この記事は、2025年7月3日にiPullRank 社にて公開されたGarrett Sussman氏 の「Referral Patterns in Google AI Mode: Understanding the Early Data」 を翻訳したものです。前回投稿した「レリバンスエンジニアリング入門:検索の未来 」の翻訳後、アメリカにて公開されているAI Modeの初期データをまとめた記事として、iPullRank社よりご共有いただきました。
AI Modeが、従来のGoogle検索結果のクリック率と、どのくらいギャップがあるのか、どのようにサイトが出力されるかなど、気になる方はぜひ一読ください。
※SEOJapan補足:「AI Mode」 GoogleのAI Mode は、現在アメリカ・インドで展開されている次世代の検索体験です。従来の検索結果とは異なり、ユーザーの質問を理解して対話形式で回答を生成します。(2025年7月18日時点で日本では未展開)
AI Modeの分析に至った背景 私はあの日、ミッションインポッシブルのワンシーンのように、天井から飛び降り、スマートにGoogleのデータセンターに侵入しました。そして、昨今SEO界隈を騒がせているGoogle検索の「AI Mode」の秘密を解き明かし、ここで発表しようと思います。
・・・私がトム・クルーズだったなら、本当にそうしたでしょう。 しかし私はスパイではなく、iPullRank社のアナリストです。今回、我々はSimilarweb 社と共にAI Modeについて分析を行いました。
初回レポートにおいて、Similarweb社は、10万人超のAI Modeに関する日次データ(以下の指標)をElias Dabbas氏 および当社チームに提供してくれました。(データ期間:AI Modeの一般公開日が行われた5月20日から6月19日まで)
セッションあたりの検索回数 リファラルの割合 リファラル経由の平均滞在時間 リファラル経由の平均ページビュー ユーザーあたりのセッション数 検索クエリの長さの平均 ユーザー数 と アクティブ日数 リファラルシェア ※SEOJapan補足:
リファラルの割合(リファラル経由の流入が全体に占める割合)検索クエリの長さの平均(検索時に入力されたキーワードの平均単語数、または文字数)リファラルシェア(特定のリファラル経由の流入が全体リファラル流入に占める割合)現時点で、これらのデータを取得できるデータプロバイダー(データ提供会社)はごくわずかです。AI Mode(および他の大規模言語モデルベースのデータセット)は、分析方法において特有の性質があります。AI Modeは、出力に一定のばらつきが生じる点に加え、特定のクエリや検索意図について十分な情報が得られないため、全体傾向を捉えるような高度な分析が求められます。
人々がAI Modeを使い始めると、あらゆる検索ジャーニーは、より解析が困難で複雑になるでしょう。たとえば、私が娘のために新しい自転車を検索するときと、あなたが自宅の住宅ローンについて検索する時とでは大きく異なります。Google が検索結果のパーソナライズ化を進めると仮定するなら、特定のトピックセットを再現することは、あまりに細かく、徒労に終わるかもしれません。
つまり、私たちはある程度根拠のある仮説を立てるための傾向を探っています。また、AI Modeの結果は、従来のSEOの結果と一部重なる部分が出てくる可能性があることも、あらかじめご理解ください。
AIによって確率的な結果が導き出されるまでにはさまざまなプロセスがありますが、結局のところ、それはGoogleが検索内容に基づいて最適な答えを導き出す仕組みに加わった、ひとつの複雑な要素にすぎません。
AI Modeデータのコンテクスト化 誰がAI Modeを使用しているのか?
