承諾なく撮られた写真を公表されてしまった! これって違法なの?
承諾なく撮られた写真を公表されてしまった! これって違法なの?
今回、僕たちの承諾なく撮影された、八瀬さんの顔のアップの写真や、僕と八瀬さんが写った写真が、Web上の記事に載せられています。
これは違法になるんでしょうか? 今、配信元へ削除の要請をしていますが、違法になるなら、重ねて申し入れたいです。
そうね、こちらとしては「写真が、八瀬さんや山ノ内くんの肖像権を侵害して違法だ」と主張すべきだわ。でも、配信元は、「違法じゃない」と反論するかもしれないわね~。
なんと! そうなんですね。
今回、著作権は問題になる?
さっき有栖川さんが「著作権じゃなくて肖像権の侵害」って言ってましたよね。モノじゃなくて人が写真に写り込む場合には、著作権は問題にならないのですか?
創作性のあるダンスやパントマイムなど、体を使って表現してる場合なんかは別として、人間そのものは著作物じゃないわ。だから、人間が写真に写り込んでいてもそのことによる著作権侵害はあまり問題にならないわね。ま、昭和45年まで使われてた旧著作権法では、依頼を受けて撮影された肖像写真は、その依頼者が著作権を持つとされていたけど、昔の話だものね。だから、今回問題になるのは肖像権よ。
なるほど、わかりました。では、肖像権について、詳しく教えてください!
肖像権とは?
そもそも、肖像権って何なのですか? 法律で定められた権利ですか?
肖像権とは、おおまかにいうと「自分の肖像をみだりに利用されない権利」よ。言いかえると、自分の肖像、つまり、顔立ちや姿かたちを、正当な理由なく、写真や動画に撮られたり、イラストや彫刻にされたり、それらを公表されたりしない権利、ってところね。でも、法律で定められた権利じゃないわ。
へえ、法律で決まっていないんですか。じゃあなぜそのような権利が認められるんですか?
人は生まれながらに、「基本的人権」の一種として、「人格権(個人の人格的価値にかかわり、それを侵害されない権利)」という権利を持っていると理解されているわ。で、その人格権に由来して、氏名とか肖像(顔立ちや姿態)をみだりに利用されない権利があるとか言われているの。肖像は、個人の人格を象徴するものだからね。
人格権ですか。
ちなみに、「自分の氏名や肖像をみだりに利用されない権利」には、財産的な側面もあるわ。氏名・肖像が持っている商業的価値・顧客吸引力を排他的に利用する権利「パブリシティ権」ってやつね。タレントの写真などを、勝手に商業的に使った、なんてケースが典型的ね。今回は関係ないから説明は省くけど。
立て看板で肖像権についてのルールが周知されていた場合、承諾があったことになるの?
実は、今回、肖像の利用について、僕たちの承諾があった、と言われるかもしれないと思っています。
あら、どういうこと?
会場に、「肖像権について」「本日、メディア配信を目的としてイベント内容の写真撮影を行います。お客様が写り込む場合がありますがご了承ください。」っていう立て看板があったんですよ。そういうお知らせを僕が見たことで、ルールを了解していた、承諾していた、ってことになりませんか?
そんなのあったんだ。私は気が付きませんでした……。
立て看板があっただけで、イベントのWebサイトやパンフレットには書いてませんでしたからね。
法的拘束力がある合意がどうやって成立するかね。山ノ内くんは立て看板を見ているけど、承諾するアクションを取ったわけではないから、肖像権の利用を承諾したことにはならないわ。
へえ、そうなんだ。
Webサイト、パンフレット、チケットなどあらゆるところにデカデカと明記するとか、入場時にひとりひとりに声を掛けるとか、ものすごい手を尽くして周知されていたなら「黙示の承諾があった」と扱えるかもしれないけど、そういう扱いになるのはレアケースと理解しておいて。
そうなんですね。じゃあ、どうして、あのような看板が立っていたんでしょうか?
まずは、イベント参加者へ配慮したんじゃない? クレーム予防効果も期待できるし。法的にも、肖像権侵害があるとして責任追及された際に、責任を減少させる事情として機能する…かもしれない…しね。
なるほど。気配りって大事ですもんね!!
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