返品をビジネスチャンスに変えよう! 販売機会の損失防止、ファン作り、アップセル、販売チャネル拡大につながる返品サービスとは | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

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米国の返品会社のCEOが、返品をビジネスチャンスに変えるための考え方を紹介します。返品と顧客満足の関連性や、データ活用などについて詳しく解説します

返品サービスはコストに目が留まってしまいますが、実はそうではありません。返品データから得られる商品情報は今後の改善につながり、迅速な返品対応の実現は顧客満足度を高めることができます。返品をきっかけに、新たな商品の購買行動につながるケースもあるのです。返品管理会社のCEOが返品に関するデータ、返品を通じた施策や取り組みを説明します。

記事のポイント
  • 返品管理会社のCEOは、小売事業者はカスタマーエクスペリエンス、損失の最小化、データの収集を優先する必要があると指摘します
  • 小売店で購入した商品のうち、約17%が返品されています
返品データを有効に使うために

小売事業者にとって、返品サービスは返品の受け入れ、返品処理にかかるコストが高いサービスです。しかし、返品サービスは企業が活用すべき貴重なツールでもあります。(ReverseLogix社 ゴーラブ・サランCEO)

小売事業者の返品コストを削減するための返品管理システムを提供するReverseLogix(リバースロジックス、本社米国)社のゴーラブ・サランCEOは『Digital Commerce 360』の取材にこう答えました。

ReverseLogixは、Shopify、FedEx(フェデックス・エクスプレス。米国の貨物航空会社)、Samsonite(サムソナイト。米国発祥のスーツケースおよびバッグ類の製造・販売事業者)など、Fortune 500(米国のフォーチュン誌が編集・発行する全米上位500社の総収入ランキング)およびFortune100(Fortune 500に含まれる米国のトップ100企業のリスト)の企業を顧客として抱えています。

小売事業者が無料もしくは低料金で返品サービスを提供するためには、効率的に返品を処理しなければなりません。サラン氏は「返品サービスに顧客が満足し、データが今後の改善に役立てば、実は返品が『切り札』になり得る」と言います。

ReverseLogixが掲げる返品の3原則
  1. 複雑なプロセスを、顧客のために楽しい体験に変える
  2. 損失を最小限に抑える
  3. 情報を最大化する
返品サービスはファン作りに有効

サラン氏は「返品プロセスを簡単にすることがロイヤルカスタマーの増加につながる」と言います。特に、返品無料は顧客にとって大変重要です。

Shopifyが実施した調査(2021年)によると、消費者の68%がオンラインで商品を購入する際に最も重要視する点に、「返品無料」をあげました

『Digital Commerce360』が消費者1000人以上を対象に行った調査(2022年8月)でも、購入前に返品の可能性を検討していることが判明。54%が返品無料サービスがあるか否かをチェックし、39%は返品にかかる費用も確認しています。4分の1の消費者は、返品に要する時間が重要であると回答しています。

小売事業者が顧客に再び買い物してもらうためには、ポジティブな返品体験を提供することが重要である。(サラン氏)

便利な返品で顧客を引きつける戦略の1つは、リバースロジスティクスサービスを提供するNarvar(ナーバー、本社米国)のように、自宅での受け取りや代替の返品場所を提供することです。

宅配業者が顧客の自宅から返品商品を引き取り、適切なサービスで発送するのです。その利便性が顧客の心に響きます

『Digital Commerce 360』の調査では、31%の回答者が「他の検討事項よりも返品の利便性を優先している」と回答しています。

多くの顧客が返品の利便性を重視する傾向にある多くの顧客が返品の利便性を重視する傾向にある
返品コストを最小化するために

「返品は小売事業者にとって決して理想的なことではない」とサラン氏は言います。

誰かが返品要求を始めた瞬間に、ブランドにとっては即座に損失となります。どんなやり方をしても損失になるのです。(サラン氏)

成功するために、小売事業者は、コストを最小化する方法を見つける必要があります。また、商品を在庫に戻したり、流通させたりして、再販することで、リコマース(編注:中古品をインターネット上で取引するビジネスモデル)することも可能です。

全米小売業協会によると、2022年に小売業の購入品の約16.5%が返品され、その総額は約8160億ドルに達するそうです。Salesforce社は、2023年に「返品津波」が発生すると予測しています。こうしたことを踏まえ、サラン氏はこう言います。

