auコマース&ライフ(=auCL)が運営する仮想モール「auPAYマーケット」は、今年5月でモールの名称を変更してから3周年を迎えた。2023年3月期の流通総額は、前期比でほぼ横ばいだったとみられるが、ライブコマースサービス「ライブTV」を強化するなど、新たな販促手法の開拓に余念がない。「新しいチャレンジを高い頻度で繰り返すことで実を結びつつある」と語る、同社の八津川博史代表取締役副社長に近況を聞いた。
2022年度の振り返り
――2022年度を振り返って。
良くも悪くも新型コロナの影響を受けた。売れ筋商品やカテゴリーは、この1年で目まぐるしく動いている。マスクや消毒液などの衛生用品は売れなくなったし、「外に出られないから、実店舗ではなくオンラインで買っていた」というような需要が落ちた部分もある。一方で、水着や浴衣、アウトドア用品や釣り具など、外出用の商材が売れているし、ファッションでも外出着が力強く伸びた。
当社としては、より消費者の暮らしに寄り添った買い物体験を提供することで、定着してもらうことに主眼を置き、サービスを展開したり店舗とのコミュニケーションを取ったりしている。当モールは「au経済圏」の中心的存在だが、「スマートパスプレミアム」や「auPAYカード」と親和性が高く、こうしたサービスを利用するユーザーの継続利用率や単価といった指標は良くなってきている。
――流通額は。
公開していないが、マーケットのトレンドが前期比で100を少し超える程度だと思うので、それと似たような推移だ。
ゲーム実況など体験型ライブに注力
――近年はライブコマースや体験型商材に力を入れている。
どちらも足元は良い感じで動いている。特にライブコマースは、消費者が慣れてきた部分が大きいのではないか。従来型のコマースのあり方や商品ではない、新しいチャレンジ領域については、定性・定量両面で成果は出てきている。
――ライブコマースを利用するユーザーが増えている。
演者に合った商品を販売できれば、爆発的な来訪客や流通が得られるという手応えがある。例えば、仮想キャラクター「Vチューバー」やアニメの声優とコラボレーションした番組の視聴数が伸びた。最近の事例でいうと、天気予報番組「ウェザーニュース」のキャスター・檜山沙耶さんと、人気Vチューバー・壱百満天原(ひゃくまんてんばら)サロメさんがかけあいをしながらコマースにつなげる番組を6月23日に放送した。キャスター・Vチューバーともにコアなファンがいるため、大きな反響があった。通常番組と比較すると、視聴者数は約3・6倍、視聴時間が約8・6倍となった。
他にも、ゲーム実況やショートドラマとの掛け合わせなど、さまざまな実験をしている。どんなファン層にどんな商材が合い、そしてどんなコミュニケーションを取ればユーザーが定着するかなど、バリエーションに富んだデータが蓄積されつつある。こういった企画を行うことで、これまで接点の無かった人たちが当モールを知り、来訪するきっかけになっている。店舗にとっても新規顧客獲得のチャンスとなっているし、「三方良し」の流れが作り出せている。
――ライブコマースでは、吉本興業との取り組みも継続している。
それとあわせて、ライブTVではエンターテインメント関連の取り組みを行っている。当社では「コト系」の体験型商材を以前から扱っており、経験値が豊富というバックボーンがあるため、物販との掛け合わせであるライブコマースにおいても、新たなチャレンジを行いやすく、果実も結びつつある。
――出店店舗向けの「ライブ配信機能」の利用動向は。
利用は少しずつ伸びているが、どうしても番組が埋もれてしまったり、いつ放送するかが分かりにくかったりする部分がある。尖った番組を作り、きちんと告知すれば視聴数が跳ねるだろう。新しいことにチャレンジする店舗からは新たな集客ルートとして評価されているが、凄い勢いで横に広がっているという段階ではない。もう少し、当社が主体でチャンレンジを仕掛け、いろいろな店舗に受け入れられるパターンを作り、店舗に還元していく必要があるだろう。
――ライブコマースを視聴する層は。
