早速ですが、「小川卓ゼミナール」すなわち「小川ゼミ」の存在をご存知でしょうか?
小川ゼミは日本のウェブ解析業界において第一線を走る小川卓が顧問を務める、ウェブ解析士協会にて実施されているオンラインでのゼミナールです。
ウェブ解析士協会のホームページでは
講師小川さんの指導のもと、各自参加者が研究テーマを決め、そのテーマに向かって調査・研究・発表をするものです。
参加者はNDAを交わした上で、レポートやデータを共同で研究します。
出典:一般社団法人ウェブ解析士協会 小川卓ゼミナール「ウェブ分析」
とされています。
とはいったものの、正直言って上記の説明を読んでも小川ゼミの実態が良くわからないぁ、と思いませんか?しかぁーし!!!!!よくわかっていないまま今回のゼミ発表会に参加させていただくと、それはそれはめちゃくちゃ面白い内容でした!!
今回は提案型ウェブアナリストの福田が小川ゼミ第一回発表会のレポートをさせていただきます。
Tab browserの研究 江尻さん発表のトップバッターは私も所属するウェブ解析士協会の代表理事、江尻さんです。20年以上前からウェブ解析を始められ、ご自身でウェブ解析ツールの開発もされていたという江尻さん、その発表に注目が集まります。
テーマは
「Tab browserの研究」
Tab browserとは現在は一般的に使われているGoogle ChromeやSafariなど、1つのウィンドウで複数のタブを開いて検索などができるブラウザのことを指します。
複数あるタブブラウザでも、さらにはOSやデバイスが異なってもウェブ解析ツールでの挙動が違うのではないか?というところから今回の研究を始めたそうです。
今回確認していくタブブラウザの機能としては
〇新規タブを開く・閉じる
〇戻る・進むボタンのクリック
〇ブラウザ自体を閉じる
などが挙げられており、それらについてのウェブ解析ツール、主にアクティブユーザーでの挙動を記録して研究していきます。
私が個人的に印象的だった気づきは
■SafariのプライベートモードではタブごとにクライアントIDを生成(Chromeのシークレットモードではその挙動はない)
■Windowsでは別タブを開いた瞬間にログが飛んでいた
■解析ツールMatomoではIEとEdgeのプライベートモードが無視された
■LineはMatomoでは「ブラウザなし」、Google Analyticsでは「Android」(検証端末がAndroid)となるので、ブラウザとしては「なし」、と判定されていそう。
今後は、Line、Facebook、Twitter等のスマホアプリからサイトにアクセスしたときに、ノーリファラーになるのか、ドメインが付くのかといったところの研究をするそうです。小川の方からも「この辺りちゃんと研究されているケースはほぼ見ないので楽しみ!」とのこと。
え、待って、この時点でめちゃくちゃおもしろいではないか!!
小さなNPOのウェブ担当者が限られた予算と人員で出来る施策を探る 岡田さん実際にNPOでウェブ担当をされている岡田さんのテーマは
「小さなNPOのウェブ担当者が限られた予算と人員で出来る施策を探る」
確かにクライアントがNPO法人の場合もあるでしょうし、「限られた予算と人員で出来る」という点で、中小企業をクライアントに持つ方にも興味がある内容ではないでしょうか。
競合調査ではSEMrushというツールを使っています。月額費用が約1万円と現実的で、SNSもカバーしているというメリットが魅力的で今回採用したそうです。
SEMrushはウェブ解析士向けの特典もあるそうです!
www.waca.associates
選定した10個のNPO団体のデータをSEMrushにより収集して、各項目の表示数(PV数)との相関を探っていきます。
SEMrushではタグを埋め込んでいなくてもリスティング広告からの表示数、ユニーク訪問者数、費用や、Facebook,Twitterのエンゲージメント数やフォロワー数、投稿数などの情報を取得していました。
競合他社のベンチマークを取るときには非常に役に立ちそうですね!
分析の結果として以下の2項目が、PV数と正の相関があることがわかり、それぞれの具体的な施策まで提示されています。
1)リスティング広告トラフィック
Google広告には「Google Ad Grants」という非営利団体向けのプログラムが存在するそうです。
こちらの公式サイトには
「Google 広告」の広告費が、毎月 10,000 ドル USD 米ドル分助成されます。
出典:Google Ad Grants
素晴らしい!!
逆に言うと情報があふれる時代において、知ってるもの勝ち!という構図!!
