アウトドアアパレルを販売するPatagonia(パタゴニア)は、サイバーマンデー(編注:アメリカの祝日「感謝祭(11月の第4木曜日)」の翌週月曜日にスタートするオンラインセール)に合わせて、中古商品を販売するECサイト「Worn Wear」を宣伝しました。独占インタビューによると、2020年に「Worn Wear」をスタートして以来、2022年のサイバーマンデーが2番目にトラフィックが多い日になりました。
記事のポイント
- Patagoniaは、サイバーマンデーにあわせて「Worn Wear」の商品が20%オフになるキャンペーンを実施
- Patagoniaの顧客は、平均して5年から7年使用した後に商品を売りに出している
本当に必要な物以外は、買わないでください。もし何かを買う必要があるなら、耐久性のあるものを買ってください。そして、できれば中古品を買うようにしてください。(Patagoniaの企業開発責任者であるアシャ・アグラワル氏)
Patagoniaは通常、サイバー5(感謝祭翌日の「ブラック・フライデー」や週明けの「サイバー・マンデー」を含めた木曜日から月曜日までの5日間)のホリデーショッピング期間中に商品のプロモーションを実施していません。
その方針を転換したのが2022年。サイバーマンデーに、中古アパレル販売サイト「Worn Wear」のプロモーションを実施したのです。
Patagoniaはこれまで感謝祭からサイバーマンデーまでの「サイバー5」期間中の商品プロモーションを控えてきました。マーケティング活動は通常、ブラックフライデーの店舗での修理サービスに限定しているとアグラワル氏は言います。
私たちは、これまで反消費主義を貫いてきました。でも、もし消費者が中古商品を購入してくれるなら、それに対する"ご褒美”を用意していますよ、という意味でサイバーマンデーのプロモーションを実施することにしたんです。(アグラワル氏)
「Worn Wear」の日本語サイト(画像は編集部がキャプチャして追加)
2022年11月28日のサイバーマンデー当日。PatagoniaはWorn Wearのwebサイトへ消費者を誘導しました。中古商品を販売するECサイト「Worn Wear」で購入すると20%の割引を提供するというプロモーションを実施したのです。
アグラワル氏によると「このプロモーションは成功した」そうです。2022年のサイバーマンデーは、「Worn Wear」が2020年にオープンして以来、2番目にトラフィックが多い日になりました。
2020年当時、PatagoniaのWebサイトにアクセスした顧客はページ内の専用ボタンをクリックしなければ「Worn Wear」に移動できませんでした。2022年の戦略では、「www.patagonia.com/」へのwebトラフィックを自動的に「wornwear.patagonia.com/」にリダイレクトしました。その戦略が効を奏し、2022年のサイバーマンデーにおける「Worn Wear」の売り上げは、70%が新規利用者だったそうです。
消費者がどのように中古品を探すか調査したPatagonia
Patagoniaは、「Worn Wear」でどれだけの新規顧客が購入し、どれだけの顧客がリピーターになるかを調査しています。
ただ、Patagoniaは顧客が何年も新しい商品を購入する必要がないことを目標にしているため、このような調査は長期的なプロセスになるとアグラワル氏は言います。「数か月に1度、あるいは季節ごとに買ってもらおうという商品ではありません」
アグラワル氏によると長く商品を愛用してもらうことを目的にしているため、顧客がPatagoniaに中古商品を売るのは、平均して使用開始から5年から7年目だそうです。
そのため、調査の基準となる要素として次のような質問をあげています。
- 顧客はどれくらいの期間、Patagoniaのウェアを保管しているのか?
- 修理して長く愛用してもらうために、私たちにできることは?
- 新規顧客はどれくらい獲得できているか?
「Worn Wear」が将来の商品デザインに影響を与える
アグラワル氏によると、Patagoniaは消費者が「どの再販商品に惹かれるのか」「その理由は何か」「どの商品があまり求められていないのか」を理解しようと努めているそうです。
中古品販売は魅力的なデータを収集することができます。我々のアウターウェアのジャケットや雨具など、一部の商品はよく売れています。また、バッグ、特に黒のフルバッグは“飽きない”そうです。これらの商品は、webサイト上でもすぐに売れてしまいます。しかし、あまり売れない商品もあります。
私たちは、責任ある企業であり続けるために、どうしたらよいかを考えなければなりません。複数の利用者が使えるもの、あるいは1人の利用者が一生使い続けられるもの、できればその先の世代まで使えるものを作っていきたいのです。(アグラワル氏)
Patagoniaは、オンラインストアに再販された商品がどのようなもので、それらの商品が何年前のものかを調査。再販のために何度も送り返される商品は、デザインチームに疑問を投げかけるとアグラワル氏は言います。
平均的な5年から7年のサイクルのかなり前に返品された場合、その商品のデザインを変更するか、あるいは完全に生産を中止することがあるとアグラワル氏は説明します。
そのSKUが本当に一度しか売れないのなら、私たちのブランド価値にそぐわないため、生産中止とするかどうか判断をします。あるいは、別の方法でデザインすれば、後で再販するのに有利になるかと考えるのです。これらのデータをもとに、Patagoniaは将来の商品計画を変更します。
商品デザインにデータをシェアし、設計から再販、修理まで、さまざまな方法で商品が循環していくことを考えるのは、大変役立ちます。(アグラワル氏)
再投資しない利益は地球を守る投資に充当
修理依頼も同様です。修理のために頻繁に返品されるアイテムがある場合、Patagoniaは商品設計の段階でどのような問題が改善できるかを再検討。修理に出されたアイテムはネバダ州リノの倉庫で仕上げています。
Patagoniaは2022年9月、創業者のイヴォン・シュイナード氏が所有権を新たに2つの事業体「Patagonia Purposes Trust」「Holdfast Collective」に移行すると発表しました。
リリースによると事業に再投資しなかった利益は、地球を守るために配当金として分配すると公表しています。
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オリジナル記事:パタゴニアが中古品販売の「Worn Wear」に力を入れる理由 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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