楽天の三木谷浩史会長兼社長が8月27日に開かれた「楽天市場」出店者向けのオンラインカンファレンス「楽天オンラインEXPO」で語ったのは、楽天モバイルとのシナジー、コロナ禍における「楽天市場」の流通、物流への投資など。三木谷社長が語った講演内容をまとめた。
楽天モバイルとのシナジー
楽天回線エリアではデータ通信が使い放題で月額2980円という圧倒的な価格力などを武器に、将来的には2000万人以上の楽天モバイル利用者を見込む三木谷社長。サービス開始から3か月で契約申し込み数が100万回線を超えており、利用者は順調に増えている。
将来的には1500万人、2000万人、2500万人というユーザーが楽天モバイル使い、そしてメインに「楽天市場」でショッピングをするということが実現できると思っている。(三木谷社長)
なお、楽天モバイルの通信基地局は整備の前倒しが進んでおり、6月末時点で5739局を設置。2021年3月までに人口カバー率70%を達成するだけでなく、当初は2026年末までとしていた人口カバー率96%以上の実現を5年前倒しするとした。
5Gの商用サービスに関しては、NECとコアネットワークの共同開発に合意済み、9月末までにサービスを開始する予定という。
また、三木谷社長は電話・メッセージ・SMSなどが利用できる楽天モバイルダイヤルアプリ「Rakuten Link」を軸に、さまざまな楽天グループのサービスを融合させていく方針を示した。
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「Rakuten Link」を軸に楽天グループのサービスを融合させていくという
将来的には2000万人以上になる楽天モバイルユーザが「Rakuten Link」を使う。ショッピングなど楽天グループのさまざまなサービスが融合していく形になると考えていただきたい。(三木谷社長)
なお、7月末時点までの楽天モバイル契約者が7月に「楽天市場」で買い物した割合は47%に達した。「楽天モバイルと楽天ポイント、『楽天市場』のシナジーは極めて高いと思っている」(三木谷社長)
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楽天モバイル契約者が7月に「楽天市場」で買い物した割合
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キャリア別のクロスユース状況流通総額は「楽天市場」単体で3兆円へ
楽天の2020年1−6月期(第2四半期累計)における国内EC流通総額は、前年同期比12.5%増の1兆9580億円。
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四半期ベースでの国内EC流通総額の推移(楽天が公表した決算説明会資料から編集部がキャプチャ)
4−6月期(第2四半期)における物販のショッピングEコマース流通総額は前年同期比48.1%増。新型コロナウイルスの影響が直撃している「楽天トラベル」などを含めた4−6月期国内EC流通総額は、前年同期比15.2%増の1兆300億円だった。こうした状況を踏まえ、三木谷社長は2020年の見通しを次のように話した。
「楽天市場」単体で流通総額は3兆円を超えるレベルまで成長している。やはり世の中のデジタル化というのが一気に進んだということではないか。
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第2四半期のショッピングEコマースの流通総額の伸び率(楽天が公表した決算説明会資料から編集部がキャプチャ)
なお、2019年度(2019年1~12月期)国内EC流通総額は前期比13.4%増の3兆8595億円。国内EC流通総額は「楽天市場」の流通総額に加え、トラベル(宿泊流通)、ブックス、ゴルフ、チケット、ファッション、ドリームビジネス、ラクー、ビューティ、マート、デリバリー、楽天ダイレクト、カーライフ、クーポン、ラクマ、楽天デリバリープレミアム、Rebates、Raxy、楽天西友ネットスーパーなどの流通額を合算した数値。
コロナ禍において「楽天市場」など物販系サービスの購入者は急増。2020年4-6月期(第2四半期)の新規購入者数は前年同期比63.1%増、1年以上購入がなかったサービス利用の再開者数は同80.9%増と好調だ。
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第2四半期のショッピングEコマースにおける購入者数について(楽天が公表した決算説明会資料から編集部がキャプチャ)
出店者によると、「楽天スーパーSALE」の数値でもその勢いが示されているという。6月に行われた「楽天スーパーSALE」の期間流通総額は、2019年12月比で13.9%増だったという。
2000億円を投じる時前の物流網作り
物流拠点とラストワンマイルを拡大することで、独自の配送ネットワークを構築する「ワンデリバリー」構想では2000億円超の投資を計画する楽天。
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楽天のEC需要拡大に向けた戦略
