アフターコロナを見据え「手元資金」の確保を――融資枠設定、解雇、役員報酬削減など会社存続かけた小売業の対策とは | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2020年4月30日(木) 08:00
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コロナウイルス危機の中、小売事業者は債務を履行するため、融資限度額を最大まで利用、株主への配当を停止し、役員の給与を削減しています。

規模に関わらず、小売事業者は、コロナウイルス危機に際して、サバイバルモードに入っています。店舗の収益が少ないため、流動性資産、つまり期日に合わせて費用を支払う能力が最も重要となります。

解雇、融資、社債発行、役員報酬削減など経費削減に奔走する小売事業者

小規模なEC事業者は、従業員の解雇、マーケティング費用の引き下げなど、あらゆる方法で経費を削減しています。ECも行う大規模な店舗ベースの小売事業者は、店舗従業員の大量解雇に加えて、限度額までの融資利用、社債発行、株主配当停止、役員報酬削減などの措置を取っています。

カリフォルニア州で3つのアートギャラリーを運営し、オンラインでアートを販売するVillage Galleryのディレクターであるパメラ・ブラウン氏は、「今までも不景気や低迷期を乗り切ってきましたが、こんな経験は初めてです」と話します。

Village Galleryは通常、現在閉鎖中の店舗から全売上高の80%を得ています。アートのオンライン販売は続けていますが、EC売上高も減少しているそうです。

1978年から画廊業を営んできたブラウン氏は、できることは全てやっていると言います。16人の従業員を解雇し、会社のクレジットカード支払いを初めて延滞しました。また、Village Galleryのテナントビル所有者には家賃支払い延期の交渉をしました。ブラウン氏はこう言います。

このパンデミック(感染症の世界的大流行)は誰のせいでもありませんが、全員に関わる問題です。

配送時期の見通しが立たないEC事業者も

スウェットシャツ、額縁、コーヒーマグカップなどを個人向けに販売するGiftsForYouNow.comは、扱う商品が生活必需品ではないため、「州の決定に基づき生産施設を閉鎖した」と社長のジム・トゥッチラー氏は言います。そのため、100人の従業員のうち65人を解雇しました。

GiftsForYouNow.comトップページGiftsForYouNow.comトップページ(画像は編集部がサイトからキャプチャ)

新型コロナウイルスの危機を乗り切るために、GiftsForYouNow.comは賃金と従業員の労働時間を約80%削減。あらゆる費用削減を検討しているそうです。

コロナウイルス危機が終わった後、「より無駄のない、“肝の据わった”企業になることが目標です」とトゥッチラー氏は話します。またGiftsForYouNow.comは、より長い賃貸契約に同意することと引き換えに、テナントビル所有者と家賃交渉をしているそうです。

生産施設の閉鎖で、GiftsForYouNow.comは「収益の約60%を失うことになった」とトゥッシラー氏は言います。しかし、オーダーは入り続けています。最小限のスタッフで可能な限り多くの注文を処理しているそうですが、配送時期の確約はしていません。

Webサイト上で、GiftsForYouNow.comは以下のような声明を掲載しています。

GiftsForYouNow.comは政府の営業自粛要請を受け、一時的に生産を停止しました。できるだけ早く生産と出荷を再開する予定で、現在も注文は承っています。皆さまのご支援とご理解に感謝いたします。(GiftsForYouNow.comの声明文より)

また、注文を促進するために、Webサイト全体で15%の割引を提供しています。

店舗数が増えると流動性資産の問題が発生する

Village GalleryやGiftsForYouNow.comと同様、大手の小売事業者も、顧客数と収益の減少という現実に直面していますが、より大きな規模での問題に対応を迫られています。

店舗閉店が原因で、百貨店が債務超過に陥るリスクが現実のものとなっているのです。S&P Global Market Intelligenceの調査では、4月7日現在、百貨店が今後1年間にローンを滞納する確率は42.1%にまで急上昇わずか数週間前の2月28日には、百貨店の今後1年間のローン不履行の可能性は7.4%でした。

このような状況の中、百貨店経営者は、数十万人の従業員の一時解雇などのコスト削減を進めています。また、融資の限度額までの利用、債券発行、なかには、他の選択肢を模索するためにコンサルタントからアドバイスを受けている百貨店もあります。

