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※前編コニカミノルタ様の「動画コンテンツ」を活用したブランディング活動については、こちらから!
一貫したブランド戦略を可能にする「CSR・広報・ブランド推進部」の組織体制
――CSR・広報・ブランド推進部の役割や具体的な組織体制についてお聞かせください。
CSR・広報・ブランド推進部はその名の通り、CSRと広報とブランドが一体となった部署です。もともとは広報・ブランド推進部でしたが、社会的な企業活動もコミュニケーションにおける大事な経営戦略のひとつということで2012年にCSRが加わり、今の組織体制になりました。その中で、私はブランドマネジメントグループに所属しています。
ブランドマネジメントグループは、主にマスメディアを担当するチームとデジタルメディア担当のチームに分かれており、私は、そのデジタルチームの中にあるソーシャルメディア推進ユニットのリーダーと、企業ブランディングWebサイトの担当を兼任しています。
当社の運営するWebサイトは約76ヶ国・15万ページ、ソーシャルメディアはグループ全体で77アカウントになりますが、デジタルチームではこうしたWeb系メディアの管理統括や活用をミッションとしています。
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弊社インタビューアー朝火 英樹(左)、コニカミノルタ株式会社 中村 俊之様(右)
――ユニットリーダーとしてソーシャルメディアの活用についてお聞かせください。例えば、今回お伺いした動画コンテンツもFacebookなどで掲載されているのですか?
はい。Facebookでの動画掲載に関して言うと、以前はYouTubeやWebサイトにリンクしていましたが、今はFacebookに直接動画を埋め込んでそのまま視聴できるようにしています。Facebookの機能がリッチになってきたこともありますが、視聴のために外部サイトへ遷移させるのではなくユーザーが一番見やすい形で見ていただくことを重視しています。
一方で、最近ではFacebookなどのソーシャルメディアで動画を視聴し、興味を持った方々が「もっと詳しい情報が知りたい」と、Webサイトなどのオウンドメディアに来るという流れができつつあります。その流れを意図的に作るかどうかはコンテンツにもよりますが、導線は必ずつなぐようにしていますし、数値をカウントできるようにタグも入れています。
――最近ではスマートフォンやタブレット端末からの動画視聴が増えていますが、コニカミノルタさんでもオウンドメディアに対するモバイルの比率は変化していますか?
ケースバイケースなので一概に数値では出せませんが、Webサイトのトラフィックなどを見ても、間違いなくモバイルの比率は上がってきています。そのため、現在はレスポンシブな画面デザインなどモバイル対応をグループ全体で進めているところです。PCとモバイルでは利用シーンの違いもありますし、動画など情報量の多いコンテンツはモバイルに不向きな面もある。そこではモバイル用のおもてなしというのが必要になってくると考えています。
「ソーシャルメディアを使うこと」が目的になってはならない
――これまで企業ブランディングの活動についてお伺いしてきましたが、各事業・商品プロモーションなどについて、社内での役割についてはいかがですか?
事業部門にはそれぞれマーケティング担当者がいるので、展示会やイベントなどの企画は事業部門が担当しています。ですが、ロゴの使用や展示ブースの見せ方といった企業ブランドにかかわる部分はブランドマネジメントグループの領域になります。
さらに我々のグループでは、事業部門に対するコンサルティングも行っています。例えば、ある事業部門で新商品や新サービスのページを立ち上げる際は、ページの作り方やSEO対策、コンバージョンの設定などをアドバイスしています。
また、ソーシャルメディアについても相談をよく受けるので、立ち上げを考える担当者に向けて「スターターキット」というマニュアルを作っています。
――「スターターキット」とはどのようなものですか?
「スターターキット」ではソーシャルメディアの使い方というよりも、まずは「本当にソーシャルメディアを選択することが最も効率的なのか」を確認するところから始めています。というのも、これまでに私が受けた相談では既存のWebサイトの工夫や顧客情報の活用方法など、他の手法で対応する方が効果的と思えるケースもあるからです。目的に対してベストな方法を伝えることが我々の役目なので、ソーシャルメディアの立上げを止めた方が良いとアドバイスすることもありますね。
―――目的がなく「Facebookをやりたい」というのが理由になっている場合もありますからね。この「スターターキット」は中村さんが作られたのですか?
