楽天が2020年下期に「楽天市場」で取り組むことなどを公表した戦略共有会。執行役員の野原彰人氏はコロナ禍における「楽天市場」の流通状況、出店店舗への支援、送料無料ライン施策の効果などを説明した。2020年秋には店舗運営システム「RMS」に新機能「One Platform」を追加する。野原氏が語った戦略などをまとめた。
新規・復活購入者ともに拡大
コロナ禍の2020年4月~6月における「楽天市場」など物販に関するショッピングEコマースの流通総額は前年同期比48.1%増。購入者数も増加し、新規購入者は同63.1%、1年以上「楽天市場」で購入がなかったユーザー「復活購入者」は同80.9%増えたという。
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2020年4月~6月における新規購入者数、復活購入者数の増加率
出店店舗は約2,000店舗増加
2020年4月~6月で出店店舗数は約2,000店舗増加、2020年6月末までに初めて5万店を突破し、5万1153店となった。前年対比で30%増の伸び率で推移しているという。
新規出店企業の地域や業種に偏りはないが、今までモールに出店していなかったナショナルブランド企業の出店が増えたという。
たとえば、無印良品を展開する良品計画は6月、「楽天市場」に出店し、衣料品など約200品目の商品販売をスタート。呉服販売の京都きもの友禅は7月に出店した。
また、すかいらーくホールディングスは2020年内に「楽天市場」へ出店することを決定している。
コロナの影響を受けた店舗を支援
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた出店店舗を支援するため、企画ページの展開や情報提供、オンライン勉強会を実施した。
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店舗を応援する企画例
情報支援
2020年3月に店舗向け相談窓口を設置。商品の入荷や配送の遅延、ユーザーへの対応、運営資金繰りなど出店店舗から寄せられた問い合わせに対応。合わせて、行政からの情報提供ページを展開した。
学びの支援
「オンラインツールの導入で店舗とのコミュニケーションをより強化する」ことを目的に、2020年4月からオンライン形式の講座をスタート、出店店舗に学びと交流の場を提供した。店舗運営に悩む店舗への支援策として、2020年4月20日~4月30日には「楽天まなびウィーク」と題した日替わりの講座を実施した。
2020年8月19日時点で、オンライン講座に参加した店舗数は2,000店舗、参加人数7,000人を超えた。平均満足度も4.4/5.0点と高評価という。
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オンライン講座の様子
その理由について、野原氏は「リアルの場では質問しづらいが、チャット機能を使うことで店舗同士の相談やコミュニケーションがしやすく、活発に行われたため」と説明した。
以前から「オンライン形式の講座を実施したらどうか」という話は上がっていた。withコロナ時代で一気に広まった内容だと感じる。(野原氏)
成功店舗が売上増加を目指す店舗にコンサルを行う「楽天NATIONS(ネーションズ)」の実施、店舗とのさらなるコミュニケーション深化のために、2020年秋ごろに広報誌「Walk Together」を紙面とWeb版で年2回発行予定という。
新機能リリース
店舗がより効率的に運営を行えるよう、店舗運営システム「RMS」に新機能「One Platform」を2020年秋頃にリリースする。機能はメールや情報の集約化、カテゴリごとに情報の整理、情報の優先度付け、案件のToDo管理が行えるようにする。
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2020年秋頃にリリース予定の新機能「One Platform」
「送料無料ライン」導入店舗は高い成長率
3,980円以上の購入でユーザーの送料負担が0円になる「送料無料ライン」は、2020年8月16日時点で8割以上の店舗が導入。導入店舗と未導入店舗の成長率を比較すると、導入店舗の方が約20ポイント成長率が高くなった。
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「送料込みライン」導入店舗と未導入店舗の成長率比較
導入店舗に対する今後のサポートとして、「後○円で送料無料」という表示、「楽天市場」内キャンペーンの継続、「送料込みライン」導入店舗ロゴの露出拡大などを行う。
2020年5月以降に「送料込みライン」を導入した店舗に対し、注文単価3,980円以上の送料無料注文を対象に宅配便は250円/1件、メール便は100円/1件支援する「安心サポートプログラム」を行う。第2弾の支援期間は2020年10月1日~12月31日まで。
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「安心サポートプログラム」第2弾を実施。2020年5月以降に「送料込みライン」を導入した店舗にサポートを行う
透明化法の中、安心・安全な運営を目指す
2020年7月に施行された「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法」を受け、出店基準の開示や消費者向け補償制度など「楽天市場」の取り組みについて説明。野原氏は「インフラ整備やコンプライアンスの強化、サービスレベルの向上などを行ってきた。今度もいかに安心・安全な売り場作りを行うかが成長には不可欠だ」と述べた。
審査やルール作り
楽天は2001年より「楽天市場」への出店審査基準や規約をWeb上で開示。2020年7月末には広告審査の詳細ガイドラインを店舗に案内したという。
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Web上で開示されている「楽天市場」の出店審査基準
審査基準などの開示内容について「不足している」という声もいただいている。しかし、透明化しすぎると悪意を持つ人間が規定をかいくぐり、真面目に運営している店舗や消費者に悪影響を及ぼす可能性がある。
ブラックボックスにして儲けを独占しようとしているのではなく、真摯に運営に取り組む店舗や消費者を守るため、基準の開示によって双方がプラスになるよう進めて行く。線引きが非常に難しいが、しっかり対応していきたい。(野原氏)
安心ショッピングサービス
消費者に対する補償として、商品の未着や遅延、ブランド品が模倣品だった場合などに購入金額を補償する「安心ショッピングサービス」を提供している。
保障上現金額は30万円まで。補償は無料で受けることができ、楽天非会員もサービス対象になっている。
不適切な商品の通報機能
不適切な商品を排除するため、全商品ページに通報窓口を設置している。楽天で随時巡回を行っているが、目配せが届かないところに対して、ユーザーの声を積極的に採り入れることで品質の改善につなげているという。
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全商品ページに実装されている「不適切な商品の通報機能」
ブランド品の偽造品・模造品排除に向け、楽天は1,573ブランドと提携している。商品パトロールや、商品の試し買いを行い提携ブランドと商品チェックを行っている。
違反点数制度
2016年より実施している「違反点数制度」は、規約・ガイドラインの違反行為を明文化し、違反レベルに応じた対応をルール化したもの。
制度開始以降、規約違反店舗は大幅に減少し、ユーザーのNPS(ネットプロモータースコア)はプラスになっているという。
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「違反点数制度」導入の成果(画像は戦略共有会資料から編集部がキャプチャ)
サステナビリティへの意識が変わる
コロナ禍で一番変化したと感じる点は「サステナビリティ」の部分で、「環境に対する考え方が強くなったと感じる」と野原氏は述べた。
SDGsの環境、社会、経済の3つの側面に貢献する商品やサービスを紹介する「EARTH MALL with Rakuten」も急激に伸びており、売り上げは前年同期比50%増、サイトアクセス数は5.3倍になった。
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「サステナブルな買い物」に対する意識の変化の調査結果
(画像は戦略共有会資料から編集部がキャプチャ)
「自分のための消費」から「世界を変える消費」に変わってきている。「いかに環境に優しいことができるか」「個人ベースでも取り組みができる」という気づきがコロナを通じて促された結果だろう。(野原氏)
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オリジナル記事:楽天が2020年下期に取り組むこと――「送料無料ライン」「RMS新機能 One Platform」「流通状況」【戦略まとめ】 | 大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ
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