LINE公式アカウント自体は真新しいものではないので、すでに取り組まれている方も多いかもしれません。しかし、LINEの奥深さを理解して、そのポテンシャルを十二分に引き出せている事例はまだ少ないのではないでしょうか。
APIの進化によりLINE公式アカウントは認知から獲得、ファン化まで一気通貫で対応できる上に、データ連携や複数サービスのつなぎ込みによって、他媒体では実施できない上質な顧客体験を提供できます。加えて近年は実施コストもお手頃になってきました。
本稿では限られた時間・予算におけるデジタルマーケティングの次の一手としてぜひ検討していただきたいLINEについて、LINE公式アカウントのAPIツールの開発を行ってきた観点からお話します。
なぜLINEが「上質な顧客体験」の提供に適しているのか
理由① 圧倒的な普及率
1つ目の理由は当たり前ですが非常に重要です。数字が表す事実として日本国内における圧倒的な普及率・利用率を誇るということ。国内のMAUは9200万人以上で、日本の人口のおよそ約7割以上をカバーしており※1、利用頻度を尋ねる調査では、若年層で8割から9割、シニア層でも6割以上が「毎日利用している」と回答しています。
※1 LINEの自社調査/2022年6月末時点。LINEの国内月間アクティブユーザー 9200万人÷日本の総人口1億2530万9000人(2022年1月1日現在の確定値/総務省統計局)
LINEユーザーの属性(性年代別の利用頻度)
※マクロミル・インターネット調査(2022年7月実施/全国15歳~69歳のLINEユーザーを対象/n=2,060)
※「
2022年10-2023年3月期 媒体資料」(LINE for Business)より編集部でキャプチャ
理由② 希望のセグメントに高精度でアプローチできる
第2の理由は、LINEがメッセンジャーアプリから「ライフプラットフォーム」へと進化を続けていることです。たとえばモバイル送金・決済サービスの「LINE Pay」、オンライン診療サービス「LINEドクター」、AIテクノロジーブランドの「LINE CLOVA」、娯楽では「LINE MUSIC」や「LINEマンガ」など、数多くの関連サービスを打ち出し、生活のさまざまな場面に入り込んでいます。
しかも、それらはLINEの1つのIDでつながっています。つまり、ユーザーの興味関心を集約できているからこそ、クッキーレス時代でも潜在顧客に対する類似セグメントのアプローチ精度が高いのです。
オンライン/オフラインを問わず、必要とする人や情報・サービス、企業・ブランドとシームレスにつながり、すべてが完結する「スマートポータル」の実現を目指す
※「
2022年10-2023年3月期 媒体資料」(LINE for Business)より編集部でキャプチャ
理由③ 認知からファン化まで一気通貫でアプローチ可能
第3の理由は、認知から購入、さらにロイヤルカスタマー化するまでのデュアルファネルにおいて、LINEはすべてのステップに対して一元的にアプローチできるプラットフォームだということです。
もちろんすべてを無理矢理LINEで完結させない方が良いこともありますが、通常のデジタルマーケティングであれば、広告、LP、ECサイト、メルマガ、会員限定サイトなど複数の施策や媒体を組み合わせてようやく顧客体験全体をカバーできるので、LINEで一気通貫できることは戦略を立てる上で大きなアドバンテージになります。
ECサイトにおける顧客体験+対応施策とLINEの機能との相関図
※電通デジタル作成
2018年の「リデザイン」で変わったこと
2018年にLINEが発表した「リデザイン」と呼ばれる大改革で、LINE公式アカウントはよりユーザーフレンドリーな活用方法で、単なる情報配信媒体ではなくブランドの顧客体験をつなぐ存在として活用され始めています。
リデザインについて簡単におさらいしますと、かつて月額250万円と高額だった「企業向けLINE公式アカウント」の料金体系が0円からの従量課金制になり、「LINE@」や「LINEビジネスコネクトアカウント」(通称ビジコネ)と統合されました。
「LINE公式アカウント」「API型公式アカウント」「LINEビジネスコネクトアカウント」「LINEカスタマーコネクトアカウント」「LINE@」など5種類のアカウントが「LINE公式アカウント」に一本化された
※
LINE for Businessより編集部でキャプチャ
リデザインによって中小企業が「LINE Messaging API」などの高度な機能を無料で利用できると歓迎される反面、LINEの友だちが数百万人を超える大企業にとっては、従量課金になることで広告の費用対効果(ROAS)が悪化することになりました。つまり、今まで主流だったLINEの友だち全員への一括配信といったメルマガのような使い方が割高になり、必要な人に絞って情報を配信する「セグメント配信」の必要性が出てきました。
セグメント配信を効率よく実施するのに重要な役割を果たすのが、LINEの友だち1人ひとりのデータを制御できる「Messaging API機能」で、これを活用していくことでよりパーソナルな、ユーザーに寄り添った内容を配信できるようになります。またプッシュ型だけでなく、チャットボットとしてユーザーが問いかけた際に即座にメッセージを送るプル型配信も可能になり、ユーザーが望む適切なタイミングの情報提供が実現するのです。
API活用のツール導入金額も昨今は随分安くなり、現在はLINE公式アカウントのプランニングにAPIは欠かせないものになっています。
トヨタLINE公式アカウントの事例
ここからはトヨタ自動車のLINE公式アカウントを例に、APIを活用したユニークな機能を見ていきたいと思います。
トヨタのLINE公式アカウント
・カタログ機能
リッチメニューから写真で選ぶか、トークで直接車種名を入力すると、スペックや価格、特徴などが表示されます。これによって、ユーザーは自由なタイミングでより手軽に情報を取得できます。WebサイトよりもLINEの方がテンポ良く調べられるからなのか、実際に多くのユーザーが利用しています。
・試乗予約機能
希望車種を選択してGPSの位置情報を送ると、試乗可能な近くの店舗一覧が表示され、簡単に予約ができる機能です。「即時試乗予約対応」となっている店舗も表示されるなど、ユーザーのストレスを軽減する仕組みもあります。
・AIチャットボット機能
トークで質問を入力すると、FAQからAIが回答を返します。自然言語解析システムは「CLOVA Chatbot」を利用しています。
以上がトヨタのLINE公式アカウントでAPIを使った機能になります。もはやスマホアプリのような、またはそれ以上の機能をLINE公式アカウントで実現できることが伝わったでしょうか。そして言うまでもなく、アプリより簡単に使ってもらえるメリットがLINEにはあります。
◇◇◇
繰り返しになりますが、近年はLINE自体の機能の進化や、サードパーティ製品の廉価化によって、LINE関連のシステム開発はより手の届きやすいものになりました。ですので、スマホアプリの開発やCRMシステムの構築を考えているのであれば、まずLINE公式アカウントをご検討ください。その方が費用対効果できっと良い結果を得られると思います。
また、すでにLINE公式アカウントを導入済みの方も、「単純にメッセージを配信するだけでは物足りない」と感じていたら、ぜひAPIを利用してユーザーの利便性向上につながるおもてなし施策をご検討ください。
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オリジナル記事:LINEが上質な顧客体験の提供に適している3つの理由とトヨタLINE公式アカウントの事例 | デジタルコマース注目TOPIX presented by 電通デジタル
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