資本構造を強化するためのさまざまなオプションを検討しているMacy's

ロイター通信によると、大手百貨店のMacy's(デジタルコマース360発行「全米EC事業 トップ1000社データベース」2019年版で第5位)は、投資銀行のLazard社と協力しています。“財務強化のための選択肢を探るため”にLazard社は、企業の合併、買収、資金調達、資本構造の再構築などに関するアドバイスを行っています。

Macy'sの広報担当者は、「資本構造を強化するためのさまざまなオプションを検討している」と説明。「さまざまなアドバイザーと話し合っている」としながらも、具体的な情報を明らかにしませんでした。

また、Macy'sが70億ドルのリース債務を抱えているという一部報道は誤解を招くものだとして、米国証券取引委員会が義務付けている年次報告書「フォーム10-K」を元に、「Macy'sの長期リース債務は29億ドルです」と説明しています。

Macy'sは全775店舗を3月18日に閉店。「安全に再開できる明確な見通しが立つまでの間、閉店します」と3月30日の声明で述べています

Macy'sトップページ(画像は編集部がサイトからキャプチャ)

Macy'sはオンライン販売を継続していますが、店舗閉鎖で収益の大半を失ったと言います。そして声明内で次の内容を発表しました。

配当金の停止、融資枠の利用、雇用と支出の凍結、設備投資の停止、レシートの削減、一部の注文のキャンセル、支払い条件の延長など、財務の柔軟性を維持するための措置をすでに講じており、同時に全ての資金調達の選択肢を検討している。

Macy'sはまた、12万5,000人の従業員のほとんどを解雇し、"基本的な業務を維持するために必要な最低限の人員を残すとしています。

企業再建専門コンサルを雇い、約40億ドルの負債の対応策を探るJ.C.Penny

百貨店チェーンのJ.C. Penney (デジタルコマース360発行「全米EC事業 トップ1,000社データベース」2019年版で第40位)も同様の状況にあります。

Bloombergニュースによると、J.C. Penneyは、企業再建の専門家として知られる経営コンサルティング会社AlixPartners社と契約し、約40億ドルの負債をコントロールするための方法を見つける手助けをしてもらっているそうです。Bloombergは、J.C. Pennyが法律事務所Kirkland & Ellis社とLazard社と一緒に再建を模索していると以前に報じていました。

J.C.Penneyは、パンデミックの間に、キャッシュポジション(投資資金の中で投資に回していない手元資金)を改善するための措置を講じました。具体的には、設備投資の延期や支出の削減、融資枠更新の打診、雇用の一時停止、商品やサービスの支払い条件の延長などです。2020年はメリットベースの昇給(成績昇給)を停止し、その他の財務的な選択肢も検討しているそうです。

J.C. Penneyもオンライン販売を続けています。オンラインでの注文を処理し、顧客からの問い合わせに応じるために、eコマースの配送センターとカスタマーセンターは営業を継続すると3月31日に発表しましたが、これらの業務に従事する従業員の数については明らかにしていません。J.C. Penneyは米国とプエルトリコで850店舗を運営し、9万5,000人の従業員を擁しています。

四半期ごとの現金配当を停止し、8億ドルの与信枠を引き出したNordstrom

百貨店チェーンのNordstrom(デジタルコマース360発行「全米EC事業 トップ1,000社データベース」2019年版で第18位)は先日、2019年度は8億5,300万ドルの現金を含む健全なバランスシート(貸借対照表)で終了したと報告しました。バランスシートとは、特定の時点での企業の資産、負債、株主資本を報告する財務諸表のことです。

新型コロナウイルスの嵐を乗り切るために、Nordstromは2020年度第2四半期から四半期ベースの現金配当を停止し、8億ドルの与信枠を引き出しました

また、以前に発表した2億ドルから2億5,000万ドルのコスト削減計画を拡大。営業費用、設備投資、運転資本など、5億ドル以上のさらなる削減を追加するとしています。その他、自社株買いも停止しています。

NordstromのECサイトNordstromのECサイト(画像は編集部がサイトからキャプチャ)

