通販サイト「カウネット」が、Webサイトの改善スピードを飛躍的に高めた新アプローチ“BMS”とは
企業Webサイトの運用・更新にあたって、下記のような悩みを抱えたことはないだろうか。
- テンプレートの改修やサイトレイアウトの変更をしたくても追加費用や時間がかかる
- CMSだけでなく、A/Bテストツールや効果測定ツール、レコメンドツールなど複数ツールが絡み合っており、複雑すぎて更新が困難である
- Webサイトの改善点を見つけたのに、CMSでは対応できない部分だった
- システム部門や外部制作会社に変更を依頼しても、すぐに対応してもらえない
こうした課題は、Webサイト運営にありがちなもので、仕方ないと諦めている担当者もいるかもしれない。しかし、事務用品・オフィス家具の通信販売を営む「カウネット」は、「BMS(Block Management System:ブロックマネジメントシステム)」という新しいアプローチによって、Webサイトの自由で迅速な改善・更新を可能にし、日々のマーケティング施策への取り組みスピードを激変させた。
成功の鍵はどこにあるのか。具体的な取り組みや導入効果についてカウネットに詳しく話を聞いてみた。
激戦市場の中でITをテコに快走するカウネット
オフィス用品の通販サービスとして広く知られる「カウネット」を運営するのが、コクヨグループの中核企業であるカウネットだ。2000年の創業以来、「顧客を徹底的に知り尽くし、困りごとを解決する」をスローガンに、カタログ販売、大企業向け購買システム、個人向けショッピングサイトなどサービスの幅を急拡大させてきた。
オフィス用品の小売り通販はEC市場の中でも激戦区の一つだが、カウネットはオリジナル商品「カウコレ」プレミアムシリーズをはじめとする50万点を超える品揃えや、価格の安さ、間接材・消耗材の購買を一元管理する「べんりねっと」システムなどの総合力を武器に快走を続けている。
そんなカウネットは、リアルな接客機会がない同社の顧客との貴重な接点として、ECサイトの利便性や機能性の強化に継続的に取り組んできた。
直近の5年でも下記のようなツールを導入しており、今後もユーザーの利便性向上とサービスの高度化に向けて、多様なツールを検討していく計画である。
- コンテンツ管理強化に向けたCMS
- 効果測定のためのA/Bテストツール
- 顧客ごとの最適な提案に向けたレコメンドエンジン
部門別のコンテンツ管理が運用から迅速さを削ぐ
そんなサイト改善の取り組みのなかで、カウネットに課題として浮上してきたのが、社内の組織構造の問題から、サイトの更新・改善のスピードに足かせがあることだった。
ECサイトでは、どのタイミングで、どんな情報を、どう提供するかが顧客体験や売り上げを大きく左右する。そこで同社では、CMSの導入以来、事業部門のスタッフが自らCMSを操作し、顧客目線での情報配信に注力してきた。
一方で、マスタ設定や新機能の開発などは専門知識を備えたシステム部門が担当していた。また、全社的な「お知らせ」などのコンテンツもシステム部門が管理していた。
カウネットの渡辺光一氏は、「ベースカウネット本部では、より見やすく、より有益な情報を迅速にお客様に提供するために各種ツールを導入し、それらの水準を着実に高めてきました。その過程のなかで、さまざまな改善点が都度見つかりますが、しばしば、我々が自力で変更できない部分についての課題が発見されることがあったのです」と振り返る。
その改善点とは、例えば下記のような内容だ。
- トップページにバナーの掲示スペースを作り、顧客ごとにパーソナライズされたコンテンツを出し分けたい
- 検索窓の近くに掲示しているオススメの検索キーワードをこまめに更新したい
- はじめてのお客様向け案内の位置を少しだけ変更したい
これらはごく一例であり、改善したい箇所は、サイトの大きな枠組みからごく細かい部分まで日常的に出てくるが、CMSで更新できる範囲外の箇所は、ちょっとしたものであっても自分たちでは修正できない。システム部門に開発や調整を依頼しても、工数の問題などから、すぐに対応してもらうことが難しい場合もある。
