【現地レポート】アジアのSEOは“元気”だった。「Ahrefs Evolve 2026」で感じたAI検索のリアル

【現地レポ】スプレッドシートはもう古い? AI検索の台頭で激変するアジアSEOの最前線。4カ国の声から見えたワークフローの変化も紹介。

伊東 周晃(JADE)

7:05

Ahrefs Evolve 2026(シンガポール)にてAmethystブースを出展。チームで来場者をお迎えしました。

2026年5月13日から14日にかけて、シンガポールで「Ahrefs Evolve 2026」が開催されました。Ahrefsは2010年にシンガポールで創業し、世界中で使われるSEO・LLMO分析を含むマーケティングツールを提供している企業で、本イベントは今回で3回目の開催です。

私たち株式会社JADEは、自社で開発・運営するSEO/SXO分析プラットフォーム「Amethyst(アメジスト)」の海外プロモーションの一環で、スポンサーの一社としてブース出展をしました。直近でリリースしたチャット機能でデータ分析ができる「Amethyst AI」のリアルな反応を現地で確かめたいという目的もあり、チーム一丸となって世界中の来場者をお迎えしました。

リアルなカンファレンスの場がより重要

筆者の私は、約15年前から特にアメリカを中心とした海外のSEOやコンテンツマーケティングカンファレンスに、しばしば参加するようになりました。昨今の「検索としてのAI」の登場により、ネット上には玉石混交の情報が飛び交っています。だからこそ今、再びリアルな場での学びやカンファレンスでのネットワーキングの重要性が見直されているように感じます。そんな中で、私自身の海外カンファレンスとのかかわり方もここ数年で変化してきました。前職のぐるなび時代は一人の「参加者(インプットする側)」でしたが、今回はスポンサーとして「イベントを盛り上げる側(アウトプットする側)」に回ったことで、参加者たちとの対話の機会が一気に広がりました。

ブースやイベントの場で生まれる対話は、その地域におけるビジネスの現在地や参加者の熱量を肌で感じることで、解像度がぐっと上がります。

今回、アジアのハブであるシンガポールで各国から集まった参加者たちと言葉を交わしたことで、今、アジアのSEOは間違いなく“元気”である――と感じました。現地で交わした、特に印象深い4つの対話から得た気づきをまとめます。

アジアのSEO、その独特な文脈

「アジアのSEO」と聞いたとき、多くの人が思い浮かべるのは、韓国の「Naver」、中国の「Baidu」といった「Google以外の検索エンジン」の存在や、あるいは、「Googleよりもソーシャルメディアのほうが情報収集の主役」というイメージかもしれません。日本にいると、こうした国別の事情が「ちょっと遠い世界の話」に感じられるかもしれません。しかし、AI検索の台頭によって、このあたりの状況がリセットされつつあります。ChatGPTやPerplexity、そしてGoogleのAI Overviewsといった次世代ツールは、プラットフォームや言語の壁を超えて、検索体験そのものを変えようとしています。国別の検索エンジンシェアがどうこうというよりも、「AIで検索する」という行動が、アジア共通、ひいては世界共通の共通言語になりつつあるのです。

実は、こうしたパラダイムシフトに先立ち、Googleも東南アジア市場へのアプローチを強めていると思います。たとえば、シンガポールやタイのバンコクで「Search Central Live」を開催してきた背景には、東南アジアにおけるGoogle利用者の増加と、熱量の高いSEOコミュニティの存在があります。そして何より、今回イベントを主催したAhrefs自体がシンガポール発のグローバル企業であることも、この地域にナレッジと熱量が集まる理由のひとつかもしれません。

参加者との対話から:4カ国の現場の声

インドネシア:B2CはSNS、B2Bは検索——データが示すアジア市場の二層構造

インドネシアのMrScraper社 マリンド・アナンダ(Malindo Ananda)氏(左)、筆者(右)

最初に紹介するのは、インドネシアのMrScraper社の営業責任者マリンド・アナンダ(Malindo Ananda)氏との会話です。同社はSERP(検索結果画面)のスクレイピングにとどまらず、旅行データのリアルタイム取得、ECサイトの動的価格情報、そして地域全体にまたがる複雑なウェブアーキテクチャのデータ収集まで、幅広く手がけています。日本企業との協働経験も持つ彼に、率直な疑問をぶつけてみました。

「東南アジアって、検索よりソーシャルメディアのほうが使われていませんでしたっけ?」

彼の答えは明快でした。「B2C領域では確かにTikTokやInstagramは消費者の情報収集やライフスタイル商品の発見における、「事実上の検索エンジン」になっている。 しかしB2B領域では、従来型の検索が依然として圧倒的な存在感を持っている ——」というものでした。「アジア=SNS検索が優勢」という大雑把なイメージは必ずしも市場全体を反映しておらず、ビジネスの文脈では検索の存在感は依然として大きいわけです。データに日々向き合っている彼ならではの、地に足のついた視点でした。

