今回は、ECやD2Cのマーケテイング支援などを提供するプラチナキャリアの代表取締役・大河内晃己さんにインタビューしました。17歳の若さでキャリアをスタートし、大企業から中小ベンチャーまで、多岐にわたる業界のマーケティングやブランディングに携わってこられた人物です。EC業界を知り尽くした、経験値が豊富な大河内さんだからこそ話すことができる、顧客理解やCRM戦略の重要性をお話いただきました。
サービス設計の上流から下流まで、さまざまな場面を経験した大河内さんの知見や考え方、そして熱意がぎっしりと詰まったインタビューになっています。
※大河内さんは「ECのプロ」(編注:WUUZYが提供するEC専門の人材マッチングサービス)にも登録されています
大河内氏の人物像は? ECのマーケティング&ブランディングに強み
――まず、大河内さんのこれまでのご経歴についてご紹介をお願いします。
大河内:最初にキャリアをスタートしたのは17歳の時、不動産系の学生ベンチャーに創業メンバーとして参画したことが始まりでした。その後はフリーランスのような働き方で、SNSやWeb系のマーケティングや戦略設計の案件を受け持つなどしていました。
実際にビジネスの現場から上流まで幅広く濃い経験を積むことができましたし、現在の強みを形成する土台にもなっていると思います。
現在は独立して、EC系をメインにBtoC領域全般のマーケティングやブランディングのサポートを行いながら、商品の立ち上げなどにも注力しています。
――ここからは、実際の事例についてお伺いしていきます。まずは現在取り組まれている鈴木ハーブ研究所(編注:化粧品通販事業者)に関して、大河内さんは主にどのような業務を担当されていますか?
大河内:主にメルマガやLINE、同梱物などのCRMの設計をメインにしながら、オペレーションや管理体制の改善補助という形で取り組んでいます。
多くのEC事業者が抱える課題は“顧客理解”
――さまざまな企業との仕事に関わって行く中で、EC事業者が特に多く抱えている課題だと感じるものはありましたか?
大河内:一番課題だと感じているのは、「顧客理解をどこまで深く理解できているのか」という点ですね。
これは多くのEC事業者に言えることですが、達成率や顧客の満足度などの指標を、LTVなどの数値目標だけに頼り、本当に肝心な顧客への理解が社内に行き届いていない、といった事例が案外少なくないのではないかと思います。
たとえば、サブスクリプション形式を取り入れている企業様であれば、解約理由1つをとっても、顧客によってさまざまな事情・背景があるはずです。
また、同じ商品の購入であっても、たまたま勧められて買ってみたのか、あるいは本当にそれが欲しいから買ったのかで、商品や企業への理解度、愛着などが全く異なってきますよね。
そういった数値だけではわからない要素が沢山あるはずなのに、そこになかなか目を向けられていない現状があると感じています。
顧客の解像度を上げる取り組みを提唱
――では、そのような数値だけに拘ってしまう状態に陥らないようにするには、どのような点に注目すれば良いのでしょうか?
大河内:お客さまのところに行ってインタビューをする、ペルソナを具体的に設定するなど、実際に顧客の解像度を上げる取り組みが大切です。
顧客のリアルな声を聞くことで、ブランドをどのように作り、どう訴求し誰に評価されたいのかといった点がより明確になっていきます。
顧客とのつながりが間接的なECであるからこそ、こうした点は特に大切なプロセスだと考えています。
大河内氏はECこそ「顧客のリアルな声」が重要だと指摘する
――確かに、顧客が目に見えないからこそ、実際に会いにいくというのは大切なステップですね。
大河内:こうした顧客理解に中長期的に取り組むと同時に、メルマガやLINE、同梱物などを運用し、購入回数ごとにどのような施策を行うのかといったKPIを設定していきます。
その上で、2回目、3回目の購入にそれぞれどう反映させていくのかという検証を繰り返していくことになります。
“顧客目線”の訴求をかなえるマーケティング手法とは?
――ヒアリングを行い、ペルソナやターゲットが明確になっているかどうか、そして数値目標をしっかりとモニタリングできる管理体制があるかどうかが大切なんですね。
大河内:そうですね。その他にも、たとえば訴求効果の強い口コミを活用するなど、色々なデータの活用方法・切り口が考えられます。その上で、本当に今の施策が正しいのかどうか常に議論して、どう実行するのかに落とし込んでいけば良いと思います。
こうした取り組みで顧客理解が深まれば、ブランディングやプロモーションの方法も変化していきますし、それによってより顧客目線での訴求も可能になるはずです。
また、ブランドのアイデンティティを、社内でしっかりと共有できているかどうかも重要です。単に商品を開発して売ったり、数字だけを追ってしまったりするのではなく、ブランドとしてどうなりたいのか、何をしたいのか、なぜその商品を作っているのかといった点を、もっと会社として作り上げていく活動が必要だと考えています。
どんな人にどのような価値を届けたいのかという点で、会社全体で同じ方向性を共有していることが大切ですね。
顧客同士のコミュニティ構築を促すと、売上アップの好循環が生まれる
――まざまな業務に熱心に取り組まれている大河内さんですが、現在挑戦されている事を教えていただけますでしょうか?
大河内:口コミコンテンツやロイヤリティの高い顧客を集めたコミュニティの運用に取り組んでいます。
具体的には、その企業のサービスや商品が好きなユーザーだけを集めて、LINEグループのようなコミュニティを作ります。そのコミュニティの中で、たとえば新商品のサンプルレビュー会などのイベントを企画したり、特典を付与するといった活動を行います。
そうすることで、そのコミュニティのメンバーのSNSや口コミを通してサービスが周囲にも広がっていく、という循環を生み出すコミュニティを構築することを目的にしています。
コミュニティの構築によって、SNSや口コミから売り上げ向上につながる
――大河内さんは企業のサポートに入る上で特にどのようなことを意識されていますか?
大河内:意識している点は、「依頼されている仕事以上のアウトプット」です。表面的に依頼されたタスクだけをこなすのではなく、もっと本質的なところから作り直そう、という意識をいつも持っていますね。
その上で、会社全体やオペレーション全体を俯瞰(ふかん)して、第三者としての客観的な意見を伝え、改善につなげることを重視しています。
――最後に、大河内さんの今後の目標についてお聞かせください。
大河内:最終的には人材系、労働人口減少の問題に貢献していくことが大きな目標です。これまで大企業から中小企業、代理店やスタートアップまでさまざまな業態の企業と関わってきましたが、共通して言えるのは、「とにかく人が足りていない」という点なんです。
やりたいことがあっても、それに必要なスキルや知識を持った人材がそもそもいない。今後日本の労働人口がさらに減少していく中で、そうした人材の問題を解決することで社会に貢献することができれば良いですね。新しい価値を生み出せる人材をたくさん育て、幅広く活用していきたいと思っています。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:自社のEC事業は「数字」だけに頼っていないか? マーケティングのプロが語る“CRMの落とし穴と重視すべきポイント | 「ECタイムズ」ダイジェスト
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