世界最大級!7万人が熱狂するテクノロジーカンファレンスWeb summit 2018レポート(前編)
リスボンWeb summit 2018海外レポ! テクノロジーの未来はどこへ行く?
少子高齢化社会に伴い、働き方改革や生産性向上が求められている今。IT活用はどんな企業にとっても外せないテーマであり、中長期戦略や事業計画を練るための情報収集が欠かせません。日本のITカンファレンスに足を運ぶことも大切ですが、ITの力で世界がつながり始めている今においては、グローバルな視点から世界の方向性をとらえることも重要です。そこで今回は、2018年11月5日~8日までポルトガル・リスボンで開催された「Web Summit 2018」の様子をお届けします。
世界最大級!7万人が熱狂するテクノロジーカンファレンスWeb summitとは
Web summitは3名のアイルランド人によって始まったイベントです。初年度の2010年はダブリンで開催され、参加者は400名。それが2018年には70,000人が参加する世界最大級のイベントに急成長しています。今では世界中から参加者が集まるビッグカンファレンスですが、日本での知名度はまだまだこれからといった状態。筆者の私も今回が初参加で、テックウェーブが主催するツアーで、ウェブ解析士協会の一行として同行しました。
Web summitの会場は、リスボンの北東部にあるアルティス・アリーナ。中心市街地から地下鉄で会場へ向かうと、至る所にWeb summitの看板があり、街全体がイベントを支援していることが伝わってきました。また、初日のオープニングトークではポルトガル首相アントニオ・コスタ氏が登場し、Web summitの経済効果について言及した上で、今後10年間ポルトガルでの開催や支援を約束しました。
実際に現地へ足を運んで感じたWeb summitの最大の特徴は、「とにかく大きい!」ということです。たとえば、1人でダンスをするよりも、70,000人でダンスをする方が迫力ありますよね。グローバル企業のCXO、創業者、投資家、ジャーナリストたちが、世界中から一か所に集まって想いを共有したり、サービスを一生懸命アピールしたり、意見を交換し合ったりすることで、この熱気が生まれるのだと感じました。
Web summit 2018のキーワードは「AI」「環境」「女性」
Web summitが取り扱っているテーマは多岐にわたります。たとえば、AIやロボット、自動運転やIoTなどのテクノロジー関連から、ブロックチェーン・仮想通貨などのフィンテック(金融×IT)、ヘルスケア・医療などのメドテック(医療×IT)、デジタルマーケティングなどです。他にもデザイン、ファッション、音楽といった分野もITと融合し、さまざまなセッションが開催されていました。
今回、Web summitを巡っていて私が感じ取ったキーワードは「AI」「環境」「女性」です。
「AI」について
Microsoftのブラッド・スミス氏は、AIの革新を通じて社会課題を解決することの重要性について言及。また、展示ブースもMicrosoft「AI」という表現が印象的でした。一方、国連事務総長アントニオ・グテーレス氏は、人間の介入・操作なしに攻撃目標を定めて人を殺傷するAI「キラーロボット」について言及。AIの明暗について問題提起が行われていました。
「環境」について
全体的にどのセッションでも、気候変動や環境問題を踏まえた持続的成長について言及されていました。人間の生活が地球環境に与えている負荷を知る指標である「エコロジカル・フットプリント」を見ても、現代の生活が地球の許容量を超えていることは明白です。IKEA Groupでは、地球と共存しながらより良い日常生活をどう創造するか?ビジョンを発信していました。
「女性」について
Web summitに参加する男女比率は60:40だそうですが、主催者側として50:50を目標とした取り組みが行われているようです。初日のオープニングトークでも女性を鼓舞する演説があったり、セッションの登壇者として女性が多く登場したりするなど、テクノロジー業界で働く女性を応援する風潮が見られました。女性の進出は国内外ともに関心のあるトピックだと言えます。
以上、いかがでしたでしょうか。他にも注目トピックはたくさんありましたので、いろいろな方の記事をご覧いただき、多角的な視点からWeb summitを調べてみてくださいね。
コンテンツをスッキリ整理! Web summitの3つのポイント
前章ではWeb summitの全体的な印象をお伝えしました。ここでは、対話型のセッション、セミナーやワークショップ、ピッチと呼ばれる投資家へのプレゼン、展示や交流ブースなどについて、3つのポイントにまとめてご紹介したいと思います。
1. 人気トップ企業の体験型展示とセミナー
70,000人が集まるWeb summitは、企業のブランディングには絶好の機会。業界をリードする企業の展示はとても気合が入っていました。特徴は、ソリューションの展示だけではなく、「来場者にどのような体験を提供するのか?」といった目線で設計されていた点です。
たとえば、Googleでは、ブース二階のワークスペースで働いた後、滑り台で降りてくるといった仕事と遊びを融合した仕掛けがありました。また、モビリティや自動運転など、これからの技術については対話型のセッションが多く、実用化が始まっているAIや機械学習などは、ワークショップが盛んに実施されていました。
2. 世界中から集まったスタートアップ企業の熱いトーク
Web summitの醍醐味の一つは、たくさんのスタートアップ企業に出会える点。規模によってブースは「ALPHA(アルファ)」「BETA(ベータ)」「GROWTH(グロース)」の3段階に分けられています。
- 「ALPHA」は、投資額1Mドル以下で、プロダクトやサービスは開発段階。
- 「BETA」は、1~3Mドルの投資を受けている企業で、プロダクトやサービスもすでに開発されている段階。
- 「GROWTH」は、3Mドル以上の投資を獲得できている企業で、国内外での展開もしている段階。
創業間もない会社、小さな会社、遠くの国からわざわざ来ている会社は、自社サービスを多くの人に知ってもらいたいと、より熱心にサービスの紹介を行っていました。また、スタートアップ企業の展示は毎日のように入れ替わってしまうので、いつ訪れても新しい発見があるのも特徴です。
セミナーや展示ブースの傍らでは、ピッチ(投資家へ向けたプレゼン)が行われていました。最終日に結果が発表されるピッチ・コンペティションでは、自動運転のためのソフトウェアを開発しているイギリスの Wayve(ウェイヴ)が優勝。これからどのように進化するのか楽しみです。
3. 常に賑わいが絶えない交流ブース!