さらに踏み込んで、AI検索の急速な台頭が彼自身のビジネスとどう交差するのかを聞いてみました。

「AI検索はデータの必要性を変えるわけではない。むしろ、そのハードルを一気に引き上げる」と彼は言います。AI検索エンジンが正確でリアルタイムな回答を提供するためには——特に価格動向、市場トレンド、サプライチェーン物流といったB2Bの文脈では——途切れることのないライブデータのパイプラインが不可欠です。古くなったトレーニングデータでは、もはや通用しない。

そこで重要になるのが、ウェブスクレイピングと高品質なレジデンシャルプロキシの組み合わせだと彼は説明します。ウェブサイト側がAIクローラーからコンテンツを守るために高度なボット対策を強化するにつれ、人間の行動に近い倫理的なデータ取得手法への需要は指数関数的に高まっていく。MrScraper社にとって、AI検索は脅威ではない——むしろウェブスクレイピングを、次世代の検索を正確かつ持続可能なものにする「基盤インフラ」へと押し上げるものだ、と彼は断言しました。

シンガポール:スプレッドシートはもう使わない! AIネイティブな超効率化のワークフロー

シンガポールに拠点のあるデジタルマーケティングエージェンシーで働いているSEOスペシャリストの男性との会話は、SEO実務の進化を象徴するような内容でした。SEOの基礎をしっかりと押さえている彼との会話は興味深いものでした。

ランチ時の弊社ツール(Amethyst)のスポンサーピッチを聞いていた彼は、弊社のブースに立ち寄り、クロール・インデックス分析ツールにGoogleが提供するURL Inspection APIを利用していることに興味を持ってくれました。

「あなたがスポンサーピッチで言ったように、今のところURLの調査をする場合には、サーチコンソールにURLを一つずつ入力することが多い。こういう一括調査機能があるのは知らなかったよ」と見解を共有してくれました。

“URLの一括対応”という文脈の話になった時に、彼は「僕は、インデックスの一括登録にはOmegaIndexer(オメガインデクサー)を使ってるよ」と、ツールについての情報を教えてくれました。URL Inspection APIとOmegaIndexerでは果たす役割は異なるものの、OmegaIndexerというツールを私は聞いたことがなかったので、東南アジアではこういうツールが使われているのかと、良い情報交換ができました。

それ以上に印象的だったのは、彼のワークフローそのものの刷新ぶりでした。なんと彼は、SEO実務でスプレッドシートは使わなくなり、分析や意思決定はClaudeとの対話を通じて行い、データはMCP(モデルコンテキストプロトコル)経由で接続する——そんなAIネイティブな業務スタイルへの移行が、すでに完了しているといいます。

シンガポール:AI時代のブランド言及に着目する若き起業家

ブライアン・ホウ(Brian Ho)氏(左)、筆者(右)

若くしてシンガポールでAIドリブンなSEOサービス会社を立ち上げたブライアン・ホウ(Brian Ho)氏は、AI検索時代におけるブランド言及の重要性に早くから着目し、独自の研究を積み重ねています。ベトナムのエンジニアネットワークとの繋がりも深く、東南アジア全域にまたがって事業を展開しています。

この記事を書いている時点でもまだ出張の途中だといい、そのエネルギーには脱帽します。会話の時間は短かったものの、AI時代のSEOをどう捉えるか、その視点の鋭さは強く印象に残りました。

AI検索の登場によって、SEOはクリックを争う戦いから、信頼性を争う戦いへと変わりつつある」と彼は言います。キーワードで上位表示を狙うだけでなく、検索エンジンにとっても、AIシステムにとっても「引用・参照するに値するブランド」になることが重要だという考え方です。ブランド言及、権威性シグナル、構造化された知識がAIの可視性にどう影響するかを研究している彼の視点は、業界の最前線を走っているように感じました。東南アジアのビジネスにとって、それは検索が進化する中で発見され、信頼されるための、より実践的な道筋になり得ると彼は語ります。

MCPで変わるソフトウェア開発の分業モデル

「え、こんな人もこのカンファレンスに来ているの?」と少し驚いたのは、フィリピンから参加しているある女性でした。MCP(モデルコンテキストプロトコル)活用によって生まれるソフトウェア開発の効率化の効用を、開発の最も複雑なバックエンド部分の外部委託と捉えて、自社はインターフェースや体験設計に集中するという発想です。

MCPの登場によって、「AIツールのようにプラットフォームとなるか」「データ部分に特化するか」「インターフェースに集中するか」——そんな選択がSaaS企業には生まれてきそうな気がしますが、それをさっそく体感した瞬間でした。

おわりに

インドネシア、シンガポール、フィリピン。今回の短い会話の中だけでも、これだけ多様なバックグラウンドを持つ実践者たちと言葉を交わすことができました。

それぞれの立場は異なりますが、共通して感じたのは、AIをただ「使ってみる」フェーズから、ビジネスの構造そのものに組み込む段階へと移行しつつあるという実感です。AI検索の登場により、東南アジアのSEOは非連続の発展・進化を遂げる真っ只中にいるのではないか、そんな印象を持ちました。

カンファレンスをスポンサーとして支える立場になって、セッションの外側にある現場のリアルを多く感じるようになりました。私が初めて海外のカンファレンスに行き始めたのが2015年、この年齢になって、新しい楽しみ方を見つけてしまいました。

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