具体的なユーザー層(デモグラフィック)に関する情報はないものの、いくつか妥当な仮説を立てることは可能です。AI Modeは、検索のデフォルトではありません(そして「デフォルト」であるかどうかは重要 です)。
AI Overviews(AIO)がリリースされた際は、Googleの検索結果のすぐ上に配置されました。AIOは、強調スニペットよりも大きく表示され、クリックを奪い、トラフィックに影響を及ぼしました。フランシーヌ・モナハン氏 は過去数年間で50件以上のAIOに関する調査 をレビューし、AIOが検索に与えた影響を明らかにしています。AIOをオフにする方法は存在しません。今では、通常の検索の50%以上に、AIOが表示されています。
それでもなお、Googleの自然検索におけるマーケティング力は損なわれおらず、Googleの衰退は大げさに語られ過ぎています。
一方で、AI Modeの使用は、検索者にとってハードルの高い状態です。AI Modeに到達するには、以下のいずれかを行う必要があります。
デスクトップまたはアプリ版Googleのホームページにあるアイコンをクリック 通常の検索後に表示されるAI Modeのタブをクリック AIOの下部にある「AI Modeでさらに深く調べる」というリンクをクリック これらの手順を踏んでAI Mode検索を行う人は、いわゆる通常の検索ユーザーではないでしょう。実際、Similarweb社によれば、AI Modeの初期利用率は全検索の2%未満でした。
AI Modeをクリックしているアーリーアダプターとは誰か? その行動は、一般的なGoogleユーザーとどう異なる可能性があるか? AI Modeを使用するユーザーは、「おそらくテクノロジーに関心が高く、新機能を試すのが好きな実験好き」あるいは「業界のトレンドを常に把握する必要のあるマーケター」「SEOのプロフェッショナルで、好奇心が強い人物」であると考えられます。
他にも様々な心理的タイプを持つユーザーが存在するかもしれませんが、今回のデータ分析においては、上記で挙げたタイプのユーザーを前提にインサイトを読み解くことが重要です。
関連ページ:AI Modeの仕組みと、SEOが検索の未来にどう備えるべきか
AI Modeの利用状況分析・洞察 このデータセットの中から、最も興味深いデータのいくつかを見ていきましょう。 現在、SEOおよびマーケティングチームにとって最大の関心事はトラフィックに関することです。
AI Modeでは、従来のGoogle検索と比べてトラフィックが減少するのか? 従来のGoogle検索と比べて、AIモードを使ったユーザーは1回の検索でより多くのサイトを訪れるようになるのか? AI Mode vs. Google検索:リファラル経由の流入のギャップ 注視すると、AI Modeのセッションからの平均クリック数が大幅に減少しているという明確な傾向がわかります。
Google検索のセッションの24%がクリックに至っている AI Modeのセッションの4.5%がクリックに至っている なぜ、これほど大きな差が生じるのでしょうか?
①AI Modeの回答で満たされるケース AI Modeは「Query Fan-Out(クエリ拡張)※」 技術を用いて、将来的に想定される質問を先回りして回答することで、より包括的かつ満足度の高い回答を提供している可能性がある。 問いに対する十分な回答が得られれば、サイトでさらに情報を探す必要はなくなる。AI Overviewsの導入によってクリック数が減少していることも、この点を裏付けている。 ※SEO Japan補足:「Query Fan-Out」 AI OverviewsやAI Modeでの検索結果の生成に用いられる技術のこと。 ひとつの質問(クエリ)を、関連する質問(サブクエリ)に分解し、調べ、それらの答えを組み合わせてより網羅的な回答を作る仕組み
検討すべきテーマ AI Modeで十分な回答がなれるクエリは、しばしば情報収集型や事実確認に関する検索であり、直接的な回答で充足に至るケースが多いのではないか?
②ユーザーの意図と好奇心 単にAI Modeを試しているユーザーは、質問への明確な回答を求めているというよりも、インターフェースを探索している可能性がある。つまり、検索よりもAI Modeそのものを試すことが目的となっている。 ChatGPTやGeminiのような生成AIを使ったことがないユーザーが、AI Modeで「何ができるか」を試しているのかもしれない。 検討すべきテーマ ユーザーが積極的に情報探索しているのではなく、AI Modeを試していることを示す証拠(非常に短いクエリや試験的なクエリなど)はありますか?
③デザインとUIの障壁 AI Modeでは、生成された中にアンカーリンク(外部リンク)を埋め込む形式がテストされている。また、従来のGoogleの検索結果と比べて、リンクは目立たないサイドコンテナに配置されている。 インターフェース自体が外部リンクを目立たなくし、クリックしにくくしている。 検討すべきテーマ 従来のGoogleの検索結果とAI Modeでは、外部リンクの可視性や目立ち方にどのような違いがあるのか?
④アーリーアダプターの行動 先述のとおり、AI Modeを使うユーザーは、技術に精通し、自力で回答を得ることに慣れているアーリーアダプターである可能性が高い。 彼らは、検索結果に表示されているページをクリックするのではなく、ChatGPTのようなツールを複数使い分けている可能性がある。 検討すべきテーマ AI Modeのアーリーアダプターは、完結型の回答を好む傾向があるのか?それとも、複数のプラットフォーム(ChatGPTのようなツールの併用)を使って調べる習慣があるのか?
⑤信頼と権威に対する認識 Googleから生成されたAI回答に、ユーザーが最初から信頼を置くことはあり得るのか?やや疑わしいが、もし信頼されるなら、ユーザーが情報を確認して裏付けを求める必要性は減るでしょう。 検討すべきテーマ 「情報の信頼性」や「権威性の認知」によって、クリック率の違いを説明できるのか?