6月には千葉県の習志野市に「楽天フルフィルメントセンター習志野(楽天FC習志野))」が本格稼働。2021年上期には神奈川県の「楽天フルフィルメントセンター中央林間(RFC中央林間)」が稼働する予定。
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物流拠点を拡大している(楽天が公表した決算説明会資料から編集部がキャプチャ)
「ワンデリバリー」構想の中核を担う物流代行サービス「楽天スーパーロジスティクス」について、三木谷社長は「大赤字事業」と説明。続けて、「物流が増えればトントンまで持っていけると思っていますが、市場出店者のビジネスをサポートするための事業」と改めて趣旨を強調した。
楽天グループで生活用品や日用品を取り扱う「Rakuten24」などの直販店舗、「楽天ブックス」、ファッション通販サイト「Rakuten Fashion」、家電ECサイト「楽天ビック」の商品と、「楽天市場」出店店舗を対象とする物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」で受託する一部の荷物を自社配送している「Rakuten EXPRESS」の人口カバー率は2020年7月時点で、62.5%まで拡大。「最終的には80%、90%までカバーエリアを広げる。今後、楽天のロゴが付いた車で、ロゴの付いた箱がどんどん配送されていく」(三木谷社長)
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楽天スーパーロジスティクスを利用する店舗は流通総額が拡大している
購入者の送料負担を0円とするラインを3980円以上に設定した「送料無料ライン」について、8割以上の店舗が導入。「送料無料ライン」導入店舗と未導入店舗の成長率を比較すると、導入店舗は未導入店舗と比べて成長率は約20ポイント高くなっている(2020年4-6月の実績)。
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「送料無料ライン」の導入店舗は、未導入店舗と比べて成長率が高くなっているという
「送料無料ライン」の導入などによって、競合であるAmazonの名前をあげて顧客ロイヤルティを測る指標であるNPS(ネットプロモータースコア)について言及。ヘビーユーザー、ライトユーザーともに競合と比較して大幅に向上したと説明した。
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競合と比較したNPSについて(楽天が公表した決算説明会資料から編集部がキャプチャ)サステナブル消費にも対応
サステナブル(持続可能)消費への対応にも力を入れていく。
「未来を変える買い物を。」というスローガンのもと、未来の環境、社会、経済に配慮して製造された「サステナブル(持続可能)」な商品を販売する「EARTH MALL with Rakuten」を立ち上げたのは2018年。
2019年4月-2020年3月の売り上げは前年同期比で50%増。サイトアクセス数は同5.3倍に増えたという。
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「EARTH MALL」について
「EARTH MALL」で扱うのは、MSC認証、ASC認証、FSC認証、国際フェアトレード認証、RSPO認証、GOTS認証といった国際的な機関からのお墨付きが付いた商品。「楽天市場」内で販売されている認証商品は「EARTH MALL」に自動的に掲載される仕組み。
国際認証済み商の品だけでなく、「地域に貢献する商品」「伝統文化を守っていく商品」「エネルギー消費がより少ない商品」など、さまざまな切り口でアドバイザーと共に商品を選定し、掲載。約7000点からのスタートで現在は約5万商品を販売している。
「EARTH MALL」が生まれた背景には、2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs」(エスディージーズ・Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)がある。
この中の「目標12・つくる責任つかう責任(持続可能な消費と生産のパターンを確保する)」への貢献をめざすために、サステナビリティ推進部(2018年1月、CSRグループから名称変更)の発案でスタートした。
三木谷社長は物流への投資も踏まえ、「CO2削減を踏まえたサステナブルな物流、消費を『楽天市場』など楽天グループで作っていく」と意気込みを語った。
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オリジナル記事:楽天・三木谷社長が語った「モバイルとのシナジー」「コロナ禍の楽天市場」「物流への投資」【2020年夏の講演要旨】 | 大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ
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