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FinT代表取締役・大槻祐依が語る「成果を出すためのInstagram最新活用法とショッピング機能への期待」

運用代行支援などを行うFinT代表取締役の大槻氏に、Instagramの最新活用法について話をうかがった。

Instagramではリールやまとめ機能、料理を注文する機能など、2020年に数多くのアップデートが行われました。中でも15~30秒の短尺動画を作成・共有できるリールは瞬く間にコンテンツが増加し、独自のタブも追加されています。

Instagramの運用担当者の中には、頻繁な機能のアップデートについていくのに苦労している方もいるでしょう。企業は新しい機能をどのように活用すれば良いのでしょうか。

メディア「Sucle(シュクレ)」のアカウント運用を通じてInstagramのノウハウを蓄積し、運用代行支援も行う株式会社FinT代表取締役の大槻祐依さんに、成果を出すためのInstagramの最新活用法について話を伺いました。

(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤綾美、撮影:浅野誠司)

自社メディアのアカウント運用でノウハウを蓄積

――FinTはInstagramを活用したマーケティングに詳しいことで知られていますが、大槻さんが手掛ける事業内容をあらためて教えてください。

FinTは私が大学在学中の2017年に創業しました。創業後に「Sucle(シュクレ)」という10~20代の女性向けライフスタイルメディアを立ち上げ、Instagramアカウントを運用したところ、1年で10万人以上のフォロワーを獲得しました。その際に得たノウハウを基に、2019年より開始したのがInstagramマーケティング事業です。戦略設計からコンテンツの制作、投稿作業まで、クライアント企業のInstagramアカウントを運用し、支援しています。これまで支援してきた企業は累計で60社以上に上ります。

――「Sucle」のフォロワーが1年で10万人も伸びたときは、独自で勉強して運用されていたのですか。

はい。コツコツと投稿し、試行錯誤を繰り返した結果です。リーチ数や保存数など指標を1つ決めて投稿のインサイトを確認し、数値が高い投稿の特徴を細かく分析してノウハウを蓄積してきました。

リール登場の影響と活用法

――コロナ禍において、企業によるInstagramの活用の仕方に変化はありましたか。

顧客とコミュニケーションをとるツールとしてInstagramを使用する企業やブランドが増えたと感じています。新型コロナウイルス感染症の影響で店舗をオープンできないために、店頭からインスタライブを配信しているケースもよく見られました。メイクアップブランドの「to/one(トーン)」さんが、インスタライブの配信を強化して売り上げを伸ばしたというニュースもありました。

企業のインスタライブが増えている背景には、ユーザーの自宅で過ごす時間が増えたことももちろんあると思います。おそらくGoogleの検索機能の代替となることを意図して、Instagramは機能の改良やUIの設計を行ってきたこともあり、特に若い世代を中心として情報収集ツールになっています。ユーザーが「商品のことを知りたい」と思ったときに、企業のInstagramアカウントで情報を得ようとするようになってきていて、よりわかりやすい動画コンテンツが伸びているのではないでしょうか。

――昨年はInstagramの新しい機能が次々と登場したのも印象的でした。アカウントを運用していく中で、特に影響が大きいと感じた変化は何ですか。

15~30秒の短尺動画を作成・共有できる「リール」は、投稿数が伸びていると感じています。すでにTikTokで短尺動画に慣れていた人が多かったからだと思いますが、動画がたくさん投稿されて、お手本となるコンテンツが出てくるまでのスピードも速かった印象です。Instagram上にあるリールの投稿数はまだ十分とは言えませんが、今は独自のタブもできて、リールがバズるとフォロワーが増える状態にあるので、良い機能ができたと捉えています。

――「Sucle」や支援している企業のアカウントでもリールを活用していますか。

はい。「Sucle」はもちろん、美容系のブランドや出版社などのアカウントでリールの投稿をお手伝いしています。

――動画の撮影もされているのでしょうか。

リールの企画から撮影、動画の編集まで行っています。撮影は大体1日かかり、3本ほどまとめて撮ることが多いです。

例えばコスメブランドの「SABON(サボン)」さんの場合は、ボディスクラブの使い心地がわかるような動画を撮影して投稿したところ、再生回数が伸びて購入にもつながっています。

「Sucle」では、「トナカイカップケーキの作り方」を撮影したクリスマスの動画が152万再生まで伸びました。最近では、バレンタインのおすすめメニューの動画も68.9万再生まで伸びています(いずれも2021年2月時点)。