さらに、外部パートナーに依頼しているCMSのテンプレート制作やHTMLコーディングなどの更新の必要が生じた場合は、都度、見積もりや稟議、メールなどでの指示が個別に発生し、迅速な対応ができず、コストや手間もかさんでしまう。
なんとか事業部門だけで迅速な改善・更新が行えないかと考え、苦肉の策として、A/Bテストツールを利用してサイト上の表示を調整するなどの対応もしていた。
顧客の利便性を高め、選ばれるWebサイトになるためには、コンテンツの内容を見直し、顧客の反応を検証して改善につなげる、いわゆるPDCAサイクルの高速化が鍵を握ります。しかし、従来の環境ではさらなる高速化が現実的に難しく、それに危機感を抱くようになっていきました(渡辺氏)
この状況の打開に向け、渡辺氏は「Webサイト全体に、自分たちで、自由に手を加えられる仕組みが必要だ」と判断。そのための“策”として着目したのが、プレイドの提供する「KARTE Blocks(カルテ・ブロックス)」だった。
Webサイトの柔軟性を大幅に向上する
BMS(Block Management System)
KARTE Blocksは、プレイドが提示する新たなサイト管理コンセプト「BMS(Block Management System:ブロックマネジメントシステム)」の考え方に基づいている。
BMSとは、画像・テキスト・HTMLなどWebサイトのあらゆる要素をブロックに分解してWebサイトをブロックの集合体と捉え直し、ブロック単位での更新を行うことを可能にするアプローチだ。
KARTE Blocksを導入するには、現在あるWebサイトにタグを1行追加するだけでいい。そうすると、KARTE Blocksがサイト内のあらゆる要素を自動的にブロック単位に分解し、管理画面上にリストアップしてくれる。
そこから、変更したいブロックにカーソルを当て、入力や選択をするだけの直感的な操作で、Webサイトの自由な編集・更新、レイアウト変更、コンテンツの追加などを実施できるという仕組みだ。
誤解されるかもしれないが、BMSはCMSとは異なる発想のものだ。
CMSはコンテンツの作成や管理を行うためのもので、レイアウトや更新できるコンテンツの“枠”は固定されている。それ以外の箇所を更新したい場合は追加実装や改修をしなければならず、サイト制作時にはどの部分を扱えるようにするかを予め考慮する必要がある。
一方でBMSでは、サイトにタグを一行追加するだけで、サイトのあらゆる要素をブロックとして管理画面内から編集・更新できる。予めどの部分を扱うかを決めて実装時に考慮する必要はない。CMSで更新できる枠の外であっても、自由な編集・更新や、新たな枠の追加をも可能にする。
したがって、これまでCMSで管理していた枠をKARTE Blocksで更新管理することも、決まった“枠”のコンテンツはCMSで担いつつ、KARTE Blocksでそれ以外の部分で自由にコンテンツを編集・更新するなど併用して運用することもできる。
加えて、パフォーマンス計測やA/Bテスト、パーソナライズといった機能も備えているので、サイト管理のPDCAを高速で回すことにも貢献する。CMSとBMSは用途が異なるし競合するものでもないので、サイト管理担当者のニーズや実現したいことにそって使用するツールを選び、スピードと自由度の高いサイト管理体制を実現することができる。
企業がWebサイトの運用・改善に課題を抱える3つの原因
プレイドでプロダクトマネージャーを務める武藤尚也氏は、「カウネット様に限らず、Webサイトの運用・改善の利便性の低さ、ひいてはマーケティング施策実施のスピード感に課題を抱える企業は少なくありません」と語る。
当社が提供しているCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」をご利用いただいている企業様の中にも、この課題を抱えている運用担当者様は多かったんです。しかし一方で、課題は認識していても、それが当たり前になっていて、解決しようとすら思わないという状況に陥ってしまっている。それをなんとかしなければならないと考えました(武藤氏)
