SDGsをやったら儲かりますか?「人」「時間」「お金」がない企業が知っておくべき事例+やるべき理由+すぐできる取り組み | 竹内謙礼の一筆啓上 | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2023年4月24日(月) 07:30
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コロナを機に、消費者が環境を意識した商品を積極的に購入するようになり、エシカルな取り組みを大々的に行う企業が増え、多くのネットショップが注目するテーマになった

「SDGsって、何をすればいいんですか」――。ネットショップ運営者からこのような相談を多く受けるようになった。SDGsとは、企業や消費者が生活や環境をより良くするために作られた世界基準の行動指標。結論から言うと、SDGsに取り組んだ方が業績アップ、リピート率向上、ブランディング効果などを得られる確率が高くなるだろう。この記事ではネットショップのSDGsの取り組み方について講じていく。関心がある人は、この記事に合わせて、私の著書「SDGsアイデア大全」(技術評論社)も読んでみてほしい。

いま、SDGsに取り組むべき4つの理由 ① 価格勝負とおさらば、SDGsで商品に付加価値を

ネットショップを運営する立場としては、「SDGsなんかに取り組んでいる場合ではない」というのが本音である。コロナによる巣ごもり消費のバブルが終わり、原材料費や人件費の高騰で、ネットショップを取り巻く環境は厳しさが増しているからだ。

激しい価格競争にさらされるなかで、売り上げにつながりにくいSDGsの販促に取り組めるほど、「人」「時間」「お金」に余裕がないのが、今のEコマース業界の現状と言える。

結論から言えば、ネットショップはSDGsを意識した取り組みを「やったほうがいい」だろう。コロナ前のデフレ社会であれば、価格の安さとポイント還元率の高さで、容易に売り上げを伸ばすことができた。

しかし、インフレに切り替わった昨今の社会情勢では、付加価値をつけて商品を高く売る戦略にシフトしなければ、ネットショップの生き残りはより厳しくなると言えるからだ。

一方、SDGsに取り組むことによって、企業や商品を「好き」になってもらうきっかけを作ることができれば、価格で比較されにくくなり、高い利益率を確保することができるようになる。消費者が同じような商品をネット上で選択する場合でも、「どうせ買うなら」と、SDGsに取り組んでいる企業の商品を選んでくれるようになり、競争力のある商品で売り上げを伸ばすことが可能になる。

② SDGsに取り組む企業の増加、消費者は「その企業の商品やサービスを利用したくなる」

帝国データバンクが実施した2022年の調査によると、SDGsに「取り組んでいる」「取り組みたい」という企業は52.2%と過半数を超えているのだ。

SDGsに積極的な事業者が過半数を占めている(画像は帝国データバンク「SDGsに関する企業の意識調査(2022年)」から編集部がキャプチャ)SDGsに積極的な事業者が過半数を占めている(画像は帝国データバンク「SDGsに関する企業の意識調査(2022年)」から編集部がキャプチャ)

また、電通の調査でも、SDGsに取り組む企業に対して消費者の約4割が「イメージが良くなる」と回答し、約2割が「その企業の商品やサービスを利用したくなる」と答えている。

消費者にとっては、SDGsに取り組む企業のほうが好印象(画像は電通の「第5回 SDGsに関する生活者調査」調査レポートから編集部がキャプチャ)消費者にとっては、SDGsに取り組む企業のほうが好印象(画像は電通の「第5回 SDGsに関する生活者調査」調査レポートから編集部がキャプチャ)

「SDGsなんかに取り組んでいる場合ではない」というネットショップの事情も理解できるが、物価の高騰で消費者側が「買う」と「買わない」のメリハリをつけてきている以上、安い以外の付加価値をつけなければ、ネットショップでモノが売れない時代になりつつあるのだ。

③ Z世代の採用にはSDGsが不可欠

SDGsが与える影響は売り上げだけではない。環境保全やジェンダーへの意識が高いZ世代の採用を強化するためには、SDGsの取り組みが必要不可欠となる。

50~60代ではエコな取り組みは“我慢”となるが、学校でエシカルな教育を受けてきたZ世代から見れば、企業がSDGsの取り組むことは「当たり前」という評価になる。むしろ、そのような取り組みをしていない企業で働くことは「恥ずかしい」「かっこ悪い」という部類分けされてしまうため、人材不足で悩むEコマース業界では大きなマイナスになってしまう。

④ 融資にも好影響。SDGsの取り組みが有利になる可能性も

今後は銀行の融資に関しても、SDGsへの取り組みが評価されることが予想される。帝国データバンクのTDB景気動向調査(2020年6月公表)によると、SDGs活動に積極的な企業に対して、金融機関の融資姿勢が積極的である割合が中規模企業で49.5%、小規模企業で55.3%と、約半数近くが融資で優位な状況となっている。

コロナ関連の融資と入れ替わりに、SDGsへの取り組みが評価される可能性は十分にあると言える。

このように、SDGsの取り組みはさまざまなところでネットショップの運営に大きな影響を与え始めている。近い将来、「楽天市場」「Amazon」の検索結果で、温暖化ガスの排出量の少ない順に商品が並べられたり、SDGsの取り組みの有無が広告バナーに表記されたりする可能性もゼロとは言い切れない。

