazonは現在、Shopifyの加盟店に対し、ShopifyのWebサイトで「Buy with Prime」を提供することを許可しています。
AmazonがShopifyと提携することは、両社にとってまさに試金石と言えます。ShopifyはAmazonの利点をすべて活用しつつ、加盟店がAmazonの厳しいエコシステムから抜け出しやすくなる方法として、Amazonの決済オプションを利用することができます。Amazonは、競合に当たるShopifyを自社に少しだけ近付けて、Amazonの地位を脅かしすぎないようにすることができます。(リスリー氏)
「Buy with Prime」がCVに与える影響
Amazonは、「Buy with Prime」を利用している販売事業者が、利用していない事業者よりも有利な立場にあることを示す新しいデータを発表しました。
Amazonによれば、「Buy with Prime」を利用して商品を購入した人は、4人のうち3人が新規の顧客です。また、「Buy with Prime」機能がコンバージョンを平均25%アップさせたとAmazonは説明しています。
自社ECサイトへの「Buy with Prime」の導入がコンバージョンアップにつながるという(画像はAmazonのニュースページから編集部がキャプチャ)
Amazonの他のツールも売り上げにプラスの影響を与えています。Amazonのレビューを自社のECサイトに追加した小売事業者は、コンバージョンが平均38%増加。「Buy with Prime Cart」を利用している小売事業者は、この機能を追加した後、販売個数が平均15%増加したと報告しています。
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オリジナル記事:アマゾンの「Buy with Prime」とは? プライム会員の自社ECサイト利用を促進させる新機能+CVRアップなど導入効果を解説 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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