企業が、Webサイトの迅速な更新に課題を抱えてしまう原因は、大きく下記の3つだ。
- システムによる制約:CMSやA/Bテストツール、レコメンドエンジンなどさまざまなツールが複雑に絡み合い、やりたいことが実現できない
- 組織による制約:マーケ部門やシステム部門、外部ベンダーなどの調整に時間と手間がかかる
- 人材による制約:人材不足、必要なスキルを持った人材がいない
KARTE Blocksは、これら3つの制約を取り払い、
- 1つのシステム上で
- 組織間調整などのオペレーションコストを最小化し
- ノーコードで直感的に
Webサイトの編集・更新を可能にするのである。
A/Bテストやパーソナライズ、分析もワンストップで可能に
KARTE Blocksの利点はそれだけではない。
KARTE Blocksはサイトの編集・更新だけでなく、A/Bテストやパーソナライズ、パフォーマンス分析や効果測定まで、1つのツール上でワンストップで行うことができる。サイト管理のために別途A/Bテストツールを導入する必要がなく、ツール導入のコストや手間を抜本的に削減できるのだ。
これだけでなく、機能強化の一環としてコンテンツ別のクリック数の自動集計機能などもある。
KARTE Blocks導入の決め手
カウネットがKARTE Blocksを導入した理由は下記である。
- サイトの柔軟性、更新の即時性を大幅に高められる
- 直感的な操作感で扱いが容易
- Webサイトの運用・更新もA/BテストもパーソナライズもすべてKARTEのプラットフォーム内に集約できるのでツール連携の手間がない
- 「KARTE」との連携によるきめ細かなパーソナライズの実現
カウネットがKARTE Blocksを導入するに至った目的は、何よりもまず「サイトの改善スピードの向上」である。KARTE Blocksなら、前述した通りの操作感で、情報システム部や外部制作会社への依頼を必要とせず、自部門だけでWebサイトの改善をスピーディーに実施し、PDCAを回していけると判断した。
さらにもうひとつ、プラスアルファとして期待した効果が、「コンテンツのパーソナライズ」だ。
我々はもともとプレイドのCXプラットフォーム「KARTE」を利用していました。KARTEを利用する狙いは、サイトのCX向上やWeb接客の高度化にあります。KARTE Blocksはそのセグメントデータとの連携も簡単で、これまで手が回っていなかったサイト自体のパーソナライズを容易に実現できると感じました(渡辺氏)
武藤氏によると、カウネットのように、サイトの改善を続けるにつれ、コンテンツのパーソナライズ、すなわち“出し分け”に関心を寄せる企業は増えてくるという。従来、パーソナライズを行うには、システム開発が必要でなかなか容易にできなかった。しかし、KARTE Blocksを使うことで、パーソナライズ機能をCMSに簡単に肉付けすることができる。これもKARTE Blocksの大きな魅力の1つであろう。
KARTE Blocks導入成果
2020年8月から活用を開始したKARTE Blocksは、すでにカウネットのサイトの大幅な改善に寄与している。同社がKARTE Blocksを活用して行った施策や成果の一例を見てみよう。
① サイト運用全体のスピード感が大幅向上
KARTE Blocksの使い勝手の高さから、サイト運用全体のスピード感が大幅に向上した。
作業工数とシステム部門とのコミュニケーションまで含め、実施反映までに数日から数週間かかっていた施策が、コーディングの量と複雑さにもよりますが簡易なものであれば数時間程度で、担当者ベースで実施できるようになりました。
KARTE Blocksを使えば、新たな施策を実施したい際に、効果的な導線を確保する作業も、わずか1時間ほどで完了しますし、エリア毎のブロックをうまく管理すれば、更新頻度の高いコンテンツも即時更新できます。システム部門に依頼をしていた頃に比べて圧倒的にスピーディーになりました。業務負担はかなり削減できています(森田大智氏)
② パーソナライズしたバナーの掲示
トップページに「お客様におすすめコンテンツ」として、大型バナーの掲示スペースを確保。KARTEとの連携によって、業種ごとにパーソナライズしたバナーの出し分けを実現した。