▲「Sucle」で投稿したリールの中でも特に再生回数が伸びたコンテンツ(実際のコンテンツは下記URLをご覧ください)。「個人的には、再生回数が10万~20万回以上いくと『伸びたな』と感じます。それより上は50万回以上と100万回以上で壁がありますね」(大槻さん)
出典:
https://www.instagram.com/p/CI74PoOnNiu/?utm_source=ig_web_copy_link
https://www.instagram.com/p/CKtO9QUB2K5/?utm_source=ig_web_copy_link

――昨年8月にリールが登場してから約半年が経過しました。当初と現在で、再生数の伸び方に変化はありますか。

Instagramが学習して徐々にアルゴリズムができていると感じます。以前は伸びるときとそうでないときがランダムで、再生回数が伸びた理由がわからないこともありました。今はリールに保存機能やショッピングとの連携機能が搭載されたこともあり、ユーザーが保存などをタップしてシグナルがたまったり、滞在時間が長かったりすると、アルゴリズムでも上に上がりやすくなっていると思います。

――リールで再生回数が伸びるコンテンツには、どのような特徴があるのでしょうか。

いろいろと検証してみて、テンポが良く、「保存して後から見返したい」「もう1回見たい」と思える動画は再生回数が伸びる傾向にあると感じます。レシピやメイクの仕方など、役に立つコンテンツは保存されやすいです。

――反対に、「これは伸びなかった」という動画はありますか。

タップして止めるルーレットのようなコンテンツは、初めのころは伸びましたが、今はあまり伸びない印象があります。タップして止めたり、スクショを撮ってもらったりすることで滞在時間は長くなるのですが、静止画をまとめたものよりも動画のほうが見られる傾向にあるようです。

▲2021年の年始に投稿された「おみくじリール」(実際のコンテンツは下記URLをご覧ください)。
出典:https://www.instagram.com/p/CJf5NNBHX2N/?utm_source=ig_web_copy_link

ショップタブに感じる未来と課題感

――リール以外に、注目しておいたほうがいい機能があれば、教えてください。

よく使われた機能として挙げるならリールなのですが、個人的に今年最も注目すべきはショップタブだと思います。昨年追加されたショップタブに、私は未来が詰まっていると見ています。

しかし残念なことに、ショップタブはまだあまり使われているとは言えません。このタブからの流入がほとんどないため、ショップタブから購入したい商品を探す人はまだ少ないのだと思います。

――ユーザーはどちらかというと、フィードを通じて気になる商品を見ているのですね。

おそらくそうでしょう。ショップタブにはコンテンツがまだ十分にそろっていないので、訪れるユーザーが少ないのではないかと推測しています。

――ショッピング機能を上手に活用できている企業は少ないのでしょうか。

そう思います。Instagramで商品を探しているユーザーは、おそらく情報収集を目的にフィードを見ています。ところが、企業の投稿が必要な情報を得られるようになっておらず、例えば商品の写真を並べただけのように、情報の受け皿としてInstagramを運用している場合があります。

リールやインスタライブの動画にも「商品を見る」というボタンが付いて、動画で視聴した商品をそのまま購入できるようになっていますが、しっかりと活用できている企業はまだ少ないと感じています。

また、商品を紹介するインスタライブも、見ているユーザーのことがあまり考えられておらず、もったいないと感じる機会が多々あります。インスタライブで商品を紹介する場合は、途中から視聴し始めた人でもわかりやすいように工夫が必要です。

▲インスタライブでの工夫例(取材中に大槻さんより伺った話をもとに、編集部で作成)。画面の一部に商品の説明や使い方、トークテーマなどを固定表示しておくと、途中から視聴した人でも参加しやすいと言う。

――ショッピング機能を上手に活用している企業の例はありますか。

皆さんよくご存じかとは思いますが、ファッションブランドの「COHINA(コヒナ)」さんはやはり上手です。投稿の編集の仕方や、タグの付け方、インスタライブでの商品紹介の仕方などが上手だと思います。

Instagramはあえて検索機能を制限していた?

――新しい機能と言えば、英語圏6カ国では昨年11月からキーワード検索機能が試験的に追加されています。日本でも同様にキーワード検索ができるようになった場合、どのような影響があるとお考えでしょうか。

Instagram内で検索しやすくなり、検索量が増えると思います。企業は、検索されたときに上位表示されるように対策が必要になるのではないでしょうか。

これまでのInstagramはあえてキーワード検索ができないようになっていたと個人的には考えています。ユーザーが受け身で情報を収集し、アルゴリズムによって自分に適したコンテンツが得られるようになっていたのではないでしょうか。ところが、Instagram内のコンテンツが増えて情報量が多くなり、検索に対するユーザーのニーズが高まってきたことを受けて、キーワード検索機能の追加が検討されていると推測しています。