こうした損失を最小限に抑えるためには、返品を迅速かつ効率的に処理し、返品に費やす時間や従業員の工数を減らすことが重要です。 (サラン氏)

米国を拠点とする靴の小売事業者であるGlobal Retailer(グローバルリテーラー)は、ReverseLogixが提供するクライアント向けの返品ポータル、処理技術、追跡技術を通じて「返品を60%高速化した」と言います。

その企業の各部門で返品ポータルなどを利用することで返品サービスを統合。返品に関する時間とコストを節約する上で中心的な役割を果たしました。

Global Retailerの物流管理ディレクターは、『Digital Commerce 360』に次のように話しています。

我々は、返品プロセスを管理するための独自のポータルを持っています。また、カスタマーサービスも独自のポータルサイトを所有しています。

私たちの店舗はUPS(編注:ユナイテッド・パーセル・サービス。米国の宅配会社)と連携しており、より高い透明性の実現と荷物の追跡が可能です。

返品ラベルと配送ラベルを1枚ずつ印刷する代わりに、必要な情報をすべて記載した1枚のラベルに集約しています。(Global Retailer 物流管理ディレクター)

データの活用が購買機会損失を防ぐ一手に

サラン氏は「返品は一般的にコストとしてとりあげられますが、企業にとっては豊富なデータ源でもある」と言います。

ReverseLogixは、特定の商品が返品される理由を顧客からデータとして収集し、商品の問題点を明らかにします。

たとえば、ほとんどの顧客が特定の商品を『きつい(サイズが合わない)』という理由で返品している場合、もしかしたらその商品のサイズ設定が少しずれているのかもしれない。(サラン氏)

データによって、小売事業者はどのバージョンの商品が売れているのか、売れていないのかを知ることができ、今後の在庫数の判断に良い影響を与えることができます。ReverseLogixのテクノロジーは、商品の種類、価格、季節性などの情報を考慮し、事業者の返品処理に最適な提案をすることができます。

サラン氏はこう言います。

小売事業者はそのデータを使って、返品をどのように処理するか、またサステナビリティの目標達成に向けてどのように取り組むかについて、情報に基づいた提案を行うことができる。(サラン氏)

たとえば、返送料の方が高い商品は、商品の物理的な返品を不要にする、または、破損の際は地元の修理業者を紹介する、などの提案が可能です。

サラン氏は返品データの有効活用を提唱するサラン氏は返品データの有効活用を提唱する

返品から得られるデータは、オンライン返品プロセスを統合していない企業にとって、機会損失となる可能性があります。

『Digital Commerce 360』発行「北米EC事業 トップ1000社データベース 2022年版」の上位1000社のうち46.7%がオンライン返品処理を提供していますが、返品送料の無料はわずか27.4%。ジュエリー、アパレル、アクセサリーの小売事業者は、返品送料を無料にしている割合が最も高くなっています。

返品はアップセルのチャンス

返品管理会社のLoop(ループ、本社米国)は、2022年に返品数の記録を更新したと言います。過去最も忙しい日だったのは2022年12月27日で、平均1.25秒ごとに返品を処理し、12月26日から12月30日の間に30万件の返品を処理したそうです。

同時に、それらの返品はすべて、消費者にもっとお金を使ってもらうための機会にもなりました。Shopifyと統合されたLoopのシステムは、消費者が購入した商品を返品して返金するだけでなく、商品を交換することもできるようになっています。

顧客が返金額を使って購入できる他の商品を紹介するため、販売店が売り上げを完全に失うことはありません

これらの原則を実現するためのカギは、Eコマースビジネスのあらゆる部分に返品を組み込むこと。返品はカスタマーサクセス、製造、サプライチェーンの各チームに影響を与えるため、あらゆる段階で返品について考えなければならない。(サラン氏)

これを成功させることができる小売事業者は、返品、出荷、購入のプロセスを統合することができるでしょう。場合によっては、データの適切な運用と手順によって、小売事業者は「損失と考えられているものを、利益を生む新しいものに変えることもできる」とサラン氏は説明します。

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オリジナル記事:返品をビジネスチャンスに変えよう! 販売機会の損失防止、ファン作り、アップセル、販売チャネル拡大につながる返品サービスとは | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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