いま取り組むべき手間とお金をかけないSDGsとは

では、ネットショップはどのようにして、SDGsに取り組めばいいのか。

1つは、「手間とお金と時間をかけない」ということである。

SDGsは消費者の購入意識を急激に高められるコンテンツではないので、大きな売り上げをすぐに生み出せる販促にはなりにくい。そのため、できるだけ時間やお金の投資リスクを抑えて、「やれることからやる」というスタンスで取り組むべきだ。長期スパンで販促に取り組むことで、企業ブランディングや商品の付加価値アップにつなげることができる。

また、SDGsは企業や商品をすでに「好き」なファンの顧客に対して、より「好き」になってもらうためのコンテンツであることも理解しておく必要がある。

たとえば、石けんメーカーが、妊婦さん向けの肌に優しい石けんを販売した場合、「女性を大切にする企業なんだ」ということが既存顧客にも伝わり、そこで初めて他の商品のリピート率や付加価値のアップにつながることになる。

一方、妊婦さん向け石けんを新規の顧客に売り込もうとしても、マーケットが小さいために、売れる数にはどうしても限界が出てきてしまう。検索キーワードも明確ではなく、悩みごととしても抽象的なため、よほど実店舗に大きな販路を持つメーカーでなければ、SDGsの新商品を売り込むことは難しいと言える。

このように、SDGsを掲げる商品は既存顧客向けの販促には効果を発揮するが、新規顧客の獲得や、ネット広告を使っての売り込みにはあまり適していない一面がある。SDGsの販促に取り組む際、既存顧客向けの商品やサービスを意識して、なおかつ、手間やお金の投資を抑えたマーケティング戦略を展開することが求められる。

EC企業の事例に学ぶ「できるSDGs」 【事例1】長期保証でブランディングに成功した「交換できるくん」

たとえば、修理や中古品の販売などは、限られた資源を有効に活用するSDGsの取り組みとして、消費者の支持を受けやすいサービスの1つといえる。著書「SDGsアイデア大全」でも紹介している住宅設備ECサイト「交換できるくん」では、『10年保証』という長期保証サービスを用いて、競合とブランディングで大きな差をつけることに成功し、売り上げを伸ばしている。

「交換できるくん」は付加価値を提供することによって競合に差をつけている「交換できるくん」は付加価値を提供することによって競合に差をつけている

このように、既存のサービスをさらに強化した取り組みであれば、手間とお金と時間の投資を最小限で抑えて、なおかつSDGsの取り組みとして売り上げに貢献する販促を展開することができるのである。

【事例2】積極的なアピールで新規ファン獲得に成功した「セブンデイズホテル」

もう1つ、ネットショップのSDGsで大切なことは「情報を発信する」という取り組みである。SDGsはできるだけ多くの人に知ってもらわなければ、付加価値や認知度のアップにつながらない。SNSや動画を使ってSDGsの取り組みを積極的にアピールすることが、ネットショップで商品を購入してもらうためのきっかけ作りになる。

有効な情報発信の方法としては、SDGsの商品やサービスが完成するまでのプロセスを、継続的にSNSや動画で発信することである。

著書「SDGsアイデア大全」で紹介している高知県の「セブンデイズホテル」では、地元の無農薬野菜やこだわりの雑貨を詰め込んだギフトセットが完成するまでのストーリーをInstagramで発信し続けたことで、フォロワー数を500人から2500人まで引き上げることに成功している。

「セブンデイズホテル」は積極的な情報発信でフォロワー数を大きく伸長させることに成功した「セブンデイズホテル」は積極的な情報発信でフォロワー数を大きく伸長させることに成功した
必要なのは「値段が高くても買いたい」と思わせる動機付け

付加価値とブランディングは、継続して情報を発信していかなければ、顧客に理解してもらえない。SDGsの取り組みも単発で終わらせるのではなく、長期間にわたってSNSや動画で情報発信をすることで、初めて「この会社の商品であれば、高くても買いたい」という購入動機につなげていくことができるのである。

ネットショップのSDGsの取り組みは、できるだけ手間とお金をかけずに、情報発信を積極的に行っていくことが戦略のキモとなる。裏を返せば、これらの販促には、「その企業の商品やサービスを利用したくなる」が必要であり、行動力もなく、SNSや動画にも取り組めず、三日坊主で終わってしまうようなネットショップでは、SDGsに取り組むことができない。

「SDGsに取り組まなければ、これからの企業は生き残れなくなる」――。そんな言葉を耳にする機会が増えているが、実はSDGsで持続可能な社会を作ることよりも、SDGsをきっかけにして、行動力、情報発信力、継続力のスキルを身につけて、持続可能な“会社”を作ることのほうが、これからのネットショップの運営に求められる大事なスキルなのである。

「SDGsなんかに取り組んでいる場合ではない」などと悠長なことを言っていられる時間も、そう長くは残されていないと思ったほうがいいだろう。

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オリジナル記事:SDGsをやったら儲かりますか?「人」「時間」「お金」がない企業が知っておくべき事例+やるべき理由+すぐできる取り組み | 竹内謙礼の一筆啓上
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