アクセス解析に近道なし
これからのWeb担当者にとって、アクセス解析の知識は必須であり、重要なスキルである。Webサイトを公開するにしても、今の時代、一度公開してしまえばそれでおしまい、という訳にはいかないからだ。
新たにWebサイトを公開する際には、アクセス解析ツールも同時に導入して、日々データの測定ができるようにしておくというのは、Webサイト運営上は「常識」に属する事柄であり、もはやどんな会社でも当たり前に行われているはずだ(と信じたい)。
しかし、導入したはいいけれど、あまりの多機能さ・複雑さに圧倒されて、レポートの見方や機能の使い方がよくわからず、結局活用が後回しになっているという事態も、よく目にする状況ではある。
そんなことにならないために必要なのは、月並みだがやはり「アクセス解析のことをよく知る」ということである。アクセス解析とは何か、何ができて何ができないのか。どんなWebサイトのアクセス解析にも共通する基礎知識をまずは身につけ、その上で、自社のWebサイトの目的に沿ったアクセス解析活用法を、自分の頭で地道に考えるしかない。
Webが日々進化し続けている以上、アクセス解析にも終わりはない。解析データを見ては仮説を立ててWebを改良し、その結果を検証してまた改良することの繰り返しでしか、Webはよくならない。このシリーズでは、この長い道のりを、はじめの一歩から一緒に考えていくが、今回は第1回ということで、今後このテーマに対してどのように取り組んでいく予定なのか、その道筋の見取り図を提示しておきたいと思う。
何から始めたらよいか
自分の会社でGoogle AnalyticsやSiteCatalystのようなアクセス解析ツールを導入して、さあこれからアクセス解析を行おうという場合、あなただったらまず何から始めるだろうか?
アクセス解析ツールなのだから、「アクセス解析をしたい」「すぐにサイトの改善につなげたい」という答えが多いのは当然だろう。実際まじめで勤勉で、アクセス解析のことをよく勉強しているWeb担当者ほどそう答える確率は高い気がする。しかしそこに大きな落とし穴がある。
「アクセス解析のことはよくわかっている」と思っている人ほど、実はアクセス解析という手法そのものに関して誤解をしていたり、測定方式にかかる制約を理解していない人も多い。それらを理解しないまま闇雲にアクセス解析を始めてしまうと、結局自分の思ったとおりのことができず、「○○のアクセス解析ツールは、あまり使えない」という感想を抱くとともに、当初想定したことの半分も活用できずに終わってしまうことになる(半分活用できれば優秀かもしれない。結局使い物にならずに放置され、「Analog」のような昔ながらのフリーツールでデータを取得しているだけというWebサイトも、作り話に聞こえるかもしれないが、実際によく目にする)。
そんな羽目に陥らないためには、自分でわかっていると思っている人でも、ここでもう一度、アクセス解析を基礎からおさらいすることだ。アクセス解析とはどういうもので、どんなことができるのかを、一から徹底的に理解することである。確かに時間がかかるし、まだるっこしいし、二度手間だし、根気がいることでもある。しかし、「アクセス解析ツールの有効活用に近道なし」。これまで自分が見てきたお客様のアクセス解析の現状(惨状?)からも、これがもっとも有効な方法だと断言できる。最初で多少時間を食ったとしても、ここで確実に着実に理解しておくことが、その後大きく時間と手間と予算をロスしないために最も重要なのである。
アクセス解析理解のステップ
アクセス解析を一から理解するためには、正しい段階を踏む必要がある。性急な読者諸氏には、「アクセス解析の数字の読み方」や「具体的な改善に役立つ解釈のしかた」を早く知りたいと考える向きもあるかもしれない。しかし、やはりここでも「近道なし」である。まずは基礎的な事項をしっかりと理解しよう。有効活用を考えるのはそれからだ。私自身、アクセス解析に関する業務に携わる中で、基礎知識がないまま分析に入ろうとして失敗している例もたくさん見てきた。これから初めてアクセス解析ツールの有効活用に取り組むというのであれば、時間はまだたくさんある。着実に、以下の段階を踏まえて理解を深めてほしい。
各ステップについて、次号以降、それぞれ何回かに分けて解説をしていくが、概要をそれぞれ以下に示しておこう。
(1)仕組みを理解する
アクセス解析の測定の仕組みは、(ご存じの通り)いくつかの方法がある。それぞれ、どのような仕組みで行われるものなのかを解説するが、その後、データ測定上の違いや運用コストについての考え方など、実運用に即した注意点を示す。
(2)用語を理解する
アクセス解析で使われる用語によっては、「PV」など、イメージがつきやすいために安易に使われすぎるものが多くある。よく利用される用語について、アクセス解析での定義を示すとともに、その用語を使う上で注意すべき点を解説する。
(3)取り組み方を理解する
アクセス解析にどのように取り組むべきかを示す。アクセス解析ツールの導入を一連のプロジェクトとみなしたとき、そのマネジメントをいかにすべきかという心構えに関する話題が主になる。
(4)具体的な手法を理解する
ここまで来て、初めてアクセス解析の具体的な手法について示す。アクセス解析では、玉石混交の非常に大量のデータを扱わなければならない。その中から、どうしたら意味のあるデータを見いだせるようになるかといった点を中心に示す。
全般的に「一から」「基礎から」「着実に」というのが、本連載全体を通して私が心がけたいトーンだ。アクセス解析を知っている人には「今さら」のことが多いし、「最先端の知識」ばかりでもないし、決して華々しい内容ではない。しかし、土台を固めずに、家を建てるほど危険で無駄なことはない。連載をすべて読み終えたときには、確固たる理解が身に付き、読者諸氏がそれぞれの現場で、アクセス解析ツールを有効に活用できるようになっていることと信じて、本連載を執筆していきたいと思っている。半年から1年ほどの予定であるが、お付き合いいただければ幸いである。
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