オリジナルバレエシューズブランド「ファルファーレ」など、4つの女性向けアパレルブランドを展開するクロシェ。2018年に自社ECサイトの運営をスタートするも、社内は「実店舗優先」、運営は順調とは言えない状況でした。しかし、2021年に行われた「第13回 ネットショップグランプリ」で準グランプリを受賞するまでに成長。SNS活用や組織のDX推進など、自社ECサイト運営のポイントをクロシェ 室長の村岡乃里江氏とフューチャーショップ 執行役員の安原貴之氏が語り合いました。
ブランドの世界観を確立したポイントは「詩」 クロシェ 業務推進室 室長 村岡乃里江氏(以下、村岡氏) :クロシェは4つのブランドを展開しており、そのうちの1つに百貨店催事で成功した「farfalle(ファルファーレ)」という靴のブランドがあります。
以前からモールなどに出店していましたが、ブランドの世界観、多色展開の魅力をお客さまに伝えることが難しく、自社ECサイトを運営することになりました。
バレエシューズブランド「farfalle(ファルファーレ)」のECサイト (画像は「ファルファーレ」サイトからキャプチャ) 「ファルファーレ」実店舗の大阪ルクア店で扱っている商品 フューチャーショップ 執行役員 セールス・マーケティング部 統括マネージャー 安原貴之氏(以下、安原氏) :ブランドの世界観を確立するために自社ECサイトを構築することは多いと思います。ブランドの世界観を伝えるためにこだわっているポイントはありますか?
村岡氏 :「ファルファーレ」はヨーロッパのインポートブランドを扱うセレクトショップが始まりでした。ヨーロッパで買い付けを行う際にバレエシューズがあったのですが、価格的に3万円台はするのに、日本人の足に合わないことが多かった。「じゃあ日本で作ったらどうか」というところから「ファルファーレ」のバレエシューズは始まりました。
ブランディングに注力していた沼部(クロシェホールディングス 代表取締役)から、「日本生まれのふわふわの履き心地のバレエシューズ」という商品に対して、「ブランドの世界観が伝わるような文章がほしい」と言われ、詩を書きました 。
安原氏 :以前から詩を書いていたのでしょうか?
村岡氏 :いえ、文章を書くのは好きでしたが詩は書いたことがありませんでした。多色展開の靴にしたいということで、常時20色以上のカラーバリエーションがあるのですが、その特徴から「カラーパーティー」をテーマにしました。
以前、自然豊かな社宅に住んでいたのですが、そこで女の子たちが葉っぱや木の実を集めておままごとをしていたところを見たんです。その記憶から、子どもが持つ独特の世界観、自分がお姫さまや別の人になっているような風景を思い描き、詩にしました。
靴箱を開けると招待状が入っていて、カラーパーティーに招待される、というストーリーを作るところからこのブランドが始まっていますし、成功のポイント だと思います。
「ファルファーレ」のテーマ「カラーパーティー」を詩で表現 (画像は「ファルファーレ」サイトからキャプチャ) 「ブランドの世界観を出す」ことをフューチャーショップも重視 安原氏 :「ブランドとしてお客さまとコミュニケーションを取りたい」と考えたとき、自社ECを選ぶことが多くなると思います。
村岡氏 :ブランドサイトはあったので「ECサイトを始めるならブランドサイトはどうする?」ということから社内で議論が始まり、「お客さまがたどり着くところは1つにしておきたい」となった。じゃあ「買えるサイトが良い」となったとき、SaaS型ECプラットフォーム「futureshop」はブランドの世界観を表現できて良かったです。
安原氏 :自社ECサイトをメインにする意味は「ブランドの世界観を表現して、お客さまときちんとコミュニケーションを取っていただくこと 」だと考えており、私たちもそこを大切にしています。
自社ECサイトなので「買ってもらう理由をどうやって作るか」が重要 です。そこを達成するためのデザインの自由度、お客さまとのコミュニケーションを取りやすくする、商品をちゃんと見て買いやすくしていただくための機能にこだわっています。
「電子カタログ」のような扱いだったECサイト、SNS強化で存在感を強める 安原氏 :2018年から自社ECサイトの運営を始めましたが、最初はかなり苦戦していたと伺っています。その後は順調に進んだのでしょうか?
