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Z会公式ブログ82個、運営のポイント

Z会公式ブログ82個、運営のポイント

2007年の2月にスタートした「Z会ブログ」も、現在は82の公式ブログへと成長しています。Z会ブログに関わっている人は、正社員だけでも60名前後、延べでは100名以上いるそうです。通信教育の高校部門では、全管理職が執筆。「ウェブ戦略でいちばん成功しているのはブログ」という公式ブログ活用のきっかけと、運営のポイントについて聞きました。

一人ひとりがPRマンになることができるのがブログの魅力。伝えたいという想いをもっている社員に直接声をかけ、7~8名くらいのメンバーと一緒に僕自身も毎日書くと決めてやり始めたのが最初です」(寺西氏)

教育産業では、旺文社や明治図書がブログへの取り組みを始めていました。それらの先行事例をみて「日々更新され、かつ、その情報がお客さまにわかるようになっていれば、見に来てもらえる」と感じた寺西さん。自分自身が体感しないとわからないということで、2005年からプライベートでブログを開設。その経験をもって社内へ提案しました。プライベートブログにおいても、本名や所属企業を明らかにしていたあたりが、2005年の時代背景を考えるとユニークです。

ブログを提案したときの社内の反応はどうだったのでしょうか?

『何かマズいことを社員が書いて問題になったらどうするんだ』と心配する人もいました。だから、『ブログなんて気にするほど見られませんよ』っていう話をしました(笑)。とりあえずやってみましょう、やってみて効果がなければ止めればいいし、コメントに批判が続くようなことがあれば、それは効果がある証拠(笑)。批判を受け止め、レスポンスをする姿勢さえあれば、まず問題になりませんよ、と」(寺西氏)

そんな社内の雰囲気が変わったのは、2007年入社の新入社員ブログがきっかけでした。

新入社員が順番に毎日したためるブログです。全体の調和のためにトーン&マナーを優先すると、正確で整ったものにはなりますが、イキイキしません。そこで、“書き方マニュアル”などは用意せずに好きなように書いてもらい、『文章は必ずこちらでチェックしますから』と言いながら、ほとんどノーチェックとしたんです(笑)。人間なんですから、普通に生きていれば変なことは書かないものなんです。でも、これで『いまの若い人はみんなこんなに文章うまく書けるんだ』という共通認識が社内に広がりました。

教育産業が他の産業と決定的に違うのは、定量データよりも定性データが響く点。『先日この入試相談会に行きましたよ』というお客さまのメッセージに敏感に反応するんです。『本当にブログでこういう声が集まるんだ、いいね、ブログって効果あるね』ということで広まっていきました」(寺西氏)

お客さまとの距離が遠かった通信教育部門にとって「お客様の声を聞きたいという欲求に応えてくれるツール」として、社内にブログが受け入れられていったのです。

SEOまで視野に入れた情報発信

Z会のオンライン戦略はブログだけではありません。オンラインでの情報流通を促進するため、ニュースリリースも積極的に活用しています。

神原 弥奈子

もともとワイヤーサービスを使って情報発信をしていたのですが、従量課金のため、年間契約料に加えて1回配信するたびに費用が発生し、利用する部門を広げづらかったのです。それではもったいないということで、年間定額のサービスの導入を検討し始め、計算してみると、リリースを年間30本出すのならばペイすることがわかり、それならばということで契約しました。

お金がないのでリリースを出さないと言っていた部門でも、定額サービスならば、逆に出さないほうが無駄なコストということになりますよね。ですから、各部署から1か月に1回は必ずリリースを出すということでスタートしました。このとき声をかけた部署が4つ、これで年48本のリリースが確保でき、費用も無駄にならずに済みました」(寺西氏)

寺西さんによると、情報発信を進めるにあたって、担当者がしなければいけない3つのポイントがあるということです。

1つ目は、話題を作る、ネタを見つけることです。2つ目は、ささいなネタでもどんどんウェブ上で形にし、コンテンツの多いページを作ること。これで終わってしまう人が多いんですが、今のウェブではそれだけじゃだめ。3つ目のポイントとして、コンテンツがあることをアピールしないと見てくれない。その対策の1つがニュースリリースなんです」(寺西氏)

良いものを一所懸命作っても、誰にも知られなければ意味がありません。それをアピールするという視点でニュースリリースを活用しているZ会。では、ニュースリリース活用の効果についてはどうお考えなのでしょうか?