はい。「スターターキット」はソーシャルメディア向けのマニュアルですが、他にもWebサイトやSEO向けのマニュアルがあり、そこでは利用上の規定だけではなく、より効果的な制作・運用方法といった実務的な内容も載せています。
ただし、ソーシャルメディアの場合は新しいメディアであり、活用方法が明確ではない可能性があるので、利用方法の前段階として目的確認やメディアプランニングなどから盛り込んでいます。その点がほかのマニュアルと少し違うところですね。
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伝えたいテーマを絞ることで、ブランディングの「人格」を確立する
――中村さんは、いつ頃からソーシャルメディアを担当されているのですか?
ソーシャルメディアの担当者として今の業務に携わるようになったのは2011年からです。前任者が担当していた頃は、当時はリスク予防が最大の課題となっていたため、ガイドラインを整備して全社に展開するなど、まずは下地作りに注力していたそうです。その後、私が引き継いでからは公式アカウントの立ち上げやグローバルでのガバナンス構築などを行っています。
――早期に始めるよりも、まずは土台作りの方が先決だという。
そうですね。他社と比べると、ソーシャルメディアを活用し始めたタイミングとしては遅い方だと思います。その分、企業の代表アカウントを立ち上げるまでは半年以上かけて念入りに調査しましたし、失敗例も数多く見てきました。そういう時間軸に始めたこともあり、当社のソーシャルメディアは少し変わっていて「製品情報の発信や製品発表のニュースリリース等は一切行いません」と最初に宣言しています。
理由としては、企業ブランディングにおいてひとつ芯の通った、いわば人格に近いものを作るには、発信するストーリーに一貫性が必要だと考えたからです。想いをカタチにする企業というブランディング活動の目的がある中で、他事業にわたる製品情報などを見境なく発信してしまうと、その人格がぶれてしまう恐れがあります。ただし、「想いをカタチにする」という文脈に沿った製品や技術に関するストーリーは掲載しているので、製品を出すこと自体を否定しているわけではなく、ストライクゾーンを絞ったということですね。
――最後に、今後チャレンジしていきたいことがあればお聞かせください。
今でも広報チームとの連携はできていますが、さらに今後はオウンドメディアやソーシャルメディア、自社サイトも含めたメディア横断的な活動に取り組んでいきたいと考えています。同じコンテンツをすべてのメディアや施策で使いまわすことが必ずしも正解だとは思っていませんが、我々の目指す目的に対して広報チームや他部署とも協力しながら、一緒にできることを考えていきたいと思っています。
■インタビューを終えて(朝火)
今回、コニカミノルタ様に企業ブランドの情報発信を目的とした動画コンテンツを中心にお話を伺いました。特に「dream printer」や「コニカミノルタマン」の動画コンテンツの企画意図や推進過程、公開後の効果測定、情報発信におけるメディアの組み合わせ方など具体的に多くの話を伺うことができました。またネットPRやソーシャルメディアを組み合わせて、動画コンテンツをどのように広げていくか?など非常に興味深く伺いました。
お話を伺っていて「広報とマーケティング」の両業務の連携がしっかりできている印象を非常に強く感じました。効果的な情報発信をされている企業様に共通して感じるポイントです。「ニュースリリース」「ニュースレター」の役割を分担し、互いのチームが連携しながら効果的に情報発信されており、他の企業のお手本になります。中村様、ありがとうございました。
<今回お話いただいたのは…>
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中村 俊之(ナカムラ トシユキ)
コニカミノルタ株式会社 CSR・広報・ブランド推進部 ブランドマネジメントグループ
ソーシャルメディアユニットリーダー
2005年、コニカミノルタ入社。計測機器事業の営業、企画部門を経て、新規事業の立上げに従事。販売戦略担当として、グローバルでの販売体制を構築。 2011年よりブランディング部門にて、ソーシャルメディア戦略を担当。企業ブランディングを目的としたアカウントの立上げ/運営に加え、グループ全体への活用支援やガバナンス体制の構築などを実施。また、ブランディングWebサイトの運営、トラディショナルメディアやイベントとの連携企画など、メディア横断的なブランディング業務に取り組んでいる。
<インタビュアー紹介>
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朝火 英樹(アサヒ ヒデキ)
株式会社ニューズ・ツー・ユー マーケティングコミュニケーション部 マネージャー
NEC、ソフトバンクモバイルを経て、2014年9月ニューズ・ツー・ユーに参画。
事業主側でWebマーケティングを推進してきた経験を活かし、現在、ニューズ・ツー・ユーにてネットPR(News2uリリース)を軸としたオウンドメディアによるマーケティング コミュニケーションの仕組みづくりを推進中。
>>前編「動画コンテンツ」を活用したブランディング活動について