――発見タブにいかに載るかが重視されていたのが、狙ったキーワードで検索されたときにどうやって上位に表示されるか考える必要が出てくるのですね。

機能がたくさん増えて変わっていくところがInstagramの良いところだと思うので、私はすごく楽しみです。

企業はショッピング機能の積極活用を

――機能が増えて絶えず変わっていくInstagramをマーケティングで活用する場合、どのような点を意識して運用すると良いでしょうか。

変化の流れについていくのももちろん大切ですが、ユーザーのことを考えたコンテンツの作成・投稿が重要です。Instagramの今の機能やアルゴリズムは、「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」というミッションを反映しているので、ユーザーが求める情報は何かを意識して運用するのが良いと思います。

また、指標は保存数を重視することをおすすめしています。今のInstagramはフィードだけでなく、リールやIGTV、まとめ機能など、あらゆるところに保存機能が付いており、保存からの購買も発生するようになっています。気になった投稿を保存し(Save)、商品情報を検索(Search)、検索した商品を購入し(Shopping)、使用した後で拡散する(Share)。この流れを私たちは「4Sモデル」と呼んでおり、商品やサービスに関する投稿の保存数を増加させることが、「4Sモデル」成功の鍵であると考えています。そのため、あとから読み返したくなるような、保存してもらえるコンテンツを作ることも大切です。

▲FinTの「4Sモデル」のイメージ。「保存数」に着目したフレームワークとなっている(Shareに関しては、購入前や検討中にも発生することもある)。画像提供:株式会社FinT

――最後に、大槻さんが「未来が詰まっている」と仰っていたショッピング機能について聞かせてください。今はまだ企業による活用が十分に進んでいないとのことですが、「もっとこう活用してほしい」と思っていることはありますか。

まずはショッピング機能を活用して、商品を増やしましょう。オンラインストアのようにラインナップをそろえたほうが良いと思います。

ショップタブを開くと、上のほうに「ショップを見る」「エディターのおすすめ」「コレクションから購入」「まとめをチェック」「動画でショッピング」というボタンが並んでいます。なぜ商品をアップしたほうが良いかは、これらの導線に理由があります。

▲ショップタブを開くと、上部にさまざまなボタンが並ぶ。図解:Marketing Native編集部(画像はInstagramより)

「エディターのおすすめ」をタップすると、現在はInstagram(エディター)がおすすめするショップ一覧が出てきます。いずれは、Instagram(エディター)の代わりに、インフルエンサーなどが「○○のおすすめ」という形でおすすめできるようになるのではと考えています。

今のInstagramでは、個人アカウントが自分の投稿に企業の商品をタグ付けすることができません。しかし、おすすめ機能で個人がお気に入りのショップをリスト化できるようになったら、インフルエンサーに自社商品をおすすめしてもらえる可能性があります。ですから、企業はもっと商品を増やし、発信しておいたほうが良いでしょう。

また、商品をテーマごとにまとめて表示する「コレクション」も使いこなしたい機能です。きちんとまとめておくことによって、ユーザーが「コレクションから購入」をタップした際に表示される可能性がありますし、キーワード検索機能が搭載されたときに検索に引っかかるかもしれません。

商品や投稿をまとめられる「まとめ機能」では、文字を使用できるのが利点なので、文字を使って細かく商品を訴求することが大切です。「まとめ機能」で作った商品まとめも、ショップタブから「まとめをチェック」でユーザーの目に触れる可能性があります。「動画でショッピング」のボタンもあるので、動画での商品紹介はライブ配信も含めて取り組むことをおすすめします。

――お話を聞いていると、新しい機能はとにかく使ってみたほうが良さそうですね。

はい、少しでも試してやってみることが大切です。ショップを運営していて「Instagramがなかなか伸びない」と言う私の友人にも「リールをまずは10個だけ作ってみて」「商品も10個だけアップしてみようよ」とよくアドバイスしています。1つでも取り組むことによって差が出たり、突然注目されて人気が出たりすることがあるので、まずは挑戦してみてほしいです。

――わかりました。本日はありがとうございました。

【Profile】
大槻 祐依(おおつき・ゆい)
株式会社FinT代表取締役。
1995年生まれ。East Ventures、株式会社Candleでインターンをした後、早稲田大学在学中の2017年3月に株式会社FinTを設立。同年12月より女性向けメディア「Sucle(シュクレ)」を立ち上げる。「Sucle」の運用を通じて培ったノウハウを基に、2019年5月よりInstagramマーケティングの支援を開始。2020年10月よりインフルエンサー事業を提供開始。
Twitter:@yui_ohtk
note:https://note.com/ohtsuki

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