データ活用革命のヒント

2026年、約60%のAIプロジェクトが頓挫する!? データ不足という課題を克服する「AI Ready」とは?

インティメート・マージャー簗島亮次氏が、デジタルマーケティング領域における「データ不足」という共通課題と、その克服の方向性について解説します。

簗島亮次

7:05

 

2026年、企業に求められるAI活用は「導入すること」ではなく、明確な投資対効果(ROI)を生み出し、売上に貢献できるかどうかへと軸足が移ります。

一方で、ガートナー社のレポートでは、2025〜2026年にかけて約60%のAIプロジェクトが「データ不足」を理由に頓挫すると予測されています。

では、AIが本当に「使える状態」、すなわち「AI Ready」なデータ環境とは何を指すのでしょうか。

本稿では、特にデジタルマーケティング領域における「データ不足」という共通課題と、その克服の方向性について解説します。

マーケティングの2つの課題に共通する壁=「データ不足」

デジタルマーケティングの取り組みは、大きく2つに分類できます。

  1. 新規顧客の獲得:自社の商品やサービスをいかに知ってもらい、購入してもらうか
  2. 既存顧客のエンゲージメントやLTV向上:顧客のロイヤリティを高め、離脱を防ぎ、継続的な関係性を築くか

一見異なる領域ですが、AIを活用しようとした瞬間、どちらも同じ壁にぶつかります。それは、「自社のデータだけでは、AIが正しい判断を下すほどの情報がない」という問題です。

新規顧客の獲得:サイトに来た「その人」がわからない

新規獲得の最適化にAIを使うのは自然な流れです。しかし、多くの企業がここでつまずきます。

保有できているデータの例
  • サイトのアクセスログ(例:トップページから離脱/カートまで来たが購入しなかった、など)
足りない情報
  • その人はなぜ来たのか
  • どんなニーズを持っていたのか
  • なぜ離脱したのか

アクセスログは「行動の結果」に過ぎず、来訪者の意思やニーズはわかりません。そのためAIの分析が空回りし、施策も的外れになりがちです。効果を出すには、サイト行動データに加え、

  • アンケートなどの外部データ
  • 興味関心・属性を推定できるサードパーティデータ

などを組み合わせて、「来訪者の背景」を推測できる材料をそろえる必要があります。

既存顧客のLTV向上:何を薦めれば良いかわからない

既存顧客に対して、LTV向上(クロスセルや離脱防止)のためにAIレコメンドを使う場合も、同じ課題が生まれます。

保有できているデータ
  • 会員登録・購入時の基本情報(年齢・性別・住所など)
足りない情報
  • 興味・関心
  • 趣味嗜好
  • ライフスタイル

これらがわからないと、AIは「人気商品」「売れ筋ランキング」といった「誰にでも当てはまる情報」しか提示できません。結果として、パーソナライズから遠ざかり、「自分のことを分かってくれていない」と顧客に感じさせ、離脱につながるリスクすらあります。

2026年に求められる「AI Ready」とは何か

AI活用が失敗する最大の原因は、「施策をAIで回し始めた段階になって初めてデータが足りないと気づく」という後手の体制にあります。

しかし、Webサイトに来訪した見込み顧客に、いきなり多くの情報を聞けば、登録段階で離脱されてしまいます。そこで求められるのが、2026年に向けた「AI Ready」なデータ環境の構築です。

AI Readyとは?
  • AIで解決したい目的を明確にし、逆算して必要なデータを定義すること
  • 自社で取得すべき最低限のデータと外部データで補完すべき領域を切り分けること
  • そのうえで、データを収集・統合・活用できる体制を整えること

つまり「やみくもにデータを集める」のではなく、目的から必要データを設計することこそが、AI活用の鍵となります。

AIを「投資」に変えるために

2026年、AIはコストではなく、売上に寄与する投資として評価されます。そのためには、AIが学習し、適切に判断・予測できるだけの「使えるデータ」がそろっていることが絶対条件です。

もし現在、御社の保有している顧客データが、年齢、性別、サイト行動データ程度なのであれば、AIを高度に活用するには情報が明らかに不足しています。

今後は、広告・CRM・クリエイティブ制作など、あらゆる領域でデータドリブンな判断が求められます。

「AI Ready」なデータ環境を整備し、組織としてデータ活用能力を高めることが、これからのマーケティング成功の分岐点となるでしょう。

データを整え、AI Readyな組織へと変革していくこと――AIの価値を最大化できるかどうかは、まさに「いま、何を準備するか」で決まります。2026年を迎える前に、ぜひその第一歩を踏み出してください。

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