村岡氏 :苦しいときはありましたが、何とか順調に。高い目標を立ててはいなかったのですが、目標をクリアする月が増えてきました。
クロシェ 業務推進室 室長 村岡乃里江氏 安原氏 :元々実店舗がメインで、ECサイトの方はあまり注力していなかった。
村岡氏 :当時、社内は「一応作っておくか」という雰囲気でしたね。ECサイトを「カタログだよね」と言われたこともありました 。
安原氏 :他の企業からも、実店舗が強いとどうしてもECサイト側が弱くなって、「やりたい施策がなかなかできない」という声がいまだに多い状況 ですね。今ではECサイトの存在が大きくなりましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?
村岡氏 :コロナの影響はとても大きかったです。
SNS強化&EC化率向上のため、「STAFF START」を開始 安原氏 :「futureshop」と連携している「STAFF START(スタッフスタート:バニッシュ・スタンダードが提供するオンライン接客サービス)」を導入したのは、コロナ以降ですよね?
村岡氏 :2020年10月ですね。2020年の年頭所感で社長から「今年はスタッフ全員が何かしらのSNSを使えるようになりましょう」「EC化率を上げましょう」 と発表があったんです。
安原氏 :「SNSを強化する」「EC化率を上げる」という方針があって、「STAFF START」を検討し始めたのでしょうか?
村岡氏 :コロナで店舗が閉店した際にインスタライブを始めたのですが、インスタライブはその場所では売れないですし、「この後、情報を投稿します」といった説明を何度もする必要がありました。さらに、そこにショップの機能を紐づけたり、お客さまからお電話をいただいたりという流れで動線の確保が難しかった んです。
また、売り場スタッフがオンライン接客に消極的なこともあったのですが、「取り組みに対して評価してもらえるなら」と納得してもらえることも大きかったです。「STAFF START」を通じて販売することで、スタッフの評価につなげられることが導入のポイント になりました。
スタッフによる投稿(画像は「ファルファーレ」サイトからキャプチャ) 安原氏 :評価は重要ですよね。導入後はいかがですか?
村岡氏 :スタッフの抵抗感を軽減するために、最初はお祭り感覚で実施しました。1位、2位、3位のように順位を決めつつ、直接コンバージョンしたスタッフの売り上げ順位に応じてインセンティブを付けました。
その際、「投稿数が多いほど売り上げにつながる」という仮説を立てました。投稿数の順位を5位まで決めて、そこを努力目標として定めました。あわせてページビュー数も確認しています。
投稿数の多い人はページビュー数も多く、売り上げも高い という結果が出て、相関関係が見えました。そういった結果が出たことで、スタッフが「STAFF START」を活用することを意識できた点は良かったです。
ただ、導入時から懸念していたのですが、なかなか順位が上がらないスタッフは疎外感を感じてしまうという課題もありました 。そういったスタッフには、「1日に何回も投稿するのは難しいよね、1投稿で良いと思うよ」と説明していました。
「スタッフが楽しく働ける」ということを大切にしている ので、そこを保ちつつ、各スタッフのURLが作れる「STAFF START」の仕組みを今後どうやって活用していこうか検討しています。
「組織の中で個人がどう活躍していくか」がカギに 安原氏 :以前、コンサルタントの竹内謙礼さんと行ったセミナー でも、「P2C(Person to Consumer)」、個人が売る時代になるだろう という話をしました。
ただ、個人が商品を売るといっても商品確保の問題などもあるので、「組織のなかでどう個人が活躍していくか 」という話で、「STAFF START」はその走りだと感じています。「ファルファーレ」ではカリスマ店員のような方はいますか?
