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CSS Nite LP62「Webアクセシビリティの学校」特別授業 フォローアップ(1)伊原 力也さん」 からご覧ください。

2019年6月1日に大崎ブライトコアホールで開催したCSS Nite LP62「Webアクセシビリティの学校」特別授業のフォローアップとして、伊原 力也さん(freee)の『あなたの価値を高めるアクセシビリティ』セッションのスライドなどを公開します。
フォローアップ
ご参加いただきありがとうございました!またアンケートへのご回答もありがとうございます。すべて拝読しました。
私にとって、調べ物をするうえでGoogle翻訳は欠かせません。横断検索サイトを使うことも多々あります。海外の動画だとYouTubeの字幕を活用します。Kindleはスピーチ機能で読んでいます。いつもイベント申し込みフォームの入力はキーボードで進めますし、このフォローアップはmarkdownで書いています。
みなさまが感想欄に書いてくださったとおり、Webは、その存在そのものが圧倒的にアクセシブルになるように作られたメディアです。そのプラットフォーム上で、適切なUIとしてのテキストを準備してマークアップするだけで、分母へのアプローチとなるだけでなく、ときに想像を超えるほどにコンテンツの価値を増幅させることに繋がります。
つまりWebアクセシビリティとは「Webの仕組みに則り、Webの力を活かす」ことであると私は考えています。Webを作っている私たちがその取り組みを少しずつでもはじめることで、利用者が増え、それが伝搬することでWebの価値は高まり、最終的には自分たちの周りや、ユーザーとしての自分に還ってきます。
冒頭で挙げた私の話は、その一例です。誰かがアクセシブルにしてくれたから、私はアクセスできています。そしてみなさんが今読んでいるこのメッセージもまた、そういったWebの一部なのです。このフォローアップページはやがて、アクセシビリティについて調べているであろう多くの人の目に触れるようになるはずです。それが届くのは、このページがアクセシブルなWebに在り、マークアップされているからです。
このつながりを感じて、これからの取組みに活かして頂ければ幸いです。
なお、7月20日(土)にはJapan Accessibility Conference Vol.2が渋谷アベマタワーズで開催されます。今回も300名規模のお祭りとなる予定です。みなさまのご参加をお待ちしております!
質問と回答アクセシビリティに関する情報収集はどのように行っていますか?
主にTwitterです。Webアクセシビリティ関連の資料まとめ というドキュメントがあり、ここで出てくるような資料を作っている方々をTwitterでフォローしているため、私のTwitterタイムラインには割とアクセシビリティ情報が流れてくるようになっています。
あとは、このドキュメントの冒頭にも載っているA11YJ Slack Teamに参加してみると、イベントや書籍の情報などがキャッチアップできます。
障害当事者が身近にいないこともあり、どういう使い方をしているか、どこが困るところかなどを知ることができるサイト・動画があれば教えてください。
パソコン操作動画集というページがあり、ここにいくつかYouTubeから抜粋された動画が紹介されています。この他にもYouTubeで、たとえば「視覚障害 iphone」のような形で障害のタイプ+デバイスで検索したり、「筋電スイッチ」「視線入力」などの支援技術の名前で検索してみたりすると、いろいろ見ることができます。
支援技術の種類については、東京都障害者IT地域支援センターの展示支援機器(ハード)一覧が参考になります(実際に展示も行っています)。
読む習慣のない、または読むことが苦手なユーザーに対してはどう配慮が必要ですかね & リッチ化するコンテンツとアクセシビリティとの両立の具体例があればご教示頂ければ
いくつかのパターンに分かれると考えられます。まず下記2パターンの場合は、やはりテキストをマークアップして提供することが最善手でしょう。
- 文章を読むことは可能だが提示されたフォントでは読みにくいような場合は、ブラウザ側でフォントを置き換えることができます。
- 目で追うのは苦手だが音声なら読めるというケースであれば、スピーチ機能などを使って読み上げることで問題を解消できます。
しかし、このどちらでもなく、テキストや文章という表現形態自体が苦手なユーザーもいます(最近の写真や動画をメインとしたSNSの流行は、その兆候を感じさせます)。ここへの回答は、ある題材を多面的なメディアで伝えるということになるかと思います。
たとえば今回のイベントでは、セミナー動画、スライドPDF、UDトークによる発話書き起こしが提供されます。セッション内で紹介したログミーというサービスも、動画に対して書き起こしを提供しています。このようにいくつかの方向から情報が提供されていれば、自分の状況にあったメディアを選択することができます。
こういった提供形態をなるべくかんたんに用意するには、UDトークとYouTube Liveを組み合わせるのがよさそうです。具体的な手順は以下です。
- YouTube Liveで動画を撮影します。
- UDトークで発話をリアルタイムで字幕化します(具体的な方法)。クオリティを担保するため、複数人でその場で修正を行うのがよいでしょう。
- UDトークから取得した発話ログに、発言者や環境音などの情報を追記します。