従来であれば、新たなバナースペースを確保するためにはCMSの開発が必要であったが、KARTE Blocksを使うことで、自部門だけで簡単に新たなスペースを確保することができた。
③ 検索窓の下部に検索キーワードを新たに配置
カウネットでは、サイトの検索窓の下部に「除菌」「飛沫対策」「寒さ対策」など、その時々のトレンドを踏まえた“注目キーワード”を配置している。
従来、サイトのトップページにこのような施策を行いたい際、システム部門への依頼・改修が必要であり、更新作業等にも時間を要していた。しかし、KARTE Blocksを使って担当者が直接、細かい箇所を更新できるようになったため、適切かつ迅速に施策を実行できるようになった。
KARTE BlocksはKARTEの一機能として利用でき、各種分析も同一画面から行えます。加えて、両者とも感覚的に扱え、特別な研修がなくても、使いながらスキルアップしていけるのも現場にとってはうれしいところです(井上真之介氏)
カウネットは細かなメッセージを含めたサイト全体の見直しを現在進行形で進めているが、パーソナライズによる顧客満足度、誘導強化などの点で確かな手ごたえを感じているという。同サイトのページビューが増加傾向にあることが、それを裏付けていると言えるだろう。
運用ルールも大胆に変更
KARTE Blocksがあるから、スピード感を優先できるフローに
カウネットでは、KARTE Blocksの導入に併せて、運用ルールの大胆な見直しも行った。既存の運用ルールでは、変更反映前に承認者のチェックが必要なため、承認者の忙しさがボトルネックとなり、結局は更新が滞る事態になっていた。
しかし、承認者のチェックを無くせば、当然、作業ミスの生じる可能性も上がる。その対応策として、更新内容は事後報告でグループに共有し、グループメンバーが作業内容をチェック、単純なミスがあれば修正を行うというルールに変更した。
同グループのリーダーを務める奥澤浩史氏は、「軽微な修正であれば、承認者である私がいなくても担当者レベルでどんどん進められるので、スピード感がガラリと変わりました。新フローにおいて、今のところ大きな問題は発生していません。小さなミスがあっても他のメンバーが気づいてすぐに修正できます。それもKARTE Blocksの作業のしやすさがあってのことでしょう」と語る。
渡辺氏は最後に、「KARTE Blocksにはとても満足しています。PDCAを素早く回せますし、お客様への提供価値を高められているという実感があります。まだ未利用の機能も多くありますが、KARTEとKARTE Blocksで、Webサイトの販促の機能をすべて網羅していると感じています。だからこそ、特にKARTE Blocksの活用を進めていけば、自然とサイト運用者としての知識や発想も広げられるとも思っています。今後の期待感は大きいですね」と笑顔を見せた。
今春からのコロナ禍によって、イベントや会合、実店舗への訪問などが減少傾向にあるなかで、情報提供や販売チャネルとしての企業Webサイトの価値はより増し続けている。顧客に価値ある情報を提供し続けるには、常にPDCAを回し続け、サイトを改善し続けるスピードが鍵となる。
企業がWebサイト運用に抱える“足かせ”をすべて取り払い、自由で迅速なサイト更新を実現するのが「KARTE Blocks」だ。
- テンプレートの改修やサイトレイアウトの変更をするには追加費用や時間がかかり難しい
- CMSだけでなく、A/Bテストツールや効果測定ツール、レコメンドツールなど複数ツールが絡み合っており、複雑すぎて更新が困難である
- Webサイトの改善点を見つけたのに、CMSでは対応できない部分だった
- システム部門や外部制作会社に変更を依頼しても、すぐに対応してもらえない
冒頭でも書いたこのような悩みを抱える企業は、それを仕方のないこととあきらめずに、一度「KARTE Blocks」を検討してみてはいかがだろうか。
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