村岡氏 :いるのですが、コロナで「店舗至上主義」ではなくなり、店舗とオンラインのパワーバランスが変わってきているなと感じます 。そういった変化もあるので、「SNS強化」という社内方針はその通りだな、と。
安原氏 :さまざまな企業の話を聞くと、仕組みを導入する前から、SNSなどを使ってユーザーとコミュニケーションをとっていたスタッフの方はいたそうです。ただ、企業からすると見えないところでやっているので、炎上のリスク、発言を確認できないなどの課題があり、あまり推奨できなかったという状況でした。
今まで通りスタッフ個人に活躍してもらいながら、企業としてリスクを把握する、コントロールするために仕組みを入れていく 、という流れになっていますね。
お話を聞いていると、クロシェさんは、「個人が活躍するのと同時に、それをどのように組織の力にしていくか 」ということがより上手になってくるんだろうなと思いました。
フューチャーショップ 執行役員 セールス・マーケティング部 統括マネージャー 安原貴之氏 「感覚的に買える」ということが重要 安原氏 :「futureshop」の機能に「カラー検索」というものがあります。多色展開している商品は、検索結果に検索したカラーの画像を表示する機能です。
他社ではあまり実装されていないサービスなのですが、検索結果に表示される画像と自分が検索していたカラーが違うと「自分が探していた商品ではない?」となりがち で。
「カラー検索」の赤をクリックすると、検索結果一覧に選択したカラーのサムネイルを表示する (画像は「ファルファーレ」サイトからキャプチャ) 村岡氏 :お客さまから何度かお問い合わせいただいたことがあります。
安原氏 :検索結果を見て「自分のほしい色が買えない」と離脱するユーザーは結構いると思っています。特にインターネットでの買い物に慣れていない人は、「検索したカラーが表示される」と考えている人が多いのではないでしょうか。
あと、この機能が実装されているECサイトで買い物し慣れている人も、何回カートに入れても自分が選んだ色にならないので、離脱してしまうケースもある。地味かもしれませんが、重要な機能だと思っています。
村岡氏 :感覚的に買えることは凄く大事 だと思いますね。
安原氏 :フューチャーショップのデータを見ていると、この1、2年で初めてECで買い物をする人が増えており、新規会員登録数も例年の1.2倍~1.5倍になっています 。
それから、50代以上で初めてECサイトで買い物をする人がとても増えています 。直感的、説明がなくても買えるようにしておかないと、どこでカゴ落ちしてしまうかわからないので、対策が必要になってきています。
カゴに商品を入れた際も、自分が選んだカラーの画像を表示する (画像は「ファルファーレ」サイトからキャプチャ) 検索結果から次の施策を見つけるきっかにつながる 村岡氏 :カラー検索結果の閲覧数は、全体の1%ほどで数字としては少ないですが、検索結果経由のコンバージョンは悪くないので、1つの施策として有効だということがわかりました。
4つあるブランドのうち「ファルファーレ」ともう1つのブランドにカラー検索機能を導入しているのですが、導入してわかったことは、ブランド側が狙っていることが、そのまま素直にお客さまに受け入れていただけている ということ。ブランド側が「推したい」と考えている商品、たとえば新商品やバナーに掲載している商品がコンテンツ経由で買われているので。
「ファルファーレ」は新商品がほとんど出ない、定番だけのブランドなのでコンテンツを充実させているのですが、カラー検索で最も多かったのが「黒」。そこから、黒い靴を探している方が多いならと、それに対応したコンテンツづくりにつなげています 。
サイズ検索の話ですが、探している人が多いのは33(21.5cm)や40(25.0cm)といった小さいまたは大きいサイズで、次が真ん中の37(23.5cm)という順番なんです。
ということは、「小さめサイズ、大きめサイズのお客さまは自分に合う商品探しに苦労している方が多いのではないか」という仮説が立てられます。そこから今後、小さめサイズ、大きめサイズを受注形式や、数を増やしていくという施策は、お客さまサービスの1つとして有効なのではないか ということが見えましたね。
細かな施策の積み重ねがコンバージョンアップにつながっている コンバージョン率の高い「再入荷お知らせメール」 村岡氏 :すごく地味かもしれませんが、「再入荷お知らせメール」のコンバージョンが良いですね。ただ、SKU単位で設定できない点を改善してほしいです笑。
