Webサイトやアプリを制作するのに、コードも開発リソースも、待機時間も必要ない。AIに思い描いたものを言葉で伝える「バイブコーディング※」で、誰もがカタチにできる時代が到来した。
Wix.com(以下、Wix)が、新製品「Wix Harmony」と「Base44(ベースフォーティーフォー)」日本語版についての記者会見を開催した。この2つのAIプロダクトは、技術的なハードルを根本から下げ、マーケティング施策や業務改善のスピードを飛躍的に高めるだろう。
本記事では、2つのプロダクトと今後の展望を紹介する。
Wix.com 共同創設者兼CEOアビシャイ・アブラハミ氏、
Base44創設者兼CEOマオール・シュロモ氏
Wixの新製品「Wix Harmony」
Wixはこれまで、サイトを作成・編集するプラットフォーム(エディタ)を、目的やスキルレベルに合わせて複数提供してきた。今回発表されたWix Harmonyは、最新のAI搭載エディタだ。
最大の強みは、“AIと対話するだけ”で実用レベルのWebサイトが数分で完成し、マーケティング施策までが自動化される点にある。生成AIとノーコード編集を軸とした、初心者からプロレベルまで幅広く使えるエディタだ。
WixにおけるAI活用の歴史は長い。2016年に、いくつかの質問に答えるだけでAIがサイトを自動生成する“完全自動型”の「Wix ADI」が登場した。2024年には、チャットで要望を伝えながらサイトを生成し、エディタで仕上げる“対話+編集型”の「Wix AIサイトビルダー」が登場。そして今回、制作の全工程にAIが深く関与する「Wix Harmony」へと進化した。
たとえば「幕張で開催されるマーケティングカンファレンスのランディングページを作りたい」と日本語で指示すると、WixのAIエージェント「Aria(アリア)」が文脈を理解し、わずか10分程度でサイトを自動生成する。「サイト構成」「レイアウト」「画像生成」に加え、「イベント管理アプリ」の追加まで行ってくれるのだ。
生成されたサイトはドラッグ&ドロップで編集できるほか、「デザイン変更」や「画像加工」もAIに日本語で指示するだけで即座に反映できる。生成されたサイトはレスポンシブ対応で、各デバイスの画面サイズに合わせて、自動的にデザインを最適化する。
さらにSEO施策や、Google・Facebook向けの広告キャンペーン構築までもAIが実行する。
日本の商習慣や企業ニーズに合わせたローカライズも徹底している。Wixはモリサワと提携し、無料ユーザー・有料ユーザーを問わず全ユーザーが、200以上の高品質な日本語フォントを利用できる。また日本独自のテンプレートも拡充している。
なお、Wix Harmonyは無料で利用可能。ドメイン接続や決済機能などのプレミアム機能を利用する場合は、有料プランへのアップグレードが必要となる。
誰でもアプリ構築ができる「Base44」、日本上陸
WixはWeb制作の領域を超え、高度なアプリ構築ニーズにも応えるべく、2025年に「Base44」を買収した。Base44はコードを書くことなく、テキストで指示をするバイブコーディングにより数分で作成できるAI搭載アプリ開発プラットフォームだ。2026年3月に、日本語版の提供を開始した。
たとえば「法人営業向けの営業支援アプリを作りたい」と入力すれば、即座にUIとデータベースが構築され、すぐに使い始められる。Base44で作成したアプリにはダッシュボードが標準装備されており、機能の追加や変更もAIに日本語で指示をするだけ。さらにGmail、Slack、HubSpotといった既存ツールとの連携や、社内データベースとの統合も可能である。
開発の原点は、CEOマオール氏の妻が営むスモールビジネスでの苦悩にあった。妻が使いやすいCRMを探していたが、既存のものは複雑すぎた。そこで「技術者ではない妻のような人でも、テキスト入力だけで自分の業務ツールを作れるようにしたい」という思いから開発がスタートした。
現在は、WixとBase44は独立した製品・事業として運営されているが、今後は連携を強めていく方針だ。
Wix HarmonyとBase44で、お客様の課題を解決できると自負している。世界最先端の技術を日本市場に展開することによって、日本の社会課題の解決に貢献していきたい(積田氏)
Wixは「AI×Web×アプリの統合プラットフォーム」へ
Wixといえば「ホームページ作成」という印象が強いが、今やその姿は「AI×Web×アプリの総合プラットフォーム」へと進化を遂げた。しかし「この2つのAIプロダクトによって仕事が奪われるのでは?」と懸念する人もいるだろう。Wix CEOのアビシャイ氏は次のように強調した。
汎用的なHTML構築などの作業から解放されることで、いかにサイトをパーソナライズし、マーケティングを自動化するかという「Webサイトを使って何ができるか」に焦点を当てられるようになる。そのため、制作者やデザイナーの存在価値はさらに高まる(アビシャイ氏)
制作会社や開発パートナーにとっても従来の開発工数を劇的に削減し、エンジニア不足に悩むマーケターにとっても、自らの手でビジネスを前進させるための強力なインフラとなるだろう。
世界的にバイブコーディングの普及が急速に進んでいる。日本においても本格化し、新スタンダードになるのか注目しておきたい。
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