コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の六十一
詐欺師は人の目を見て嘘をつく……か?
目は口ほどにものを言う。嘘をついている人は良心の呵責から目が泳ぎ、視線を逸らすといいます。しかし、食肉偽装社長やビール瓶が大好きな元親方は取材に対して、相手の目を見て答えていました。これは嘘をつき通すメリットが大きければ、それが信念にも似た支えとなるからです。メリットが「呵責」を押し出します。
一方、詐欺師は小さな嘘で目を泳がせておいて、真っ直ぐに向き直り大きな嘘をつくといいます。あえて「嘘をついている瞬間」を見せ、目が泳ぐと思いこませその逆をつくというわけです。
人は外部情報の取得の8割以上を視覚に頼っているといいますが、その情報が正確であるとは限りません。目は騙されやすいのです。そして「目」を意識することでコンテンツがレベルアップします。
目を惹く目玉
自然界には食物連鎖というヒエラルキーが存在し、多くの捕食者=ハンターは食べられる側でもあります。それ故、ハンターの殺意が発せられる「目(視線)」に敏感です。蝶の羽にある「目玉模様」は、捕食者を警戒させる目的ですし、畑に設置される「目玉のかかし」も同じ効果を狙っています。
人類は「食べられる側」だったというアプローチの好著「ヒトは食べられて進化した」では、チーターに大蛇、猛禽類のご馳走だったと指摘します。つまり、人もまた「目」に対して警戒する本能を持っています。
この本能を活用します。注目させたい箇所に「目玉」を言葉通りのアイキャッチとして配置します。白丸の中に黒丸を配したシンプルなものでOKです。警戒心が視線を目玉に誘導するのです。拙著「Web2.0が殺すもの」の表紙デザインはこの効果を狙っており、書店で視線を感じて手に取ったという読者の声が寄せられています。
目は口ほどに物をいいつつ騙される
目玉を配置しすぎると、ジロジロと見られる「いやぁ~な感じ」の「不快なサイト」となるので取り扱いには注意してください。以前、この手法を教えたところ、いたるところに目玉が配置され「妖怪 百目」となり客の不評を買いました。
目玉への注意や、これから紹介する定番技も個人差はありますが、視覚は騙されやすく、仕掛ける側からはコントロールしやすいのです。
たとえば、同じ長さの直線それぞれの両端に内向きと外向きの矢羽を付けると、外向きに矢羽を配した直線が長く見えます。これは「錯視(目の錯覚)」の1つで、脳が認識の際により印象を強めようと働きかけることにより起こります。
視覚情報は脳が認識する際に「そうあるべきだ」や「見たことがある」といったバイアスで事実を歪めます。四角か丸かといった形の違いだけでも、受け取る側の感情は変わるものです。
角、丸、線の基礎の基礎
四角は格張り、丸穏やかに、線は空間を支配します。
堅い情報や格式張るときは四角(長方形)を使います。いわゆる「横長」は「倒れない」安定感を想起し、情報への信頼性が投影されるのでしょう。見出しなどを画像処理する際も、書体もゴシックや明朝といった「角」のあるものを使用することでより安定感は増します。使用例としては、レイアウトやコンテンツの囲み罫、イメージカットも四角を意識して選定します。
「四角四面」という言葉がありますが、四角は「きっちり」と認識される優等生です。面白味はありませんが、「角」はオジサン達には喜ばれる傾向があるので「社内のお客さん」を納得させるのに便利です。「四角→きっちり→ちゃんとしている→問題ない」という安直な連想とオヤジギャグが重なります。
きつい表現ほど穏やかに
牙に角(つの)、爪にクチバシといった凶器に襲われてきた太古の記憶か、タンスの角に足の小指をぶつけた経験からなのかはわかりませんが、尖った「角」には身構えてしまいます。しかし、角の全くない丸にその警戒はありません。柔らかい印象を狙うなら「丸」を利用します。
角丸の罫線でもパステルカラーで描いた丸を無造作に背景に配置するだけでもOKです。丸文字体までいくとやり過ぎとなることもありますが、小見出しなどを丸ゴシックにするだけで「ふわっ」となります。「指摘」や「注意」などに丸を配置することで、堅さや耳障りな印象を和らげることができるのです。
最後に「線」です。「線」は空間を支配します。横罫線は上下を分断させ、縦罫線はコンテンツとメニューに区切ります。また、横罫線を跨いで縦線を配置することで上下に流れがあるものと意識づけることができます。矢印で「誘導」するほどではない時に便利です。
立体撮影は線を意識する
立体は「線」を意識することで空間の表現力が増します。目の特徴と組み合わせることで「写真」がレベルアップするのです。
撮影対象から縦線を探します。ビルなどの建物なら角がこれにあたります。次に斜め線を探します。慣れるまでは最初の縦線(角)をファインダーの中央近くに持っていくと良いでしょう。地面に接するところから斜め上に、屋上からは斜め下に向けた左右の「く」の字が二点透視図法での消失点へと向かう「線」となり立体感が生まれます。
さらに迫力をだす為に「目」を騙します。
同じ位置からカメラを下げ、地面に近づけます。しゃがんだり、安全な場所ならうつぶせになり「地面」が手前に納まるように撮影すると「迫力」の写真のできあがりです。実はこれも「錯覚」で、立った状態で撮影された写真は目線に近く驚きはありません。ところが地面すれすれの写真を目にする機会は少なく、その珍しさが「迫力」を強調してくれるというカラクリです。
百聞は一見にしかずといいますが、視覚は騙されやすいものです。目玉はアクセントの定番として、四角や角丸は印象操作の基本です。利用しない手はありません。そして、視覚以外の五感もコンテンツ作りに重宝します。これはまたいずれ……と結びつつ、私の視線が揺れているのは「商売道具」をばらしすぎたかもという動揺によります。わかりやすい「小技」は喜ばれるのです。
♪今回のポイント
目は誤解と錯覚を繰り返す。
目のだまし方を覚えてコンテンツをレベルアップ。
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