同じ商品でもサイズやカラーによっては入荷していないことがあり、お客さまから「ないならお知らせしないでほしい」とお叱りを受けたことがあるので。
安原氏 :「再入荷お知らせメール」を活用して売り上げを上げられている店舗さんは多いですね。過剰在庫の問題もありますので、「再入荷お知らせメール」の登録件数から発注量をコントロールされるケースもあります 。
SKU単位の設定はよくご要望もいただきますが、システム的になかなか難しく、すぐの実装ができずご不便をおかけしてしまっています…。今後もより皆さんに使いやすい機能を提供していきたいと考えています。
チャットを活用するユーザーが増加 村岡氏 :Web接客では「チャネルトーク(有人対応、シナリオ型ボットの併用、メール連動の配信などが行えるチャットサービス)」を利用していますが、EC担当スタッフに固定のお客さまがついていることもありますね。
「クロシェ以外で購入した洋服だけど、これに合う洋服を選んで欲しい」といった相談を受けることもあります。そういったお客さまの購買価格は非常に高い傾向がある んですよね。
安原氏 :少し前まで「日本人はチャットに馴染みがないのであまり利用しない」と言われていましたが、今では活用されているんですね。
村岡氏 :LINE感覚で使っている お客さまは多い気がします。
「ファルファーレ」で表示されるチャットボット(画像は「ファルファーレ」サイトからキャプチャ) 村岡氏 :Web接客については、今の施策で100%満足しているわけではありませんが、「チャネルトーク」とチャットボットを導入して、スタッフが使いこなせるようになってきています。
ECサイト専門の責任者はいますが、私の場合はECサイトだけでなく、リアル店舗も含めてどのような施策を行っていくかが課題になるので、そういった視点からも残すツールや新たに導入するツールを検討しています 。
目先の売り上げではなく、ブランディングを見直すことが大切 安原氏 :特別意識していないかもしれませんが、クロシェさんはDXに向けた良い流れを構築できていると感じます。実店舗が強い点をオンラインにもすごく生かしていますし、多少痛みを伴う可能性があっても、向かうべき方向・方針をしっかり持って、それを仕組み化しているのがすごく良いなと。
「新たな価値をデジタルでどう作っていくか」がDXです。正解がないなかで、さまざまなことにトライして、少しずつ社員やスタッフの皆さんの意識が変わって、効果が生まれていくことなので、まさにそれを実践している。
「いかにECサイトで売り上げを上げていくか」より、「いかにデジタルを活用して店舗とEC、それ以外のことも含めて企業全体がどう変わっていくか」ということに重きを置いている と感じています。
村岡氏 :企業のスローガンやビジョンはきちんと設定していますね。それから、次の課題や創立25周年から30年に向かうなかでパーパスを設定し、もう一度ブランディングを見直して、お客さまに「どういうプロミスでブランドを運営していくか」を重視 しています。
そこがさまざまな施策を行う上でベースになっているので、基盤が整っていないと一時的に売り上げが大きく上がっても、続かなくなってしまいます。これからオンラインショップを始める方にも、是非心に留めておいていただきたいです。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」 で公開されている記事のフィードに含まれているものです。 オリジナル記事:アパレルECサイト「クロシェ」が語る自社ECサイトの売り上げアップ&DX成功の秘訣とは Copyright (C) IMPRESS CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.
これは私の感覚からも明確にNoです。量が増えたところでCV数は変わりませんし、変わるときはセールやクーポンなどのお得情報があるときだけです。バーゲンハンターしかいないリストになるわけですね。いつも書いているように資本力があればそれで問題ないですが、できる企業は少ないです。であれば、リストの質を高めてユーザーの温度感ごとにセグメントしたメールを送らないといけません。
考え方は先週の記事と同じで、コミュニケーションの手段がメールになっただけです。セグメントされたコミュニケーションはすぐに効果が出ますので、面倒だといわずにやってみてくださいね。