効果測定については、定量の部分としてはSEO、検索エンジンからの誘導強化ですね。私たちが意識していない単語で誰かが検索してたどり着いてくれる可能性を引き出せるというのが大事。Z会のサイト上でのPRよりもニュースリリースのほうが検索結果で上位に表示されることもあるんですよね」(寺西氏)

ブログだけでなくニュースリリースも活用した情報発信において、認知向上だけでなくSEOまで視野に入れているのが成功サイクルを生み出す大きなポイントのようです。

勝手広告で先行者メリットを享受

「勝手広告」とは、企業広告を勝手に作って公開する自主制作の広告のこと。勝手広告を国内で最初に始めたという映像作家の神酒 大亮(みきだいすけ)氏は、勝手広告のチャンネルをYouTubeに開設しており、話題になっています。その神酒氏がZ会の勝手広告を作り、多くのクチコミを生みました。Z会の「勝手広告」誕生はどういう経緯だったのでしょうか?

裏の事情をバラしてしまうと、勝手広告の件はテレビ東京で番組として紹介されるというお話だったんです。ブラウン管で放送されるのなら、ということでOKしました。個人的には、親交のあった神酒さんを漢(オトコ)にしたい!という思いもありましたが(笑)

当初は、神酒さんが作ってくれた勝手広告は、Z会のサイトにあると“勝手広告”にならない(笑)ので、YouTubeの神酒さんのチャンネルだけでの公開でした」(寺西氏)

代理店に制作まで頼むと結構な費用がかかりますが、これだけのお金でこれだけの映像を作れるクリエイターさんがいるんだということを社内に認知させたかったんです。そして次のウェブ動画CMの企画を神酒さんにお願いできないかということになり、当初は神酒さんのチャンネルだけで公開していた“勝手広告”が実際にZ会の公式CMになり、親子のやる気ラボに『親子のやる気応援ムービー』として掲載されたり、YouTubeのZ会チャンネルでも見られるようになったりしています」(寺西氏)

日本で初めてそのモデル(勝手広告を公式に採用)をやれば、目立つと思った」という寺西さん。狙い通り、Z会の勝手広告は、新しいもの好きのマーケッターを中心にネット上で大きな話題になったことは、皆さんの記憶に新しいと思います。

ネット戦略2年間の成果

教育業界では、お客さんの動きは資料請求数に現れます。特に「12月から3月までの資料請求数は1つの重大なファクター」(寺西氏)だと言います。そして、ウェブの展開に起因したと思われる資料請求の数が、2009年春には2007年と比べて2倍に成長したそうです。

資料請求時のフォームで、きっかけとなったものを選択できるようにして、どの活動が資料請求につながったのかを調べています。ウェブ関連は毎年1.4倍~1.5倍のペースで伸びていて、2年間でちょうど2倍になりました。特に今年は、Z会ブログを選択する人がヤフーの検索を選択する人と同程度に成長しています。ほんとうに(Z会ブログを)見ているかどうかわかりませんが、潜在意識のなかでZ会ブログがあるということは間違いないですね」(寺西氏)

また、2009年3月に1つの公式ブログのアクセス数がZ会のトップページのアクセス数を越えるという出来事もありました。

3月22日は東大の後期試験合格発表の日。その日の、あるブログの閲覧数が9000PV以上でした。当日のZ会のトップページが7000PV程度でしたから、それよりも多かったのです。1人のブログがオフィシャルサイトのトップページを抜くというのは、すごいことですよね」(寺西氏)

2007年2月からちょうど2年目。試行錯誤の1年目を経て、ユーザーとの信頼関係を構築する時間を考えると、2年という時間は1つの成果をだすために必要な時間なのかもしれません

今後は、「定性的な実績ばかりではなく、数字で表せる定量的な実績にこだわっていきたい」という寺西さん。3年目に向けて、さまざまな種まきをしているようです。

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