さらに、Nordstromは6億ドルの有担保社債を8.75%で発行すると発表。社債の収益を手数料や経費、一般的な企業活動に充てる予定です。

Macy'sやJ.C. Penneyと同様に、Nordstromもオンライン販売を継続していますが、3月17日に閉店した380店舗は閉めたままです。

他の大手上場小売事業者も、売り上げが改善されるまで、請求書の処理を滞らせないための措置を採用しています。以下はその顕著な例です。

配送センタースタッフに時給2.50ドルの割増賃金を支給したDuluth Trading

カジュアルウェア、ワークウェア、アクセサリーの小売事業者であるDuluth Trading(デジタルコマース360発行「全米EC事業 トップ1,000社データベース」2019年版で第181位)は、オンラインと60以上の店舗で商品を販売していますが、3月29日に実店舗を閉鎖しました。

一時的に時給制を採用している不特定多数の店舗従業員を解雇し、2週間分の給与を支給しました。しかし、オンライン販売で全体収益の約50%を得ているDuluth Tradingは、オンラインビジネスを継続しており、配送センターも営業を続けています。配送センターのスタッフに4月6日、時給2.50ドルの割増賃金を支給しましたが店舗は依然閉鎖したままです。

また、Duluth Tradingは、スティーブ・シュレヒト最高経営責任者(CEO)が2020年度の現金報酬を、取締役会のメンバーは2020年度の第2四半期と第3四半期の現金報酬を放棄するとしています。また、すべての営業費用の見直しを行っており、ベンダーとの価格交渉や店舗のリース費用の削減を探っています。

Duluth TradingのECサイトDuluth TradingのECサイト(画像は編集部がサイトからキャプチャ)

解雇以外にも、現金を節約するための対策として、Duluth Tradingは以下のような対策を取っています。

  • リーダー層の給与を10%~20%の範囲内で6か月間削減
  • 福利厚生はそのままで、期間を限定せずに68%のスタッフを一時解雇
  • スタッフを恒久的に10%削減
  • 2020年度の4店舗の出店計画から1店舗削減

4月10日現在、Duluth Tradingは1億3,000万ドルの融資枠の残高が8,500万ドル、現金残高が1,300万ドルとなっていると報告しています。

融資枠を2,500万ドル増やし、合計2億ドルを利用可能にしたLands' End

オンラインと26店舗で販売しているアパレル小売事業のLands' End(デジタルコマース360発行「全米EC事業 トップ1,000社データベース 」2019年版で第59位)は、2020年3月28日から本社従業員の約70%、店舗従業員のほぼ100%を一時解雇しました。

また、Lands' Endは、Wells Fargoなどの金融機関と担保付融資契約の下、融資枠を2,500万ドル増やし、合計2億ドルを利用可能にしました。4月6日現在、これらの契約の下で利用可能な金額は1億1,500万ドル残っているとLands' Endは述べています。

Lands' EndのECサイトLands' EndのECサイト(画像は編集部がサイトからキャプチャ)

現金節約の対応策として、以下のような動きもあります。

  • 基本給を一時的に削減。小売事業者は、ジェローム・グリフィス最高経営責任者(CEO)の基本給を50%カット。また、管理職の給与を20%削減し、会社全体で「スケールダウン」を実行
  • 2020年度のメリットベースの昇給(成績昇給)を廃止
  • 同社の401kプランの事業者負担を一時的に停止
  • 取締役の報酬を一時的に削減
  • その他の裁量的な営業費用を大幅に削減
5億3,500万ドルの転換社債を私募したWayfair

家事用品・家庭向け家具のオンライン通販事業者Wayfair(デジタルコマース360発行「全米EC事業 トップ1,000社データベース 」2019年版で第12位)は、新型コロナウイルスへの対応についての声明の中で、流動性を高めるためにバランスシートを強化するための措置を講じていると発表しました。

WayfairのECサイトWayfairのECサイト(画像は編集部がサイトからキャプチャ)

そのためにWayfairは、5億3,500万ドルの転換社債を私募しました。投資会社 Great Hill PartnersとCharlesbank Capital Partnersが取引を主導。Wayfairの最大の公開株主であるSpruce House Partnershipも参加しました。転換社債とは、発行者の普通株式に転換できる債券の一種です。

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