大きなカンファレンスや展示に目が行きがちですが、会場の至る所にある交流スペースの賑わいもWeb summitの特徴です。それも、ただ単に交流ブースがあるわけではなくて、パートナーラウンジ、ディベロッパーラウンジ、インベスターラウンジなどとテーマが設定されているので、自分の目的をより達成しやすいようになっています。
また、世界最大のオンライン宿泊予約サイト Booking.comは、昨年に引き続きメンタリング・プログラム「Women in Tech Mentor Program」を実施。多くの女性がいきいきとラウンジで話している姿を見ることができました。
セミナーや展示だけじゃない! Web summitの3つの魅力
最後に、会場内で提供される食事や、展示物の工夫、Night summitなど、少し角度を変えてWeb summitの魅力をご紹介したいと思います。
1. ポルトガル発祥の軽食メニューやスイーツを楽しもう
Web summitの会場内では食事類も充実していて、ハンバーガーやピザ、サンドイッチといった軽食から、ビールなどのお酒もそろっています。私がいただいたのは、ポルトガル発祥の軽食メニュー「フランセシーニャ(Francesinha)」。薄いハムの上に、ステーキと厚めのパンをのせてチーズでくるみ、デミグラスソースがかかった料理です。これにポテトフライが付いているのでボリューム満点でした。
また、小腹が空いたらパイ生地の中にクリームが入ったポルトガルの伝統菓子「パステル・デ・ナタ」とコーヒーでエネルギーチャージ。忙しくセッションを巡る中の楽しみとなりました。
2. イベントを一緒に作っていくプロセスを体験しよう
参加者全員でイベントを一緒に作っていくプロセスを体験できる点も、Web summitのワクワクを演出している要因だと感じました。たとえば、会場内の至る所に「What do you think?(あなたはどう思う?)」といった投げかけと共に、質問とグラフが描かれており、自分の意見をシールで表現できるしかけがあります。
みんなの考えが視覚化され、時間の経過とともに変化していく様子を眺めるのも楽しいですし、何より自分も作り手の一人なんだと思えることが、ワクワクの源泉なのだと思います。
3. 日が暮れてからが本番? Night summitで交流しよう
アルティス・アリーナで行われる基本セッションが終わると、Night summitが始まります。開催場所は毎日違っていて、リスボンのさまざまな箇所で開催されます。写真はエルシシュ・ファクトリーで行われたイベントの様子。
19世紀は紡績工場だったそうですが、クリエイターたちがアトリエを構えたことをきっかけに、ギャラリーやレストランが並ぶクリエイティブな街になったそうです。中にはこっちが本番という方もいらっしゃるそうで、一晩中お酒を酌み交わしながら語り合い、夜が明けたらそのままSummitに出かける人も少なくないそうです(笑)。
まとめ ~現地での“体験”とセットになって、より“情報”は活かされる~
以上、いかがでしたでしょうか?
Web summitは、いわばテクノロジーの未来をビジョン・シェアリングするイベントです。世界中からさまざまな人が集まっているイベントにもかかわらず、日本の出展企業や参加者はまだまだ少ないのが現実です。そんな中、ジェトロ(日本貿易振興機構)をはじめとした日本からの出展が登場したのは、とても嬉しいことだと感じています。
また、初めてWeb summitの存在を知った時、一体どんなイベントなんだろう?と、主催者のページを見たり、イベントレポートを読んでみたりしたのですが、それだけでもとてもワクワクしました。しかし、実際に行ってみて思ったことは、「現地での体験に勝るものなし」、ということです。事前に得ていた情報が体験とセットになって、ようやく自分の企画などのアウトプットに活かせそう、そんな感触を持っています。できる限り一次情報を取りに行く。これが大切だというのが私の意見です。
だからこそ、偶然にもこの記事を読んで頂いている皆さんには、ぜひWeb summit 2019に参加いただきたいです。ただ、かかる費用や、言語の壁など、様々な障害がある中で会社に理解をもらうことは、とてもエネルギーのいることだと思います。そこで、初心者×英語弱者でもWeb summitで収穫を得るための心得を、別記事にてまとめたいと思います。もし良かったらまたご覧になってください。
ソーシャルもやってます!