限りなきモバイル ~MWC2015上海に見た「モバイル革命」の真の意味

「モバイル革命」は、PCからデバイスが変わるだけの「インターネット利用の後半戦」といった軽いものではない

今、「モバイル革命」が世界で起きている。しかしそれは、PCからデバイスが変わるだけの「インターネット利用の後半戦」といった軽いものではない。「限りなきモバイル」をテーマに開催された「MWC2015上海大会」から、アジアの国々がキーとなる「モバイル革命」がもつ本当の意味をお届けする。

「限りなきモバイル」(Unlimited Mobile)をテーマに、世界最大級のモバイル関連展示会「MWC(モバイル・ワールド・コングレス)2015上海大会」が、中国/上海の新国際博覧会中心(SNIEC)とそこに隣接するケリーホテルにて、7月15日から3日間にわたって開催されました。

今年初めてのGSMA大会ですが、昨年までは「モバイル・アジアエキスポ」として開催されていたものが今年は格上げされた形で、通算では4回目のカンファレンスです。

今回の出席・出展の顔ぶれを見ると、EUが母体の組織でありながら、中国、インドなどの大国ほか、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアなどの登壇が多く、まさにアジア大会の相を呈していました。

なぜモバイル革命なのか、上海大会なのか?

「モバイルの未来」としたキーノートスピーチのモデレーターを務めたGSMAのアン・ブーベロ事務局長が、MWC2015上海大会のビジョンを語ります。

アジア太平洋地域のモバイル利用者は、世界の利用者のうち1/2を占めています。18億人のユーザーがいて、38億個のコネクションが発生しています。

つまりアジアの国々のコネクトこそが、世界をリードするカギだといえます。

先の3月に開催されたMWC2015のバルセロナ大会で明らかにされたように、まだ世界のインターネット利用は半分にすぎません。全世界73億人の人口から考えると、わずか約30億人程度しかコネクト(接続)されておらず、残り40億人はインターネット利用の恩恵さえ享受していないというのです。

大事なポイントは、「残り40億人のコネクトを実現するためには、もはやPCではなくモバイルしかない」ということでした。

GSMA事務局長のアン・ブーベロ氏が、キーノートスピーチのモデレーターとして登場。

ブーベロ氏はアジアの重要性を問います。

すでにアジアの4Gの普及率は、日本、韓国では、ヨーロッパ、アメリカよりも高く、2013年末に始まった中国でも、その成長スピードは凄まじいものがあります。

しかし、このエリアは、世界のトップレベルの国々もあれば、一方ではるかに平均を下回っている国々も含まれています。

モバイル革命は、インターネット革命の延長戦ではない

日本では「モバイル革命」を「インターネット利用の後半戦」といった程度でとらえている人も多いのではないでしょうか。PCがなくなることはないし、デバイスが変わるだけといった、野球でいえば6回からの後半戦といった感覚です。

しかし、モバイル革命の本質は世界中のコネクトであり、そこには世界中の人々の生活をもっと良くしていきたいという理念があるのです。

もちろん、ビジネスもそこには存在します。ビジネスの観点からすれば、モバイル革命のポイントは、モバイルによる新しい商圏の奪取です。「インドやアフリカなど、第三国の人々をコネクトさせれば、そこに新たな経済圏が生まれる。モバイルで残り40億人をつなげば、新しいコマースが発生し、新しいビジネスが広がる」といった、先物買いのように大胆な投資チャレンジが行われています。

まさに世界中の先進国やグローバル企業が、競って覇権争いをしているかのような状況です。

サウンド効果のDTSのブースで。案内はQRコード。

世界をコネクトするんだ。あと40億人をつなげ!

