企業ホームページ運営の心得

話が通じないのはなぜ? Web担当者が知らない営業マンの生態

Web担当者とも関係が深い営業マンの仕事。彼らの実態を知ることが人間関係を構築する第一歩になります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の493

営業という仕事の誤解

営業マンととび職がお互いの仕事を想像し、職業交換は無理だと互いに敬意を抱く、缶コーヒージョージアのCM「おつかれ、俺たち。」編。

CMでは山田孝之さん演じる背広姿の営業マンと、とび職役の新井浩文さんが想像のなかで和解していましたが、実際の現場ではなかなかこうはいきません。営業と他部署の軋轢が多くの業界で確認されるのは、営業という職種があまり知られていないからなのでしょう。

CMにも登場した営業の「土下座」などは最たる誤解。Web担当者も接することの多いであろう営業マン。彼らとの人間関係を構築する上で、誤解を解き、業務上から身につけてしまう習性を知ることは必ず役に立つことでしょう。

なお、本稿における営業は一般論を心がけていますが「ウチの会社の○○のことを言っている」と思ってもきっと気のせいです。

土下座の真実

CMでは土下座による謝罪が試みられていました。大手広告代理店の営業部門を面白おかしく描く、ビッグコミックスピリッツの長寿連載『気まぐれコンセプト』でも土下座がたびたび描かれており、あちらの世界では多用されるのかもしれませんが、一般的なビジネスの場で土下座は見たことがありません。営業マン=土下座は誤解といえるでしょう。

現実のビジネスシーンはもっとドライです。マンガやドラマで描かれるような土下座級の失態が発生していたなら、土下座をするヒマすら惜しみ、金銭面も含めた保証や対応に追われているものです。

人気ドラマ「半沢直樹」でも土下座が注目されましたが、あれは銀行内の身内に対してのもので、謝罪というより見せしめや仕返しにあたり、遺恨を残すだけの不毛な行為。ビジネスシーンで相手が土下座をしようとしたなら、止めてなだめて「貸し」を作ることでしょう。

ザギンでシースー

営業マンはザギン(銀座)やギロッポン(六本木)といった繁華街で、接待を理由に美味しいものを食べて飲み歩いている。まるでお笑いタレント「平野ノラ」のバブルネタですが、いまだに営業=接待と信じて疑わない人たちが少なからずいます。これも誤解です。

盆暮れの挨拶など、社会常識の範囲内の謝礼などは「潤滑油」として存在しますし、お酒の席を通じて人間関係を深めることはありますが、それだけで取引が決まることはありません。というより、それは違法性を帯びます。民間企業同士の場合、「贈収賄」には該当しませんが、接待の飲食という私的な利益を得るのと引換に、会社に不利益な取引を結んだなら「特別背任」という罪が待っているからです。

なにより「接待」による取引が、長続きすることはありません。接待費用は取引価格に反映され、市場競争力を失うからです。

昭和時代ならいざ知らず、現代において土下座や接待はドラマの「記号」として、安易に濫用されているように感じます。

サボりのメカニズム

こちらは誤解ではなく、多分に事実であるのが「サボり」です。営業マンはサボります。20世紀は喫茶店やパチンコ屋でサボっていましたが、最近は「漫画喫茶」や「スマホゲーム」に興じているようです。モバイル機器の発達によって、カフェで仕事をする姿も見かけますが、いつ何時も仕事をこなしているわけではありません。ただし、サボりは主従の従です。

打ち合わせが予定より早く終わり、次の予定までに生まれた空き時間、次の約束までの時間が帰社して再び出向くよりも短いとき、外で時間を潰す方が、いちいち帰社する交通費も不要という経済的合理性もあります。これが「サボり」が生まれるメカニズムの1つです。

悲しき習性が語る

また、営業マン自らが「サボり」を自慢し、誤解を深めている場面は多々あります。それは彼らが業務で身につけた習性の影響によるものです。

営業マンになると「盛り気味」に話をするクセがつきます。お客は小さい会社より大きい会社、平社員より役職者を漠然と信じる傾向があるからです。また、ときには強面の取引先とも渡りあわなければなりません。私自身、いわゆる「ヤバイ」稼業の方と接したこともあります。そんな営業マンにとって、嘘にならない程度の「盛り」はRPGにおける「そうび」と同じです。

この盛りたがる悲しき習性が、裁量権の範囲内にすぎない時間調整を「サボり」と自慢させてしまうのです。真に受けずに、社交辞令的な相づちでスルーしてあげてください。

営業マン適当伝説

営業マンは適当なことばかり言う。これも概ね事実です。

営業の仕事とは、新しい業務を受注すること、継続受注のための働きかけや調整をすること、と言葉にすれば簡単ですが、実態は簡単ではありません。Web業界をみればわかるように、最新技術が生まれても、すぐにキャッチアップされてしまいます。

取り扱う商品が同じなら、価格以外の優位性で差別化することは困難であり、価格勝負になれば中小は大手に太刀打ちできません。だからといって、「差別化できないから売れません」とは言えないのが営業職。営業マンのほぼ毎日は逆風です。

そこで死にものぐるいに、口八丁、手八丁を駆使します。好意的なお客の誤解を訂正せず、大局に影響しない語弊を放置することもあります。ここに「盛り気味」が加わり、客観的に見たとき「適当」との誹りは当たらずとも遠からず。しかし、「適当」とは逆風を越えて、契約を取るための技術の1つなのです。

だからといって、適当を押しつけられる現場はたまらない」という声が聞こえてきそうですが、その通りです。営業マンの無理難題に振り回されぬよう、関係部署の間でしっかりと話し合うことが大切です。ひいてはお客のためにもなります。

営業とコミュニケーションするときは、事前に「美味しいものを食べ歩いている」といった「誤解」を解いておき、営業マンとして身についてしまう「習性」を理解しておくといいでしょう。

そしてもう1つ大切なのが、営業マンは仕事を取ってくるのが仕事だということ。現場に意地悪しようという悪意はありません。

今回のポイント

誇張された誤解も多い

習性を知れば理解しやすい

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