- YouTubeの動画に対し、UDトークの発話ログを「文字起こしと自動同期」という形でアップロードします。
私の同僚の中根さんによる、実際に上記に近い手順を試してみたYouTube動画がありますのでご紹介します。参考になれば幸いです。
売りにつながるという部分がどのサイトでもそうなのだろうかと感じています。ターゲットによっては効果が薄いのではないかと思います。
アクセシビリティとターゲットと効果についてはかなり慎重な議論が必要だと考えています。
まず、どういったコンテンツをどう活用するかは受け手に委ねられています。よく言われる例として「全盲の人がカメラの情報を欲しがるのか」という話があります。これは、以下の観点で「欲しい人にとっては欲しいに決まっている」という話になります。
- 記録用や、撮ったあとに誰かに確認してもらう前提で、ふつうに使う
- もともとカメラが好きで、視力が弱まったあとでもガジェットとして興味がある
- その企業や関連企業に投資していて、新製品の動向が気になる
- 誰かに頼まれてスペックを調べている
- 贈り物として探している
松森さんのお話にもあったように、私たちには一緒のものを見て楽しみたいという前提があります。そうであればターゲットにしていない人を排除するという考え方はデメリットになるはずですし、企業イメージという観点からも望ましくない振る舞いです。コンテンツが狙っているターゲットと、さまざまな閲覧状況への対応というのは分離し、なるべく多くの状況でアクセシブルに作るよう取り組むのが原則ではあると考えています。
ただ、実際の効果の話とは別に、やりやすい案件とそうでない案件があるのは事実です。現時点では、発注側がアクセシブルにする必要があると考えるものと、そうでないものがあるということです。ユーザーにとっての緊急度や重要度の高い情報、客観的一次情報に近いもののほうが対応が必要だという判断になりやすく、いっぽうプロモーション系は優先度が落ちる、ということが多いでしょう。
ここは、その状況を上手く活かすほうに持っていったほうが、最終的にアクセシブルになるサイトを増やせると私は考えています。そのあたりの考えはツイートにまとめました。
たとえば今回、CM字幕を提供している会社の一覧を見て、私は少なからず好感を持ちましたし、BacklogやKintoneは良い会社が作っている製品であるというイメージも持ちました。現時点では多くの会社がまだ手をつけられていない状況ですから、やはりできるだけ外に言っていくことが相対的に企業価値を上げることに繋がると感じた次第です。効果は作り出すことができます。そういった視点での価値の増大にも、ぜひ目を向けてみていただければ嬉しく思います。
なお、私はこの「アクセシビリティ vs ターゲット」という構造を、最終的には破壊したいと考えています。CMだから字幕がないとか、プロモーション系は後回しとかは、本来はおかしな話です。アクセシビリティを必要とする人がターゲットとして認知されるようになることでこの状況は変わるという仮説のもと、「アクセシビリティで一発当て太郎」としてfreee社にて日々可能性を模索しています。ご興味があるかたはツイートをご覧ください。
音声ブラウザのバージョンアップは誰にお願いすればよいのでしょうか?
ここでのバージョンアップというのは、以下の3通りの解釈ができそうです。
- ユーザーがより新しいスクリーンリーダーにバージョンアップすること
- 既存のスクリーンリーダーの機能がより高機能になるようにベンダーが改修すること
- ユーザーがより高機能なスクリーンリーダーに乗り換えること
いずれにしても、これはユーザーとコンテンツ提供者とベンダーが互いに発展することが必要だと考えられます。バージョンアップしないのは、現状で満足しているから……というとポジティブですが、以下のような構造により、実際は妥協せざるを得ないケースが多いからだと推定しています。
- アクセシブルでない、または使いにくいコンテンツがWebに蔓延している。またそれらのWebサイトの使い方は一貫していない
- ゆえにユーザーからするとWebを使うことはモグラ叩きのような探索となってしまい、高度な使い方に取り組むのは合理的でない行動となってしまう
- 結果としてタブキー連打+決定キーといった、どのサイトでも通用するであろう使い方だけを頼りに、それで使い物になるサイトだけを利用する傾向が強まる
- この使い方においては高度な機能が必要ないため、スクリーンリーダーをバージョンアップするモチベーションや、スクリーンリーダーの機能を高機能にする理由が出現しない
この状況を改善するには、上記を反転させる必要があります。
- ユーザーが、使いたいと思うコンテンツの提供者に対してアクセシブルにすることを求める
- コンテンツがアクセシブルになるよう提供者が改修する
- アクセシブルになったコンテンツを利用するための閲覧技術をユーザーが身につける
- その閲覧技術を発揮できるようなスクリーンリーダーを選定する
- より高度な使い方に対応できるようスクリーンリーダーベンダーが製品を改善する
論理的にはこうなるものの、実際のところとして、妥協で済んでいる状態から行動を起こそうとするには非常に大きなパワーが必要になります。ただし前例がないわけではありません。私たちはガラケーからスマートフォンに歩を進めました。それは新しい可能性を手に入れたいという気持ちが、現状維持の気持ちに打ち勝ったからです。私はこれをヒントにして、これはぜひ使いたいと思うようなものを皆が作り、かつそれをアクセシブルにしていくことができれば、状況を変えることもできるかもしれない、と考えています。