しかし、それだけではありません。このアジア大会の意味は、まさにインド、パキスタン、ミャンマーなど第三国の人々の「デジタルデバイドの人たち」の存在です。

ブーベロ氏は続けます。

このエリアには、教育、金融、保険、医療面で、圧倒的なマイナスを抱えている人たちがたくさんいます。生まれながらの貧困だったりします。

インターネットの恩恵は先進国だけが受けていていいのでしょうか? 格差のない社会を目指して、これらの人々をコネクトさせて、それぞれの国の子供たちにいろんなチャンスを作りだしましょう。

ほかの登壇者たちも、誰もが情熱的に「コネクトされる未来」を語ります。

ミャンマーのモバイル普及率は、まだ30%程度。パキスタンには、銀行口座を持つ人が20%しかいません。この国の人々をつなぐためには、モバイルならば200ドル前後で提供できるはずです。

(Telenor CEO ジョン・フレドリック・バクサース氏)

「インターネット利用=コネクト」させれば、人々が救われる。医療なら命を、教育ならチャンスを、金融保険なら貯蓄や生活保障をと、その日暮らしな生き方を解消させていくことができると言い、サスティナブル(持続継続性)な成長や発展を行うためには、このモバイル革命を実現させるべきだと唱えます。

日本にもあるデジタルデバイド

すっかりインターネット普及が行き渡ったかにみえる日本でも、デジタルデバイドは、少なくありません。シニア層や地方の生活者たちなどの間では、まだまだインターネット利用が遅れている人たちがいます。

最先端の高速モバイルインターネットが当然のことと思われる今の日本でも、まだその恩恵を十分には受けていない人たちはたくさんいるのです。モバイルの普及と利用は、いままでの壁を大きく変える可能性が見え始めてきています。

アジアにあって、日本には足らないものは?

しかし、「コネクト未満」の国々と、「コネクトほぼ完了」の日本とでは、大きな意識の違いがあります。アジアの願望やあこがれに比べて、果たして、日本人は本当に、モバイル社会による利便性を求めているのでしょうか?

チャイナ・モバイル会長のシー・グオホワ(奚国華)氏のコメントも印象的でした。

新しい時代のためには、技術の可能性や方向性を語るだけでなく、理念のイノベーションが必要です。

私たち中国は、ここまでの成功を果たした今、次の時代を作るために、理念そのものを作り直しています。こちらのほうが難しい作業です。

チャイナ・モバイル会長の奚国華(シー・グオホワ)氏

シー会長は、中国における新しい時代を語るキーワードとして「インターネットプラス」を提唱していました。

  • 理念のイノベーション
  • 能力のイノベーション
  • クロスボーダーを生み出す活力

これらが次の時代を作る鍵であるというのです。

音声通信、データ通信、その次のデジタルサービスの開発が急がれる中国

ドコモの掲げた未来

またNTTドコモでは、加藤社長が自ら英語をによるスピーチで聴衆を引きつけます。

自社の「dマーケット」に加え、2015年度に新たに打ち出した「+d」の事例を紹介。ローソンとの提携や、タカラトミーと共同開発したロボット「OHaNAS(オハナス)」、IoT分野でのGEとの協同など、幅広い取り組みを紹介しました。

サービス自体は、今の日本の感覚からするとあえて強調すべきものには思えないものですが、日本の取り組みを知らないアジアの聴衆は、自国ではまだ構想にしかすぎないプランが、すでに実現段階のプランとして動いていることに注目していたようです。

タカラトミーとのコラボレーションのケースを示すNTTドコモ加藤社長

この背景には、キャリアビジネスの変化がアジアでも起こり始めていることがあります。

すでに中国では、音声通話による収益が15%~20%減り、データ通信でさえその未来は安泰でないことから、第三の新しい通信サービスの提供が求められているのです。そこで求められているのは、モバイルを中心としたクラウド型のアプリケーションサービスなのです。

こういう段階では、もはやキャリア単独の開発ではなく、世界中で各キャリア同志の協調や他のサービスとのコラボレーションが、より不可欠な連携として進められています。

こうした状況を背景に、これまで日本が孤軍奮闘してきた各種の新サービスが、改めてアジアから注目されています。しかし、だからといって日本勢が今後のリーダーとなれるかどうかは、別の課題です。

モバイルはますますサービスやビジネスを生み出します。この新しい波に鈍感にならず、新しいチャレンジをしていくには、何が必要なのでしょうか?

チャイナ・モバイルのシー会長が言う「理念のイノベーション」こそが、今の日本に必要なことなのかもしれません。

中国では2013年12月に4Gサービスを開始。年内には利用者は3億人を超えると言われている
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