⑥AI Modeでの初期検索では、購入や取引を意図した検索が少ない 現在AI Modeを試しているユーザーは、商用または取引的なクエリ(例:購入、比較)をあまり使っていない可能性がある。こうしたクエリでは、本来外部サイトへのクリックが多い。 従来の検索は取引的意図に強く使用されるため、自然にクリック率が高くなる。同様に、ナビゲーショナル(特定のWebサイトに行くことを目的とする)検索でもクリック率は高くなる。ブランドサイトに行くだけなら、わざわざAI Modeを使う理由がないのでは? 検討すべきテーマ AI Modeにおけるクエリは、従来のGoogle検索と比べて「情報収集目的」と「商用目的」で大きく傾向が異なるのか?
以上のように、AI Modeでクリック数が少なくなる理由はいくつか考えられます。より深い洞察を得るために、以下の2つの質問が繰り返し出てきます。
クエリの内容がわかれば、クエリの種類によって行動に違いが出るだろうか? AI ModeがGoogle検索のデフォルトになり、すべての人が慣れた状態になった場合、行動は大きく変化するだろうか? 上記グラフはインタラクティブ形式(※)になっており、各データポイントにカーソルを合わせることで日別の外部リンクのクリック数差が表示されます。また、Google検索またはAI Modeのデータを非表示にすることで、AI Modeのリファラルの激しい変動を拡大して確認することもできます。
※掲載しているグラフは元記事のキャプチャです。詳細は元記事 をご確認ください。
Google検索は安定している一方、AI Modeのクリック率は5.4%から3.8%までのばらつきが見られます。このクリック率の低下がトレンドを示していると結論づけるにはまだ早いものの、注視する必要はあります。そして、今後6〜12か月以内にAI Modeがデフォルトになれば、クリック率やその推移は大きく変わるでしょう。
では、セッションあたりのリファラーページビュー数はどうなのでしょうか?
セッションあたりの平均リファラーページビュー数を調べてみると、興味深い2つの傾向が見られます。
Google検索では1日あたり外部クリックが6回 AI Modeでは1日あたり外部クリックが5.9回 2か月間の平均では、実際のクリック数に大きな差はありません。
しかしグラフを見ると、Google検索の方は比較的安定していることがわかります。週末にクリックが増え、平日を通して一貫したリファラルクリックが見られるという、よくあるパターンが確認できます。
一方、AI Modeは不安定です。明確なパターンがなく、多いときには7回、少ないときには4回と、クリック数にばらつきが見られます。やはり、初期段階のデータはノイズが多い状態です。
※掲載しているグラフは元記事のキャプチャです。詳細は元記事 をご確認ください。
AI Modeのデータのトレンドの今後はどうなるか? 我々の優れたパートナーであるSimilarweb 社が提供し、Elias Dabbas氏 が分析した初期のAI Modeデータから、より多くの洞察を近々共有する予定です。
私たちは現在もデータを整理している最中ですが、発表予定の詳細レポートでは衝撃的な洞察が得られるはずです。それが確かなものであれば、GoogleがAI Modeからユーザーをどう誘導しているかという見方を根本から変えることになるでしょう。
今回、AI Modeについてどんな第一印象を持ったでしょうか?実際に使ってみたご自身の体験から何か感じることはありましたか?
今回提示したデータは、今後のGEO(生成エンジン最適化)やレリバンス・エンジニアリング において、どのようにAI Modeを位置づけるかという点に影響を与えるかもしれません。
※SEO Japan補足:GEO:生成エンジン最適化(GEO:Generative Engine Optimization)とは、ChatGPTやPerplexityなど、生成AIを活用した検索にて、自社コンテンツが回答として選ばれるようにする情報発信手法
SEOJapan編集部より:
アーリーアダプターが利用していることが前提ですが、AIOと同様に、AI Modeでも従来のGoogle検索よりクリック率が低下傾向はあるようです。情報系の検索に関しては、クリック率の低下は一定覚悟した方が良さそうです。
一方で、AI Modeでのリンク形式やAI Modeがデフォルトになった場合では、リファラル経由の流入が増えたり、指名検索の流入が上記よりも増え、違った示唆となる可能性が残る内容でした。今後もAI Mode関連の情報があれば、積極的に翻訳していきます。
生成AIの活用で「時間が空いた」こと、それがイコール「成果」ではありませんよね。効率化自体が「目的」になってしまうと、そこで思考は止まります。
大切なのは「その空いた時間で何をするか?」という再設計。もっと言えば、売り上げを伸ばすための活動を増やせているか。生成AIというツールではなく、活用者の「意図」が成果を分けるという視点が必要ですよね。