ECサイトでの不正アクセスや不正取引が増加しているなか、EC 事業者から“安心・安全”な決済としてAmazonのID決済サービス「Amazon Pay」が注目を集めている。Amazonはアカウントやクレジットカードの不正利用を24時間365日監視する不正検知システムを採用するなど、世界水準のセキュリティ環境を保有。その環境下で運用される「Amazon Pay」は、不正取引の軽減、カード情報漏えいの防止に役立つとされる。
EC事業者のなかには、不正アクセス攻撃のリスクを減らすためクレジットカード決済を中止し、クレカ系の決済を「Amazon Pay」に集中する企業もある。Amazon Pay事業本部 本部長の井野川拓也氏に取材した。写真:吉田浩章
2021年トピックはAmazonギフト券利用の0.5%還元、導入事業者の手数料の引き下げ
「Amazon Pay」導入企業数は1万社を突破、導入サイト数は10万サイトを超えた2021年。オンラインビジネスを始める事業者数と、「Amazon Pay」の採用企業は増え続けている。
2021年の「Amazon Pay」の大きなトピックにあげられるのがAmazonギフト券利用に関する還元施策。消費者が、「Amazon Pay」を導入しているECサイトにおいて買い物をする際、Amazonアカウントに登録したAmazonギフト券の残高を使い「Amazon Pay」で支払うと、支払金額の0.5%がギフト券で還元されるという施策だ(2022年5月11日からAmazonプライム会員には1%の還元)。「Amazon Pay」で支払いをした月の翌々月下旬に、AmazonアカウントのAmazonギフト券残高に自動反映される。
また、2021年10月からは、デジタルコンテンツ以外の商品やサービスの販売事業者向け「Amazon Pay」決済手数料を、従来の4.0%から3.9%に引き下げた。
ギフト券の還元施策など近年の「Amazon Pay」は、導入企業から「ただのID決済ツールではなく、ECサイトのさまざまな課題を解決に導くマーケティングツールが『Amazon Pay』」と評価されている。「カート離脱率を改善したい」「CVRを高めたい」「新規顧客を増やしたい」――。EC事業者が抱えるこうした課題を解決する手法として支持を集めているのだ。
世界水準のセキュアな環境を評価する声も
マーケティングツールとしての評価を高めている一方で、「Amazon Pay」の高セキュアな環境を支持する事業者も多い。たとえば、「CVRを高めたいといったニーズ以外に、不正取引対策に関する工数、コストを削減できた」という声もEC事業者からあがっている。
Amazonはグローバル企業として世界水準のセキュリティ環境を提供しており、「Amazon Pay」もその環境を利用している。「Amazon Pay」を利用すれば、セキュリティのメリットである、クレジットカードの非保持化を容易に実現できることは大きな魅力だ。(井野川氏)
Amazon Pay事業本部 本部長の井野川拓也氏
井野川氏はAmazonにおいて「セキュリティは最優先される事項で、大規模な投資を継続して行っている」と説明。
たとえば、Amazonアカウントへのログイン時に2段階認証を採用するなど厳格な情報管理を実施。クレジットカード決済に関する独自の不正検出ルールに加え、Amazonアカウントやカードの不正利用を24時間365日監視する世界水準の不正検知システムを採用している。
2段階認証の設定で不正ログイン対策
グローバル化する不正取引に対しては、アメリカやヨーロッパ、インド、中国、南米などさまざまな国で事業を展開している強みを生かし、情報をいち早くキャッチして対応。不正取引を行おうとする悪意のある第三者によるアタックを未然に防ぐ環境を構築している。「Amazon Pay」で発生した不正取引には、Amazonが一定の条件のもとで事業者の損害を補填する仕組みもある。
自社ECサイトにおける手の込んだ不正取引を1件1件確認することは非現実的だ。「Amazon Pay」は世界水準のシステムで不正取引を検知するため、事業者の不正取引対策の手間やコスト、時間などを大幅に削減できるという。
昨今、不正取引は大きな問題になっており、事業者の悩みの種になっている。Amazonが対策することで、事業者の対策コスト、リソースなどの負担を軽減することができる。