キャストの登用次第ではあるが、モールの中心となる顧客層よりは1世代、2世代下の顧客が多いようだ。ただ、au経済圏を利用している人も多いので、これまでauPAYマーケットにあまり関心を持っていなかった層に認知してもらっているという感覚が強い。一方、40~50代という当社のコア層に向けたライブコマースにもチャレンジしたいと考えている。世代によって受ける商材やコンテンツは違うので、それぞれの世代に合わせて勝ちパターンを作っていきたい。
出店店舗の状況と店舗向け施策
――その他、店舗向けの施策については。
店舗へのデータやツールなどの提供を進めているが、少しずつ成果となって出てきており、底上げが進んでいるようだ。私も店舗とのコミュニケーションに関して、6月から直接見るようになったので、店舗とコミュニケーションを取る場を増やしたいと思っている。
――底上げが進んでいるというのはどこで分かるのか。
例えば、新規に出店した店舗が、一定期間にどれくらいの売り上げがあるかといったデータに関して、一定以上売り上げる店舗の数が右肩上がりになっている。さらに、店舗レビューや納期遅延率、店舗都合によるキャンセル率、クレーム数などをもとに決める「店舗スコア」も上がってきている。スコアに課題がある場合は、かなり強く指摘してきたのも大きい。スコアは検索結果にも反映されるため、品質の良い店舗や商品が前面に出てくるようになり、コンバージョンが良くなってきた手応えがある。
また、店舗向けのコミュニティープラットフォーム「auPAYマーケットサロン」の仕組みも整備されてきた。新規店舗の大半もサロンに入会し、有益な情報を得ている。サロンのコンテンツや店舗とのコミュニケーションについては、内容が伴ってきたのではないか。
――出店店舗は増えているのか。
非公表だが、微増傾向にある。
――店舗が活用する広告やツール関して、新たな取り組みは。
入札型の「プラチナマッチ広告」を昨年12月にアップデートし、表示ロジックを変えたほか、全品入札可能な形とした。店舗にとっての投資対効果が良くなっており、喜びの声をもらっている。
事前にクーポンを設定しておくだけで、配信シナリオに合致するユーザーに対し、自動でメール配信を実施できる「自動販促オプション」も強化している。特に、初回購入者向け施策に関してはかなりの成果が出ている。また、メールマガジンに関しても、購入状況に応じたセグメント配信ができるようになっており、開封率やコンバージョン率の向上につながっている。
ポイント施策と今後の取り組み
――ポイント施策に関して、以前に比べるとポイント付与数が減っているようだが、影響は。
au経済圏においては、当モール以外からのポイント供出の方が多い。さまざまなauのサービスを利用すればするほどポイントをたくさん得られるわけで、ユーザーは当モールでのポイント付与だけではなく、経済圏における総合的なポイント付与という観点で見ているのではないか。
どのセグメントの顧客に、どんな店舗や商品を見てもらうことで流通を促進するかなど、マッチングの精度は高まっている。こういった部分をもっと磨いていきたい。KDDIとアクセンチュアの合弁会社である、アライズアナリティクスが分析を担っているが、サービスや機能改善につながっている。
――今後の目標などは。
当モールを選び、使い続けてもらう理由作りにこだわりたい。顧客や店舗にとって「ペイマはぴりりと辛い部分があるから、使い続けよう・選び続けよう」と言ってもらえるサービスを運営する事業体でありたい。ライブコマースが代表だが、「とがったものの集合体」であることが大事であり、どこに「とがり」を感じるかは人によって異なってくるのではないか。「とがりの集合体」が実現できればユーザーに支持されるプラットフォームになるだろうし、そこに存在意義を見出していければ、社会的にも大きな価値があると思う。
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オリジナル記事:auコマース&ライフ八津川副社長に聞く「2022年度の振り返り」「ライブコマース」「店舗向け施策」「ポイント施策」 | 通販新聞ダイジェスト
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