非営利団体の方や、クライアントに持つ方にはぜひ知っていただきたい機能ですね。
しかしこのGoogle Ad Grantsの利用は管理・運用の工数がそれなりにかかることがわかり、今回の研究では同じくGoogle広告で、工数を減らせる「スマートアシストキャンペーン」を利用して運用をされたそうです。
2)SNSの投稿数やエンゲージメント数
分析に使用した10団体のベンチマークの中で最大の成果を出している団体の数値を参考に、FacebookとTwitterのエンゲージメント数の目標を設定。
質×量が重要なので月間の投稿数をこれまでよりも多くキープし、有益な情報を提供していくことで目標を実現していく、とのことです。
岡田さんは実際にこれらを運用しており、現在順調に成果を出されているそうです。
誰でもわかる15分で話せるアクセス解析の説明 小川卓今回ゼミ長である小川卓の研究テーマは
「アクセス解析とは?」
ウェブアナリストをしていると「アクセス解析とはなに?」という説明をすることがあると思いますが、それを各個人がそれぞれ作ったりするのは時間の無駄だし、生産性が無いということで、なんと10枚のスライドにまとめています。
今回小川卓が作成した資料は後日オープンソースで公開する予定、との事ですのでこうご期待!!(小川より:6月中に公開予定です)
資料には説明するときのスクリプトも添付されていました。欲しい!
この説明資料の中ではとても分かりやすい例が示されています
・ウェブサイトを訪れた時に残る記録を、冬の雪山での動物の足跡に例えている
・足跡を見る必要性を実店舗であるスーパーマーケットでの改善に例えている
・アクセス解析に携わる人をウェブサイトの「お医者さん」に例えている
これらの例を交えた説明は一見とてもシンプルでしたが、アクセス解析を深く理解している小川卓ならではのまとめ方で、実際に自分で必要な要点を盛り込んでわかりやすく説明するのは意外と難しいものだな、と感じました。
小川さん、公開を楽しみにしています!!
美しいレポートを作るためのコツ 杉山さんDTPスキルがあり、私と同じくウェブアナリスト育成講座の卒業生でもある、杉山さんの研究テーマは
「美しいレポートを作るためのコツ」
せっかく良い情報が入っているのに、伝えたいことが伝わらない、担当者以外はあまりレポートに興味を持ってくれない、といった問題を解決するべく研究を始められました。
杉山さんの発表で非常に興味深いのは、小川卓が直前に発表した「誰でもわかる15分で話せるアクセス解析の説明」の資料をそのまま事前に受け取って「美しいレポート」化してしまおう!という点です。
杉山さんからしたら師匠でもある小川卓の資料に手を加える、というとても勇気のある研究ですねw
今回の発表ではデザインの要点を3つに絞りこんでおり、今すぐにでも実用可能な内容となっています。
・サイズにもよるが四辺の余白を8mm~12mmで統一する
・段落と段落のアキを大きくするなど、情報をグルーピングする
・画像とテキストの配置など、情報取得に視線が分散しないようにまとめる
・ベースカラー(70%),メインカラー(25%),アクセントカラー(5%)を意識する
・今回の色の選定はpaletton.comのトライアドを使用
・#000000の黒は強すぎるので、気持ちグレーにした方が落ち着いた雰囲気になる
paletton.com
これらを実施したbefore & afterがこれ!
これは、見やすい!!
小川卓もこれらの変化に納得していたため、「アクセス解析とは?」の資料が公開される時にはこれらの変更が採用されているかもしれませんね。
さいごに正直言って、よく内容がわからないまま参加させていただいた今回の「小川卓ゼミナール」。ゼミ生皆さんの研究テーマの着眼点はもちろん、自分が馴染みのなかったツール、知っておいて損はない解析ツールの仕様、皆さんの考え方など非常に学びが多い発表会でした。
発表会が終わった瞬間に小川さんに「めちゃくちゃ面白かったです!!!」とメッセージを飛ばすくらい本当に楽しませていただきました!
各セッションの最後には今後各ゼミ生がどんな研究をしていくのかの方向性が話し合われており、今後の展開が本当に楽しみです!
次回の発表会も絶対に参加したい!
ちなみに、近いうちに新規ゼミ生の募集も開始されるらしいので、ご興味がある方はぜひウェブ解析士協会のサイトをチェックしてみてください。
以上、「小川卓ゼミナール 2020年1Q発表会」レポートでした。
小川卓の「アクセス解析とは?」の資料公開もお楽しみに!!