Amazonは何重にもユーザーの個人情報、クレジットカード情報を保護し、不正取引されない仕組みを構築することで、被害に遭う可能性を下げるようにしている。(井野川氏)
オーソリゼーションでは、「Amazon.co.jp」「Amazon Pay」のネットワーク上での取引データのなかから、不正パターンに近しい傾向(住所情報・メールアドレスのパターン、短時間での複数注文)などが発見された場合、オーソリ処理ができないように注文を制御する。
注文後に不正利用の可能性があると判断した際は、クレジットカードの利用分が請求されないようにオーソリ処理を止めることがある。Amazonアカウントに登録された消費者の住所へ商品を発送しているなどの要件を満たす際、Amazon側で売上費用を補填する。
不正取引対策、チャージバックリスクをゼロに……「Amazon Pay」導入効果
CVR向上や新規獲得などを目的に「Amazon Pay」を導入する企業のほか、不正取引対策などで活用する企業も多い。また、導入後にセキュリティの効果を実感した企業もある。
●不正取引対策として「Amazon Pay」に着目した「atmos」
スニーカーブームによって増加している転売目的による不正取引。「atmos」を運営するFoot Locker atmos Japan(旧:テクストトレーディングカンパニー)は、不正取引対策として「Amazon Pay」に着目した。
EC事業のKPI(重要業績評価指標)は売り上げの増加と新規顧客の獲得。不正取引の減少と売り上げの拡大を両立する必要があるため、「3Dセキュア」の導入はできれば避けたい。ID決済の比率が高まれば、不正利用によるチャージバックも減少すると考え、「Amazon Pay」を導入した。
導入後5か月間で、EC売上と新規顧客数が前年同期比で25%程度増加。「『Amazon Pay』でのチャージバックはゼロ」(Foot Locker atmos Japan)。導入後の売上増加、「Amazon Pay」による決済割合が2ケタ台に上昇していることを踏まえると、チャージバックの発生件数の増加抑制に、「Amazon Pay」が一定程度、寄与していると考えられる。
●不正取引が少ない点を評価した「G123」
HTML5で開発したゲームプラットフォーム「G123(ジーイチニサン)」(運営はCTW)では、スマートフォン、タブレット、パソコンなどのWebブラウザ上でプレイできるゲームサービスを提供している。デジタルコンテンツは不正取引が発生しやすい商材の1つ。「G123」が「Amazon Pay」を導入したのは、不正取引が少ないと評価したためだ。
また、「Amazon Pay」は定期的なダウンタイムが発生しないため、24時間365日利用できる点はゲームの決済に最適だという。また、返金時に手数料がかからないことも評価している。
●「Amazon Pay」でチャージバックのリスクをゼロに近づけたコメ兵
コメ兵が運営する「KOMEHYO」が扱う商材はブランド品で、転売など不正取引のターゲットにされやすい。高額商品は代引き支払いが多く、受取拒否などのリスクや手数料の問題もあった。こうした課題を解決するために導入したのが「Amazon Pay」だった。
「Amazon Pay」の決済は簡便なため、取引に関する問い合わせが減少。不正取引対策として発生する確認作業も軽減した。「Amazon Pay」での取引は、配送先住所をAmazonアカウント登録住所に限定するように設定。Amazonマーケットプレイス保証の対象となることで、実質的にチャージバックのリスクをゼロに近づけている。
また、クレジットカードや他のID決済方法に比べて、顧客単価は「Amazon Pay」決済利用者の方が高いという傾向が出ているという。
「『Amazon Pay』の不正取引効果などに着目して導入する企業が増えている」と話す井野川氏
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オリジナル記事:カード情報漏えいや不正取引の対策で ニーズ急拡大の「Amazon Pay」
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