双方向オプトインは、販売事業者と、個人情報を提供する消費者の両方がオプトインする仕組みです。銀行、クレジットカード会社、アプリなどの事業者側と消費者の双方がオプトインしない限り、データは共有されないのです。
過去数十年の間、消費者はオプトイン、オプトアウト、さらにはダブルオプトインを経験し、違いを理解するようになりました。
何百万人もの消費者が、個人を特定できる情報(PII)を提供し、オンラインプラットフォームやサービスに登録。割引、サブスクリプション、基本的なサービスなどと引き換えに個人情報を提供します。
消費者は、Eメールアドレスを提供する代わりに、何らかの形でセキュリティが担保されることを期待しています。最もシンプルな形態は、消費者から明示的な許可を得る「ダブルオプトイン」の基準となった2段階のオプトインです。たとえば、携帯端末でアプリをダウンロードする際にも使われています。消費者は反射的に許可することが多く、ほとんどの人はこのダブルオプトインがスタンダードな仕様になっていることを知りません。
ダブルオプトインの先へ
多くの消費者は、銀行やその他の企業に登録したり、利用規約に同意すると、企業に個人情報を提供することになると理解しています。
一方、消費者が財布に入れているクレジットカードやデビットカードを発行している企業は、企業と消費者の双方が同意したサービス利用規約の内容に則って、消費者の個人情報を使用することができます。
しかし、現代の消費者は、個人情報をもっとコントロールするために、さらに多くのことを求めています。商品購入時に1%のキャッシュバックを受けたり、たまったポイントを旅行に使ったりするだけでは十分ではありません。消費者は、個人情報にアクセスする企業を、自分のメリットと照らし合わせて選びたいのです。
スウェーデンで後払いサービスを提供するKlarnaは、小売店ごとにオーダーメイドの関係性を構築。消費者に「今払う」「後で払う」といった支払い方法を展開し、サービス利用のメリットを提供しています。
Klarnaが消費者と販売事業者の間に入るため、消費者はそれぞれの小売事業者と新たな関係を築く必要がありません。このような取引ができるのは、Klarnaが小売事業者のAPIに「オプトイン」しているため。一方、消費者は、データの共有を許可するために、クレジットカードの発行会社(この場合はKlarna)などに「オプトイン」するだけでよいのです。
Klarnaについて(画像は
第21回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 割賦販売小委員会の資料から)
今後、消費者の取引に関するレシートデータを販売者が他社に提供できる新しいミドルウェアが登場する予定です。レシートデータは、消費者が事前に承認すれば、販売者が各金融機関と直接やり取りすることなく、金融機関(銀行、クレジットカード会社など)に直接提供できます。
新しいミドルウェアは、独自のAPIや標準的なバッチ処理によって販売者からレシートデータを受け取り、それを金融機関に提供することができるのです。金融機関は、カードと連動したオファーに対してクレジットを発行したり、バンキングアプリ内にレシートを表示するなどの施策を実行することができます。
双方向オプトインとは?
双方向オプトインは、販売事業者と、個人情報を提供する消費者の両方がオプトインする仕組みです。銀行、クレジットカード会社、アプリなどの事業者側と消費者の双方がオプトインしない限り、データは共有されません。
また、双方向オプトインは、やり取りのコントロールを取引に関わる人々にしっかりと委ね、消費者と小売事業者に大きなメリットをもたらします。
消費者は紙のレシートを必要としなくなります。その代わりに、現在のように取引内容や購入金額が集計されて表示されるのではなく、オンライン上にあるクレジットカードの詳細履歴で商品単位で確認することができるようになります。また、商品のリコール情報が直接通知され、紙のレシートを探すことなく、アプリで簡単に返品を管理できるようになります。
そして、小売店にとってのメリットはさらに大きいのです。双方向オプトインを活用する小売店は、新たな収益源を生み出すことができます。
双方向オプトインを活用すれば、消費者はSKUレベルまで商品の取引を確認することができるようになります。これは企業規模の大小を問わず、すべての小売事業者にメリットがあります。
小規模な小売事業者でも、このデータを活用して新たな収益源を生み出せば、月に数千ドルの利益を得ることができます。大規模な小売企業であれば、数百万ドル規模の新たな収益源を構築することができるでしょう。
双方向オプトインの技術により、小売企業は消費者の行動に関するインサイトを得ることができ、より詳細なトレンド分析や、より細かいデータに基づいたマーケティングの機会を得ることができます。賢い小売事業者は、SKUレベルのデータを活用して、高度にパーソナライズした消費者重視の体験を提供することで、マーケティング費用の効果を高めることができるのです。
小売企業、フィンテック企業、消費者。三者間の利益のトライアングル
小売企業は、消費者との距離を縮めながら、これまで収益化できなかったデータからより多くの収益を得られるようになるため、この利益のトライアングルはすぐにスタンダードになるでしょう。
銀行やフィンテック企業は、各取引をより細かく管理できるようになり、より効率的なマーケティングを行うことができるようになります。
また、消費者は、紙のレシートを使わずに、自分の行動や財務をより透明性高くコントロールできるようになるのです。そして、これらはすべて、双方向オプトインという新しいプライバシー基準から始まります。
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オリジナル記事:小売事業者の新たな収益源になる可能性がある「双方向オプトイン(Two-sided opt-in )」とは | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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